巣窟日誌

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頬骨・チークボーン・cheekbones

2004-10-08 05:00:00 | 日記・エッセイ・コラム
英語の雑誌などを読んでいると、男女を問わず容姿端麗な人間の顔立ちの記述には、必ずといっていいほど、頬骨(cheekbone、でも頬骨は左右にあるので、通常は"cheekbones"と複数で扱われる)への言及がある。しかもその記述は、"high cheekbones"(高い頬骨)とか"prominent cheekbones"(突起した/目立った頬骨)である。

高い頬骨は西洋において、何世紀にもわたって美しい顔立ちの必須要件だった。いまでも、スーパーモデルと称される人たちは、少数の例外をのぞいていずれも高い頬骨の持ち主であるし、ハリウッドで活躍する俳優たちにも、高い頬骨の顔立ちが多い。

cheekbonesたとえばミラ・ジョヴォヴィッチの顔立ちを見てみよう。頬骨が高い。また、アジア人の目には美形とは感じられないかもしれないルーシー・リューも、高い頬骨の持ち主であり、彼女の場合は、いかにもアジア的なアーモンド・アイ(=almond eyes、中国人や日本人の特徴として描かれるつりあがったアーモンド形の目)やまっすぐな黒髪とあいまって、かなりエキゾチックな美女と西洋人の目には映るらしい。しかし、ハリウッド随一のチークボーンの持ち主といえば、ジョニー・デップである。西洋人がデップで思い浮かべるのは、その卓越した演技力とともに、彼の高い頬骨なのだ。

西洋のモデルや女優たちのメイクでは、頬骨が強調されるようにチークが入っている場合が多い。チークは、頬に色をつけて健康的に見せる行為である以上に、頬骨の存在を際立たせるためのもののようだ。

もちろん、西洋社会にも頬骨が出ていない人間はいる。しかし美の基準は高い頬骨だ。こうなると、女性はとりあえず(そしてときには男性も)、化粧で頬骨を目立たせることになる。シェーディング(男性のために解説すると、ブラウン系のパウダーやファンデーションなどで、影を演出すること)とハイライト(白に近い色のパウダーやファンデーションなどで高さを演出すること)は、日本では平たい顔に立体感を与えたり小顔を演出したりするテクニックとの認識であるが、西洋ではしばしば、高い頬骨とその頬骨が作る影を演出するためのものと、明確に意識されて顔に入れられる。

また、化粧でいかんともしがたい場合は、頬にインプラントを手術で埋め込むという手もあり、この手の手術を受ける人間は結構いるらしい。

頬骨が明確な美の基準になっていない日本人の場合、女性の化粧では、顔全体の立体感は意識しても、頬骨を目立たせる感覚でチークをいれることはあまりない。また頬骨についての悩みでも、「自分の頬骨が出ていていやだ」という悩みを聞くことのほうが多いような気がする。

ところでわたしは、その容姿が「タイの大仏」にたとえられた20代のころは、頬骨の存在がまったく感じられなかった。30代半ばに入って、頬の下に影がうっすらと影がでるようになった。「彫りが深くなってきたらしい、これで化粧栄えがするわ」と、ぬか喜びしていたが、何のことはない。老化で顔の輪郭が落ちてきただけのことだった。

(写真は上より、ミラ・ジョヴォヴィッチ、ルーシー・リュー、ジョニー・デップ)