映画的・絵画的・音楽的

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パイレーツ・ロック

2009年11月22日 | 洋画(09年)
 「パイレーツ・ロック」を日比谷のみゆき座で見ました。

 予告編を見て、これはきっと面白い映画に違いないと思い、期待を込めて映画館に出向きました。
 そして、実際のところも、予想にたがわず素晴らしい映画だと思いました。

 1960年代の初めころ、イギリスにはラジオ局が国営放送の一つしかなく、ポピュラー音楽がラジオから流れるのは法の規制によってごくわずかな時間。そこで法律が適用されない公海上の船からの電波にロック音楽を乗せて流すことが行われたそうで、この映画は、そうした「海賊放送局」が置かれた船の中で起きた様々な出来事を、コメディタッチで(そして幾分ミュージカル風に)描いています。

 なるべく余計な先入観は持たないようにしようとほとんど予備知識なしに映画を見たものですから、あのフィリップ・シーモア・ホフマンがDJの一人として登場した時にはあっけにとられてしまいました!
 なにしろ、このところ立て続けに彼の出演する映画(「カポ-ティ」「その土曜日、7時58分」「ダウト」など)を見、どれも素晴らしい出来栄えに仕上がっていましたから、これだけでもこの映画は成功が約束されているといえます。

 そんな彼が演じる米国人DJを含めた何人ものDJが、24時間ロック音楽をこの船から流し続けるのです。
 これに対して、政府はなんとかして規制しようとしますがうまくいきません。

 当時は、イギリスの人口の半分近くがこの放送を聞いたといわれ、映画でも密かに国民の皆がこの放送を楽しむ様子が描き出されます。
ですから、ラスト近くになって、この船が老朽化のために沈没寸前に至ると、公的な救助活動がなされないのを見越して、雲霞のごとく小さな救難船が救助に向かってくるという感動的なシーンになるのは、映画の冒頭からのお約束事になっているといえます!

 こうしたラストに行きつくまでに、途方もなくイカレたエピソードがどんどん挿入され、その間に60年代のロックの名曲が次々に流れてきますから、堪えられません!

 評論家の方々は、福本次郎氏は、「単発では笑えるシーンもあるのだが、それらが有機的に結びついて一つの物語に収束しているとは言い難い。もう少し整理して時の経過も分かりやすくするなどの工夫がないと、作り手だけが楽しんでいて見る者は置いてきぼりを食った気分になる」として40点しか与えませんが(どうして「一つの物語に収束」する必要があるのでしょうか?こういうハチャメチャな映画が嫌いなのでしょう、ならば何度も言うように見なければいいのに!)、さすが山口拓朗氏は、「お馬鹿さに笑って、お馬鹿さに泣いて、お馬鹿さにホロリと心温まる、出色のロック・エンターテインメントである」として85点をつけ、守備範囲の広い渡まち子氏も、「ディープな音楽ファンには、名曲の歌詞とストーリーのリンク度が不足で不満かもしれないが、ビートルズやストーンズを生んだ英国の音楽秘話と、ライト感覚の反骨精神を楽しみたい一般の映画ファンには文句なくお勧めだ」として70点を与えています。

 こうした映画は、DVDではなく、映画館で、それも大きな映画館で大音量の中で楽しむことをお勧めいたします。

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