孤帆の遠影碧空に尽き

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日本  入管法改正案の再提出に向けて、収容中に死亡したスリランカ人女性の監視映像開示

2021-12-26 22:32:36 | 人権 児童
(映像では当初、入管側が「なかった」としていたウィシュマさんが点滴など訴える音声もはっきり記録されていた【12月24日 TBS NEWS】)

【入管法改正案の再提出目指すも、スリランカ人女性死亡問題で曲折が予想】
在留外国人の長期収容が国際的にも問題視されるなかで提出された収容や送還の規則を見直す入管法改正案が、収容中に死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(33)の入管対応への批判が高まる中で廃案になった件は、5月18日ブログ“入管法改正案は廃案へ 難民認定、入管制度のあり方の議論は今後も必要”で取り上げました。

****入管法改正案が廃案へ、「人権侵害」と野党や国内外から批判****
在留外国人の収容や送還の規則を見直す入管法改正案を巡り、野党の反対や国内外の批判を受け、政府は18日、今国会での成立を断念、法案を取り下げて廃案にすることを決めた。

同法案は、難民申請をしている外国人でも強制的に母国に送還されることや、退去命令に従わない人に罰則を設けるなどの点が難民条約違反、人権侵害であるとして弁護士団体や学者など国内外から批判を浴びていた。

入管法に詳しい児玉晃一弁護士は「たくさんの声が集約され、入管法の改悪が阻止された。SNSやネットニュースを通じていろいろな人に声が届き、みんなの声が勝ち取った成果」と述べた。

国会では、法務委員会で野党議員が法案の問題点を指摘、修正協議も行われていた。しかし、入管施設で3月、収容中に死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(33)に関し、遺族に監視カメラ映像を開示するよう野党が求めたのに対し、出入国在留管理庁がこれを拒否、野党側は法務委員長の解任決議案を提出して与野党間の対立が深まった。

このため与党は18日、今国会での成立を断念することを決めた。ある与党幹部は「国際社会の批判もあり、強行採決はメリットがない」と語った。

昨年8月から不法滞在で名古屋出入国在留管理局に収容されていたウィシュマさんは、今年になって体調を崩し1月下旬から嘔吐を繰り返し吐血もしたが、入院などの措置はとられず3月6日、職員が死亡しているのを発見した。

支援団体と遺族は5月16日午後、名古屋市でウィシュマさんの葬儀を行い、約80人が参列した。支援団体は国会前で断続的に抗議活動を行い、法案の廃案とウィシュマさんの死亡についての真相究明を訴えてきた。

上川陽子法相はウィシュマさんの遺族と18日午後に面会することを明らかにした。

2019年末時点で、全国で収容されていた外国人は1054人。本来、収容所は退去強制令書を発出された人が退去するまでの間一時的に収容される場所だが、実際には1054人のうち約400人が6カ月超収容されていたという実態がある。

国連の「恣意的拘禁作業部会」は20年9月に、日本の入管収容制度における長期収容について、申し立てを行った被収容者2人の事案は国際法に違反し「恣意(しい)的」であるとし、日本政府に意見書を送付し必要な措置をとるよう求めた。

こうした長期収容の問題を改善するために政府は同改正法案を策定したが、内容について理解を得られなかった。【5月18日 ロイター】
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廃案となった入管法改正案について、法務省は来年の通常国会に改めて提出する準備を進めていますが、収容中に亡くなったスリランカ女性の問題が未だ解消されていません。

****スリランカ人遺族、名古屋入管幹部を刑事告訴 殺人容疑で****
名古屋出入国在留管理局(名古屋市)に収容されていたスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が3月に死亡した問題を巡り、ウィシュマさんの妹、ポールニマさん(27)らが9日、当時の局長など幹部に対する殺人容疑の告訴状を名古屋地検に提出した。
 
告訴状によると、ウィシュマさんは生前、体調不良を訴えて点滴治療や外部への通院を求めていたが、入管職員らは適切な医療を提供する措置を講じず、保護する責任と義務を怠り、「ウィシュマさんが死んでも構わない」という未必の故意があったとしている。

告訴状の提出後、報道陣の取材に応じたポールニマさんは「名古屋入管の中で姉の件に携わったすべての人に責任があり、ちゃんとした措置をしなかった職員に責任がある」と語った。地検に対しては「大事な書類を提出した。きちんと目を通して真剣に取り組んでもらいたいと強く願う」と話した。
 
遺族代理人の指宿昭一弁護士は「助けなければならない強い法的義務があるのに、それに反しているので殺人罪だ」と説明。10月に確認したウィシュマさんが死亡する直前の映像については「助けられたのに何もしないで見殺しにしたことがよく分かった」と判断し、保護責任者遺棄致死ではなく殺人罪で告訴したことを明らかにした。

