孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

キング牧師「私には夢がある」演説から60年 未だいたるところに、いろんな形で存在する差別

2023-08-27 22:49:32 | 人権 児童

(【HISTORY CHANNEL】)

【アメリカ公民権運動の記念碑「私には夢がある」演説から60年】
私が子供の頃、アメリカではまだ「有色人種はお断り」「白人専用」といった張り紙が公然と店に貼られている時代でした。

1963年8月28日、「ワシントン大行進」の一環として25万人近い人々がワシントンDCに集結し、ワシントン記念塔からリンカーン記念堂まで行進しました。

デモ参加者たちは、すべての社会階層の人々が公民権を得ること、皮膚の色や出身などに関係なくあらゆる市民が平等に保護されることを求めました。

この日最後の演説者となったのがマーティン・ルーサー・キング・ジュニア博士でした。キング牧師の行った「私には夢がある」(I Have a Dream)の演説にこめられた、あらゆる民族、あらゆる出身のすべての人々に自由と民主主義を求めるメッセージは、アメリカ公民権運動の中で記念碑的な言葉として記憶されることとなりました。【AMERICAN CENTER JAPANより】

****「私には夢がある」*****
1963年8月28日  マーティン・ルーサー・キング・ジュニア

今日私は、米国史の中で、自由を求める最も偉大なデモとして歴史に残ることになるこの集会に、皆さんと共に参加できることを嬉しく思う。

100年前、ある偉大な米国民が奴隷解放宣言に署名した。今われわれは、その人を象徴する坐像の前に立っている。この極めて重大な布告は、容赦のない不正義の炎に焼かれていた何百万もの黒人奴隷たちに、大きな希望の光明として訪れた。それは捕らわれの身にあった彼らの長い夜に終止符を打つ、喜びに満ちた夜明けとして訪れたのだった。

しかし100年を経た今日、黒人は依然として自由ではない。100年を経た今日、黒人の生活は悲しいことに依然として人種隔離の手かせと人種差別の鎖によって縛られている。

100年を経た今日、黒人は物質的繁栄という広大な海の真っ只中に浮かぶ、貧困という孤島に住んでいる。100年を経た今日、黒人は依然として米国社会の片隅で惨めな暮らしを送り、自国にいながら、まるで亡命者のような生活を送っている。

そこで私たちは今日、この恥ずべき状況を 劇的に訴えるために、ここに集まったのである。(中略)

1963年は、終わりではなく始まりである。黒人はたまっていた鬱憤を晴らす必要があっただけだから、もうこれで満足するだろうと期待する人々は、米国が元の状態に戻ったならば、たたき起こされることになるだろう。

黒人に公民権が与えられるまでは、米国には安息も平穏が訪れることはない。正義の明るい日が出現するまで、反乱の旋風はこの国の土台を揺るがし続けるだろう。

しかし私には、正義の殿堂の温かな入り口に立つ同胞たちに対して言わなければならないことがある。正当な居場所を確保する過程で、われわれは不正な行為を犯してはならない。

われわれは、敵意と憎悪の杯を干すことによって、自由への渇きをいやそうとしないようにしよう。われわれは、絶えず尊厳と規律の 高い次元での闘争を展開していかなければならない。

われわれの創造的な抗議を、肉体的暴力へ堕落させてはならない。われわれは、肉体的な力に魂の力で対抗するという荘厳な高みに、何度も繰り返し上がらなければならない。

信じがたい新たな闘志が黒人社会全体を包み込んでいるが、それがすべての白人に対する不信につながることがあってはならない。

なぜなら、われわれの白人の兄弟の多くは、今日彼らがここにいることからも証明されるように、彼らの運命がわれわれの運命と結び付いていることを認識するようになったからである。また、彼らの自由がわれわれの自由と分かち難く結びついていることを認識するようになった からである。

われわれは、たった一人で歩くことはできない。
そして、歩くからには、前進あるのみということを心に誓わなければならない。引き返すことはできないのである。公民権運動に献身する人々に対して、「あなたはいつになったら満足するのか」と聞く人たちもいる。

われわれは、黒人が警察の言語に絶する恐ろしい残虐行為の犠牲者である限りは、決して満足することはできない。われわれは、旅に疲れた重い体を、道路沿いのモーテルや町のホテルで休めることを許されない限り、決して満足することはできない。
われわれは、黒人の基本的な移動の範囲が、小さなゲットーから大きなゲットーまでである限り、満足することはできない。
われわれは、われわれの子どもたちが、「白人専用」という標識によって、人格をはぎとられ尊厳を奪われている限り、決して満足することはできない。

