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映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

「皇室の名宝」展

2009年11月06日 | 美術(09年)
 先週のことになってしまいますが、「皇室の名宝―日本美の華」(御即位20年記念特別展)の「1期」が終わりを迎えるというので、慌てて東京国立博物館に行ってきました。

 今回の展示品の目玉は、なんと言っても伊藤若冲の「動物綵絵」の30幅が一挙に見られるとことでしょう。これらの絵自体は、皇居の大手門のスグ近くにある「尚蔵館」の公開時に見たことがあります(2006年)。ただ、そのときは6枚づつ5回に分けて展示されましたから、今回のように全部が一度に見渡せるというのは、またとない機会であり、それなりの意義があることではないかと思いました(ただ、2007年に、京都の相国寺の承天閣美術館で、当初置かれたとおりに「釈迦三尊像」3幅と一緒に展示されたとのこと)。

 この「動物綵絵」の中の1つに次の絵があります。



 この「紫陽花双鶏図」については、ほぼ同様のモチーフで描かれたものがあり(下図)、若冲の個人コレクターとして著名なジョー・プライス氏のコレクションに入っていて、2006年に同じ博物館で開催された「若冲と江戸絵画」展でも展示され、その際に見たことがあります。



 ところで、これらの絵で細密に描かれている紫陽花を見ると、先日見に行った山種美術館「速水御舟」展で展示されている「翠苔緑芝」(1928年)の左半隻に描かれた紫陽花に思い至ります。



 ここでも、紫陽花の花びらが一つ一つ実に細密に描かれていて、外観は異なっていても、あるいは若冲の精神に通じるところがあるのかな、と思ったりしました。展覧会の会期が接近していると、こうした楽しみ方もあるもんだと一人で悦に入っていたわけです〔雑誌『別冊太陽 速水御舟』(2009.10)に掲載されている古田亮・東京芸大准教授の論考「写実の琳派―御舟の挑戦」では、「翠苔緑芝」の紫陽花に見られるものは、「写真のように描く技術」ではなく、「いわば細部に宿る写実」であると述べられています。尤も、11月2日の記事で取り上げた『私の速水御舟』では、「この作品の部分部分を詳細に調べて何かを論じるという方法は、作者の意に背くものである」(P.109)とありますが〕!

 今回の展覧会は人が大勢集まるだろうと考え、夜8時まで開いているという金曜日に行ってみたのですが、こうした催しには目敏い人がたくさんいますから、やはりそれぞれの絵の前では黒山の人だかりで、とても30幅全体を見渡すどころの話ではありません。
 展示方法を変えるか(モット高いところに絵を掲げれば遠くからでも見ることが出来ます)、あるいは入場制限をするか(フィレンツェのウフィッツィ美術館では、常時館内に入場している人数を700人程度に抑えています:私も4時間以上美術館の外で待たされました!)、いずれにせよ何らかの対策を取るべきではないかと思いました。

 なお、今回の展覧会では、この他、岩佐又兵衛の「小栗判官絵巻」や狩野永徳の「唐獅子図屏風」も陳列されています。特に、岩佐又兵衛については、2004年に千葉市立美術館で開催された「岩佐又兵衛」展を見て以来ですから、絵巻に大きく描かれている閻魔大王を見ると随分と懐かしさを感じました。何しろ、その次の年に岩波ホールで上映されたドキュメンタリー映画「山中常磐」(自由工房)も見に行ったくらいですから!


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