(1月8日、ブラジリアの大統領府でボルソナロ大統領(左)とあいさつを交わす茂木敏充外相【1月9日 時事】)
【ブラジルでもワクチン接種開始 対応が遅れたボルソナロ大統領の支持率低下】
新型コロナの感染拡大に苦しむ世界各国で続々とワクチン接種が始まっていますが、これまで新型コロナやワクチンを軽視するルソナロ大統領の発言がたびたび話題になってきたブラジルでも、いよいよ。
*****ブラジルでワクチン接種開始=先住民・医療従事者を優先―新型コロナ****
ブラジル各地で18日、中国で開発された新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった。当面は医療従事者や、免疫力が弱いとされるアマゾンなどの遠隔地に暮らす先住民族らが対象となる。
ブラジルは累計感染者数が世界で3番目に多い約850万人、死者は2番目の約21万人を数える。モウラン副大統領は「今年中に国民の7割に接種できる分のワクチン購入契約を結んでおり、年末までにパンデミック(世界的流行)対策から解放されるだろう」と述べた。
ブラジル衛生監督庁(ANVISA)は17日、中国で開発されたワクチンと、英製薬大手アストラゼネカがオックスフォード大と共同開発したワクチンの緊急使用を承認していた。【1月19日 時事】
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ただ、大統領のコロナ無視・対応の遅れに不満を募らせる国民も多く、退陣を求める声も出ています。
****ボルソナロ氏の退陣要求、ブラジルでデモ コロナ対応めぐり****
ブラジルの複数の都市で23日、新型コロナウイルス流行への対応をめぐりジャイル・ボルソナロ大統領の退陣を求めるデモが行われ、大勢の人が車で参加した。
左派の政党や団体が主催したこの抗議デモでは、自動車約500台がクラクションを鳴らしながら首都ブラジリアの官庁街を走行。車の窓ガラスには、「ボルソナロは出て行け」「今すぐ弾劾を」「全国民にワクチンを」などのスローガンが書かれていた。
同様のデモはリオデジャネイロやサンパウロなど他の都市でも行われ、多くの車が列をつくった。
ブラジルでの新型コロナウイルスによる死者数は世界で2番目に多く、21万5000人を超えている。ボルソナロ氏が長きにわたり流行の深刻さを軽視したことから、同国のワクチン接種プログラムは他国に比べて遅れ、ようやく今週不安定ながらもスタートを切った。
デモ参加者らはまた、コロナ流行の多大な影響に対応する緊急支援金制度が昨年12月に終了したことにも抗議。同国人口の3分の1近くに上る約6800万人がこの制度を利用していた。 【1月24日 AFP】
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“同国のワクチン接種プログラムは他国に比べて遅れ、ようやく今週不安定ながらもスタートを切った”・・・日本はまだ当分先のようですガ・・・という話は余裕があれば後程。
ボルソナロ大統領のコロナ軽視発言は多々あって取り上げきれませんが、ひとつだけ。
****「ホモの国」みたいな対応やめろ ブラジル大統領、コロナでまた問題発言****
ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領が(2020年11月)10日、新型コロナウイルスに対し「ホモ(セクシャル)の国」のような対応をするなと発言し、批判を浴びている。
ブラジルは、新型ウイルスによる死者が16万3000人と、米国に次いで世界で2番目に多い。だが、極右政治家のボルソナロ氏は一貫して新型ウイルスを軽視し、物議を醸す発言を繰り返している。
10日に大統領府で行った演説は、観光業に関するものだった。だが、ボルソナロ氏はその中で、最近では誰もかれもが新型ウイルス流行の話をしているとし、「そんなのはもうやめなければならない」と述べた。
さらに「亡くなった方については気の毒に思う。本当にそう思う。だが、われわれはみんないつか死ぬ。現実から逃げても仕方がない。ホモの国みたいなことはやめなければならない。(中略)顔を上げて闘わなければいけない。ホモみたいなのは大嫌いだ」と続けた。
新型ウイルスを「ちょっとしたインフルエンザ」と呼んだり、一部の州の予防措置を「ヒステリー」と呼んで非難したり、新型ウイルスに関するボルソナロ氏の発言は、これまでにいくつも問題になっている。ブラジル人は下水を泳いでも「何にもかからない」ほど免疫システムが強いとも述べている。 【2020年11月11日 AFP】
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こうした発言は国内の野党勢力から、あるいは国際世論的には、批判・嘲笑を浴びていますが、大統領の国内での支持率はそんなには悪くなかった・・・というのが、これまでの現実です。
