(【Netflix(ネットフリックス)配信のデンマークTVドラマ「コペンハーゲン/首相の決断」】 左女性がデンマーク首相、右男性がグリーンランド自治政府首相)
【グリーンランド 「若者の自殺は何も誇れないせいだ」】
Netflix(ネットフリックス)で配信されているデンマークのTVドラマに「コペンハーゲン/首相の決断」という作品があります。
予想外の展開でデンマーク初の女性首相となった架空の政治家とその周囲の人々の政治的駆け引きや私生活の葛藤を描くもので、“全世界70か国以上で放送されている大人気ドラマとなり、デンマークを代表する政治ドラマとなった。様々な国々でリメイクが予定されている。”【ウイキペディア】と世界的に好評のようです。
連立政権を支える与党、野党、外国政府、更にマスメディアの間で繰り広げられる生々しい政治的駆け引き、主人公の信念を貫きたい思いと現実の葛藤など、また、多忙な女性首相と家庭内の妻・母親という立場の両立に苦しむ主人公・・・といったあたりがメインテーマになりますが、その中にグリーンランドにある米軍基地を舞台にしたアメリカとの間の政治問題が発生し、その状況をグリーンランド自治政府首相に説明する場面があります。
多忙の中、デンマーク首相のグリーンランド訪問、彼女としては最大限の誠意を示したつもり。しかし自治政府首相との会談は1時間。
周知のようにグリーンランドはデンマーク領です。
“かつてはデンマークの植民地で、現在はデンマーク本土やフェロー諸島と対等の立場でデンマーク王国を構成しており、独自の自治政府が置かれている”【ウィキペディア】
しかし、政治的現実にあってはグリーンランド自治政府・住民の声はあまりデンマーク中央には届いていない・・・というのは容易に想像できるところです。
グリーンランドを訪れた主人公のデンマーク女性首相とグリーンランド自治政府首相がグリーンランドの現状をめぐって言い争いになります。
デンマーク首相「あなたたちに非はないの?」
グリーンランド自治政府首相「支配されている方が悪いと?」
デンマーク首相「状況を悪化させているのはあなたがた。縁故採用、汚職、初等教育が十分に行われず、高校中退率が4割を超える・・・」
グリーンランド首相「改善を試みている」
デンマーク首相は「本当? 氷が融けて石油が出るのを待っているだけじゃないの?」
「何様のつもりだ!」 怒りを爆発せたグリーンランド自治政府首相は「せめて1日あれば状況を見せられるのに・・・」と悔やむ。そこで主人公は1時間の会談予定を急遽変更し、1日かけて島内を視察することに。
グリーンランド自治政府首相は住民の暮らしぶりを見せた最後に墓地に首相を案内する。そこには自殺した若者が眠っている。
グリーンランド自治政府首相「一番の問題は住民の苦しみだ。 出生率は減少、若者は出ていく。更に自殺率が増える一方だ。特に若者が命を立つ。5人に一人が自殺を試みる。最悪の世界記録だ。」
デンマーク首相「理由は何だと?」
グリーンランド自治政府首相「若者の自殺は何も誇れないせいだ」
中央政府とグリーンランドの関係性、氷と雪に覆われた島の暮らしの現状、温暖化で石油・資源活用の可能性も・・・印象的な場面でした。私はまだ観ていませんが、グリーンランドの石油採掘はドラマ後半で再び問題になるようです。
【失われつつあるコミュニティで生き延びようと必死に悲鳴をあげる先住民】
****北欧で先住民は未だに抑圧されている サーミとイヌイットの尊厳を取り戻せ****
「先住民」を主題とした映画の公開が北欧で相次いでいる。デンマーク・グリーンランド・カナダ合作の『Twice Colonized』(2023)はイヌイットの基本的な人権を求めて闘う活動家のドキュメンタリー映画だ。
アーユ・ピーターはグリーンランドで遊牧民のイヌイット一家で育った弁護士・活動家だ。幼い頃にグリーンランドの家族から引き離されデンマークに送られ、言葉も文化的帰属も失った。成人後はカナダの北極圏に移り住み、イヌイットの植民地化を経験した。
映画タイトルにもあるように「二度、植民地化された」自らの体験に基づき、孫や未来の世代のためにより良い世界を作りたいと彼女は活動している。