ミシシッピ州の黒人が投票できず、ニューヨーク州の黒人が投票に値する対象ではないと考えている限り、われわれは決して満足することはできない。

そうだ、決して、われわれは満足することはできないのだ。そして、正義が河水のように流れ下り、公正が力強い急流となって流れ落ちるまで、われわれは決して満足することはないだろう。(中略)

ミシシッピ州へ帰っていこう、アラバマ州へ帰っていこう、サウスカロライナ州へ帰っていこう、ジョージア州へ帰っていこう、ルイジアナ州へ帰っていこう、そして北部の都市のスラム街やゲットーへ帰っていこう。きっとこの状況は変えることができるし、変わるだろうということを信じて。

絶望の谷間でもがくことをやめよう。友よ、今日私は皆さんに言っておきたい。われわれは今日も明日も困難に直面するが、それでも私には夢がある。それは、アメリカの夢に深く根ざした夢である。

私には夢がある。それは、いつの日か、この国が立ち上がり、「すべての人間は平等に作られているということは、自明の真実であると考える」というこの国の信条を、真の意味で実現させるという夢である。
私には夢がある。それは、いつの日か、ジョージア州の赤土の丘で、かつての奴隷の息子たちとかつての奴隷所有者の息子たちが、兄弟として同じテーブルにつくという夢である。
私には夢がある。それは、いつの日か、不正と抑圧の炎熱で焼けつかんばかりのミシシッピ州でさえ、自由と正義のオアシスに変身するという夢である。
私には夢がある。それは、いつの日か、私の4人の幼い子どもたちが、肌の色によってではなく、人格そのものによって評価される国に住むという夢である。

今日、私には夢がある。
私には夢がある。それは、邪悪な人種差別主義者たちのいる、州権優位や連邦法実施拒否を主張する州知事のいるアラバマ州でさえも、いつの日か、そのアラバマでさえ、黒人の少年少女が白人の少年少女と兄弟姉妹として手をつなげるようになるという夢である。

今日、私には夢がある。
私には夢がある。それは、いつの日か、あらゆる谷が高められ、あらゆる丘と山は低められ、でこぼこした所は平らにならされ、曲がった道がまっすぐにされ、そして神の栄光が啓示され、生きとし生けるものがその栄光を共に見ることになるという夢である。

これがわれわれの希望である。この信念を抱いて、私は南部へ戻って行く。この信念があれば、われわれは、絶望の山から希望の石を切り出すことができるだろう。
この信念があれば、われわれは、この国の騒然たる不協和音を、兄弟愛の美しい交響曲に変えることができるだろう。
この信念があれば、われわれ は、いつの日か自由になると信じて、共に働き、共に祈り、共に闘い、共に牢獄に入り、共に自由のために立ち上がることができるだろう。

まさにその日にこそ、すべての神の子たちが、新しい意味を込めて、こう歌うことができるだろう。「わが国、それはそなたのもの。うるわしき自由の地よ。そなたのために、私は歌う。わが父祖たちの逝きし大地よ。巡礼者の誇れる大地よ。あらゆる山々から、自由の鐘を鳴り響かせよう。」

そして、米国が偉大な国家たらんとするならば、この歌が現実とならなければならない。
だからこそ、ニューハンプシャーの美しい丘の上から自由の鐘を鳴り響かせよう。
ニューヨークの雄大な山々から、自由の鐘を鳴り響かせよう。
ペンシルベニアのアレゲーニー山脈の高みから、自由の鐘を鳴り響かせよう。
コロラドの雪に覆われたロッキー山脈から、自由の鐘を鳴り響かせよう。カリフォルニアのなだらかで美しい山々から、自由の鐘を鳴り響かせよう。
だが、それだけではない。ジョージアのストーン・マウンテンからも、自由の鐘を鳴り響かせよう。
テネシーのルックアウト・マウンテンからも、自由の鐘を鳴り響かせよう。
ミシシッピのあらゆる丘と塚から、自由の鐘を鳴り響かせよう。そしてあらゆる山々から自由の鐘を鳴り響かせよう。

