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新型コロナワクチン 欧州で白熱する「ワクチン戦争」 早期実施の声が出ない日本の不思議

2021-01-28 23:25:33 | 疾病・保健衛生

(英国で4日、英製薬大手アストラゼネカと英オックスフォード大が開発した新型コロナワクチンの接種を受ける高齢者【1月28日 朝日】)

 

【白熱する「欧州ワクチン戦争」】

各国が新型コロナワクチンの接種をコロナ禍からの「出口」として急ぐなかで、感染状況が厳しいEUでは予定していたワクチンの供給が行われていないと、製薬会社との間で法的手段も辞さないとの激しい議論になっています。

 

なお、EUのワクチンは欧州委員会が一括購入し、人口比に基づき加盟国に配分しています。

 

****【新型コロナ】ワクチン足りない! EU、供給削減に怒る**** 

欧州で新型コロナウイルスのワクチン供給が逼迫(ひっぱく)してきた。大手製薬会社ファイザー、英製薬大手アストラゼネカが相次いで、欧州連合(EU)への供給削減を発表した。

 

接種計画の見直しを迫られる国もあり、ミシェルEU大統領は24日、仏ラジオで製造元に契約順守を求め、「法的措置も辞さない」構えを示した。

 

ファイザーは15日、欧州での供給の一時削減を発表。ワクチン増産に向けて、ベルギー工場の生産ラインを見直すための措置だとしており、供給正常化は25日以降になるとした。

 

アストラゼネカについては23日、欧州委員会が通告を受けたと発表し、「不満」を表明した。

 

同社のワクチンは今月末、EUで販売が認可される予定で、欧州委が各国に配分計画を示していた。3月までのEUへの納入分は計画の4割程度になる見込みという。

 

イタリアのコンテ首相は「アストラゼネカのワクチンは国内に800万回分が納入されるはずだったのに、340万回分になる」とフェイスブックに見通しを示し、接種計画に影響が出ると懸念を表明。「重大な契約違反。国民の生命がかかっている」として、同社に法的措置をとる構えを示した。

 

イタリアは、ファイザーについても提訴する方針を示している。ポーランド政府報道官も地元ラジオで、来月にも製造元への提訴を検討すると述べた。

 

一方、ハンガリー政府はEUを通じたワクチン購入では遅すぎるとして、国内に限ってロシア製ワクチン使用を暫定認可することを決めた。ペーテル外務貿易相がこのほど訪ロし、購入をめぐる合意を交わした。

 

ドイツではシュパーン保健相が、「受動的ワクチンとしての効果が確認された」として、モノクローナル抗体を使った治療薬を20万回分購入すると表明した。

 

この治療薬は昨年、トランプ米前大統領が新型コロナに感染した際に使われた。症状悪化を食い止める効果があるとされ、ドイツでは当面、大学病院での使用を想定しているという。

 

EUでは昨年末、ファイザーのワクチンが承認の「第1号」となり、域内各国で接種が始まった。現在は米バイオ企業モデルナのワクチンとあわせて2種が承認され、各国で接種キャンペーンが展開されている。

 

欧州委は「夏までに成人人口の7割」を目標に掲げ、製造元の各社と計23回分のワクチン購入に合意していた。

 このうち、ファイザーは6億回分、モデルナは1億5千万回分、アストラゼネカは4億回分を占める。EUのワクチンは欧州委が一括購入し、加盟国に配分している。【1月25日 産経】

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EUにとって“苛立たしい”のは、先行する(EUを離脱した)イギリスへのワクチン供給が比較的順調に進んでいるのに対し、EUが劣後しているという点です。

 

EUでワクチン接種が始まったのは12月末で、イギリスの3週間近く後だったこともあり、本来ならこの遅れを取り戻したいところなのに、先に契約したイギリスへの供給が優先されている・・・という“焦り”も。

 

“英オックスフォード大などの集計では、英国では100人あたり11回超の接種がなされたのに対し、EUでは2・5回にも届いておらず、ワクチン接種への焦燥感が高まっている。”【1月28日 朝日】

 

****EUが「英国優先?」に怒り 白熱「欧州ワクチン戦争」 スペインでは接種停止も**** 

欧州連合(EU)のキリアキデス欧州委員(保健衛生担当)は27日、新型コロナウイルスのワクチンで、英製薬大手アストラゼネカがEUへの供給削減を通告したことを批判し、「約束を守るべき」と迫った。同社が英国への供給を優先したとの見方も浮上し、欧州で「ワクチン戦争」が白熱している。

