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靖国参拝は棘か防波堤か――日中の「囚人のジレンマ」論

2024-07-28 | 04-歴史・文化・社会
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論点が多元的な靖国問題をあえて日中関係の観点だけから考えてみる。小泉純一郎首相の参拝をめぐって2つの意見がある。参拝をやめるべきだとする論者は、それを日中間の棘(とげ)と考える。棘を抜けば両国関係は改善に向かうと期待する。やめるべきでないとする論者は、参拝を中国が送り続ける大波の防波堤と考える。譲れば台湾、尖閣、ガス田、歴史教科書と次々に譲歩を迫られると心配する。


◆靖国参拝は棘か防波堤か――日中の「囚人のジレンマ」論

「風見鶏――日中『囚人のジレンマ』論」編集委員 伊奈久喜
( 2005.06.12 日経新聞(朝刊))

論点が多元的な靖国問題をあえて日中関係の観点だけから考えてみる。小泉純一郎首相の参拝をめぐって2つの意見がある。

参拝をやめるべきだとする論者は、それを日中間の棘(とげ)と考える。棘を抜けば両国関係は改善に向かうと期待する。やめるべきでないとする論者は、参拝を中国が送り続ける大波の防波堤と考える。譲れば台湾、尖閣、ガス田、歴史教科書と次々に譲歩を迫られると心配する。

中国がA級戦犯の合祀(ごうし)を理由に批判を始めたのは、中曽根康弘首相が公式参拝を決意した1985年である。A級戦犯合祀が明らかになったのは79年であり、84年までの5年間、大平正芳、鈴木善幸、そして中曽根首相が参拝し、中国は問題視しなかった。

日中関係が良かったからだろう。共通の敵ソ連があり、悪化する余裕がなかった。冷戦下の欧州での独仏和解もソ連の存在と無縁ではなかった。それが維持されているのは欧州連合(EU)の競争者になった米国の影もあるのだろう。

独仏は成熟した民主主義国である。中国は共産党支配体制だから日中と独仏は事情が違う。日韓間も98年に和解が成立した。これも北朝鮮の存在があった。北朝鮮を敵と考えない政権が韓国にでき、振り出しに戻った。

日中には共通の経済利益があるが、幸か不幸か、いま共通の敵がいない。反日の背景には現体制の内部矛盾を覆い隠そうとする意図もある。棘論、防波堤論もそれを知っている。

棘論は、だからこそ首相が参拝をやめ、対立要因を減らすべきだと考える。中国に対する一定の信頼が前提にある。防波堤論は、靖国で譲れば、ほかの対立要因でも譲歩を迫られると考える。中国に対する一定の不信が前提にある。

価値観も敵も共有しないから仮に首相参拝がなくても、台湾、尖閣、ガス田、歴史教科書、国連安保理常任理事国拡大などをめぐる日中摩擦は起きたろう。特に尖閣をめぐる対立は先鋭化する。日本国内のナショナリズムの管理は靖国の場合より難しくなる。

しかし靖国がこれらの問題に感情的要素を加えたのも事実だろう。その結果、解決は遠のき、現状が続く。中国は台湾、尖閣、日本の歴史教科書の現状に不満であり、日本はガス田、安保理問題の現状に不満を持つ。損得勘定で日中間に均衡が成立して見えれば打開への動きは出にくい。

中国が靖国へのこだわりを捨てれば防波堤論は根拠を失う。こだわれば防波堤論は勢いがつく。棘は抜けない。日本側の防波堤論はそう考える。一方、中国指導部も防波堤論であり、靖国で譲れば胡錦涛政権がもたなくなると考える。

防波堤論の衝突はゲーム理論の「囚人のジレンマ」を連想させる。ふたりの共犯容疑者が別々に取り調べを受け、例えば①双方が相手を信じて黙秘を貫けばともに2年の刑ですむ②一方が自白し、他方が黙秘すると、自白した方は1年、黙秘した方は10年の刑になる③双方が自白すればともに8年の刑になる――との理論だ。

互いに相手を信じない日中の現状は③である。棘論は相手を信頼すれば①となり双方に利益があると考えられる。しかし相手を信じて裏切られ、信じた方が損をし、裏切った方が得をするのが②である。それが嫌だから双方が相手を裏切るのが③だ。①よりは悪いが②よりましと双方が考えるからであり、双方にとって合理的判断に見える。国際政治の現実の一断面である。
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1 コメント

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はじめまして (shun@娑婆に出る)
2005-06-15 01:19:35
chorinkai さん



こんにちは。とても暖かいコメントをありがとうございます。

私も物産のディーゼル事件の記事を見ました。



実は、4月まで、にわかに就活をしてたんですが、

物産では「なんだか平謝り」な空気が充満していました。

雪印、三菱自工、物産、横河ブリッジ・・・

悪いことはどんどん続いていきますね。



そういえば、先月東京高検の方とお話しする機会があったんですが、

高検も忙しいらしく、ちょっとの不正では動けないようです。

だとすると、今回の横河は相当やりすぎたんじゃないかと・・・





小泉さんの靖国参拝も、日中韓ではホットに議論されていますが、

他の国では冷ややかに見られています。

ドイツではシュピーゲルが「日本はメンツに拘らずに、おとなしく事実を認めて、損害賠償をも考慮に入れて和解すればいい。中国は天安門で何人死んだのか明らかにしてから、日本の教科書を批判しろ。」と、かなり客観的に分析していました。



むむむ・・・と感じてしまいました。
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