植民地主義的な構造は今も先住民の暮らしやメンタルヘルスに影響を与えており、彼女の息子も突然命を絶った。自ら命を絶つ若者が絶えない背景には抑圧されてきた歴史がある。
苦しみの連鎖が孫の世代で減るように、アーユ・ピーターは先住民の権利と可視性のために闘うことに人生を捧げている。本作では先住民のための常設のEUフォーラムを作ろうと奮闘する姿を見ることになる。これは先住民の権利を取り戻そうと闘いながら、白人社会と同化されたことによって傷ついたピーター自身の傷を癒す旅でもあるのだ。
エッラ・マリエ・ヘッタ・イサクセンは環境保護とサーミの権利のための闘いにおけるノルウェーでは有名な女性だ。筆者は彼女を「ノルウェーのグレタ」と讃えたいほど、今革命を起こしている。
サーミ人はノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアの先住民族だ。ノルウェーでは「劣った民族」として再教育が必要だとされ、1800年代の同化政策により、子どもは親から引き離され、寄宿学校で強制的にノルウェー語を勉強させられた。
サーミ語を話すことを禁じられ、サーミ人であることは「恥」であると教えられ、アイデンティティを奪った抑圧政策。その影響ともたらされた低い自己肯定感は、現代のサーミ人にも受け継がれている。低い身長などの「外見差別」も受け、カラフルな民族衣装を着ていると冷たい眼差しを浴びせられ続けた。
ノルウェーのドキュメンタリー映画『RAHCAN - Ellas oppror』(2022)では、フィンマルクのレッパルフィヨルドでの鉱山投棄に反対するサーミ人と地元の環境団体の活動を追っている。音楽、愛、連帯がどこまで人や自然を救えるかという物語でもある。(
自国の抑圧の歴史を反省する動き
ノルウェーの映画祭Oslo Pixには「北欧映画」「ドキュメンタリー」などの複数のカテゴリーがあり、両作品とも「先住民族」というカテゴリーに振り分けられている。そもそも、日本では映画祭などで「先住民族」や自国の歴史の反省にフォーカスすることがあるだろうか。
グリーン・コロニアリズム という現代の植民地支配
両作品にはいくつもの共通点がある。サーミ人はトナカイ放牧やサーモン漁業を生活の糧としてきたが、ノルウェー政府によるトナカイの放牧数の規制、養殖サーモンの発展で生態系が変わり、野生サーモンが減少するなど、サーミの従来の仕事の場は失われつつある。
石油・ガス採掘の国から再生可能エネルギーの国に移行したい政府の意向に対して、風力発電の促進による風車の増加はトナカイ放牧を難しくさせている。
再生可能エネルギーなどの活動によって、すでに社会から疎外されている先住民のようなコミュニティが犠牲になる「グリーン・コロニアリズム」は大きな問題となっている。
イヌイットの経済は、毛皮の取引で長い間支えられてきた。しかし欧州による規制とアザラシの殺害が残酷だとする環境活動家たちの反対により、漁師の歴史とコミュニティの維持ができなくなっている。
欧州と環境活動家の規制と反対運動が、いかにイヌイットの生きる手段を奪っているかをアーユ・ピーターが国際社会で訴え続ける姿が本作では描かれている。
「あなたたちは私たちの土地もアイデンティティも可能な限り全てを奪ってきた。身勝手な理由の押し付けで、収入源や土地をさらに奪おうというのか。いい加減にして」という怒りが両作品からは伝わってくる。
親子の時間と言葉を奪うという残酷な「おせっかい」
両方の先住民に対して、ノルウェーやデンマークがしてきたことは「劣った民族のあなたたちを教育してあげる」というおせっかいと傲慢さの押し付けだ。
かつて親と子どもを引き離し、白人の言葉を無理やり教え、母国語を奪った歴史は、今の世代のアイデンティティにも大きな影響を与えている。
「言葉を奪われることはアイデンティティを失う」ことだとエッラ・マリエ・ヘッタ・イサクセンは言い続けており、彼女のバンドISAKでもサーミ語で歌っている。
アーユ・ピーターもデンマーク語を話すことを嫌がり、英語に切り替える場面が映画には登場する。デンマーク語を話すことで自らを失っているようなアイデンティティ・クライシスに陥っていた。