(中略)出入国在留管理庁は8月に医療体制や情報共有、職員への教育が不十分だったとする最終報告書を発表し、当時の名古屋入管局長と次長を訓告、警備監理官ら2人を厳重注意の処分にした。
 
ウィシュマさんの死亡を巡っては、愛知県の大学教員が6月、名古屋入管職員を名古屋地検に告発し、保護責任者遺棄致死傷容疑で受理されている。同局は「お答えする立場にない」として、コメントを控えている。【11月9日 毎日】
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****入管法改正案、再提出急ぐ 法務省準備、くすぶる収容死問題****
今年の通常国会で成立が見送られた出入国管理法改正案について、法務省が来年の通常国会に改めて提出する準備を進めている。14日には自民党に法改正の必要性を説明した。

強制退去処分となった外国人の収容長期化の解消が狙いだが、スリランカ国籍の女性が収容施設で亡くなった問題もくすぶり、法案提出には曲折も予想される。
 
現行法では、強制退去処分が決まっても、難民認定を申請すれば何度でも理由を問わず一律に送還が停止される。送還まで原則施設に収容され、その期間に上限はないため、収容の長期化が問題になっている。
 
今年の通常国会に提出された入管法改正案では、難民認定手続き中の送還停止規定の適用を、新たな相当の理由がなければ2回までに制限する一方、入管当局が選定する「監理人」の監督のもと施設外での生活を可能にする「監理措置」を設けるなどとしていた。(中略)

先の国会中には自民党と立憲民主党の間で修正協議が行われ、逃亡の恐れがなければ監理措置▽収容は上限6カ月とし、その後は監理措置か収容継続か個別に判断――などの内容で合意しかけた経緯があり、こうした点を踏まえることも検討されている。

 ■「審査の改善が先」 専門家
法務省が出入国管理法の改正を急ぐのは、強制退去処分となった外国人を法の不備により送還できず収容の長期化を招いていると考えるからだ。
 
在留期間を超えて不法に滞在している外国人は約8万3千人。近年は年平均約1万7千人が摘発されたり出頭したりしているが、強制退去処分が決まっても3103人(昨年末時点)が送還に応じていない。

うち1938人が難民認定を申請しており、申請が2回目は744人、過去に難民に認定された例がない3回目以上も481人いる。
 
一方、改正には厳しい目も向けられる。
「ウィシュマさんの死によって市民の反対の声が高まった。なぜ法案が通らなかったのかしっかり検証がされていないのでは」。外国人政策に詳しい鈴木江理子・国士舘大教授は、廃案になった法案に収容判断への司法の関与や収容期間の上限が盛り込まれなかった点に触れ、「収容の恣意(しい)的な運用が是正されない限り、人命にかかわる重大な事態が再び起きかねない」と批判する。
 
NPO法人「難民支援協会」の石川えり代表理事は、「難民と認められるべき人が認められていない」と指摘。送還停止規定の制限より「適切な認定ができるよう審査を改善するのが先だ」と訴える。
 
こうした意見があることなどから、与党内からは来夏に参院選を控えて影響を懸念する声も上がる。【12月16日 朝日】
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【死亡前の悲惨な状況 「入管という組織はいったい人間の命を何だと思っているのか」】
亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの悲惨な状況について、身元引受人となる予定だった眞野明美さん(68)は以下のように語っています。

****《今日カメラ映像開示》「私をここから連れていって…」ウィシュマさんの“最後の3カ月”を目撃した人が語る入管の壮絶な実態*****
(中略)ウィシュマさんが入管に収容されるきっかけになったのが、同じスリランカ人の同居男性からのDV被害を警察に届け出たこと。スリランカに戻れば夫に追いかけてこられる危険があったため、日本での仮放免(日本滞在が適法化するわけではないが、一時的に収容を停止し身柄の拘束を解くこと)を目指していた。

その際に、ウィシュマさんの身元引受人となる予定だったのが、今年10月に『ウィシュマさんを知っていますか? 名古屋入管収容場から届いた手紙』(風媒社)を上梓した眞野明美さん(68)だ。

第一印象は「あまりにも痩せていて」
(中略)「ウィシュマさんはすでにだいぶ衰弱していて、大きな声は出せない状態でした。私たちは必死に耳をアクリル板に近づけて彼女の声を聞き取っていました。

それでも、救急車が通るときの『ご注意ください』というアナウンスが『50円ください』にしか聞こえなかったという話で私たちを笑わせてくれたり、まだ明るい表情を見せてくれました。人が面会に来たことに安心したのだと思います」(中略)

