巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

字名(あざな)と屋号

2004-09-26 03:00:00 | 日記・エッセイ・コラム
わたしの住む町(東京都板橋区西台町)には、正式な町名のほかに地区ごとに古くから字名(あざな)がついている。この字名は地図には出てこないので、古くからここに住んでいる人間以外には、わかりにくい名前だ。

もっと昔には、かなり多くの字があったらしいが、現在残っている字名は5つで、門前東(もんぜんひがし)・門前西(もんぜんにし)・京徳(きょうとく)・田畑(たばた)・堀之下(ほりのした)だ。いまでも近くの神社の秋祭りでは、この字ごとに神輿を出していると思う。わたしの住む門前東は別名を谷津(やつ)ともいう。門前とは、この辺にあるお寺の門の前という意味だ。

また、この辺に古くからある家は、屋号を持っている。わたしの母やそれ以上年配の世代の会話には、「桶屋」とか「エンキ屋」とか「先生ん家(ち)」とかいった屋号が出てくるが、わたしの世代にはすでにちんぷんかんぷんだ。この地区には同じ苗字の家が多かったので、こういう屋号を使って、家を区別していたのかもしれないが、なかには屋号の由来があまりわからないものもあるらしい。

わたしの家は「谷津(または門前)のたくわん屋」といっていただければ、この辺の古い住人にはわかる。といっても、もちろんわが家の商売はたくわん作りではない。わたしの祖父の世代までは漬物を作っていて、銀座の料亭などに卸していた。

この土地で生まれ育って43年のわたしですら、町内の屋号がほとんどわからない。ということは、近い将来消えてしまう可能性が高い。字はもう少しは長く続きそうだが、残すつもりであれば積極的に使っていかないと、屋号と同じ運命かもしれない。