自由の鐘を鳴り響かせよう。これが実現する時、そして自由の鐘を鳴り響かせる時、すべての村やすべての集落、あらゆる州とあらゆる町から自由の鐘を鳴り響かせる時、われわれは神の子すべてが、黒人も白人も、ユダヤ教徒もユダヤ教徒以外も、プロテスタントもカトリック教徒も、共に手をとり合って、なつかしい黒人霊歌を歌うことのできる日の到来を早めることができるだろう。

「ついに自由になった!ついに自由になった!全能の神に感謝する。われわれはついに自由になったのだ!」【AMERICAN CENTER JAPAN】
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言葉の持つ力を感じるスピーチです。
「われわれは決して満足することはできない」「私には夢がある」「自由の鐘を鳴り響かせよう」
繰り返される短いフレーズが、聴衆の心を波のように揺さぶり、高めていきます。

その後、“ジョンソン大統領による精力的な働きかけの結果、世論の高まりもあり議会も全面的に公民権法の制定に向け動き、1964年7月2日に公民権法(Civil Rights Act)が制定され、ここに長年アメリカで続いてきた法の上での人種差別は、ついに終わりを告げることになった。”【ウィキペディア】

しかし、キング牧師は1968年に暗殺され、“指導者の不在、そしてベトナム戦争下で混乱する国内情勢の影響を受けて、非暴力主義を貫いたキング牧師が代表する平和的・合法的な反差別運動から、暴力などの非合法的な手段を用いることを否定しない過激な運動(1965年に暗殺されたマルコムXの影響が強いとされる)が大きく支持を受けるなど変化していく。”【ウィキペディア】

【「この国は前進せずに後退している気がする」(キング牧師長男)】
****キング牧師演説から60年で行事 人種間融和の「夢」、道半ば****
米公民権運動の黒人指導者マーチン・ルーサー・キング牧師が1963年のワシントン大行進で行った歴史的演説から60周年を祝う行事が26日、首都ワシントンで開かれ、各地から数千人が集まった。

差別の是正は一定程度進んだが、白人と黒人の経済格差は大きいままで、人種間融和という牧師の「夢」は道半ばだ。

黒人初の下院民主党トップ、ジェフリーズ院内総務はこの日、キング牧師が「私には夢がある」と訴えたリンカーン記念堂前で演説し「私たちは長い道のりを歩んできたが、すべきことはまだある」と述べ、差別解消に向け努力を続けなくてはならないと強調した。

白人警官による黒人への暴力行為が相次ぎ、共和党のトランプ前政権下で保守化した連邦最高裁が大学入学選考で黒人らを優遇する積極的差別是正措置(アファーマティブ・アクション)を違憲と判断するなど逆風も吹いている。

牧師の長男で市民団体を率いるマーチン・ルーサー・キング3世は演説で「この国は前進せずに後退している気がする」と懸念を表明した。【8月27日 共同】
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この日を意識した犯行なのか・・・

****米フロリダ州で黒人3人が銃撃され死亡 白人の20代男の容疑者「黒人狙う」犯行声明 かぎ十字の銃も***
アメリカ南部フロリダ州の小売店で20代の白人の男が銃を乱射し、3人が死亡しました。犠牲者は3人とも黒人で、警察は「人種差別が動機」としています。

AP通信などによりますと、フロリダ州ジャクソンビルの小売チェーン店で現地26日午後、男が銃を乱射し、3人が死亡しました。現場は黒人が多く住む地域で、亡くなった3人はいずれも黒人です。

容疑者は20代前半の白人の男で、ナチス・ドイツのシンボルマーク「かぎ十字」が描かれたライフルと銃で武装していたということです。

男は、黒人への憎悪をもとに襲撃する旨を記した声明を残していて、犯行後、店内で銃を使って自殺しました。

事件があった26日は、公民権運動の黒人指導者マーチン・ルーサー・キング牧師による歴史的な演説の60周年を祝う行事が首都ワシントンであり、登壇者が有色人種に対するヘイトクライムが増加していると警鐘を鳴らしたばかりでした【8月27日 TBS NEWS DIG】
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このわずか半世紀あまりにおきた黒人やマイノリティーの権利を擁護するという大きな転換、そして今も加速する流れを考えれば、熱狂的トランプ支持者など、そうした変化を受け入れられない人々が多数出てくる・・・というのも、無理からぬところではあります。