しかし2021年が始まると、手紙に綴られる内容は徐々に暗転していった。
「1月10日付の手紙では、年末に体調を崩して3日間個室で過ごしたと書かれていました。さらに1月13日付のものには『あなたが入管に来る日付は早くこないから、時間も長――いです。待っている…待っている…待っている…だけです』と。精神が不安定になっていると感じました」

そして入管収容者の支援をしている男性から「ウィシュマさんが食事ができなくなっているようだ」と聞かされた眞野さんは、1月14日に2回目の面会へと赴いた。

「初回よりも憔悴していましたが、私たちが面会に来たことをとても喜んでいたように思います。入管に収容されると人間的な会話はほとんどできませんから、孤独感が募っていたのでしょう。私が作った曲を歌ってあげたら、彼女は目を初めて大きく見開いて嬉しそうな表情をしてくれました。あの顔が今でも忘れられません」(中略)

「1月18日付の手紙に、『わたしは12.5kgぐらいやせています。ほんとうにいまたべたいです』とひらがなで記されたポストカードが添えられていたんです。体調が気がかりだったので、2回目の面会から6日後の1月20日に再び入管へ行くことにしました。

バケツを両手で抱えさせられ
しかし面会室に現れたウィシュマさんは、明らかに何か異変が起きていました。足取りはフラフラだし、『喉に髪の毛が絡まっている感じがする』『髪の毛が抜ける』と体調不良を訴えていて、負担をかけないために40分を待たずに面会を切り上げることになりました」

ウィシュマさんの異変に不安を感じた眞野さんは、入管に対して必要な治療をするよう電話で強く申し入れた。しかし、担当職員は『電話では話せない』というばかりで、聞き入れてはもらえなかったと言う。そして4度目の面会となった2月3日、眞野さんの前に、ウィシュマさんはさらに弱りきった姿で現れた。

「入管の職員がウィシュマさんを車椅子に乗せて連れてきたんです。しかも、ウィシュマさんは青い大きなバケツを体の前に両手で抱えさせられていました。職員は、すぐに吐いてしまうから持たせていると言うんです。もう自力で身体を起こしていることも辛いようで、バケツにぐったりと寄り掛かるようにして、なんとか座っているような状態でした」
 
ウィシュマさんの口はぽっかりと開き、呼吸もしづらくなっているようだった。「話し方からも、明らかに脱水症状が進んでいました」と眞野さんは語る。

「このときが命を救うギリギリのポイントだった」
その場で面会は打ち切りになり、眞野さんが帰宅すると自宅にはウィシュマさんからの手紙が届いていた。そこには「食べることも飲むこともできません」「食べなきゃいけないのに食べられない。どうしていいかわからない」と綴られていた。

「ひらがなで綴られていた文章もローマ字や英語になり、字も乱れていて、やっとの思いで書いたんだろうというのが見て取れました。2日後の2月5日に再び入管へ行った際にはウィシュマさんが検査を受けていて面会ができず、そのことを謝る2月8日付の手紙が後に届きました。それが、彼女から届いた最後の手紙になりました」

入管のケア体制に不信感を覚えた眞野さんは、ウィシュマさんの体調をチェックするために面会の頻度をさらに増やした。2月10日の面会では、ウィシュマさんの“手”に異変が起きていることに気がついたという。

「指が曲がったまま固まってしまっていたんです。身体の他の場所も思うように動かせなくなっていたようで、『トイレに行こうとしてベッドから落ちたけど、誰も助けてくれなかった』と悲しそうに話していました。

2月15日からの仮放免を申請していたのですが不許可になったのも同時期でした。いま思えば、このときが彼女の命を救うギリギリのポイントだったのだと思います」
 
眞野さんは2月17日と26日にも面会を行なったが、この頃になるとウィシュマさんは常に吐き気に襲われているような状態で、ほとんど会話にならなかったという。

それから3日後の3月6日、ウィシュマさんは息を引き取った。入管から眞野さんら支援者に連絡はなく、眞野さんはニュースを見た知人からの連絡で彼女の死を知った。「もしかすると『彼女が死ぬまで放っておくはずがない』と、ギリギリのところで入管を信じていたのかもしれません。

彼女の死を聞いて、自分の想像力が全く足りていなかったことに気がつきました。もっとできたことがあったはず、彼女の命を救えたはずなんです」と眞野さんは悔いを滲ませる。そして入管職員の対応には、今も憤りを隠さない。

