雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

検事の本懐

2012-07-27 21:29:20 | 

柚月裕子著"検事の本懐"を読みました。
検事の佐方が主人公の連作短編集です。
本の中で清く正しく生きる人が描かれるのは稀です。
自分の利益を求める生き方がいいのだと言っているような
話が多くて辟易とします。
佐方は頭の切れそして当たり前に正しい方に向かって
進んでいく検事です。
すっとする話で読後感はとてもいいです。

"樹を見る"
連続放火が発生しています。
刑事部長の佐野と米崎東署の南場は警察学校の同期です。
佐野は南場を目の敵にして放火事件が解決しないことを
大勢の前で非難します。
必死の捜査の結果犯人が逮捕されます。
連続火災の中に1件手口が違うものが混じっています。
ほとんどが大火災にならないように放火されています。
その1件は1軒家が焼け死者が三人出ています。
警察はあせって全部が同一犯のものだと断定します。
しかし検事の佐方が疑問を持ちこの1件を調べて
真実を突き止めます。

"罪を押す"
真面目に働いていた男がパチンコを知ったため転落
しました。
妻子と別れ刑務所暮らしが続いています。
自分で生きるより刑務所に寝る場所、食事を確保した方が
ましと出所してもすぐ捕まり刑務所へ戻る生き方を
してきました。
就職することになった息子から最後の手紙だと書かれた
手紙を手にしました。
出所してすぐ時計の万引きで捕まりました。
自白していますし誰もがこの男の犯行を疑いませんでした。
お金がまだ残っているのに使わない前に捕まるような
事をするのは不自然だと佐方は調べます。
防犯カメラに映っていたものは・・・

"恩を返す"
高校時代の女性の同級生から助けて欲しいと電話が
架ってきます。
場所は広島です。
高校を中退し美容師になった弥生は結婚する予定です。
昔のビデオをネタに警察官に恐喝され、すでに百万円
渡しました。
きりが無いので佐方に助けを求めてきました。
佐方は弥生を助けてやります。

彼らが高校生の時事件が起きました。
弥生と佐方が二人で歩いていた所を同じ高校生グループに
絡まれました。
弥生がナイフで相手を傷つけてしまいました。
弥生だけが退学処分となりました。
二人にはこんな関係がありました。

"拳を握る"
東京地検特捜部へ政治家の汚職事件を追及するため
各地から応援が派遣されました。
佐方もその一人として派遣されました。
すでに一人自殺者を出しています。
なかなか目鼻がつきません。
上層部は実際には起きていないことを無理やりに
起きたと言わせ書名させようとしています。
佐方はそれを命じられます。
捏造に手を染められない佐方は真実を書いて提出し
特捜部から外されます。
最期にここを調べるべきと提案したことは無視されました。
事件は公になりました。
佐方が言った通りのところから道は開けました。

"本懐を知る"
佐方の父の佐方陽世は弁護士でした。
顧問弁護士をしていた建築会社のお金を横領したとして
捕まり実刑を受けています。
父は建築会社の亡くなった小田嶋隆一郎に子供のころから
恩を受けています。
この事件は隆一郎と陽世との約束があって真実が表に
されなかった事件です。

ネタバレです。
隆一郎は困っている人を助ける大きな人です。
従業員が病気になった時も支えました。
でもその従業員の妻と間違いを犯し娘が生まれました。
娘はその夫婦の子として育ちました。
生活の面倒は見ていました。
隆一郎が病気で死の前に陽世に今後も二人にお金が
渡るよう計らってくれるよう頼みました。
横領したといわれるお金はそういったものだったのです。
隆一郎から受けた恩のために犯罪者の汚名を受けても
真実は明かしませんでした。

佐方の気持ちがいい行動は後味がとてもいいです。