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( ジョン・ロック )

日本史 鎌倉編 《 徳政令の抜け道——渡部昇一 》

2024-05-11 | 04-歴史・文化・社会
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金銭を借りる場合でも、証文の上では貸借関係を結ばない。借金の元利合計をした金額を書いて、金を貸してくれる人に、「これだけの金を確かにあなたから預かりました」という証文を渡すのである。他人の金を預かった以上、それを返すのは当然であるから、実質上、金を貸して利子を取ることは従前どおり行われることになった。徳政令では金銭の貸借よりも、金利を問題とし、利子のついた借金を対象としたのであったが、こんな簡単な工夫で、その政令はまったく効かなかった。


『日本史から見た日本人 鎌倉編』
( 渡部昇一、祥伝社 (2000/02)、p70 )
1章 鎌倉幕府――近代国家意識の誕生 = 元寇が促した「一所懸命」からの脱却
(3) 楠木正成――日本型「大義名分」の発明

◆徳政令の抜け道

それに、カネを借りるということは、それなりの必要があって起こる話であるから、当然、それに対する抜け道がすぐ出た。

抜け道として、すぐ考えられることは、借用証書なり、土地を売るときの売券(ばいけん)(売却証文)に、「徳政があっても、約束どおりにします」ということを特別に記入するのである。このような特記(徳政文言(もんごん)という)は、のちに室町時代になると無効ということになったのだが、最初の徳政令ではこれが有効だったのだから、この法律の効果は著しく減殺(げんさい)されたことになる。

もっと上手なのは、所領を売るときには、譲渡状を作り、譲与の形式を採ることであった。これは永仁5年の3月に徳政が出されると、すぐ行われだしている。これで実質的に土地に関する徳政は無効になったに等しい。

というのは、鎌倉時代は長子相続でなく、複雑な分割相続であり、女子も分け前があったから、土地の譲渡は日常のことで、これが禁じられたら、相続ぜんたいが不可能になり、嫁にもやれなくなるからである。

そのほか、金銭を借りる場合でも、証文の上では貸借関係を結ばない。借金の元利合計をした金額を書いて、金を貸してくれる人に、「これだけの金を確かにあなたから預かりました」という証文を渡すのである。他人の金を預かった以上、それを返すのは当然であるから、実質上、金を貸して利子を取ることは従前どおり行われることになった。

徳政令では金銭の貸借よりも、金利を問題とし、利子のついた借金を対象としたのであったが、こんな簡単な工夫で、その政令はまったく効かなかった。ただ借用証の名前が「好取預状(こうしゅのあずかりじょう)」と呼ばれるようになっただけの話である。

このような具合であるから、徳政は翌年廃止になったのも当然である。これによって御家人の中には助かった者があったものの、それ以外の一般の人たちはもはや幕府を信用しなくなった。特にたちの悪い御家人の中にはこれに便乗して、あくどいことをやった者も少なからずいたから、なおさらである。

幕府は徳政発布(はっぷ)の、ちょうど1年目の、永仁6年の2月28日に、この法令を停止し、同時に二階堂行藤(ゆきふじ)を越訴奉行(おっそぶぎょう)(越訴の判決を司る奉行)に任じて、旧制に復した。
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