◆福島原発事故でも放射線の虚妄が大手を振って罷り通っている
こんな愚かなことはありません。研究者が詳細に調べた結果、原発事故で放出された放射線量は広島の原爆のそれの1千8百万分の1だということがはっきりしています。1千8百分の1ではありません。1千8百万分の1です。事実、検出される放射線量は、最も高い地域の数字を見ても、とるに足らないものです。事故をおこした原発の構内と至近の周辺を除いて、危険な地域は全くないと断言できます。
連載 第195回「歴史の教訓」――渡部昇一・上智大学名誉教授
(『致知』 2013年6月号、p128 )
放射線の虚妄はいま、さらに大手を振って罷り通っています。そうさせているのは事故を起こした原発の周辺地域住民を強制的に避難させ、いまも住民の立ち入りを禁じている、という措置から出てきます。
しかし、こんな愚かなことはありません。研究者が詳細に調べた結果、原発事故で放出された放射線量は広島の原爆のそれの1千8百万分の1だということがはっきりしています。1千8百分の1ではありません。1千8百万分の1です。事実、検出される放射線量は、最も高い地域の数字を見ても、とるに足らないものです。事故をおこした原発の構内と至近の周辺を除いて、危険な地域は全くないと断言できます。
にもかかわらず、避難地域などの指定は事故から丸2年以上を経過したいまも、そのままになっています。この影響は計り知れないものがあります。
避難している人々の苦難、復興の遅れ、といったことだけではありません。避難地域などの指定は人々の原発に対する危険視と恐怖を増大させています。その表れで、いま日本の原発は一基を除いてすべてが運転を停止した状態になっています。
しかし、電力は必要です。火力発電をフル稼働させなければなりません。そのため海外から石油や天然ガスなどの燃料を買うのに、ざっと1日に百億円を使っています。原発が稼働すれば使わなくてともいいカネが、1日に百億円も日本から出ていっているのです。誰が考えても馬鹿な話です。
メタンハイドレートなどの新しい資源の話題が浮上しています。だが、これらの新資源を実用化に漕ぎ着けるには、あと何年かかると思いますか。二、三十年はかかるでしょう。それまで一日百億円の無駄ガネをたれ流していたら、その前に日本が潰れてしまいます。
安倍首相は1千億円の防衛費増額を考えていました。しかし、財源難で渋る財務省の意向で、4百億円の増額に落ち着きました。これなども原発を停止させているための無駄ガネのたった4日分にすぎません。
一つの愚かな措置は、次から次へと愚かで誤った現象を生みます。いま重ねている愚行は、避難地域指定から始まっています。強制避難させられた若者たちのかなり多くは、故郷でないところに就職しています。福島県の空洞化は深刻です。
これは民主党政権の菅内閣が取った措置でした。反原発の菅内閣の性格をもろに表した措置です。これは野田内閣に受け継がれ、自民党政権の安倍内閣になってもまだそのままです。
安倍内閣に迫っている切実な課題はこれです。参院選の結果を待つまでもありません。避難地域などの指定を速やかに解いて、住民の帰還を促さなければなりません。そのためには、あらゆる機会を捉えて放射線の危険性と安全性について科学的事実に基づいて徹底的に説き、理解を広める必要があります。
さらに、日本の原発の安全性についても説明し、国民の理解を深めなければなりません。安全性を神話としてではなく、科学的技術的事実として説くのです。その材料は十分にあるのですから。
いますぐ、安倍内閣はこれに取り掛からなければなりません。これもまた、安倍内閣に期待する一つです。
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