シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

凶悪

2015-01-22 | シネマ か行

ケーブルテレビで見ました。実際にあった事件を基にした作品。

映画の冒頭、一体何がどうなっているのか全然分からない。いきなり須藤純次ピエール瀧というヤクザみたいな男が舎弟小林且弥と一緒に一人の男を痛めつけ、あげくに手を縛ったまま川に落としてしまうシーンや、男の前でその男の彼女を順番にレイプしその男にガソリンをかけて火をつけるシーンなどが映し出され、最後に舎弟までも車の中で撃ち殺してしまい、その後逮捕される。これが「凶悪」な男の正体か、と思ってみていると実はこの「凶悪」とはこの須藤という男のことではないらしい。

数々の殺人容疑などで死刑が確定した須藤は、ジャーナリストの藤井修一山田孝之に手紙を書く。自分にはまだ余罪があり、その首謀者である“先生”リリーフランキーと呼ばれる男がのうのうとしゃばで生きていることが許せず、その余罪を藤井に告白するからそれを記事にして“先生”を摘発してほしいというものだった。

一度面会に赴いた藤井は須藤の告白の内容に驚き、少しでも事件の証拠になるものはないかと探し始めるのだが、なにしろ須藤自身が被害者の名前すら知らなかったり、被害者を埋めた場所などをはっきり覚えていなかったりで、調査は難航するが少しの手がかりを元に藤井は地道に事件の全容を明らかにし始める。

藤井の上司はこんなものは記事にならない。したとしても部数は伸びない。それなら大物議員の不倫写真を撮ってこい。と言うが、藤井はどんどんと事件にのめり込んでいった。

須藤が告白したのは“先生”と呼ばれた木村孝雄という不動産ブローカーが、彼に借金をしていたある男性を殺害したため遺体の処理を相談され、焼却炉で燃やした事件、土地を持っていた男性を生き埋めにして殺害し土地を木村が手に入れた事件、借金のある電気屋の男性を自分の会社で働かせ無理やり酒を飲ませ暴行したあげく山中で車の事故に遭ったように見せかけて殺害した事件の3件だった。(事件の内容は実際とは少し変更はされているらしい)

須藤が「凶悪」かと思ったらこの木村という男のサイコパスぶりには驚いた。須藤は根っからのチンピラヤクザであり、実行部隊としての怖さはあるが、「死の錬金術師」と呼ばれる木村の「凶悪」っぷりは恐ろしすぎる。

映画的にはピエール瀧とリリーフランキーの演技がすごい。山田孝之も演技派だし、今回は受けの演技が光ってはいたが、前述の2人のインパクトがすご過ぎてちょっと霞んでしまったような気がした。

ピエール瀧扮する須藤は当然彼も凶悪と呼べる非道なことを平気でやる男なんだけど、一方で内妻や娘には優しいところや刑務所で知り合った佐々木米村亮太朗という男や舎弟に対しては情の厚いところもあったりして、(というか、そういうのって典型的なチンピラヤクザかもしれない)そういう面をうまく見せていてとても役者が本業じゃないとは思えなかった。記事を書いてくれるという藤井に対しても終始紳士的な態度だったが、編集者の反対で記事にならないと知ったときの変貌ぶりは役柄だと分かっていても本当に怖いくらいだった。

リリーフランキー扮する木村は無理やりお酒を飲ませた被害者のおじいさんにスタンガンを押し付ける須藤たちを見て大笑い。そして「俺も!俺も!」と嬉しそうにスタンガンを受け取ってうきゃきゃきゃうきゃきゃきゃと嬉々としておじいさんを痛めつける姿なんてもうまじでこの人サイコなんじゃないかと思わせるくらいだった。もともとリリーフランキーって怪しい目をしているから余計になぁ。。。この作品を見た直後から「日野の2トン」のCMが始まったんだけど、あの中のリリーフランキーを見るのが怖くてしょうがない。

山田孝之に関しては須藤や木村と対峙するときの演技は本当に素晴らしかったと思う。ただちょっと彼の家庭内の事情とかそういうのはちょっと取ってつけた感があって、そのせいで少し山田孝之の演技の評価も落ちてしまうような部分があってもったいない。

この事件に取り憑かれ、家庭を顧みずに没頭する藤井に妻池脇千鶴が「あなただって面白かったんでしょ?私だって正直記事を読んで面白かった。へ~人ってこんな殺され方するんだぁって」と言って藤井を怒らせるシーンがあるんだけど、あれにはワタクシも少しドキッとしました。なんかね、ぶっちゃけそういう怖いもの見たさみたいなところってあると思うんですよね。こういう事件を語るとき。真相を暴くために懸命になっていただけだと藤井は言うだろうけど、そういう下世話な好奇心というのも否定はできないと思う。

刑務所でキリスト教徒になったと言い、生きて被害者の方たちに懺悔したい、神は私に生きなさいと言ったなんて都合の良いことを言ってしまう須藤に対して、「お前が一番俺を殺したいと思っているだろ」とまるでお前も俺とそう変わらない人間さと藤井に薄ら笑う木村とは所詮悪のレベルが違うんだろうね。

冒頭に見せられた須藤の訳が分からなかった悪行のシーンが、藤井が事件を調べていく過程で分かるようになっていて、映画の流れとしてとてもうまい作りになっていると思う。128分間、胸糞の悪くなることばかり起こるので、これから見る方は要注意です。



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