マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

『源氏物語錦織絵巻展』鑑賞

2012年09月12日 | 映画・美術・芝居・落語

 情報源は忘れましたが、国宝「源氏物語絵巻」を西陣織に縫いあげ、フランス国立ギメ東洋美術館に寄付した人物がいたことは知っていました。絵巻が何メートルあるかは知りませんが、それを織物にすること自体とてつもなく大変なことは想像がつきましたが、その大作を寄付してしまう志の豪気さは想像を越え、驚かされるとともに、フランスじゃ鑑賞出来ないじゃん!と少しヒガンで、その記事を読んだ記憶があります。(写真:「源氏物語絵巻」本)





 実はその錦織絵巻、もう一点、日本にあったのです。その展示が9月7日(金)・8日(土)の2日間のみ、銀座「清月堂ギャラリー」で開催されることを知ったのは、9月7日夜、家人からです。その家人に情報を伝えてくれたのは尾瀬同行のトモさん。
 パンフレットにはこうありました。
 『京都西陣の巨匠山口伊太郎氏は「残りの人生は西陣織りの技術をすべて駆使した、後世に伝える最高の作品を作りたい・・・」  1970年69歳』とあり、これは是非と思いました。
 9月8日(土)午後、高校での講習を終えた私は、地下鉄を銀座で下車し「あずま通り」沿いの展示会場へ。銀座世きねが、創業85周年と、秋の新作着物展の特別企画として催したものでした。(写真:「錦織絵巻」本)

 1階が展示会場で、会場には着物姿の女性がちらほら見える程度でそれほどの人出はありません。展示が開催されている事は余り知られていないようです。 
 錦織絵巻は長さ10mほどの平台とそれを覆う様に作られたガラス張りの間に置かれ、その間から手を差し込むことも可能で、無防備なことこの上なし。これで大丈夫なのだろうかとこちが心配してしまいます。
 ”柏木”や”横笛”に登場する十二単衣の女房達。”関屋”には多彩な登場人物や山や紅葉に彩られた風景が。国宝の絵巻よりはるかに華やかです。高度な織物技術と根気がなければ完成しない作品である事が素人の私にも想像出来ました。(写真:錦織絵巻中”関屋”の一部)


    (写真:錦織絵巻中”横笛”の一部)

 帰宅して、少し調べてまとめてみました。
 『制作者山口伊太郎は1901年生まれ。15の歳より西陣の織物の制作に携わる文様織物制作の第一人者。第二次世界大戦後、西陣織工組合理事長を歴任』
 様々な織技術を考案し独創的な帯の制作者でもあり、統括能力にも優れた彼が、70際にして始めたのが「錦織による源氏物語の制作」でした。
 『第1巻が完成したのは85歳のとき。2008年3月、38年の歳月を経て、第4巻が漸く完成。山口は最終巻の完成を見ることなく、その前年の2007年6月105歳で亡くなった』とあります。
 高齢に及んでも、一所に精魂を傾けた執念の結実を鑑賞出来たのでした。