 

キリアキデス氏は27日の記者会見で、昨年8月に欧州委が同社と事前合意を交わしたことを強調し、「生産能力に達しなかった、というのは文書に反する」と述べた。さらに、「先に決めたところに先に供給するという理屈は拒否する」として、EUより早く合意を交わした国に供給を優先するのは不当だと主張した。

 

キリアキデス氏の発言は、アストラゼネカ幹部が今週、欧州メディアで行った発言を受けたもの。この幹部は「英国は、EUより3カ月早くワクチンを契約した。このため(英国向けは)供給ラインを改善する余裕があった」と述べ、供給体制は英国とEUで格差があると認めた。

 

さらに、EUとの事前合意について、「われわれは最善を尽くすと言ったが、将来の成功を約束したわけではない」と欧州委に反論した。同社は英国やオランダ、ベルギーに生産拠点を持つ。

 

EUでワクチンが逼迫(ひっぱく)する中、英国のジョンソン首相は27日、下院で「すでに680万人にワクチンを接種した。欧州で、どの国よりも多い」と述べ、国内の接種計画が順調に進んでいると強調した。

 

EU域内では今月、米製薬大手ファイザーも、ベルギー工場の改変のために一時供給を削減すると発表。スペインのマドリード州政府は27日、2度目の接種ができなくなる恐れがあるとして、ワクチン接種を2週間、停止することを決めた。

 

欧州委はワクチンの域外流出の歯止めとして、輸出を規制する方針を表明している。フランス製薬大手サノフィは27日、自社ワクチンの開発が遅れる中、ドイツ工場でファイザーのワクチン生産を支援すると発表した。

 

EUでは現在、ファイザー、米バイオ企業モデルナの2種のワクチンが接種されている。アストラゼネカのワクチンは今月末に域内での販売が認可される予定で、欧州委は最大4億回分を調達する事前合意を交わしている。【1月28日 産経】

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「われわれは最善を尽くすと言ったが、将来の成功を約束したわけではない」・・・・そのあたりが契約書でどのように記されているのか・・・契約におけるもっとも基本的な事項のはずですが、どうしてそこで「見解の相違」が生じるのでしょうか?

 

EUも製薬会社も前のめりで契約を急ぎ、そうした重要な部分が互いに都合よく解釈できる“玉虫色”ななっていたのでしょうか。

 

EU側は域内での製造品の流出に歯止めをかける「輸出規制」を行う方針も示しています。

一方、こうした措置により供給が制限される可能性があるイギリスは、EUの動きをけん制しています。

 

****EUがワクチン囲い込みへ 欧州委員長、「輸出規制」で供給削減に対抗****

欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は26日、世界経済フォーラム(WEF)のオンライン会議で、新型コロナウイルスのワクチンでEUが輸出を規制する方針を示した。ワクチン供給がひっ迫する中、域内での製造品の流出に歯止めをかける構えだ。

 

フォンデアライエン氏は「EUは最初のワクチン製造のために、巨額の投資をした。企業は責務を果たさねばならない」として、ワクチン輸出を透明化するシステムを設けると述べた。

 

米製薬大手ファイザー、英製薬大手アストラゼネカはベルギーにワクチン生産拠点を持っており、輸出を届け出制とすることで、EUが契約分のワクチンを確保する狙いがある。

 

アストラゼネカが先週、3月までのEUへの供給量を当初予定の4割程度にすると通告したのを受け、対抗措置に出たものだ。

 

ドイツのシュパーン保健相も「輸出を認可制にするのはよいこと。EU内での製造後、どのワクチンが輸出されるのかを監視できる」とフォンデアライエン氏の提案を支持した。

 

これに対し、英国のジョンソン首相は記者会見で「疫病禍では、国際的協力が必要。国境に制限を設けるべきではない」と述べ、EUの動きをけん制した。英国は、ファイザーのベルギー工場からワクチンを輸入しており、EUが輸出管理を発動すれば、影響を受ける恐れがあるためだ。(後略)【1月27日 産経】

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****英、ワクチン供給混乱回避へEUと協力へ 保護主義をけん制****

