シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ふたりの死刑囚~再審、いまだ開かれず

2017-06-13 | シネマ は行

ワタクシがよくここで取り上げている東海テレビのドキュメンタリーです。ふたりの死刑囚とは2014年3月27日に釈放された袴田事件の袴田巌さんと2015年10月4日に獄死した名張ぶどう酒事件の奥西勝さんのことです。

釈放後の袴田さんとお姉さんの生活、奥西さんの面会に行く妹さんの生活などが語られますが、正確な時間配分は分かりませんが、袴田さんに重点を置いているような気がしました。

袴田さんは48年に渡る拘置所生活のせいで拘禁反応が出ており、お姉さんと一緒に暮らすマンションの部屋中をただただ歩き回って一日を過ごしていた。歩き回るかお姉さんの用意してくれた食事を取るか疲れて眠るか。初めはマンションの外へ出ることもできず、このドキュメンタリーの取材陣が来ても、それが一体誰なのか分かっていない様子で相手にしようともしなかった。

それが徐々に少しずつお姉さんと一緒に近所に出ることができるようになりドキュメンタリーのスタッフと将棋を差したりするようになる。時折よく分からないことを言いだしたりするが、こちらの質問に普通に答えることも多くなってきた。袴田さんはうちわを片時たりとも離さない。それも拘禁反応のひとつだという。

48年間拘置所に入れられると人はこんなふうになってしまうものなのか。しかもただ閉じ込められているだけではなく、明日の朝には死刑宣告されるかもしれない、今日が最後の一日かもしれないと思いながら日々を過ごしているのだから極限の状態と言っていいだろう。それも自分の犯した罪の罰ならばどこかで観念する部分もあるかもしれないけど、無実の罪で閉じ込められ続けたのだから想像を絶する。

そして、袴田さんのお姉さんは変わらずずっと弟を支援してきて離婚もし、弟が釈放されたときのためにとお金を貯めて彼のためにビルを買っていた。ただ「だって弟だから」としかお姉さんは言わない。姉弟でもここまでできるもんじゃないと思う。

いまでも袴田さんは死刑囚であり、いつ保釈を取り消されまた収監されるか分からない状況なのだ。

昨今の痴漢と言われたらもう絶対に有罪になるから逃げろなどというアドバイスがテレビで面白おかしく取り上げられ、それを真に受けて実際にそういう行動出る人たちが続出するのも、実際に日本の司法がきちんと機能していないからで、痴漢冤罪と袴田さん、奥西さんの事件の重要性をいっしょくたに語るのはダメなのかもしれないけど、根本的な話としては同じことなんだと思う。警察、検察、裁判所の怠慢、腐敗以外の何物でもない。

警察や検察は一度逮捕した人間を有罪にしようと躍起になるが、それが冤罪だった場合真犯人は野放しになっているという事実に関しては何とも思わないのだろうか?袴田事件もぶどう酒事件も事件から50年以上経ちもはや真犯人が判明する確率はゼロだろう。冤罪で逮捕した人に対しても被害者たちに対しても警察や検察は重大な罪を犯している。

こんな司法の国で共謀罪の法案が国会を通過しようとしている。



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