映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

クリスマス・キャロル

2009年11月28日 | 洋画(09年)
 「クリスマス・キャロル」を丸の内ピカデリーで見てきました。

 ディズニー制作のアニメ映画など今更という気がしてパスしようと思っていましたが、デジタル3Dを覗いてみたいこともあって出かけてきました〔浦安のデズニーランドの中の劇場で、一度デジタル3Dを見たことがありますが、ごく短いものに過ぎませんでした〕。

 映画は、ディケンズの原作に忠実に映像化されています。クリスマス・イブの夜、守銭奴の老人スクルージは、3人の精霊に遭遇し、過去・現在・未来を経回る旅へと連れ出されます。最後に、クリスマスの日に自分に起こるであろう出来事を目の当たりにして、スクルージは、これまでの自分の行動を大いに反省し心を入れ替えます。
 マア、信仰を深めて従来の生き方を変えようと努力すれば、その未来にも光明が射すかもしれない、というのがこの映画のメッセージなのでしょうが、差し当たりそんな教訓じみた話はどうでもよく、問題となるのは、この映画がなぜ今このような形で制作されたのか、といったあたりだと思われます。

 この映画については、評論家の間で賛否両論に分かれています。
おすぎは、「映画的興奮がまったく無く、私は失望しました」と言っているところ(11月26日号の『週刊文春』のCinema Chartでも★2つです)、前田有一氏は、「古いが新しいストーリーを、最新のデジタル3D作品として映像化するあたりも心憎い。しかもこの立体加減がじつにメリハリを感じさせるもので、私が今年みた中でも一番の「飛び出し度合い」であった」などとして80点もの高得点を与えています。

 私は、前田氏の評価は的を得ておらず、どちらかと言えば「おすぎ」に近い感想を持ちましたが、要すれば、この映画で使われている最新のテクノロジーをどう見るのか、という点で差が出てくるものと思われます。

 さらに評論家にあたってみますと、岡本太陽氏は、65点しかつけていませんが、前田氏と同じように、「本作は最新技術で見せる。登場人物や町の景色が芸術的レベルで美しく、モーション・キャプチャーによる登場人物の動きもリアル。またこれだけ効果的に3Dを使った作品は今年一番と言っても過言ではな」いと述べています。渡まち子氏も、「最新デジタル技術の冴えを見せるのは、灯のような過去のクリスマスの亡霊の表現。変幻自在のその姿は幻想的だ」として60点をつけています。

 ですが、「おすぎ」が鋭く指摘しているように、この映画の呼び物の一つが、主演のジム・キャリーが一人7役をこなし、それぞれの役柄に応じて声を変えている点であるにもかかわらず、3D版の場合には、声が日本語吹替えになっているのです!
 むろん、「パフォーマンス・キャプチャー」というテクノロジーを使っていますから、7役それぞれの元の演技はジム・キャリー自身のものではあるようです。とはいえ、やはりアニメーション的要素が強い役柄(少年・青年時代のスクルージなど)の場合には、声の方が重要でしょう。

 加えて、このテクノロジーについては、「おすぎ」が、「実写でもなく、アニメーションでもなく、どこか中途半端なもの」で、「人間味みたいなものの欠如が感じられ、靴の上から足を掻くみたいな感覚が、どうしても拭えな」い、と述べているが妥当ではないかと思います。 

 それに、3Dに関して「一番の「飛び出し度合い」」と言われていますが、そして雪が降っているシーンではこちらにも雪が降っているように見えますが、大部分は、観客と離れた所が立体化されている、といった感じしか受けませんでした。
 こうなると、多額の費用をかけて3D化することにどれだけの意味があるのかと疑わしくなってしまいます。観客の方もわざわざ特殊メガネを着用しているのですから、もう少し臨場感を増して欲しいと思いました。

 ただ、「おすぎ」は、「J・キャリー、オリジナルで7人もの声を担当しているって聞いて、そっちを見るならなぁと思ってしまったのです」と述べているところからすると、この映画の「オリジナル」は3Dではなく通常の2Dのものだと考えているように思えます。要すれば、まず2D版を制作し、それに手を加えることで特別に3D版を制作していると考えているのでしょうが、果たしてそうなのかどうか、制作者側がどちらをオリジナルと考えているのか、確たることはわかりません。

 また、渡まち子氏が、「映像が全体的に予想以上におどろおどろしく、ホラー・ファンタジーのようだったのが意外。子供にとってはちょっと怖いかも…と心配になる」と述べ、また岡本太陽氏が、「本作は恐ろしい映像の連続。侮って観ると、こんなに暗くて怖い映画とは予想外という結果に。子供向けではないのは確実だ。予告編を観ると家族向けの映画の様だが、これは実はパニック・ホラー映画なのだ」と述べていますが、私にはこれらの意見はやや言い過ぎのように思えました。今時の子供がこのくらいで驚くわけはないと思われますから!


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