英国のハンコック保健相は26日、新型コロナウイルスワクチンの供給に混乱が生じないよう欧州連合(EU)と協力できるとの見方を示し、パンデミック(世界的大流行)の最中で保護主義は正しい姿勢ではないと強調した。(後略)【1月27日 ロイター】

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EU側の怒りはおさまりません。「輸出規制」にとどまらず、EU内の工場の生産が遅れるなら、イギリスの工場で生産したワクチンをEUに供給するようにアストラゼネカに要求しています。

 

****EU、アストラゼネカに英工場製のワクチン供給を要求 域内での不足うけ****

欧州連合(EU)は27日、英製薬大手アストラゼネカに対し、イギリスの工場で生産している新型コロナウイルスワクチンをEU加盟国に供給するよう強く求めた。

 

アストラゼネカは先に、EUには今年第1四半期(1〜3月)に約束した供給分のごく一部しか提供できないと発表。欧州工場における生産問題が原因としている。

 

これに対してEUは激しく反発。EU域外の工場で生産した分で不足を補うべきだと主張している。

 

両者は27日に問題解決に向けて協議した。欧州委員会のステラ・キリアキデス保健担当委員はツイッターで、「配達スケジュールが不透明な状態が続いている」ことを残念に思うと述べた。

また、「解決策を見いだし、EU市民に迅速にワクチンを届けるため、今後もアストラゼネカと協議していく」とした。【1月28日 BBC】

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【ワクチンを急げとの声が出ない日本の不思議】

ワクチン供給の遅れは、自国民の生命に多大な影響を及ぼしますし、そのことは各国政権への信頼にも関わってきますので、EUが怒るのは当然とも言えます。

 

むしろ不思議なのは、まだワクチン接種が始まってもおらず、開始が1か月ほど先になりそうな日本で「早くしろ!」「どうして遅いのか!」という議論が全く表面化しないことです。

 

昨日取り上げた、大統領がワクチン・コロナを軽視していた“あの”ブラジルでさえ、ワクチン接種が始まっています。 アジアでは・・・

 

タイのプラユット首相は、2月14日に開始する新型コロナウイルスワクチン接種の第1段階では1900万人への接種を目指すと表明したていますが、同国では政府のワクチン配布ペースが遅いとの批判が出ている【1月28日 ロイターより】とのこと。 2月14日で“遅い”なら、日本はどうなるのか?

 

日本よりワクチン確保が遅れていると国内批判も出ていた韓国でも“ワクチン接種 2月に首都圏の医療従事者から=韓国政府が計画発表”【1月28日 聯合ニュース

 

インドネシアで1月13日、ワクチンの接種キャンペーンが始まり、ジョコ大統領が最初に接種を受けています。

インドも1月16日、ワクチンの世界最大級の接種計画を開始しています。

中国、インドの「ワクチン外交」がぶつかるミャンマーでは、1月27日からインド製のワクチンの接種が始まりました。

東南アジア・南アジア各国は、中国とインドの「ワクチン外交」競争の結果、多くの国がどちらかから、あるいは両方からワクチン供給を受ける計画になっています。

 

そんななか、日本は2月下旬から医療従事者への接種がスタートするようですが、早くも“遅れ”が。

 

****高齢者ワクチン接種は4月以降に 3月下旬がずれ込み、河野氏表明****

河野太郎行政改革担当相は27日、新型コロナウイルスワクチンについて、65歳以上の高齢者への接種は早くても4月1日以降になると全国知事会などに伝達したことを明らかにした。

 

政府は3月下旬の開始を想定していたが、ずれ込んだ格好だ。最も早い想定では6月第3週までに2回目の接種を終える日程を描いている。都内で記者団に語った。

 

河野氏は「自治体には、この日程で準備してもらいたい。3月中に高齢者接種が始まることはない」と説明。理由を「医療従事者の数やファイザー社とのやりとりをしている状況に鑑みた」と語った。

 

実際の接種日程が確定するのは供給日程次第だとも強調した。【1月27日 共同】

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実際の接種日程が確定するのは供給日程次第・・・・冒頭のEU「ワクチン戦争」に見られるように、供給は非常にタイトになっています。

 

そうしたことから、供給予定外国製薬会社の日本国内での生産を進める動きも。

 

