孤帆の遠影碧空に尽き

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児童婚  新型コロナパンデミックで増加 インド・アッサム州で一斉摘発 新たな悲劇も 背景は?

2023-03-07 23:07:14 | 人権 児童

(2023年2月5日/インド、北東部アッサム州、児童婚で逮捕された男性と警察官(ロイター通信)【2月7日 KWP News】)

【アメリカ 児童労働増加 取締り強化】
児童に関する問題は、主にアフリカ・アジアなどの途上国やイスラム世界、インドなどの問題のようにも思われますが、アメリカでも児童労働が増加しているとのこと。

****米政府が児童労働取り締まり強化へ、実態調査や罰金引き上げなど****
バイデン米政権は27日、児童労働の取り締まり強化に向け、一連の措置を講じていることを明らかにした。

複数の政府高官によると、労働省が2018年以降に把握した児童労働を巡る違反行為は70%近くも増加。昨年度だけでも835社で法律違反が見つかった。

こうした中で政権は個別のケースとして、有名スナック菓子などのパッケージ製造を手がけるハースサイド・フード・ソリューションズと、現代自動車のサプライヤーなどでの児童雇用の実態調査を進めている。

また既に児童労働問題に関する省庁横断型作業チームを立ち上げ、今後は最も違反が起こりやすそうな業界への調査を計画中。さらに児童労働関連法違反に対する罰金引き上げや、法執行・監視向け予算増額も目指す。

ある高官は「これは19世紀でも20世紀でもなく、現在発生している問題だ。われわれは米国中でそもそも雇うべきではない状況で児童が働かされている状況を目にしている」と強調した。

米国の法律では、16歳未満はほとんどの工場施設で働くことが禁じられている。18歳未満も工場内での危険な作業の大半に従事させてはならない。【2月28日 ロイター】
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【新型コロナパンデミックで増加した児童婚】
児童労働と並んで問題になるのが児童婚

****パキスタンは児童婚の廃絶を 国連専門家****
国連の人権問題の専門家は16日、パキスタンの宗教的少数派の間で、女児の拉致や強制結婚、改宗が横行しているとの報告を非難するとともに、政府に対しこうした慣行を直ちに廃絶し、徹底的な調査を行うよう求めた。

専門家らは「13歳の少女が家族から引き離され、遠く離れた場所で売られ、時には2倍も年が離れた男性と結婚させられ、イスラム教に改宗するよう強制されていると知り、心を痛めている」としている。

人権問題の専門家である特別報告者は国連人権理事会によって任命されるが、同理事会を代表する立場にはない。

専門家らは、パキスタンの司法当局も警察も「まともな捜査を行わず、偽りの証拠を受け入れる」ことで宗教的少数派の少女や若い女性への違法行為を野放しにしていると指摘。

「家族によれば、被害を訴えても警察はほとんど取り合わず、被害届を受理しないか、拉致され結婚を強制されているにもかかわらず、『恋愛結婚』と決め付け犯罪と見なしていない」と非難した。

さらに、実態調査は「客観的に国内法および国際的な人権問題への取り組みに沿って」行われるべきだと強調した。 【1月17日 AFP】AFPBB News
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もちろん、こうした問題はパキスタンに限った話ではありません。(と言うか、国連がなぜパキスタンを取り上げたのか・・・そこが不思議でもありますが)

児童婚は多くの国で法律上は禁じられていますが、実際には伝統的風習によって・・・という世界です。
加えて、近年は新型コロナの影響で少女・若者が学校に通えなくなったことによって増加しているとも。

下記はアフリカ・ケニアの事例

*****新型コロナで学校閉鎖、「意図しない妊娠」・・・結婚へ ケニアの事例*****
ケニア南部カジアド郡にあるNGO「ナイス・プレイス財団」の保護施設の一室で、少女が赤子を抱いていた。チャリティと名乗るマサイ族の少女は赤子の姉にしか見えなかった。

チャリティさんが16歳で男児を出産したのは2021年末のこと。問題はその後に起きた。児童婚(18歳未満での結婚)は違法だが、伝統的な価値観に生きる父親が、知らない男に嫁がせようとしたのだ。

