シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ファッションが教えてくれること

2009-11-19 | シネマ は行
こんな題材の映画だから、周りがオサレな男子や女子ばかりでワタクシなどが行ったら白い目で見られたらどうしようとビクビクしながら出かけて行ったけど、まぁまぁ普通のOLさんたちが多い感じでちょっと安心した。

「プラダを来た悪魔」でメリルストリープが演じた鬼編集長のモデルと言われるアメリカ版ヴォーグの編集長アナウィンターのドキュメンタリー。というコピーがちまたにあふれているけど、実際には“アメリカ版ヴォーグ2007年9月号ができるまで”といった感じだった。原題も「The September Issue」だしね。

まぁ、もちろん1冊のヴォーグができるまでよりも世界のファッションの中心であるアメリカ版ヴォーグの編集長アナウィンターの実像に迫るっていうのが本来の狙いなんだろうけど、アナウィンターに密着取材しましたって感じの作りではない。ワタクシは逆にそこが気に入ったけど。

9月号といえば、ファッション界では一年の幕開けのようなものらしく、それはそれは力の入れようが他の号とは違うらしい。まずはどんな方向性でいくかという会議のシーンから始まるが、その会議が終わってのテロップ「9月号締め切りまであと5ヶ月」はぁ???あと、5ヶ月???ってまだ3月かそこらってこと?ファッションショーなんかを見てると「もう秋冬コレクション?」なんてのが普通だからファッション雑誌だってそのくらいから動いていて当然なんだろうけど、それでもいきなりガツンと驚いてしまった。

そこからは「ヴォーグ」で働く人や、デザイナー、フォトグラファー、モデルなどなどの仕事ぶりが次々に映し出される。アナウィンターは常に最終判断を下す立場。彼女がNoと言えば、No。その服はもういらない。彼女と同じキャリアを積んでいるグレイズコディントンが持ってきた写真でもアナがダメと言えばダメ。ファッション業界に疎い人でも知っているような超有名デザイナーたちでさえ、アナにどう思う?と聞くし、アナが「イマイチ」と言えば、その意見を取り入れる。

最初は、結局みんな彼女が怖くて誰も反論できないだけじゃないのかと思ったんだけど、周囲の人のインタビューを聞いていくうちにそれがアナの実績に基づくものだということが分かっていく。デザイナーにもっと早く服を作るように言ってくれとか、うちに新しいデザイナーを入れるなら誰がいいか教えてくれとか、みんなアナに頼ってるしね。同期入社のグレイスは「アナとはお互いに理解しあっている。二人とも頑固だけど、私は引き際を知っている。アナにはそれがないの」と言い、アナは「グレイスの写真をプロデュースする能力は天才的」と言う。どちらも第一線で仕事をし、お互いに認め合っているからこそ言えるのだろう。実際、アナの決断力の凄さとグレイスの天才的な写真の出来上がりがこの作品で見ることができる。

ワタクシは昔からなぜかファッション業界の内幕ものに惹かれる。ファッションに特に詳しいわけでもなんでもないんだけどね。アナのインタビューで、アナが「ファッションを批判する人はファッションを恐れているのだ」と言っていた。彼女の(結構エリートな)「兄弟たちは自分の仕事のことをamusedしている(面白がっている)」とも。それがproud(誇りに思っている)でもinterested(興味を持っている)でもなくamusedだったことがなんだか印象的だった。amusedという単語そのものには特にバカにしているとかネガティヴなイメージはないと思うけど、それでもやっぱり“ファッション業界”というものの特異性というか、「ファッション雑誌を作る」という仕事が決して世界中から尊敬される仕事ではないということを分かっていて、それでもそれに誇りを持っているし、「ファッションを批判する人は恐れているのだ」というセリフが物語るようにファッションの持つパワーというものを理解して仕事をしているという彼女の自負があの表現に表れているような気がした。結局、ワタクシがファッション業界に惹かれるのは、そういうファッションが持つ立ち位置の不安定さというか、ただの広告なのか、芸術まで高められるものなのかというような曖昧な部分にあるのかなぁと再認識したりなんかもした。

アナウィンターの娘が途中で登場するけど、彼女は母親の仕事ぶりは尊敬するけど、ファッション業界には興味はないと言って法曹界に進むようなことを言っていた。それについて、アナは「いまのところはね」と言っていて、実は娘にファッション業界に進んで欲しそうだった。いやー、彼女の娘が「プラダを着た悪魔」の双子のガキみたいに「発売前のハリーポッターを読みたい」とか言うようなワガママなガキじゃなさそうでホッとした。(なんかでも最近では、やっぱり色々とメディアに登場して法曹界はどうしたの?ってな感じになっているようですが)

アナウィンターに関しては多分ワタクシの知らないウワサやら事実やらがいっぱいあって、(毛皮の問題とか、ダイエットの問題とか)彼女に対するイメージは人それぞれ違うと思うんだけど、彼女のことが好き嫌いは別として、この作品は少しでもファッションに興味ある人はとても楽しめるものだと思います。実際、アナウィンターってもう今年で60歳だけど、モデルに負けないくらいで美人で絵になるしなぁ。グレイスもいまはおばさんだけど、モデルしていただけあって若いときの写真はとっても美人でした。

仕事人間ではないワタクシからしたら、あそこまで仕事ばっかするのはイヤだなって思っちゃうけど、仕事が大好きな人からすればバイブル的な作品になるかもしれませんね。

オマケ1「プラダを着た悪魔」は原作の方には悪いけど、めずらしく原作よりも映画のほうが面白い映画でした。

オマケ2このテの「なんとかがなんとかなこと」っていう邦題って「死ぬまでにしたい10のこと」が一番最初かな?もうややこしいから、この辺で打ち止めにして欲しいのことよ。


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