孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

深夜の牛丼チェーン店で、外国人スタッフと客の外国人が日本語でやりとりする社会

2018-11-21 23:32:45 | 世相

(【6月22日 唐鎌 大輔氏 東洋経済ONLINE】 日本の労働者の50人に1人が外国人労働者で、過去5年間に増加した労働者の5人に1人が外国人という状況にあって、すでに外国人労働者なしでは回らない現実があります。)

【「眠らぬ国」支える留学生】
下記記事にもあるように、深夜の牛丼チェーン店で、外国人スタッフと客の外国人が日本語でやりとりする・・・といった光景も、そんなに珍しくはない状況になっています。

先日東京を訪れた際に、そのような光景を実際に目にして「なるほどね・・・」という感慨もありました。

****「眠らぬ国」支える留学生 深夜の牛丼屋にベトナム人、休憩時は漢字勉強…バイト先巡り見えたニッポンの今****
24時間営業のコンビニや牛丼屋。実は、留学生に人気のアルバイト先なんです。そういえば最近、アジア系の店員が増えている気がしませんか?(中略)

深夜勤務者、日本人はゼロだった
多くの留学生にとって、アルバイトは貴重な収入源。(牛丼屋でバイトする、都内の日本語学校に通うベトナム人留学生)ランさんも半年分の授業料だけは親に用意してもらい、残りはすべて自分でまかないます。

留学生は、日本の法律で週28時間までのアルバイトが認められています。上限まで働いて、収入は月12万円ほど。ここから学費や家賃、生活費を支払えばほとんどお金は残りません。

牛丼屋の時給は1200円。夜10時以降になれば、1500円。少しでも高い時給がもらいたい。深夜帯に留学生が多いのは、そんな理由があるからです。

この日、ランさんの勤務は午後11時から翌朝5時まで。もう1人のアルバイトも、ベトナム人の男子大学生。日本人のスタッフはゼロでした。

やがて店内に1人の若者がやってきました。コールセンターで夜勤をしているというモンゴル人の男性(27)。休憩中に腹ごしらえに来たそうです。

「お水、もらえますか」 「少々お待ち下さい」

外国人同士が日本語でやりとりをする……。こんな光景は、もはや珍しくない時代になってきています。

留学生アルバイトは「紹介制」
取材を続けようと、再び夜の街へ。次に入ったのはコンビニです。

客のいない店内。黙々と商品を棚に補充していたのはウズベキスタン人のベクさん(22)。昨年4月から都内の日本語学校に通う学生です。

かつては中国人や韓国人などが多かった留学生。しかし近年、ベトナム人を中心に広くアジア圏の学生が急増しています。中国などの経済発展が進んだ一方、東南アジアなど発展途上の国からの留学生が増えているのです。

ベトナムやネパールを筆頭に、スリランカやバングラデシュ、ミャンマー、モンゴルなど夜の東京では多様な顔ぶれに出会います。

この10年でベトナム人留学生は19倍、ネパール人は13倍に増加。ウズベキスタン人も6倍以上になっています。

 「ベクさんはなぜこの店に?」 「お兄さんたちが働いていたので、紹介してもらいました」

よく聞くと、「お兄さん」というのは同郷の先輩のこと。(中略)

実は外国人アルバイトはよく職場で「重宝」されています。理由は、働きぶりもよく、仲間のアルバイトを連れてきてくれるから。日本の若者が減るなかで、「友達を紹介して」と店長に頼まれる留学生も多いといいます。(中略)

外国人がつくる「不夜城」

この国が、いかに「アルバイト留学生」に支えられているか……。夜の東京を歩くと、それを思い知らされます。

いま、日本は深刻な労働力不足に直面しています。留学生なくしては、コンビニも牛丼屋も24時間営業を維持できないのは確実でしょう。

安い弁当を食べられるのも、新聞が毎朝自宅に届くのも、留学生たちのおかげです。日本語がまだ上達していない学生たちは、倉庫などで単純作業のアルバイトに励んでいます。

日本の制度では、「外国人労働者」を受け入れられる職種は限られます。だから、各業界は「アルバイト」に目をつけました。

本来は勉学のために来日した留学生をアルバイトとして雇うのは、「抜け道」だとの批判もあります。勉強よりアルバイトが優先になる本末転倒な留学生も生んでいるからです。

「世界に向けてより開かれた国」を目指し、日本は留学生受け入れを進めてきました。その結果、留学生数は30万人を突破しました。しかし同時に、「労働力」としての留学生に依存する社会をつくり出すことにもなったのです。【11月21日 withnews】
*****************