****ワクチン、アストラゼネカが9000万回分以上を国内生産へ=官房長官****

加藤勝信官房長官は28日午前の記者会見で、アストラゼネカからのコロナワクチンの供給について、「厚生労働省における生産設備の強化のための補助金を活用しながら国内生産の準備をしていると承知している」と述べ、「昨日、厚労省に国内で9000万回以上の生産を目指すとの報告があった」と明らかにした。その上で、「ワクチンを国内で生産できる態勢を整えることは極めて重要だ」との認識を示した。

日米首脳会談において、新型コロナウイルスの治療薬やワクチン開発について日米で緊密に連携していくことで一致したと明らかにした。

 

ワクチン供給に関しては、全世界共通の課題であり、日本が調達を予定しているファイザーやモデルナといった企業が米企業であることも踏まえ、供給全体の問題について日米での連携・協力を確認したところだとした。(後略)【1月28日 ロイター】

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アメリカも他国以上にワクチンを必要としており、日本への供給がスムーズに行くのか?

 

個人的印象としては、世界中でワクチン接種が急がれるなかで、日本の対応は極めて「悠長」に思えてしまいます。

 

もちろん、安全性・有効性の確認など、必要とされる検証を急いで行っているのでしょうが、他国より1周遅れ・2週遅れで遅いというのは、他国は「必要な確認」を行わずに接種を行っている、日本の対応が本来のやり方で他国のやり方が間違っているということでしょうか?

日本はワクチン接種を急ぐ必要がない、他国感染が軽視できる状況にあるのでしょうか?

 

ワクチン接種開始が遅れれば、それだけ犠牲者も増えますし、自粛を強要される状況で事業に行き詰まったり、仕事を失い、生活できなくなる者も増加します。

 

他国より1周遅れ・2週遅れになるのであれば、その理由をきちんと説明してほしいものです。

 

政府が、あまり急がないのは、わかります。急いだ結果、副作用やトラブルが多発すれば、批判の矛先は政府に向かいますので、国民の生命がどうなろうが、生活がどうなろうが、とにかく時間をかけてしっかりとやりたい・・・という発想は、わからないではありません。

 

政府の対応以上に不思議なのは、メディアや国民世論からも「ワクチンを急いで!」という声がほとんど出ないことです。

 

メディアが取り上げる“街の声”は「ワクチンは本当に大丈夫なのかしら・・・怖い」といった類がほとんど。

私には、これまでの薬害に過剰反応しているように思えるのですが・・・。

 

結局のところ、多くの国民は、なんだかんだ言いつつ、今の“リスクをとることなく、タコつぼのなかで嵐が過ぎるのを待つような”「自粛」社会で満足しているようにも。

 

そのあたりは、下記のような指摘にも共通する国民性のようにも思えます。

 

****「失われた20年」で、日本が本当に失ったのは「勇気」だ!****

中国のポータルサイト・百度に22日、「失われた20年で日本が失ったものは、いったい何だったのか」とする記事が掲載された。

記事は、1985年のプラザ合意、そして、90年代初めのバブル崩壊により日本は「失われた20年」を経験することになったと紹介。経済での世界一を目指した当時の日本としては「一時的な退避」のつもりだったかもしれないが、結果的に「退避」が常態化することになり、反転攻勢に出る機会が生まれることはなかったと伝えた。

その上で、日本が「失われた20年」の中で本当に失ったものについて「それは勇気だ。日本企業は二度と世界一になろうとする勇気を持つことはなかったのだ」としている。

記事は、かつてソニーやパナソニック、東芝といった日本の大手メーカーは綺羅星のような存在であり、到底追いつけるような存在ではなかったとする一方で、今やこれらの「綺羅星」は商品を選ぶうえでの単なる選択肢の一つとなり、もはや「到底手の届かない神聖さ」も失われてしまったとの考えを示した。

また、多くのハイエンド技術分野において日本はなおも大きな強みを持っており、ほぼライバルがいない分野も少なくないと指摘する一方で、「日本のイノベーション環境を見てみると、まるで時間が止まってしまったようであり、若い人たちの活躍も、新たなブランドも見えてこない」と評した。

そして、保守的な高齢者が増え、若い世代に「闘志」が不足する中で、将来の日本に残された立ち位置は頑固な「職人」しかないと主張。「失われた20年の中で失った勇気を取り戻そうとする人はいないのだろうか」としている。

記事は最後に、「向上する勇気を失った日本は、もはや世界で競い合う資格を放棄してしまったのである」と結んだ。【1月23日 Searchina】

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