大統領の発言は、失業者への現金給付策も奏功して、自粛できない貧困層などの共感を一定に得ていました。
****ブラジル、コロナ拡大も大統領の支持率上昇****
新型コロナウイルスの感染拡大が深刻なブラジルで、ボルソナロ大統領の支持率が向上している。最新の世論調査によると支持率は37%で、不支持率の34%を上回った。経済が低迷する中、経済活動の再開を唱えるボルソナロ氏の主張に理解を示す声が集まった。
調査会社ダタフォリャが13日夜に発表した。支持率は6月の前回調査の32%から5ポイント上昇し、不支持率は44%から10ポイント低下した。新型コロナの感染拡大が始まって以来、支持率が不支持率を上回るのははじめて。
ボルソナロ氏を評価する声が高まる背景にあるのが、深刻な経済低迷だ。3月以来、外出制限は必要ないと主張するボルソナロ氏の意向を無視する形でほとんどの州で外出自粛令や飲食店の営業規制が敷かれたが、感染拡大を抑えることができていない。一方、失業者は増加が止まらず、足元の失業率は13%を超える。
効果が見えない感染症対策よりも経済を優先するボルソナロ氏の姿勢は徐々に見直されつつある。政府は低所得者や失業者向けの現金給付も実施しており、こうした施策も支持率の上昇に寄与したとみられる。
新型コロナを「ただの風邪」と軽視するボルソナロ氏は自らも感染したが、結果的に軽症で済んだことも追い風となっている。
ブラジルの新型コロナ累計感染者数は330万人強、死者数は10万7千人。ともに米国に次ぐ規模で、収束の兆しは見えない。【2020年8月15日 日経】
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ただ、一向に収まらないコロナ禍、ワクチン接種の遅れという現実を受けて、さすがに最近は支持率が低下しています。
****ブラジル大統領の支持率急落、弾劾には過半数が反対=調査****
調査会社ダッタフォリャが22日に発表した世論調査によると、ブラジルのボルソナロ大統領の支持率が下落しているものの、同日発表された別のダッタフォリャ調査では、大統領の弾劾には過半数が反対の考えだった。
ブラジルは新型コロナウイルス感染第2波が拡大している一方、ワクチン調達が不足、政権への評価が急落している。
調査では、ボルソナロ政権を「悪い」または「ひどい」と評価した回答者の割合が全体の40%と昨年12月初めに行われた前回調査の32%から上昇した。「良い」または「素晴らしい」と回答した割合は3分の1弱。前回調査は37%だった。
フォリャ・ジ・サンパウロ紙によると、今回の支持率下落は2019年の政権発足時以来最も大幅となった。【1月25日 ロイター】
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【大統領と野党側州知事との間の「政争」ともなったワクチン対応】
コロナ対応・ワクチン対応は、大統領と野党側州知事との間の「政争」ともなってきました。
***ブラジル、ワクチン巡り政争 ボルソナーロ氏、ドリア氏****
新型コロナウイルスの感染者が520万人を超えたブラジルで、ワクチンをめぐる政治対立が表面化している。
2年後の選挙での対決が予想されるボルソナーロ大統領とサンパウロ州のドリア知事が、それぞれ異なるワクチンを推薦。コロナ禍克服の切り札と期待されるワクチンが、政争の具になる危うさも見え隠れする。
■早期導入へ、中国企業と契約 ドリア氏/大統領再選狙い、一転「安全性」 ボルソナーロ氏
「サンパウロはワクチン接種を義務化するだろう」
ドリア氏は16日の記者会見でこう述べた。念頭にあるのは中国のバイオ企業シノバック社のワクチンだ。
ドリア氏は9月、シノバック社からワクチン4600万回分の提供を受ける契約を結んだと発表。契約額は9千万ドル(約95億円)で、このほど連邦政府への承認申請手続きも始めた。12月にも接種を始めたいとしている。
2022年大統領選の有力候補と目されるドリア氏は、ブラジルで感染が拡大し始めた3月、外出自粛などの規制を断行。経済活動を優先させるボルソナーロ氏を「ブラジルは新型コロナとボルソナーロという二つのウイルスと闘っている」と批判した。
ワクチンの早期導入を目指す背景には、世論の変化がある。当初、ドリア氏の対応は市民に支持されたが、自粛期間が長引くにつれ「経済を冷え込ませている」と不評を買った。いち早くワクチンを確保し、批判を払拭(ふっしょく)したいとの思惑が透ける。
一方、ボルソナーロ氏は、「科学的に証拠のないワクチンに無責任ではいられない。米国や日本のような国が作ったものでも政府の承認が必要だ」と、安全性を重視する姿勢を示す。
再選を目指すボルソナーロ氏の支持率は新型コロナの感染拡大で下がったが、失業者らへの現金給付などで再び上昇。英国のオックスフォード大とアストラゼネカ社のワクチン1億回分にあたる19億レアル(約350億円)の予算を確保する大統領令に署名し、承認申請手続きも始めた。