北欧の福祉制度の網から抜け落ちる先住民
北欧社会はかつて親から子どもを引き離して子どもを再教育した。先住民として背負う抑圧のルーツ、恥として教えられた血筋、社会に見つけられない自分の居場所。
北欧では福祉制度が豊かと言われているが、先住民の言葉や悩みを理解する医療従事者やカウンセラーは少ない。そのため先住民は現地の人と同じようには福祉制度を利用できておらず、若い世代ではメンタルヘルスの悪化で特に男性の自殺が絶えない。アーユ・ピーターのように子どもの死を嘆く親は今もおり、抑圧の歴史は今も親と子を引き離しているのだ。
北欧で先住民が受けてきた抑圧の歴史、そして今も続いている抑圧の遺産を知れば知るほど、人間と言うのはいかに残酷で身勝手なのかを再認識させられる。過去の反省から対話で歩み寄ろうとする現代社会と、同時に経済発展や動物愛護の観点でぶつかる両者の主張。
共存の道を今も悩みながら探っているが、失われつつあるコミュニティで生き延びようと必死に悲鳴をあげる先住民の姿を見ていると、人類はいったい何をやっているのだと、困惑と悲しみを筆者は感じるのだ。【9月4日 鐙麻樹氏 YAHOO!ニュース】
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【グリーンランド議会 独自憲法制定の動き】
かつてはグリーンランドはデンマークにとっては単なる氷と雪に覆われた島に過ぎなかったでしょうが、温暖化で石油などの資源活用が現実になってきていますし、ロシアをめぐる地政学的重要性も高まっています。
そうした状況でグリーンランド自身はどこを目指すのか?
****グリーンランド議会、憲法草案めぐり第1読会****
デンマーク領グリーンランドの自治議会は28日、憲法草案をめぐる第1読会を開いた。独自憲法の制定は、将来の独立交渉に際し、よりどころとなるものだ。
憲法草案は、憲法制定委員会が4年かけて起草。グリーンランド語で書かれており、49段落で構成されている。
グリーンランドの人口は約5万5000人。1979年に広範な自治権を獲得した。独自の旗、言語、文化、自治政府機関を有する。ただ、域内総生産の4分の1、予算の半分以上をデンマークからの補助金に依存している。
2009年に施行された自治政府法の下、権限はさらに拡大したが、通貨の発行、司法制度、外交・安全保障などの分野は依然、デンマークが担っている。地元メディアによると、憲法草案には、グリーンランド独自のパスポートの発給、司法権限をどうするかといった点については明記されていない。
王室に関する言及もなかった。デンマークの元首である女王もしくは王を引き続き元首としていただくのか、未解決の問題として残されている。
デンマーク国際問題研究所のウルリック・プラム・ガド研究員はAFPに、「(憲法草案は)現時点ではグリーンランド内の問題を扱っている。デンマークとの交渉が始まり、それを担当する政治家が決まった段階で、デンマークとの関係も浮上してくるだろう」と語った。 【4月29日 AFP】
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【過去に対する謝罪はあるものの・・・】
最近になってカナダやオーストラリア政府は先住民に対して過去の歴史を謝罪するようになっています。
教会も。
****ローマ教皇が謝罪=先住民虐待問題―カナダ****
フランシスコ・ローマ教皇は25日、訪問先のカナダで演説し、カトリック教会が運営していた寄宿学校で先住民の子供が虐待を受けていた問題をめぐり「先住民の人々に対する多くのキリスト教徒による悪行について、謙虚に許しを請う」と述べ、謝罪した。
教皇はこの日、カナダ国内で最大級の寄宿学校があった西部アルバータ州エドモントン南方の跡地を訪問。先住民の墓地で祈りをささげた後、演説会場に移動し、寄宿学校の元生徒や羽根の頭飾りなど伝統衣装を身にまとった多くの先住民らから、歌や踊りでの歓迎を受けた。
