電脳筆写『 心超臨界 』

一般に信じられていることと全く逆のことに
真実があることがしばしばある
( ブリュイエール )

用意ができたとき師が現われる 《 セレンディピティのほほ笑み――村上和雄 》

2024-08-11 | 07-宇宙・遺伝子・潜在意識
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禅の中に、「用意ができたときに師は現われる」という教えがあります。自分に準備がなければ、すべては無意味な存在でしかないということです。意志が生まれたとき、手をさしのべる師は現われる。師はいたる所にいる。ふと目にした新聞の記事や子供の質問に答えた自分の言葉であることもある。「師はどのように現われるのか?」との質問への答えは、「これがそうだ」という以外にない。たとえば死にかけた虫を見て、自分の中に同情心がかき立てられた瞬間に、師が出現したことになるのである。


行き詰った研究からいったん離れ、息抜きをかねて海外へ出かけ、たまたまキーパーソンとなる人物に出会い、いっしょににお酒を飲んだ。そういう本道からは外れた寄り道がきっかけとなって逆転ホームランを生んだのです。すべては偶然のなせるわざかもしれませんが、それは明らかにセレンディピティ(偶然の幸運)のほほ笑みでした。


◆セレンディピティのほほ笑み

『アホは神の望み』
( 村上和雄、サンマーク出版、p77 )

酒食をともなう人事交流、飲み食いしながらの情報交換はイート&ドリンク・コミュニケーションと呼ばれて、海外の研究の場でもさかんに行われています。それが新しく思いがけない発見の呼び水になることも珍しいことではありません。私にもそんな、お酒がきっかけとなってピンチをチャンスに変えた経験があります。

3年で成果を出すと公言して、ヒト・レニンの大腸菌を使っての製造やその遺伝情報の解読に懸命に取り組んでいた矢先、パリのパスツール研究グループが私たちと同じやり方で、ハツカネズミのレニンの遺伝子解読に成功したという報が入ってきました。

この研究は、まず動物のレニンを用いて遺伝情報を解読し、次に、その結果をベースにしてヒト・レニンの解読に進むという二段階で行っていましたから、この知らせはその第一段階で、私たちが完敗したことを意味していました。

私は意気消沈している研究室の仲間に、これは第一ラウンドでの負けにすぎない。まだ第二段階が残っていると発破をかけました。しかし、その後パスツール研究所とハーバード大学がヒト・レニンの研究に既に取り組んでいて、遺伝子暗号を八割がた読み取っているという情報が入ってきました。内心、さしもの楽天家の私も「これはダメかな」と思ったものです。

そこで私は動くことにしました。落ちこんでいてもしかたがないと考え、敵情視察や情報収集をかねてフランスのパリへ飛んだのです。しかし、そこでわかったのはウワサはほんとうだということでした。

これにはさすがの私も打ちのめされました。パスツールとハーバード大学、いずれも研究においては横綱級の相手に先行されたわけで、これはどうみても勝ち目はなさそうです。

その後、学会へ出席するためパリからドイツのハイデルベルクへ飛んだ私は、街角をぶらぶる歩いたあと一軒のビアホールに入りました。そこでビールを飲んで、酔っ払って眠ってしまおうと思ったのです。

するとそこに一人の日本人が入ってきました。しかも、その人は私の知人であり、遺伝子工学では世界でもトップクラスの新進気鋭の学者である京都大学の中西重忠先生でした。そういう人物と異国の空の下で偶然に邂逅(かいこう)する。そのめぐり合わせに、私は少し興奮しながら、中西先生相手に1時間ほど、自分が置かれている現在の状況を説明しました。

「……そんなわけで、世界の強豪にはさまれて白旗寸前なんですよ」とグチも混じりましたが、やがてアルコールが回ってきたのか、こんどは中西先生の目の色がだんだん変わってきました。

「村上先生、勝負はまだこれからです。遺伝子の解読は最後の最後がむずかしいんです。逆転のチャンスは十分ありますよ」

先生はそう強く励ましてくれ、それから二人は「昼間からワイン片手に研究をしているパリの連中なんかに負けてたまるか」などと、ビールを片手にしている自分たちのことは棚に上げておおいに盛り上がりました。酒の勢いもあってか、中西先生は私の研究に全面的な協力と応援を申し出てくれ、京大の研究室も使えるよう便宜まで図ってくれることになったのです。

中西先生のバックアップがあれば鬼に金棒と、私の萎(な)えかけていた意欲にも再度ギアが入りました。そして事実、この異国の邂逅を契機に、材料となるヒト・レニンを含む腫瘍(しゅよう)がある大学病院から提供されるなど、私たちの研究はいっきょに進展することになり、ついに世界ではじめてヒト・レニンの全遺伝子情報を読みとることに成功したのです。

行き詰った研究からいったん離れ、息抜きをかねて海外へ出かけ、たまたまキーパーソンとなる人物に出会い、いっしょににお酒を飲んだ。そういう本道からは外れた寄り道がきっかけとなって逆転ホームランを生んだのです。すべては偶然のなせるわざかもしれませんが、それは明らかにセレンディピティ(偶然の幸運)のほほ笑みでした。

まじめ一筋で研究室の中に閉じこもり、不安や焦りに頭を抱えているだけだったら、この偶然に出会うことはなかったでしょう。

どんな分野でも、イノベーションは出会いから、それも異なる領域や分野の交流から生み出されることが少なくありません。その出会いや交流は、まず自分から動いてみないことには始まらない。したがって軽薄だといわれるくらいフットワークが軽い人のほうが伸びるのです。
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