巣窟日誌

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親指シフト(NICOLA):または元親指シフターの嘆き

2004-09-03 05:00:00 | 日記・エッセイ・コラム
NICOLAわたしが仕事でコンピュータを使い始めた当時は、ローマ字入力による日本語処理が不可能な機種も現役で動いていた。

ある日ついに、ローマ字入力が不可能な(おまけに、8インチのフロッピーディスクを使う)NECのコンピュータを操作することになってしまた。観念したわたしは、「はまきくはまきく」とJIS配列キーボードのかな入力の練習を始めた。(この「はまきく」とは、JISキーのかな入力で、人差し指だけを使って行なう練習である。)

今ではすべての機種でローマ字入力が可能かと思うが、それでもなお、かな入力により受けるメリットはある。打つスピードがローマ字入力よりも速くなる。要するに、ローマ字入力はかな1文字を入力するためにキーを2回打たなければならないが、かな入力だと1回で済む。その差だ。実際、わたしも2週間もすると、英文タイプじこみのローマ字入力よりも、かな入力のほうが日本語処理のスピードは速くなった。

こうして、わたしはかな入力者の仲間入りをしたのだが、速く打てるようになっても、かな入力が嫌いだった。手が疲れたからだ。JIS配列キーでは、キーボードの最上段までかなが割りふられていたり、現代の外来語混じりの日本語文でよく使われる文字が小指で打つ位置にきたりしているのが、手が疲れる理由だと思う。

JIS配列キーのかな入力は、キーが小さめのキーボードで打っている限りではそれほどは疲れなないが、往年のJスターのように、アメリカ人がアルファベットを打つことを前提に作られたキーが大きくてキータッチの硬いキーボードでは、かな入力作業が苦行と化す場合がある。(Jスター自体はローマ字入力が可能ではあるが。)

JISキーのかなの配列に頭にはきているが、ローマ字入力の遅さに辟易していたわたしは、第三の道を選んだ。「入力が速くできて、しかも疲れにくい」と評判の富士通が提唱した親指シフト(NICOLA)に走ったのである。当時、親指シフトのワープロやパソコンはかなり出回っており、それが第三の道を選んだ理由でもあった。つまり、「親指シフトの知識とスキルが、無駄になることはないだろう」と、見込んだのだ。親指シフトを選ぶことは、当時はそれほどマニアックな選択ではなかったのである。

わたしは池袋のビックカメラへ行き、富士通の親指シフトのポータブルワープロを買った。そして親指シフトの練習帳も買い、毎晩3時間の練習を始めた。1週間もすると、親指シフトブラインドタッチでのわたしの日本語入力のスピードは、JISキーのかな入力よりも速くなった。こうして親指シフター(親指シフトを使う人)となったわたしは、その当時は心から次のように信じていた。

「JISキーのかな入力はともかく、もはやローマ字入力には戻れまいよ。」

ところがその後、親指シフトを採用する機種やキーボードは次第に少なくなり、ついには見かけなくなってしまった。そしてその後の仕事で日本語よりも英語を打つことが多くなってしまったこともあって、わたしの日本語の入力は、いつのまにかローマ字入力に戻ってしまった。

親指シフトキーボードは優秀だ。日本語をバンバン打つ人にはお勧めだ。なによりもあまり疲れずに速く打てるので、思考の流れを停止させない。でも、親指シフトを使える機会が、いまではあまりにも少なすぎる。元親指シフターは、現役の親指シフターになりたいのだが。

がんばれ、親指シフト。

(写真は、親指シフト練習のために買った、富士通 OASYS 30LXのキーボード。もう使うことはないが、なぜか捨てられず部屋の片隅にある。)

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