ノルウェーに存在する監獄島、バストイ島で20世紀初頭に起きた暴動を映画化した作品。現在は成人の刑務所になっているらしいが、当時は非行少年たちを収容する施設だった。
殺人の罪を犯した船乗りのエーリングベンヤミンヘールスターはもう一人の少年イーヴァルとともにバストイの施設に送られてくる。彼らはここではC19、C5と記号で呼ばれた。院長ステランスカルスガルドは彼らがここで更生することを願っていると言い、寮長のブローデンクリストッフェルヨーネルともうすぐ退院するオーラブ(C1)トロンニルセンの言うことによく従うように言う。
非行少年たちが集まるこの施設では規律は厳しいものだったが、それでもやはりいじめやケンカなどが起こる。そのたびに少年たちはブローデン寮長たちから厳しく処罰され、食事を半分に減らされた。
エーリングはここでの生活に耐えられず、脱走を試み一度は成功したかのように見えたが、やはり本土から連れ帰られてしまう。このとき、イーヴァルはエーリングに一緒に連れて行ってくれと懇願するが、足手まといになるからとエーリングは断った。イーヴァルがここから出たい理由は実はブローデン寮長に性的虐待を受けているからだった。
そのことを知ったオーラブは院長に直に訴え出た。しかし、院長はオーラブには「つまらんことを言うな」と言うが、ブローデン寮長には直接注意をし解雇しようとした。しかし、ブローデン寮長は院長がここの予算を私的に流用していることを知っていると院長を脅した。
院長はイーヴァルを遠くの作業へと移し、ブローデン寮長から遠ざけようとするが、イーヴァルは自分の運命に絶望して海に入って自殺してしまう。院長はこれを脱走の末の死亡と片づけてしまい、少年たちの不満は募るが、その後寮長が島を出ていくのを目撃し初めて自分たちが勝ったのだと歓喜する。
信頼していた院長の隠ぺいに不満を覚えながらも退院の日を迎えるオーラブ。エーリングは、そんな不満は封印してとにかく退院してしまうように言うが、出ていく道のりで出て行ったはずのブローデン寮長が帰ってくるのをオーラブは目にしてしまう。「院長の使いで本土に行っていただけだ」という言葉を聞いてオーラブの中で何かがキレてしまう。ブローデン寮長に殴りかかるオーラブ。そんな彼に他の少年たちも続き、暴動が島全体に広がってしまう。
実際、非行少年たちはここに来るだけの罪を犯してここにいるわけだから、彼らは別に擁護すべき人間ではないのかもしれないけれど、こういう物語を見ているとどうしても肩入れしてしまう。もちろん、罪を償うためにここに来ているわけで勝手な行動は許されないけど、だからと言って大人たちの横暴も許せない。院長は一見少年たちの味方に見えて、実は裏で自分も予算を流用していたから、そのせいでブローデン寮長をクビにすることができなかった。表では「健全なキリスト教徒を育てる」とか言っといて偽善もいいとこだ。
最初は対立していたエーリングとオーラブが少しずつ心を開いていく描写がいい。読み書きのできないエーリングの代わりにオーラブが手紙を読んでやったり、エーリングが語る物語をオーラブが書き留めてやることで二人は友情を育んでいった。そして、エーリングの語る銛を3本打っても死なない鯨の物語が彼ら自身に重なって閉塞的な孤島での映像ばかりになってしまうのを避けられる効果を生み出している。
最後の彼らの暴動はもちろん褒められたものではないが、最初に書いたようにどうしても少年たちに肩入れしてしまった。制圧しにやって来た軍隊にことごとく捕らえられた彼ら全員のその後の運命が気になった。
劣悪な状況下での囚人の脱走や反乱をテーマにした映画は多い。こういう環境を世に知らしめて改善しなければいけないというメッセージとともに、映画的な題材として魅力がある。この作品も純粋に映画として楽しめるものだった。
オマケ1暴動を軍隊が制圧しにきたとき、エーリングとオーラブは凍った海を渡って本土側へ逃げていく。そのとき溶けかけた海にエーリングは落ちてしまう。オーラブの懸命の救助もむなしく冷たい海に沈んでいくエーリング。。。あー、どうしても「タイタニック」でディカプリオが沈んでいくシーンが頭に浮かんでしまうよー。これ作った人たちは全然気づかなかったのかなぁ。絶対に笑えるシーンじゃないのに、「パロディか?」と思ってちょっと微笑んでしまった。ごめん。
オマケ2「ステランスカルスゲルドが母国語で演技してるのを久しぶりに見たなぁ」なんてぼーっと思っていたら、「ん?この人ノルウェー人じゃないくてスウェーデン人じゃなかったか?」と映画の最中に気になってしまった。あとで調べたらやっぱりスウェーデン人なんだけど、言語が似ているからネイティヴが聞いても違和感はないのかなぁ?
「映画」もいいけど「犬」も好き。という方はこちらもヨロシクです。我が家の犬日記「トラが3びき。+ぶち。」