シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

王の男

2006-11-22 | シネマ あ行

ネタバレあり。

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世紀の韓国。暴君である王様チョンジニョンをネタにして笑いをとっていた大道芸人チャンセンカムウソンとコンギルイジュンギとその仲間は、死刑にされそうになるが、王が笑えば罪ではないと言ったところためしに王の前で同じネタをすることになる。そのネタを気に入った王様は彼らを王宮に住まわせると言い出す。

この王様はお父さんは随分優秀な王様だったようで、母親を早く亡くし、父親には次の王として教育され、愛を知らずに暴君に育ってしまうという、いわゆるアダルトチルドレンという感じ。彼は、暴君でありながら、大臣たちは自分に偉そうに先王と比べて忠告するばかりで、自分の言うとおりにならないのが気に入らない。そういったところへやって来たこの芸人たちでウサを晴らす。愛して欲しいという思いが強い彼には子供のような側面があり、芸人たちを相手にしているときの彼は無邪気な子供のようでどこか可愛らしささえある。この王は政治には長けていなかったんだろうし、好き放題して、人の命も虫けらほどにしか思わず、もちろん民衆のことなどちっとも考えていなかったんだろう。でも、お茶目な面に好感は持てた。こういう人の怖さって逆にその無邪気さにあるのかもと思いつつ。そんな彼は女形のコンギルをいたく気に入って部屋に呼び寄せるようになる。

そうなると、王の第一の愛人は気に入らず、中世ヨーロッパや大奥にあったような陰謀を策略し始める。そこに他の大臣らの思惑もからみ、芸人たちもいらぬ政治に巻き込まれる。このあたりの展開は見ていてもよくある宮廷もののややこしさはなく、いたって分かりやすく描かれているのでこちらも入り込みやすい。

なんだかんだのゴタゴタのあと、結局この第一の愛人のところへ戻って、彼女のまたぐらに枕して「宴会しよっ」という王の姿にはホトホトあきれたというか、上に書いたように、こういうタイプの人の薄ら寒い怖さを感じた。

コンギルは女も嫉妬するほどの美しさで、どこへいっても好色な権力者の部屋に呼ばれてきたようだ。そんなコンギルに「行くな」といつも止めはするものの聞き入れられないチャンセン。この二人の関係は一体どういうのなんだろう?チャンセンがずっとコンギルを保護者的な感じで見守っていたのは分かるけど、やっぱりそれって恋愛感情的なんかなぁと思いながら、保護者以上恋人未満みたいな感じ?って思ってました。それで、ラストシーンで思ったんです。あー、やっぱりこれはラブストーリーだったのだなと。こうして共に芸をすること。それが、二人のメイクラブなのだなと。勝手に解釈してみたわけですがどうでしょうか?

芸人たちの芸も本格的で面白く、宮廷内の陰謀も楽しめるし、役者の演技もみなよくできていて見ごたえのある作品でした。