チャリティさんの実母は彼女がまだ10歳のころに亡くなり、その後は一夫多妻制に生きるマサイの父と、3人の義理の母のもとで暮らした。

生活が大きく変わったのは、20年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大だった。ケニアでは同年3月~翌21年1月、ほとんどの学校が閉鎖された。

ケニア大統領政策・戦略ユニットの報告書によると、学校再開時に復学できなかった少女は推計約25万人。最大の要因は保護者が学費を支払えなくなったこと、続く要因は意図しない妊娠だった。パンデミックが始まった1年で計32万8千人超の少女が妊娠した。

この報告書によると、ケニアでは15~19歳の女性の2~4%が結婚しており、妊娠をきっかけとするケースが4割以上を占める。結婚時期は約3割が新型コロナの発生以降だった。学校閉鎖中、時間をもてあました若者が性交渉をする機会が増えたことなどで妊娠が増えたとみられる。

チャリティさんも、近所に住む年上の少年に求められ、断れずに一度だけ性交渉に応じてしまった。そして、妊娠した。「初めての経験で、妊娠するなんて思いもよらなかった」

妊娠を知った父は、夫探しを始めた。一夫多妻のマサイの文化では、年配である程度経済的余裕がある人が若い女性を新たに妻に迎えることは珍しくない。父親が見つけてきた夫候補も初老の男性だった。(後略)【2月27日 日系メディア】
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新型コロナの児童婚への影響は、学校へ通えず、時間を持て余し、結果的に「意図せざる妊娠」に至る上記のようなケースの他、学校に行けないのであれば結婚を・・・と、親によって強制的・人身売買的に結婚を迫られるケースもあるでしょう。

【インド・アッサム州 一斉摘発 残された女児の悲劇も イスラム教徒狙い撃ちとの批判も】
インドでも法律上は結婚年齢は18歳以上ですが、昔から児童婚の「悪習」が続いています。

****インドで児童婚取り締まり開始、初日に2044人逮捕****
インド北東部アッサム州で3日、児童婚の取り締まりが開始され、2044人が逮捕された。警察が明らかにした。
ヒマンタ・ビスワ・サルマ州首相は、児童婚を「悪習」と呼び、州民に廃絶への協力を呼び掛けている。

サルマ氏によると、アッサム州の女性のおよそ8人に1人は18歳未満での出産を強いられており、乳児および妊産婦の死亡率を押し上げている。

同州のGP・シン警察長官は、初日に逮捕した2044人のうち52人は結婚を取り仕切った聖職者や司法当局者だったと説明。州内では、12歳で今も婚姻状態にある子もおり、4074件について捜査するという。

インドでは18歳にならなければ結婚できないが、貧しい農村部を中心に大勢の子どもがそれよりも幼い年齢で結婚させられている。

多くの親は経済的な安定を確保するために子どもを結婚させ、その結果、少女が夫に尽くして家事をするために学校を中退し、幼すぎる出産で健康を害するといった悲惨な事態を招いている。

国連の統計によると、インドでは2億2000万人の女児が結婚させられているが、児童婚の件数は今世紀に入って急減している。

インド最高裁は2017年、未成年の妻との性行為はレイプに当たるとする画期的な判決を下した。 【2月4日 AFP】****************

インド・アッサム州が摘発・取締りに乗り出した理由は知りませんが、この問題は女児と結婚した男性を逮捕すればいいというものでもありません。

適切なケア・フォローがなければ、子供を抱えた女児が収入も途絶し世間に放り出されるという新たな悲劇にもなりかねません。

****違法児童婚の摘発進めるインド、新たな貧困生む悲劇も****
インド北東部アッサム州ナガオン県の村、ラダナガーに暮らすピンク・ダス・サーカーさんは、まだ15歳。だが、既に赤ちゃんを身ごもっている。それなのに、一家の稼ぎ手である26歳の夫が2月2日に児童婚の容疑で逮捕され、途方に暮れる毎日だ。

