シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ペコロスの母に会いに行く

2016-02-24 | シネマ は行

ペコロスって小さい玉ねぎのことで、ペコロスみたいな頭をしたおっさん岡野ゆういち岩松了は認知症の母みつえ赤木春恵の面倒を見ている。妻とは離婚し、年頃の息子まさき大和田健介と2人でみつえの面倒を見ていたが、徘徊癖が強くなり、日中誰もいない家に置いておくわけにはいかなくなって介護ホームに預けそこへ面会へ出かける日々を描く。

まだみつえが家にいるとき、駐車場で一日中ゆういちの帰りを待っていて、「危ないからここで待ってちゃいかん」と言われ、「そんな言い方せんで。怒っとる?怒っとらん?」と言うみつえが何とも可愛らしい。壮絶な介護生活を送っている方にはお叱りを受けるかもしれないけど、この映画のそんなシーンはとてもほのぼのしていた。汚れた下着をタンスにしまいこんでいるのを見つけた家族はたまったもんじゃなかっただろうけど、それも少し可愛げがある感じだったし、何と言ってもオレオレ詐欺の電話がかかってきて、騙されてしまうのかと思いきやそこへ孫が帰って来たりして受話器を置いたが最後電話をしていたことすら忘れてしまって詐欺をする奴を華麗に放置してしまうシーンがとても笑えた。

介護ホームに入ってからは息子ゆういちのこともだんだんに分からなくなりつつあるのだが、あのハゲ頭を見せると「あ、ゆういち~」と思い出してくれる。ハゲてて良かった~というゆういちの横で同じホームに母親を預けているかつらをかぶった本田竹中直人がどぎまぎするっていうのはちょっとコメディ演出が過ぎるシーンだったけど、まぁいいとしよう。

いま現在のことはどんどん忘れて行っても昔のことは忘れてないという認知症の症状を追うように、母みつえの幼い頃~結婚~子育て~と思い出を辿って行く。そこでみつえの幼馴染のちえこちゃんが口減らしによそにやられるシーンがあり、大人になったみつえがちえこに会いに行くんだけど、ちえこは明らかに女郎屋に売られたのであり、そこへ「久しぶり~。会いたかった~」と呑気に言っていたみつえがどうにもワタクシには馬鹿なの?と思えてしまった。自分だって特に資産家の娘というわけでもないみつえがあの時代赤線に売られていった幼馴染の苦労とかくらい想像がつかないもんだろうか?女郎に身を落としてしまった少女が幼馴染に会いたくないと思う気持ちとか分からないのかな~とちょっと物語の軸からは外れてしまう感想を持ってしまいました。

みつえは何度も何度もちえこちゃんに手紙を書き、ずっと返事がなかったけど、夫さとる加瀬亮の暴力に耐えられず幼いゆういちを連れて死のうとしたとき初めてちえこちゃんからの返事が届き生きようと思い直すシーンは泣けました。でもそれもみつえが死ななくて良かったということよりちえこちゃんの心情を察するととても辛くて泣けてしまった。ちえこちゃんは自分の境遇を引け目に感じていたからみつえに返事は出せなかったけど、みつえから来る手紙を心の支えにしていたということだったのだろう。だとすれば、みつえが空気を読んで手紙を出すのをやめないで良かったということなんだろうな。

このちえこちゃんのエピソードにやたらと心を動かされてしまって、いかんいかん、これは認知症の母ちゃんと息子の話、と自分の頭を戻さないといけなかった。もうひとつこのちえこちゃんにまつわることで言わせてもらうと若い頃のみつえが原田貴和子で、ちえこちゃんが原田知世というキャスティングだったために、あれ?売られたちえこちゃんってみつえの妹だったっけ?と一瞬思ってしまった。わざわざ姉妹の役者を持ってくる必要があったのかなぁ。

母親の若い頃のエピソードと現在の介護ホームでの様子をうまく絡ませながら物語は進んでいく。唯一、死のうとまで覚悟したほどの暴力を振るう夫のことをみつえも愛していて、息子のゆういちもお父さんが大好きだったというのはワタクシにはどうしても理解はできないのだけど、実際本人たちがそう感じているのだから仕方ない。

クライマックスのランタン祭りは舞台の長崎の美しさをよく表現していた。長崎出身の人からすれば違うと思う部分もあっただろうけど、長崎弁の響きもこの物語によく合っていた。みつえとゆういち親子だけじゃなく、ゆういちの息子まさきやゆういちの友人、介護ホームの人たちとの人間関係など非常にうまく描いていて心温まる作品だった。



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
これ! (わん)
2016-02-26 15:24:14
マンガを持っています。
映画も見たいんです。
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わんさま (coky)
2016-03-03 14:48:37
マンガ、良さそうですね。
絵の感じも優しくて。

マンガを読まれている方は映画はどう思われるのかなぁ。
また聞かせてください。
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