電脳筆写『 心超臨界 』

何もかもが逆境に思えるとき思い出すがいい
飛行機は順風ではなく逆風に向かって離陸することを
ヘンリー・フォード

ものづくりと詩作には共通する点がある――谷川俊太郎さん

2007-03-02 | 05-真相・背景・経緯
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「究める――詩人としてしか生きられない」 谷川俊太郎氏
【詩歌・教養】 2007.01.21 日経新聞(朝刊)
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「何か言って詩じゃないことを
なんでもいいから私に言って!」

近著『詩人の墓』は詩人となることを運命づけられた男を主人公とした物語だ。男は娘に一目ぼれし、すらすらと詩を作って贈る。娘は男が詩人であることを誇りに思うが次第に言葉の裏にある空虚さに気づき、男に向かってそう叫ぶ……。

「詩人という生き方をしていると、世間と折り合いが付かないことが多い。ぼくもかつてのつれあいから、日常生活を送る上で攻撃された」

自伝的要素が含まれていることを認める。三度目の離婚の後「自分のダメなこところに気づかされた」。詩作をやめることも考えた。「それでも自分には詩を書くことしかできない」と開き直った。

二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした

有名な「二十億光年の孤独」を表題作とする最初の詩集が刊行されたのは1952年。「都会のインテリの家庭に生まれ、近くに親類縁者はいない。しかも一人っ子。自分とは何かを考え、宇宙に思いをはせる時間はたくさんあった」。詩人になったのは必然であり、それ以外の道は用意されていなかった。

以来50年を超える詩業で「俗は大事」という姿勢を貫いた。詩誌に作品を発表する一方で、流行歌の歌詞を書いたり、広告のために詩を作ったり。「自由に書いて下さいと言われるより、器があった方がやりやすい」。どんな媒体でも自分は変わらないという確固たる自信があるのだろう。歌詞を集めた近著『谷川俊太郎 歌の本』には、鋭さと親しみやすさが同居した独自の世界が広がっている。

「高校時代はラジオ作りに夢中になっていた」という詩人は、古い真空管ラジオの収集を趣味とする。ものづくりと詩作には共通する点があるという。「デビュー同時は少年の感受性だけだったが、今は職人のように様々なやり方を身につけた」。かつてのラジオ少年は繊細な感受性を失わぬまま、熟練の技で言葉を組み立てる。

(文・中村稔)

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