今年2月にアッサム州で行われた当局の一斉摘発では、男性や宗教関係者ら3000人余りが児童婚を禁止する法律に違反した容疑で身柄を拘束された。

「夜の11時でした。寝ようとしていたら警官4人がやって来て、夫を引っ立てていきました。何が起きたのは分からなかった。夜通し泣いていました」とサーカーさん。家計は夫が荷車で売るサトウキビジュースからのわずかな収入が頼み。「どうしたらいいのか全く分からない」と述べていた。

インドでは、18歳未満の結婚が法律で禁止されている。しかし、実際にはこの年齢に達しない児童婚が珍しくない。

2019―21年のデータによると、18歳未満で結婚した女性は全体の約4分の1に上る。ただ、この比率は05―06年の47%から低下しており、近年は児童婚を減らす取り組みが大きく進展している。

女性の権利保護を訴える団体によると、未成年の女性の教育機会の改善や、早婚の慣習が文化的に受け入れられているコミュニティーでの意識向上に向けた取り組みが効果を上げた。

警察が児童婚の摘発に動くことは少なく、最新の公式統計によると、21年にインド全土で児童婚を手配、あるいは児童婚を行ったとして逮捕されたのは2000人弱に過ぎない。

一方、アッサム州の児童婚摘発は、女性保護や反貧困に取り組む団体から非難も受けている。経済的な理由から未成年の娘を結婚させた貧しい家庭を不当に罰し、多くの家庭が重要な稼ぎ手を失うというのが理由だ。

非営利団体HAQセンター・フォー・チャイルト・ライツの共同創設者であるエナクシ・ガングリー氏は「元々貧しい人々を犯罪者にしてしまい、社会的な問題への最善の対処方法ではない。若い妊娠中の少女たちは稼ぎ頭を失い、寄る辺ないまま放置されている」と訴える。

女性の権利保護に取り組む活動家らは、州都グワーハーティーの高等裁判所に嘆願書を提出。取り締まりを行う代わりに未成年女性の性と生殖に関する情報や教育へのアクセスを改善し、児童婚の防止を支援するよう求めた。

<無一文>
サーカーさんの自宅からほど近くに住むグルソナ・ベグムさんは結婚からわずか2週間後の2月7日、警備員として働いていた夫が警察に身柄を拘束された。一家は無一文の状態に陥り、先の見通しが立たなくなった。

「義父は体に障害があり、夫が刑務所にいる今、どこからも収入がない」という。

ベグムさんは、自分は18歳だと主張した。しかし、警察によると彼女は18歳未満で、年齢を証明する文書はない。

「夫は逮捕されたのだから、職を失うでしょう。今は近所の人や親戚の助けでなんとか食べているけれど、先のことは分からない」と不安な気持ちを隠さない。

村の住民によると、逮捕を恐れた男性数人が、10代の妻を残して近隣の州へ逃亡した。

アッサム州のヒマンタ・ビスワ・サルマ州首相は2月28日の記者会見で、警察による摘発開始以来、児童婚の報告はないと述べ、取り締まりを擁護する姿勢を示した。これまでに3047人が拘束され、そのうち251人は保釈が認められたという。

一方、今回の摘発では州人口3400万人の約3分の1を占めるイスラム教徒が狙い撃ちされているのではないか、との疑惑も浮上している。弁護士のタニヤ・スルタナ・ラスカール氏によると、イスラム教徒が多く住む地区で多数の逮捕者が出ている。

サルマ氏はヒンドゥー至上主義を掲げるモディ政権与党、インド人民党の有力者だが、摘発において対象者の信仰は関係なかったと主張した。

<複数の家族の支えに>
ラダナガー村に住むサーカーさんの義父は息子が逮捕され、両家双方のためになると思って結婚を勧めた判断に疑問を感じざるを得なくなった。「サーカーの母親は家事手伝いをしていて、若くして夫を亡くした。私が妻を失ってから、家には女性がいなくなった。だから(自分の息子とサーカーさんの)結婚が2つの家の問題を解決する方法だと思った」と言う。