【いたるところで、様々な形で存在する差別】
しかし、表の世界では大きな転換は起きているものの、依然として隠れた差別は存在します。
60年前、最前線で人種差別と闘っていた81歳になるジョアン・トランパウアーさんは・・・

****キング牧師「私には夢がある」演説から60年 “すべての人に対して敬意と愛を” 最前線で差別と闘った白人女性の思い****
あれから60年。キング牧師が夢見た理想の社会は実現したかを聞いてみると…

ジョアンさん
「私たちの世代で法的な差別は無くなりましたけど、隠れていた差別が今多く見られます。すべての人に対して敬意と愛を持たないといけませんね」【8月27日 TBS NEWS DIG】
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差別はアメリカだけでなく、人種間だけでなく、日本を含めた、自分自身の周囲を含めたいたるところで、様々な形で、ときに公然と、ときに隠れた形で存在します。

****タリバン、美しい湖連なる「バンデ・アミール国立公園」への女性の立ち入り禁じる****
アフガニスタンのイスラム主義勢力タリバン暫定政権は26日、中部バーミヤン州にあるバンデ・アミール国立公園への女性の立ち入りを禁止すると発表した。本紙通信員によると、同州を訪れていたモハンマド・ハリド・ハナフィ勧善懲悪相が演説で明らかにした。

2021年8月に実権を掌握したタリバン暫定政権は、女性抑圧政策を次々と進めている。標高約3000メートルにあるバンデ・アミール国立公園は、美しい湖が連なり、アフガン人にも人気の観光地。

最近、国立公園で男女が一緒に楽しんでいる様子がインターネット上で紹介され、タリバンが問題視したという。【8月27日 読売】
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****小学校教師、教え子にイスラム教徒の男児をたたかせる インド****
インド当局は26日、小学校教師がイスラム教徒の男児を順番にたたくよう教え子に指示した事件を受け、捜査に乗り出した。事件の映像はインターネットで出回り、怒りの声が広がっている。

事件は24日、ウッタルプラデシュ州の私立小学校で発生。映像には、教師が表向きは掛け算を間違えたことを理由に、7歳の男子児童をたたくよう他の児童に指示する様子が映っている。

教師は泣きながら立つ男児を横目に他の児童に対し、「どうしてそんなに軽くたたくの? もっと強くたたいて」と命じた。
さらには「顔は赤くなっているから、代わりに腰をたたいて」と指示した。

警察のサティヤナラヤン・プラジャパット警視はソーシャルメディアに投稿した動画で、映像について検証済みだとして、この教師に対して当局が措置を講じると述べた。
治安判事によると、男児の父親がムザファルナガル地区の警察に告訴した。

この生々しい映像を受け、インターネット上では失望の声が広がった。野党・国民会議派のラフル・ガンジー氏は、がヒンズー教徒が多数派であるインドで、与党・インド人民党が宗教的不寛容をあおっていると非難した。

人権団体は、ヒンズー至上主義を掲げるナレンドラ・モディ首相が2014年に就任して以降、少数派のイスラム教徒に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)や暴力が増加したと指摘している。 【8月27日 AFP】
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****イスラエル閣僚、入植者の権利主張し物議 首相は擁護****
イスラエルのイタマル・ベングビール公共治安相が占領地ヨルダン川西岸におけるユダヤ人入植者の権利を声高に主張し、物議を醸している。そうした中、25日にはベンヤミン・ネタニヤフ首相がベングビール氏に支持を表明し、火に油を注いだ格好となっている。

人種差別主義者のベングビール氏は23日、国営テレビで、「ユダヤ・サマリア地区(ヨルダン川西岸の意)の通りを私や妻子が行き来できる権利は、アラブ人の移動の自由よりも重要だ」と述べ、パレスチナ人を対象とした移動制限措置を正当化する立場を示した。

これを受け、パレスチナ系米国人のスーパーモデル、ベラ・ハディッドさんはインスタグラムに非難するコメントを投稿。ベングビール氏もXで、ハディッドさんは「イスラエル嫌い」だと反論した。

一方、ネタニヤフ首相は声明で「ユダヤ・サマリア地区における移動の自由についてはイスラエル人にもパレスチナ人にも最大限認めている」と指摘。「不幸なことにパレスチナ人テロリストがこうした移動の自由に付け込んでイスラエルの女性や子ども、その家族を殺害している」とし、ベングビール氏を擁護した。 【8月27日 AFP】
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