【現状の問題点を隠蔽するかのような「ミス」の不思議】
現在、外国人労働者の受け入れ拡大を目指す法案が国会で審議されているのは周知のところですが、議論の重要な資料となる失踪外国人技能実習生への聞き取り調査結果に誤りがあったことも問題となっています。

****国の失踪実習生の調査に誤り 理由が賃金87%→67%****
(中略)政府が16日の同委理事懇談会で明らかにした誤りは、失踪した外国人技能実習生への2017年の聞き取り調査結果。7日の参院予算委で山下貴司法相は「より高い賃金を求めた失踪が約87%」と答弁していた。

だが、法務省の実際の調査結果は「低賃金」による失踪が「約67%」で、山下氏の答弁は項目名も数値も違っていた。(中略)

政府が修正した外国人技能実習生の失踪理由
【項目名も数値も違う】
×「より高い賃金を求めて」86.9% → ○「低賃金」67.2%
     
【数値が違う】
「指導が厳しい」×5.4% → ○12.6%      【11月16日 朝日】
*****************

「より高い賃金を求めて」と言うと、失踪外国人の身勝手な理由で・・・というイメージになりますが、実際は“「低賃金」が1929人と約67%を占めた。このうち、法令違反に当たる「低賃金(契約賃金以下)」は144人、「低賃金(最低賃金以下)」は22人だった。”【11月20日 朝日】と、契約違反・法令違反の低賃金も多く含まれているようです。

間違いは誰でも犯すものとは言いつつも、どうしてこのような間違いが起きるるのか不思議です。
しかも、現状の問題点を覆い隠そうとする方向のバイアスがかかった誤りが・・・

現状の問題点を洗い出し、その改善を図ったうえで拡大する・・・というのが正論でしょう。
そうしないと、外国人労働者にとっては苛酷な、また、日本にとっても不名誉な「奴隷労働」を拡大し、結果的に「失踪」などが増加し、犯罪などへ関係する外国人も増えるといったことにもなりかねません。

そして、そのような流れは、国民の外国人への反感を高め、社会の深刻な変質をもたらすことにもなります。

****月給数万円、借金100万円…失踪した技能実習生の実態****
外国人労働者の受け入れ拡大のための出入国管理法の改正案に関連し、法務省は19日、受け入れ先の企業などから逃げ出した外国人技能実習生2870人への聞き取り調査の詳細を衆院法務委員会の理事らに示した。

実習生の多くが月給を「10万円以下」、母国の送り出し機関に支払った額は「100万円以上」と回答しており、「国際貢献」をうたいながら「安価な労働力」として酷使されている実態の一端が浮かんだ。(中略)
 
失踪理由では(「低賃金」の)他に「実習終了後も稼働したい」が510人、「指導が厳しい」が362人、「労働時間が長い」が203人、「暴力を受けた」が142人だった。(中略)
 
実習生は違法な長時間労働などの不正が社会問題となり、昨秋に施行された技能実習適正化法で受け入れ先への監督を強化するなどしている。

だが、今年上半期(1~6月)にも4279人と過去最高のペースで失踪が起きており、効果は見えていない。野党側は技能実習制度に問題があるとして、国会でも追及する方針だ。
 
技能実習制度に詳しい川上資人弁護士は「本来は失踪者に限らず、全ての技能実習生から聞き取り、制度改善につなげるべきだ。多額の保証金や手数料を課す、悪質な仲介業者の排除が必要だ」と指摘する。【11月20日 朝日】
*****************

単に低賃金だけでなく、本人に説明なく「除染」などの危険な仕事を行わせる・・・といったこともあるようです。

****「誰でもできる」教えられた技能は「除染」だった ベトナム人実習生が見た日本の地獄****
「外国人技能実習制度」が問題になっています。本来の目的は日本で働きながら技能を身につける「途上国への技術移転」。

けれどその実態は、農業や漁業、建設など人手不足の現場で、日本社会を支えるために働いています。一方で「実習先」によっては、地獄を見る実習生もいます。働ける3年の間、日本での実習の明暗を見た、とあるベトナム人青年の思いをたどりました。(中略)

(ベトナム人実習生)カインさんに割り当てられたのは、放射性物質が付いた可能性があるものを取り除く「除染」と呼ばれる作業でした。

実習生の受け入れ窓口である監理団体の代表からは「仕事は簡単。だれでもできる」としか説明されませんでした。「私は日本語はできなかったし、通訳もいなかった」。もちろん「除染」の話は出ませんでした。

