雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

塙保己一 推理帖 観音参りの女

2012-07-07 21:40:13 | 

中津文彦著"塙保己一 推理帖 観音参りの女"を読みました。
"つるべ心中の怪" の塙保己一が登場するシリーズの一冊です。
"つるべ心中の怪"より前に出版されています。
塙保己一の生活とミステリー部分が混ざり合って
書かれています。
塙保己一は実在の人物です。目が不自由ですが古書の
収集、保存、複製の発行などに活躍した人です。
ミステリーの部分はもちろん創作です。
登場人物が多いし話がややこしいのですっきり頭に
入りません。

登場人物の覚えを書いておきます。
たせ子:保己一の妻、病弱
登勢:保己一の娘
イヨ:女中、保己一の子を産む
道之助:保己一の息子
和助:元大工で隠居して狂歌、歌舞伎、寄席などに
熱中しています。自分でもやりますし仲間の取りまとめも
しています。
保己一が疑問に思うことを気軽に調べてきます。
和三郎:和助の三男で保己一の元で仕事をしています。
根岸肥前守:保己一が江戸へ出てきた時に知り合った。
河田屋善左衛門:幼名は喜助、保己一を江戸まで
連れてきてくれた人。

"観音参りの女"
大店の隠居の藤兵衛は茶屋へ行って店の印形を忘れて
きてしまいました。
判を使われたらとんでもないことになります。
印形を預かっているとその時の相手のお初から報せが
あります。
感激した藤兵衛はお初を見受けして隠居所へ住まわせます。
やもめだった藤兵衛は結婚を持ちかけますがお初は
受けずに下女のような立場で暮していました。
やがてお初は赤ん坊を産みます。
隠居所が火事になりお初と赤ん坊は亡くなります。

巳之吉という寄席の客引きをしている男がいます。
女房のお久と赤ん坊がいます。女房は赤ん坊をつれて
奉公しており月に2、3回家に帰ってきます。
こちらも女房、赤ん坊が焼け死んだといいます。

保己一が調べさせてお初とお久が同一人だとわかります。
赤ん坊は巳之吉の子です。
藤兵衛が真実を知ってしまったのです。

"五月雨の香り"
保己一が江戸へ出てきた時の話が冒頭に書かれています。
反物の行商をしている喜助が保木野村へやって来た時に
寅之助(後の保己一)は江戸へ出る決心をして喜助に
伴われて旅に出ます。
途中で追いはぎに出会い殺されそうになった所を安生
九郎左衛門、後の根岸肥前守に助けられます。
安生九郎左衛門22歳、喜助18歳、寅之助13歳です。

保己一の元で仕事をしている吉田作右衛門が保己一と
同じように襲われたところを浪人の刈谷左兵衛に助けられます。
刈谷の妻の志保は目が見えません。
家にいた時に男に襲われます。
男の特徴を書き残し志保は自害します。
志保は香道をします。
男の持っていた匂い袋の匂いを書き残しました。
刈谷は妻の敵を探しています。

"亥の子の誘拐(かどわかし)"
大田南畝が保己一を訪ねてきます。
南畝は狂歌師で戯作者です。
根岸肥前守は「耳袋」という聞き取ったことや経験した
ことを書きとめていて知り合いに読ませています。

吉原の遊郭の松葉屋の儀楼の4つになる息子の
道太郎が誘拐されました。
駿河屋の富次郎は松葉屋の遊女お幸を身受けして
女房にしています。
富次郎が道太郎を連れて歩いていた時に誘拐されました。
身代金の要求は松葉屋ではなく駿河屋にありました。
駿河屋は要求に応じたのですが道太郎は川に
放り込まれ亡くなりました。

保己一は江戸に出て盲人の座に入れてもらいました。
借金の取立てや針按摩の修業をしますがどれもうまく
できません。
座のトップの検校に学問をさせてくれるよう頼みます。
願いはかなえられ学問をするようになりめきめきと
頭角を現します。
本を音読してもらうとその内容を頭の中へそのまま
入れておく能力があります。

保己一のエピソードとミステリー部分が平行している
ので混乱します。
読みやすいとはいえませんが保己一のことや江戸時代
のことがわかって興味深いです。

最近読んだ本の中に根岸肥前守がどういうわけか
よく登場します。
たとえば"天網恢々 お話奉行清談控"や"はやぶさ
新八御用帳
"などです。
根岸肥前守は多くの人の興味を引く人なのですね。