「入管という組織はいったい…」
「私は何度も何度も、職員にウィシュマさんが脱水症状であること、適切な治療を施すことを申し入れました。それを無視し続けた結果、ウィシュマさんは命を落としてしまった。それをどう考えているのか。

2月5日の面会にウィシュマさんが現れず、『大丈夫なの?』と尋ねたとき、笑いながら『生きてますよー。大丈夫ですって』と言われました。調査で明らかになったウィシュマさんへの虐待まがいの行為や、遺族の方への『鼻から牛乳は日本のジョーク』という説明など、入管という組織はいったい人間の命を何だと思っているのでしょう……」(後略)【12月24日 文春オンライン】
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【監視カメラの映像 衆議院法務委員会の理事と遺族に公開】
ウィシュマさんが亡くなる直前の約6時間半に及ぶ監視カメラの映像が、24日に国会で理事らに開示されました。

****入管施設でのスリランカ人女性死亡 法務委理事らに映像を開示****
入管施設に収容されていたスリランカ人女性が死亡した問題をめぐり、衆議院法務委員会の理事らに女性の施設内での様子を写した映像が開示されました。(中略)

出入国在留管理庁によりますと、映像は女性が亡くなる直前の2週間の様子について就寝時間などを除いておよそ6時間30分に編集したものだということです。

映像を見る議員はメモを取ることは認められましたが録音や録画は禁止され、映像の開示は午前9時から休憩を挟んで午後4時すぎまで行われました。

このあと開かれた理事懇談会で与野党は、今回の開示を踏まえて出入国在留管理庁の体制などについて来年の通常国会で引き続き議論していくことを確認しました。

古川法相「求められた範囲と方法のもとで閲覧」
古川法務大臣は閣議のあとの記者会見で「ビデオ映像については保安上の理由や亡くなった方の名誉や尊厳という観点から情報公開法に基づいて不開示情報という扱いをしていた」と述べました。

そのうえで「衆参の法務委員会理事会の判断として、ビデオ映像の一部について保安上の問題にも配慮したうえでの閲覧の求めがあったことを踏まえて検討した結果、求めがあった範囲と方法のもとで閲覧していただくことにした」と述べました。

自民 葉梨氏「最終報告とのそごはない印象」
衆議院法務委員会で与党側の筆頭理事を務める自民党の葉梨康弘氏は「映像を見た結果、出入国在留管理庁の最終報告とのそごはない印象を受けた。ただ、入管施設の医療などの体制で非常に弱い面があり、しっかりと強化していかなければならない。来年の通常国会で建設的な質疑を行いたい」と述べました。

立民 階氏「法務委で集中審議を」
衆議院法務委員会で野党側の筆頭理事を務める立憲民主党の階猛氏は「映像を見てよかった。出入国在留管理庁の最終報告にうそは書いていないが、なるべく事実をわい小化しようという意図が透けて見え、最終報告だけではとても実態に迫れなかった。入管施設の抜本改革の必要性をより強く認識した。施設の在り方について法務委員会で集中審議を行うべきだと考えている」と述べました。【12月24日 NHK】
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映像は24日、名古屋地裁でもウィシュマさんの遺族に開示されました。

****「点滴を」ウィシュマさん映像 遺族・国会に開示****
遺族代理人 指宿昭一 弁護士
 「画面があって、左のほうにベッドがあります。ウィシュマさんが寝ている、毛布がかかっている。この日の最後の方で私が印象的だったのが『ちょっと待って、私死ぬ』という風にウィシュマさんが言っていました」

映像では当初、入管側が「なかった」としていたウィシュマさんが点滴など訴える音声もはっきり記録されていたといいます。

遺族代理人 指宿昭一 弁護士
 「『嘘じゃない。点滴お願い、点滴お願い』、『お願いします、お願いします』という風に言っていました」

ウィシュマさんの妹 ポールニマさん(27)
 「『私を病院へ連れて行って下さい』と何度もお願いしている。『お腹が痛い』とも。でも職員は全然聞いてくれていない」

一方、24日は国会でも、遺族が見たビデオと同じものが初めて開示されました。映像を見た議員は・・・

立憲民主党 階猛 衆院議員
 「無理やり口の中に食べ物や薬を押し込むのを繰り返していた。とてもじゃないけど正視できない、そんな場面も多くありました。この組織は常識からあまりにも逸脱しているのではないか」

遺族は「まだまだ分からないことがたくさんあり、これで終わりではない」と訴えました。

ウィシュマさんの妹 ポールニマさん(27)
 「スリランカにいるお母さんも見なくてはならないし、(もう1人の)姉も見なくてはならない。日本の全ての人にも見てもらいたいです」【12月24日 TBS NEWS】
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