その後、岩手県釜石市に移り、住宅解体工事などをしました。16年9月には再び福島県に。避難指示区域だった同県川俣町で、国直轄の建物解体工事に従事しました。

スコップで落ち葉などを集めました。このとき心が騒いだと言います。住民の姿が見えない町。マスクをつけないと仕事場に近づけない。

「特別手当」を渡されたとき、さすがに「親方、これは何ですか」と聞いたら「危険手当だ」と返されました。驚き、「どんな危険があるんですか」と食い下がると、「嫌なら帰れ」の一言で話を打ち切られたそうです。
 
「何かおかしい」。不安が膨らむ中で、それでも約4カ月、働き続けたと言います。

「分かっていたら、絶対日本に来なかった」

手取りは12万円程度でした。でも、働かざるを得ない理由がありました。日本に来るため、銀行から借りた100万円超。ベトナムの平均年収で、数年分を返済しなければならなかったからです。それに、実習生は自由に勤務先を変えることもできません。与えられた仕事をこなすしか道はなかったのです。

17年に入り、福島県飯舘村、山形県東根市、仙台市と転々とした後、3月にまた川俣町で約2カ月間、建物解体作業をしました。直後に、知りあったジャーナリストから「除染は危ない」と忠告され、初めて放射能のリスクを知りました。11月22日、寮を飛び出し、支援者が運営する郡山市の保護施設に身を寄せました。

「危険な作業だと分かっていたら絶対に日本に来なかった」。そう私に悔しがったカインさん。インタビューを受けた18年3月、上野公園で外国人労働者の支援集会に参加し、ステージ上で「告発文」を読み上げました。

「郡山で除染の仕事をしました」「自分の体がどうなってしまうのか、とても心配です」(中略)

事態が動いたのは、カインさんが3月に東京・上野公園で告白のスピーチをして間もなくでした。新聞やテレビが「除染実習生」と大々的に報じ、国も重い腰を上げました。

「除染作業は技能実習の趣旨にそぐわない。これからは除染作業を含む実習計画は認めない」と発表しました。(後略)【11月18日 withnews】
******************

【日本は「選ばれる国」か?】
こうした外国人労働者の置かれている「使い捨て」状態を改善していかないと、政府・産業界が期待する人材を日本に呼び集めることも難しくなります。

****(多民社会)日本は「選ばれる国」か 人手補う外国人、五輪工事も****
人口減少と高齢化、そして現役世代の減少にさいなまれている国は、日本だけではない。世界的規模での人材争奪競争は、すでに始まっている。日本は「選ばれる国」なのか。(中略)
 
 ■ベトナム出稼ぎ、人気は台湾
ひなびた農村とは似合わぬ立派な家が通りに並ぶ。ベトナムの首都ハノイから車で2時間弱。フートー省ビンライは、外国への「出稼ぎ村」だ。豪華な家屋と裏腹に人通りは少ない。人口の3分の1の2900人、特に35歳以下の若者の多くが外国で働く。
 
「うちは台湾、隣は韓国。あっちは日本だ」と住民が近所の家々を指さした。それぞれ、建設費を稼いだ場所だという。村では20年前からドイツやロシアへの出稼ぎが始まった。近年人気なのは台湾。日本や韓国も続く。

(中略)今は「出稼ぎブーム」に沸いているようにみえるベトナムだが、梅田大使は「5年、10年経てばベトナムでも高齢化が進み、介護職などの需要が増える。いつまでも今のようにはいかないだろう」と言う。(中略)

 ■人材争奪戦、次はミャンマー
競争が激しいベトナムに見切りを付け、ほかの国に人手を見いだそうという動きも出ている。
ミャンマーの古都バゴー。今月、日本の介護の技術などを紹介するセミナーが開かれた。地元の介護職員ら約50人が参加し、実演に身を乗り出して見入る。(中略)

 ■日本は囲い込み
ミャンマー政府とセミナーを共催した日系の人材紹介派遣会社ジェイサットの狙いは、日本へ送り出す人材の「囲い込み」だ。西垣充代表は「日本の介護はやはり違うとわかってもらえた」と笑みを見せた。
 
日本政府は昨年、技能実習制度に介護を追加したが、人材供給を期待していたベトナムには、介護・看護人材の獲得を進めるドイツが食い込んでいる。労働条件や賃金などで、日本はドイツに太刀打ちできないと西垣さんは考える。「ドイツは早晩ミャンマーにも手を伸ばすだろう。台湾やシンガポールも。その前に日本ファンを作るのが大切」

