シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ザ・イースト

2014-02-05 | シネマ さ行

「LATimes」が選ぶ去年もっとも過小評価された映画ということで興味があって見に行きました。ワタクシ好みの作品が多いFOXサーチライトが製作ということもあり期待大でした。

面白かったー。最初から物語にぐっと引き込まれてそのままラストまで心地よい緊張感を持ってみることができました。

元FBIエージェントのサラ(偽名)ブリットマーリングは現在、環境テロリスト集団の攻撃を受ける可能性のある大企業を顧客に持ち、彼らにテロリスト集団の情報を流す会社の潜入捜査官をしている。今回、環境テロリスト集団「ザ・イースト」に潜入することになる。

浮浪者のような生活をする中でザ・イーストにつながる若者ルカシャイローフェルナンデスと知り合ったサラは、うまく彼に取り入ってザ・イーストの本部へ連れて行ってもらう。そこにはベンジーアレキサンダースカルスゲルドを中心に過激なイジーエレンペイジやとある薬の副作用に苦しむ元医師ドクトビーケベル他数人が自然環境の中で共同生活をしていた。

まずこの集団にサラが初めて潜入したときは、この集団はカルト的な集団で中ではマンソンファミリーのようなことが行われているのかとドキドキしました。実際リーダー・ベンジーはそんな風貌だったし、男女があんな狭い空間で共同生活していたら変な方向に進んでいきそうなもんだし、ちょっとだけおかしな儀式的なことも行われていたし。でも、ベンジーはリーダーとはいえ、一人だけカリスマ的に集団をまとめあげているのではなくて、他のメンバーにも男女同等に発言権があったし、浮世離れはしているもののマンソンファミリーのような異常性はないなということが分かってくる。

ヘンテコな儀式と言えば彼らの食事風景。全員が拘束服を来て食事をする。新入りのサラはどうやって食べるかやってみろと言われて皿を口で引き寄せ犬食いするが、、、「地獄と極楽の三尺箸の話」を知っている人にとっては答えは簡単なのだけどね。彼らはスプーンを口でくわえ横に座っている人にスープを食べさせてあげます。これがザ・イーストの考える思いやりの基本ということなのでしょう。

ザ・イーストのしているテロ攻撃というのは企業に対する「目には目を歯には歯を」で、企業が経済活動を優先にするあまり、人々の健康被害や自然への悪影響などは無視してしまっている現状に、その罪と同等の罰を与えるというものだった。「目には目を歯には歯を」とは過激な報復の代名詞のように使われることがあるが、実際にはその犯した罪以上の罰を与えてはいけないという意味だから、彼らもその企業にふさわしい罰を与えることを信条としていた。

いくら相手が倫理的に許されない罪を犯している大企業とはいえ、彼らのやり方には反発を覚えるサラだったが、テロのターゲットの報告を上司シャロンパトリシアクラークソンにしたとき、「その企業はうちの顧客じゃないから関係ない」と一蹴され、自分のしていることの正当性が曖昧になってきて、ザ・イーストのメンバーへの共鳴もあり、精神的にもきつい状態になってしまう。

サラが潜入捜査官であることのドキドキ感と、ザ・イーストのミッションのドキドキ感がハンパない。ザ・イーストと上司シャロンあるいは自分のキャリア、自分の信条と新たに吹き込んできた考え方、ボーイフレンドジェイソンリッターとベンジーの間で揺れ動くサラから目が離せない。サラを演じるブリットマーリングが正当派な美人ということもあって、サラに危機が訪れるときのこちらの緊張感といったらもう!

元FBIだし、企業のエリート潜入捜査官というバックグラウンドを持つ頭脳明晰なサラが様々なピンチをどのように切り抜けていくのかというのも見どころのひとつ。か弱い乙女のように見えて実は強かなサラに爽快感さえ覚えます。

最終的には潜入捜査にはありがちな「ミイラ取りがミイラに」という状況になるんだけど、ワタクシは環境テロリストを支持はできないけど、大企業のしている悪事にうんざりしているタイプなので、サラが彼らに傾倒していってしまう気持ちも分かりました。ザ・イーストか自分の会社かという選択を迫られながらも、リーダー・ベンジーの過激さにも違和感を感じ、どちらの選択肢でもなく独自の道を行くというラストは非常にクリエイティブで良かったと思います。

主演のブリットマーリングですが、こんな美人さんいままでどこにいたんだろう?でも、この映画でいきなり主演ってどういう縁で?と思ったらなんと彼女自身が脚本も書いて製作もしたというからオドロキ。ジェシカチャスティンがドラマの脚本も書くって知ったときと同じ驚きだなぁ。才色兼備って本当に彼女たちみたいな人のことを言うんでしょうね。これからの彼女の活躍が楽しみです。

ドキドキ感があると言っても題材はわりと地味だし、アクションとかではないので万人受けはしないと思いますが、ちょっと映画を見慣れている人にはぜひ見て頂きたい作品です。



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