これまで安全性に疑問のある抗マラリア薬を新型コロナ患者に投与するよう主張してきたボルソナーロ氏がワクチンの信頼性にこだわるのは、ドリア氏への対抗意識がありそうだ。
ドリア氏はシノバック社のワクチンに重大な副作用はないと強調。「ワクチンの政治化やワクチン戦争はしない」と述べ、国がワクチンの承認を遅らせないよう釘を刺す。(後略)【2020年10月19日 朝日】
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【大統領 ボロクソにけなしていた中国製ワクチンに、一転、感謝】
ボルソナロ大統領は、野党有力者が推す中国製ワクチンについてはボロクソにけなしていました。
昨年11月に、中国の製薬大手、シノバック・バイオテックが開発する新型コロナウイルスのワクチン治験を巡り、ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)が「深刻な事態」があったとしてブラジル国内治験を中断することがありました。
このときも、この臨床試験を批判してきたボルソナロ大統領は、ANVISAの決定は「自分の勝利」だと述べています。
なお、この被験者が死亡する「深刻な事態」は被験者の自殺と判明し、治験は継続されました。
ワクチン自体に対しても否定的な見解を、つい先月明らかにしていました。
****コロナ収束へ、ワクチンに走る世界は正当化できず=ブラジル大統領****
ブラジルのボルソナロ大統領は19日、自身の見解として、新型コロナウイルス感染の世界的流行(パンデミック)は収束しつつあり、世界がワクチンに走るのは正当化できないとの考えを述べた。大統領は、ワクチン接種を拒否している。(後略)【12月21日 ロイター】
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そんな中国嫌い・ワクチン嫌い(だったはず)のボルソナロ大統領ですが、先述のようなワクチンの遅れへの不満の高まり・支持率低下を受けてのものでしょうか、対応を一変させています。(ボルソナロ大統領は、トランプ前大統領と同じようなタイプですから、自分の都合で発言はコロコロ変わります。)
****「中国のワクチンは買わない」はずが…ブラジル大統領が中国に感謝、現地ネット民「彼らは天使」―中国紙****
中国紙・環球時報は27日、新型コロナウイルスの感染状況が深刻なブラジルで、大統領や多くのネットユーザーから中国に感謝する声が上がったと報じた。
記事によると、ボルソナロ大統領は25日、「中国政府の心遣いに感謝する」などと投稿してワクチンの有効成分の同国への輸出を迅速に承認した中国政府に謝意を示した。
ブラジル政府はこれまで中国のワクチンに懐疑的な立場を取って「購入しない」との考えを表明していたが、ロイターの同日の報道によると「新型コロナの打撃を強く受けたブラジルはほぼ完全に中国・科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)が研究開発したワクチン『コロナバック』に依存している」状況という。
「中国大使館から連絡を受けた」とする同大統領の投稿は、シノバックのワクチン生産に用いる有効成分5400リットルが数日のうちにブラジルに届くという内容で、シノバックとワクチンを共同研究する同国のブタンタン研究所は「当研究所が約850万回分のコロナバックを生産するのを保証する量だ」と表明。
大統領はまた、「オックスフォード大学・アストラゼネカ開発のワクチン生産に使われる有効成分のブラジルへの供給についても中国は迅速に同意している」と明らかにしており、ワクチン生産でアストラゼネカと合意した同国のオズワルド・クルス財団は「中国は来月8日頃にブラジルに向けて発送するだろう」との見通しを示した。
大統領の投稿を受け、閣僚からは「中国の今回の動きはブラジルと中国との関係が非常に建設性を備えていることを示すものだ」などと両国関係を積極的に評価する声が寄せられた。
ネットユーザーの間でも強烈な反響を呼び、中には「中国政府の思いやりに泣きたくなる。彼らは天使。常に思いやりに満ちている」という声を上げた人もいたという。
記事は「ブラジルはすでにワクチン接種作業を展開しているが、製品と原材料の不足が各界の懸念を引き起こしている」とした他、現地メディアの報道として「ボルソナロ大統領は中国への態度を変えるよう外交当局に要求。外相は中国との対話再開を試みている」などと伝えている。【1月27日 レコードチャイナ】
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中国ワクチン外交は東南アジアなどで多くの成果をあげつつありますが、ブラジルもまた、その成功事例のひとつのようです。
ブラジル以上にワクチン対応に「悠長」に構えている日本の話は、長くなるので別機会に。
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