 ■待遇改善、韓国が先行
韓国は04年、単純労働を認める雇用許可制(EPS)を導入した。
 
以前は日本の技能実習制度を参考に「産業研修生制度」を導入していた。だが不法滞在や賃金の未払いが相次ぎ、EPSに切り替えた。「移民は受け入れない」という点は日本と同じだが、労働者を送り出すベトナムやフィリピンなど計16カ国と国同士で協定を結ぶ。
 
外国人労働者は韓国政府が運営する就労支援センターに登録。政府が各企業に割り当てる。悪質な企業は排除され、法外な手数料をとる「ブローカー」が暗躍する余地もない。(中略)
 
EPSの申請手続きを代行する「中小企業中央会」外国人労働者支援部のチョ・ジュノ副部長は自負する。「たとえ、国際的な人材獲得競争が激化しても、外国人はこの国に集まる」
 
 ■<視点>「使い捨て」しない国に
「外国人に選ばれる国をめざす」と菅義偉・官房長官はいう。他国との人材獲得競争には何が必要か?

 移民を分析する時、国際機関などは二つの視点から見る。フロー(流入)とストック(滞在)。どんな人をどれだけ入れるか。そして、どう社会の一員として受け入れ、統合するか。
 
日本政府に欠けているのはストックへの視線だ。
2001年の米同時多発テロの直後、パリ郊外にイスラム過激派を礼賛する若者たちの姿があった。フランスに生まれ育った移民の2世、3世だ。進学も就職もうまくいかない――。取材で浮かび上がったのは「社会の一員になりたいのに拒まれている」という切ない思いだった。
 
英国で移民系の若者がテロに走った時は「多文化主義」への批判が出た。
移民の文化に干渉しないという「寛容」の実態は、無関心と没交渉だった、だから狂信者の接近を見逃したのではないかという反省だ。
 
移民受け入れで先行してきた欧州の試練も、やはりストック面にある。日本政府はその負担を極力避けるため、外国人をいずれ帰国する「出稼ぎ」と位置づける。「移民政策はとらない」と繰り返す。フローの視点のみで乗り切ればよいという考えだろう。
 
だが、それは非人道的なばかりか非現実的だ。
 
英国で移民の境遇を調べた時、日本の非正規雇用の人と重なると感じた。将来が不安定で、家族とも暮らせない雇用の調整弁。日本は「移民は不要」といいながら同胞を「疑似移民」にしてきたのではないか。
 
日本人でも外国人でも、人を労働力としてだけ見て「使い捨て」する国は「選ばれる国」にはなれない。
 
日本の危機は単なる人手不足ではなく、深刻な少子高齢化だ。この国の生活や仕事になじんだ人を手放す余裕などない。【10月29日 朝日】
******************

【外国人従業員が約3千人加入する企業内労働組合】
本来、外国人労働者の境遇に最も関心を払うべきなのは同じ労働者の組合であるはずですが、日本の労組は日本人正規雇用労働者という「恵まれた境遇の労働者」の権益を守る組織という色合いが強くあります。

そうしたなかにあっても、外国人労働者を多く組織した組合も出てきているようです。

****3分の1が外国人、「日高屋」労組結成 組合員9000人、大半が非正社員***
中華料理店「日高屋」を首都圏で約400店展開する「ハイデイ日高」(本社・さいたま市)で、外国人従業員が約3千人加入する企業内労働組合が結成されたことが分かった。

組合員の約3分の1を占めるといい、これだけ多くの外国人が入る労組は極めて異例だ。政府が外国人労働者の受け入れ拡大を進める中、外国人の待遇改善をめざす新たな動きとして注目を集めそうだ。(中略)

国内の労組は、組合員の大半が日本人の正社員で占められてきた。厚生労働省の調査によると、国内の約1千万人の組合員のうち9割が正社員。外国人の数を示すデータはない。

一方、人手不足が深刻な外食や流通業界などで、急増する非正社員を労組に迎え入れる動きが加速している。正社員だけの労組では組織が尻すぼみになりかねないためだ。

外国人の労働事情に詳しい日本国際交流センターの毛受(めんじゅ)敏浩執行理事は「日本の労働市場に、すでに外国人が相当入り込んでいることの表れだ」とみる。

一方で「要求のとりまとめは日本人以上に難しい」(外国人の労働相談を受ける地域労組の代表)との指摘があり、言葉や文化の壁があるなかで組合員の要求をどう集約し、実現していけるかが課題になりそうだ。【11月21日 朝日】
****************

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« インドネシア  大統領選挙... | トップ | アメリカ・トランプ大統領 ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

世相」カテゴリの最新記事