雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

ちょちょら

2012-07-12 20:50:08 | 

畠中恵著"ちょちょら"を読みました。
妖怪がでてくる若旦那シリーズではありません。
多々良木藩の江戸留守居役の間野新之助が主人公です。
やはり江戸留守居役だった兄が理由もわからず自殺します。
同役だった隣の家の入江が一家で消えてしまいました。
入江の娘の千穂は兄の許婚でした。
何もわからずに新之助は仕事につきます。
留守居役組合の会合で他藩の留守居役に知り合います。
多々良木藩は貧乏で費用を切り詰め留守居役が使える
費用もなしという状態で諸方への付け届けがずっと
できなくなっていました。
そのせいで河川普請の代金をおしつけられることに
なりました。
学問でも剣術でも容貌でも兄に落ちると劣等感を
持って新之助は生きてきました。
仲間の留守居役たちや表坊主衆やお菓子を味わう会の
甘露の集の人達、札差の青戸屋、料亭万八楼の仲居に
なっていた千穂と知り合いが増えていきます。

何かが起きそうな雰囲気があります。
それをつきとめようと皆躍起となっています。
印旛沼のお手伝い普請が藩に申し付けられることに
なるということを新之助は知ります。
多々良木藩はもしこれを申し付けられたら潰れます。
藩の家老に逃れるための運動資金を出してくれるよう
頼みますがまったくことの重大さをわかってくれません。
家老に刀を抜かれるしまつです。

新之助はお手伝い普請を逃れる方法を考えます。
そして出したのが全藩すべてが逃れようというものです。
藩をいくつかに分けてグループにしてそれぞれにつてを
たよって逃れます。
だんだんと成果があらわれてきます。
しかし新之助のグループは抜けられません。
頼ったのは甘露の集の一員の冬菊です。
狂歌の師匠として敬われている人物ですが本妻の子では
なく悔しい思いをしてきています。
冬菊が仲立ちをする見返りに求めたのが江戸城で嘉祥の
日に大名・旗本に下される嘉祥菓子の全種類を持って
くることというものでした。

つてを総動員して菓子を集めます。
しかし一つだけ手にできませんでした。
幕府側の水野出羽守に計画がばれているのではないかと
思われます。
留守居役の仲間の岩崎が裏切っているのではという
噂があります。

そんな中で全留守居役が江戸城へ集められます。
印旛沼のお手伝い普請の話は噂にすぎないと発表されます。

新之助は人々を纏めた手腕をかわれて水野出羽守に
別の藩への移動を命じられます。

自信がなくたよりないと思われていた新之助が成長し
力を発揮していく物語です。
最初はいじわるされている感じだった留守居役仲間とは
信頼関係が結ばれます。

だけどなんか入りきれない部分があります。
全藩で逃げる、この計画は矛盾しています。
まず成功は望めないものです。
全藩が賛成するというのがそのそもおかしいのです。
誰もが疑問をもたないなんてことはありえません。
成功するにはお手伝いの計画そのものが消滅しない
ことには成り立ちません。
本ではこの矛盾が最後に出羽守と岩崎との会話で
語られています。

江戸幕府、賄賂とつてで成り立っているような世界です。
よく成り立っているものだと関心します。
それで平穏な世が続くならこれも正しいのでしょうか。

新之助はすばらしい能力を持っているといわれますが
根本のところを見誤っているのではだめじゃないかと
思わないではありません。
それでも楽しい本でした。