教皇はその後の演説で「許しを請い、後悔の念を伝える『悔悟の巡礼』の第一歩としてここにいる」と宣言。寄宿学校での「文化の破壊と強制的な同化計画」に関与したとして「深くおわびする」と語ると、会場に集まった人々から拍手が湧き起こった。
カナダでは19〜20世紀、政府による同化政策の一環として、15万人以上の先住民の子供が親元から引き離され、寄宿学校に送られた。現地の言葉を話して暴行を受けるなど、学校では暴力や病気がまん延し、数千人が亡くなったとされる。寄宿学校の約7割をカトリック教会が運営していた。【2022年7月26日 時事】
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ただ、現在の先住民の暮らしはなかなか好転していないようにも見えます。
ブラジルでは・・・
****ブラジル最高裁 アマゾン先住民の土地の権利を保護する判決 違法採掘や開発相次ぎ****
ブラジルのアマゾンで暮らす先住民などが昔からの土地の所有を認めるよう訴えていた裁判で、最高裁判所が訴えを認め、先住民の権利を保護する判決を下しました。
ブラジルのボルソナロ前大統領はアマゾン先住民の土地の所有権について、1988年の新憲法公布までに申告したものに制限しようとしていました。
アマゾンの土地開発や農業ビジネスなどを擁護する一方で、先住民の権利が制限される内容だったため、裁判となっていました。
最高裁は21日、判事11人が投票を行い、うち9人が「憲法が保障する先住民の権利に反する」と違憲の判決を下しました。
画期的な判決に、先住民は昔ながらの格好で踊ったり、涙を流して抱き合ったりと喜びを分かち合いました。
アマゾン地域ではブラジルの発展に伴い、土地の収奪や水銀汚染をもたらす違法な採掘などが先住民の暮らしを脅かしています。【9月24日 テレ朝news】
ブラジルのボルソナロ前大統領はアマゾン先住民の土地の所有権について、1988年の新憲法公布までに申告したものに制限しようとしていました。
アマゾンの土地開発や農業ビジネスなどを擁護する一方で、先住民の権利が制限される内容だったため、裁判となっていました。
最高裁は21日、判事11人が投票を行い、うち9人が「憲法が保障する先住民の権利に反する」と違憲の判決を下しました。
画期的な判決に、先住民は昔ながらの格好で踊ったり、涙を流して抱き合ったりと喜びを分かち合いました。
アマゾン地域ではブラジルの発展に伴い、土地の収奪や水銀汚染をもたらす違法な採掘などが先住民の暮らしを脅かしています。【9月24日 テレ朝news】
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【オーストラリア 先住民の地位を憲法に明記する改憲案の国民投票 反対派が優勢】
一方、オーストラリアでは6月21日ブログ“オーストラリア 先住民アボリジニの地位を憲法に明記する改憲案を発議 野党は反対”で取り上げた、先住民アボリジニの地位を憲法に明記する改憲案の国民投票が14日に行われますが、当初は賛成が多かったのですが、時間を追うごとに反対が増加しています。
****改憲巡り期日前投票開始=先住民地位、反対が優勢―豪****
オーストラリアで2日、先住民の地位確立に向けた憲法改正の是非を問う国民投票の期日前投票が一部地域で始まった。14日に投開票が迫る中、世論調査では反対が優勢となっている。
改憲案は、アボリジニなど先住民を「最初の豪州人」と明記し、議会や政府に意見具申できる代表機関を創設するという内容。期日前投票はビクトリアなど3州と北部準州で2日に始まり、ニューサウスウェールズなど残る3州と首都キャンベラでも3日から行われる。【10月2日 時事】
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改憲案は先住民アボリジニとトレス海峡諸島民を「最初の豪州人」と認め、議会や政府に意見具申できる代表機関を創設するという内容。
野党・自由党など反対勢力は「一部国民に特権を与え、分断を招く」と批判しており、反対意見の伸長につながったもようです。
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