夏コミ前に見るはずが、原稿が遅れたのでまだ見てなかった「All you need is kill」、ようやく見てきました。
調べてみたら上映終了が21日だったのでギリギリだった……。
原作小説が大好きで何回も読んでただけに、今回のハリウッド映画化は不安半分期待半分と言ったところでした。
もう公開からだいぶ経ってるのでネタバレ上等で行きます。
この映画を見るにあたって注目ポイントは2つ。
「原作小説に寄せるのか、それとも大幅改変か?」そして「ラストシーンは再現するか?」
前者は、ハリウッド映画なら原作のアイデアの基本骨子のみ抜き出してストーリーは大幅改変することは珍しくはないので(例:「追憶売ります」を原作とする「トータル・リコール」)、後者はかなり重要なポイントでした。
原作版のあのラストは今まで読んだ小説の中でベスト5に入るマイベストラストシーンです。(ちなみに1位はP・K・ディック「干渉するもの」のラスト)
さて実際のところはどうだったか。
まずストーリーですが大幅改変でした。
基本骨子である「実戦経験のない新兵が同じ1日を繰り返す」という点は変わらないものの、主人公・ケイジが訓練兵から将校にチェンジしたことでより「実戦に投入されること」への落差が激しくなった感じです。
そしてケイジがギタイとの戦闘による死を繰り返すのではなく、なんとリセットするためにリタに殺されまくるという悲惨な状況に。
これには、「負傷して治療のために輸血を受けるとループする力をなくしてしまうから、負傷したら死ぬしかない」という理由付けが設定されていました。
なのでケイジは途中から戦場ではなくリタとの訓練中にリタ自身に殺されるという状況を繰り返すことに。
うーん、これはちょっとどうなのかなーと。
この設定だと原作の2人の目的である「ループから脱出する」が変わってしまうんですよね。
まあハリウッド的には「最終的に主人公とヒロインが殺しあう」ってのはアウトだったのかも知れませんが。
しかし、この設定は後の「ケイジがループする力を本当になくしてしまう」という衝撃展開につながります。
後半からラストにかけては完全オリジナル展開となりますが、これは良改変だったと思います。
「ベリーハードモードだけどコンティニュー可」の状況が「ベリーハードモード&コンティニュー不可、もちろん残機ゼロ」にさらに難易度アップという絶望的状況は良かった。
そこから仲間を説得して、全員でギタイの大元であるオメガを倒しに行くという展開もなかなか。
惜しむらくは原作ほど仲間とのやりとりがなかったせいで、ケイジとリタ以外のキャラに思い入れができなかったことかな。
他に原作になかったポイントとしては、上陸直後に仲間が墜落してきたヘリに潰される→助けようとして一緒に潰される→助けることに成功→それでもギタイに勝てずに次のループでは見捨てるという流れは、ケイジの自暴自棄気味になってるのがわかって良い改変だったと思います。
全体的に原作に比べて、ケイジとリタの二人にカメラが向いている割には、2人の関係性の変化が十分に描写されていなかったのはちょい残念かな。
あとギタイのデザインも別物になってましたが映画版のデザインもなかなか。
原作というかコミック版のデザインが「得体のしれない怪物」なら、映画版のデザインは「人間では対処不可能な猛獣」って感じ。
触手が絡みあった四足獣ってイメージのギタイはなかなかかっこいいですね。
あと映画ならではの要素として音があるわけですが、これもよかった。
特にジャケット装備のロケットランチャーとパルスガンのこもった発射音がとてもイイ。
ジャケットと言えば、なんでバトルアクスなくしたんだよおおおおおおおおッ!?
今回の映画版で一番期待してたのがそこだったのにィ!!
ここは大幅原点。
あとは出番少ない上に重要キャラでなくなってしまったのが残念なフェレウ軍曹だけど、なんかすごくそれっぽい人がキャスティングされててイメージぴったりだった。
もっと出番欲しかったなあ……訓練するトコとか。
映画版では原作以上に、失敗して死ぬ→やり直しの繰り返しが何度も描かれてたのは良かった。
このおかげで、「高難度のゲームをリトライしまくりでムリヤリクリアする」のノリが強調されてました。
「これでうまくいっただろ!」というところで邪魔が入る辺り王道で大変よろしい。
そしてもうひとつのポイント、ラストシーンですが……ここはまったくの別物になってました。
まあ後半からラストにかけては上述の通り全く別の展開になってましたからね。
で、映画版のラストシーンですが……まあこれはこれで、といった感じ。
個人的には基地にリタを探しに行くも、どこにも彼女の姿はない……なんていう寂鬱感のあるラストのほうが好みではありましたが。
ループを引き起こした元凶であるオメガを倒した後になんでケイジが基地に連れて来られたところではなく冒頭のヘリの中に戻ったのかとか、オメガの位置を特定するための機械は結局どういう仕組だったのかとか説明不足なところもありましたが、満足の行く映画化だったと思います。
次はゴジラも見に行きたいなあ。