「児童婚が良くないことは分かっているし、サーカーが一日中悲しんでいるのを見ると、今は無力感に襲われている。この年になれば、なかなか仕事はもらえない。子どもが生まれたらどうなるのか心配だ」と嘆く。

サーカーさんは、今は病院通いなどで近所の人の手助けを受けている。しかし、夫がいない寂しさはどうしもうようない。「夫の存在は私の支えでした。彼は私の力(の源)です」と言い切った。【3月5日 ロイター】
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“イスラム教徒が狙い撃ちされている”・・・ヒンドゥー至上主義を掲げ、イスラム教徒の人口増加を懸念するモディ政権のもとでは“あり得る”話でようにも思えます。

****印アッサム州で児童婚一斉取り締まりに抗議するデモ****
インド北東部アッサム州で児童婚の一斉取り締まりに反対するデモが行われ、夫を逮捕された女性数百人が参加した。

州警察は3日以降の取り締まりで2400人以上を逮捕。4000件以上の刑事事件を捜査し、その対象は8000人以上にのぼる。逮捕者の中には児童婚を取り仕切ったとされるヒンズーおよびイスラム教の司祭も含まれている。

野党議員はこの取り締まりを「茶番」と呼び、イスラム教徒が不当に狙われていると主張した。
ンドの結婚可能年齢は女性が18歳、男性は21歳である。しかし、多くの女性がそれ以下での結婚を強いられ、妊産婦の事故率を押し上げている。

アッサム州政府は児童婚を犯罪と糾弾し、法律に基づいて取り締まりを行っていると反論した。
連邦政府の統計によると、既婚女性の2割以上が18歳未満で結婚している。国会は現在、女性の結婚可能年齢を21歳に引き上げる法案を検討している。

しかし、シャリア(イスラム法)は「少女は思春期になれば結婚できる」と定めている。国会の女性委員会はイスラム教徒を含むすべてのインド国民に法律に従うよう求め、最高裁に提訴している。

3日に取り締まりが始まって以来、州警察本部の前では抗議デモが続いている。
地元メディアは抗議に参加した女性の話を引用し、「稼ぎ頭が逮捕され、多くの女性と子供が路頭に迷っている」と報じた。

州政府は影響を受けた女性に支援を提供すると約束したが、不満解消には至っていない。
ある女性は現地紙インディアン・エクスプレスに、「これからどうやって生活していけと?」と憤慨した様子で語った。「私は夫に完全に依存しています...」

別の女性は初等教育しか受けておらず、法的支援を受ける方法がわからないと訴えた。

タイムズ・オブ・インディア紙によると、警察は4日、州警察本部前に集まったデモ隊に催涙ガス弾を撃ち込み、解散させたという。

州警察は「14歳以下の少女と結婚した容疑者は児童性犯罪防止法で起訴される」と警告している。
14~18歳の少女と結婚した者は児童婚禁止法に基づいて逮捕・起訴される。有罪判決を受けた者は2年以下の禁固刑と罰金刑に処される。児童性犯罪防止法はこれよりさらに厳しい刑罰を規定している。

州政府は声明の中で、「児童婚を取り仕切った司祭を含む8100人以上が捜査対象となり、警察に手加減無用で捜査に当たるよう求めた」と述べている。また州政府は「児童婚は犯罪であり、いかなる理由があろうと容認されない」と強調した。

しかし、野党議員はモディ首相率いるインド人民党(BJP)が気まぐれで児童婚を取り締まり、多くの女性と子供を窮地に追いやっていると非難した。
ある野党議員はツイッターに、「アッサム州のBLPは気まぐれで何年も前に結婚した男性を逮捕し、女性と子供を苦しめている」と投稿した。

別の議員は地元メディアのインタビューでこの取り締まりを「広報活動」と呼び、「警察は適切な捜査や手続きなしに、何十年も前に結婚した男性を逮捕し、成果をアピールしている」と非難した。

しかし、州政府は少なくとも2026年の州議会選までは取り締まりを続け、児童婚ゼロを達成すると約束した。【2月7日 KWP News】
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