孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

国内外で進む、旧来の概念・枠組みにとらわれないジェンダーフリーの流れ

2019-02-21 23:05:07 | 世相

(丸井の「ジェンダーフリーハウス」には性別を問わないカジュアルウェア40種類以上が並ぶ【2月19日 朝日】とのことです。)

【ジェンダーフリーの売り場も
最近はLGBTといった性的マイノリティーに対する社会の認知も一定に進みつつあるようです。

****LGBT差別禁止を明文化へ 茨城県、都道府県で2例目***
 茨城県は、LGBTなど性的少数者に対しての差別禁止を条例で明文化する。2月開会の県議会で成立した場合、都道府県でLGBTへの差別禁止を明文化するのは東京都に次いで2例目。また、条例とは別に、同性カップルに対して書類を発行するなどの対応も検討している。(後略)【2月1日 朝日】
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****LGBT「パートナー宣誓制度」創設へ 堺市、4月から****
 大阪府堺市は30日、LGBTなど性的少数者のカップルをパートナーと公的に認める制度を4月から始める、と発表した。同様の制度は大阪市や札幌市、兵庫県宝塚市など11自治体で導入されている。(後略)【2月1日 朝日】
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また、大手広告代理店の電通が去年10月、全国の20歳から59歳の男女6万人を対象にLGBTに関する調査を行ったところ、「11人に1人、8.9%がLGBT層である」という結果が出たそうです。

また、上記調査では、東京都が4月から行うLGBTへの差別を禁止する条例に8割以上が賛成で、欧米で広がる同性婚についても、日本での合法化に78.4%が賛成とのこと。

6万人の大規模調査で8.9%というのは、かなりの数値のようにも思えます。

上記のように、LGBTに対する認知は進んでいるようにも見えますが、正面きって「あなたはLGBTを差別しますか?しませんか?」と聞かれたときの反応と、普段実生活における反応はまた違うものがあるのでは・・・という点にも留意する必要があるかも。

こうした風潮を受けて小売業でも、旧来のジェンダーの概念を取り払った形で販路の拡大を目指す企業も出ているようです。

****性別選ばない、安心お買い物 丸井、期間限定の売り場****
男性用、女性用といった性別にとらわれない衣料品などを扱う売り場を丸井グループが都内にお目見えさせた。

体は男性だが心の性は女性、女性向けの店には行きにくい――そんな悩みを持つ、体と心の性が一致しない「トランスジェンダー」の人も安心して買い物ができる空間を目指す。

 ■幅広いサイズや色/人目気にせず化粧
有楽町マルイ(東京都千代田区)にできた新しい売り場は「GENDER FREE HOUSE(ジェンダーフリーハウス)」で、3月3日までの期間限定。約260平方メートルの売り場に男女問わないサイズや色、デザインのカジュアル服が40種類以上並ぶ。パートナーらと利用できる大型の試着室もある。
 
靴では、パンプスは19・5~27センチと大きめのサイズ、ビジネスシューズは22・5~30センチと小さめのサイズもそろえる。スーツはパターンオーダーで作れる。服と靴はこの売り場で選び、丸井のネット通販サイトから購入する。
 
化粧品は、資生堂が化粧水や美容液などのスキンケア商品、口紅などのメイクアップ商品を販売。パーティションで区切られた一角で人目を気にせず、専門スタッフに化粧してもらえる。担当者は「会話しながら希望のメイクを一緒に見つけていきます」という。
 
丸井は2010年からプライベートブランドで通常より幅広いサイズの靴を販売。多くの人の体形をカバーする狙いだったが、トランスジェンダーの人々にも支持されるようになった。
 
今回は一歩進めた取り組みで「売り場や商品を男性、女性と区分けすることで私たちがお客さまを選んでしまっている。時代とともに変化するニーズや社会課題に対応する売り場を作っていきたい」(担当者)という。

売り場のオープン前の催しに参加したトランスジェンダーのナオさんは「女性服売り場や化粧品売り場で買い物するのはハードルが高い。安心して商品を選べるこうした取り組みが増えて欲しい」と話した。
 
衣料品の売れ方にも変化が出ている。コムサを展開するファイブフォックスの「パープル&イエロー」は、ほぼすべての商品が男女どちらも着られるサイズ。大きめサイズをゆったり着るのが女性に流行した影響が大きく、「問題意識の発信はしていない」というが、「ジェンダーにとらわれたくないお客様に選んでもらえていると思う」という。
 
ワールドの「ベースステーション」も大半の商品が男女兼用で「トランスジェンダーの人にも違和感なく着てもらえる」という。【2月19日 朝日】
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今はネット購入を使用すれば、ジェンダーに限定されずに異なる性別向けの商品を購入することは容易になっていますので、単に商品入手という点で見れば、ジェンダーにとらわれない売り場の意味はそう大きくはないかも。

ただ、ジェンダーにとらわれない商品購入が認知された雰囲気がその売り場にあれば、そういう場所での買い物というのはLGBTの人にとっては、単なる商品入手以上の意味合いのある場所にもなるでしょう。

【ドイツ “性分化疾患”を「第三の性」と認定】
目を世界に転じると、LGBT認知の流れは明確になっているようです。(もちろん、抵抗・反動もありますが)

****男性でも女性でもない、ドイツで「第三の性」が可決****
ドイツ連邦議会は昨年12月14日、男性でも女性でもない第三の性とされる「インターセックス(性分化疾患)」を認める改正案を可決した。対象者は、出生届に「多様」を意味する「ディバース」が書き込まれ、欧州で初めて公式認定されることになる。
 
性分化疾患とは、遺伝子的にも解剖学的にも、性が男性でも女性でもない状態のこと。例えば、外見が女性でも、子宮や卵巣がなく、精巣を持ち、多くが女性として一般認識されていく。
 
ドイツ政府は13年、この性別問題の取り組みを開始し、対象となる新生児の出生届で、性別欄の無記入を許可。左右連立のメルケル政権は、17年に改正案に着手した。今回の改正案通過で、当事者は出生届、パスポート、運転免許証など、行政文書に「ディバース」と記載することが可能になる。
 
しかし、対象者が性分化疾患かどうかを判断するには、医師の診断が必要とされ、これを不服とする声もある。「レズビアン・ゲイ連盟」(LSVD)のヘニー・エンゲルス代表は、法改正に対し「政府が社会・心理的観点からでなく、身体的特徴のみで性を判断している」と批判した。
 
その一方で、極右党「ドイツのための選択肢」(AfD)のベアトリクス・フォン・シュトルヒ副党首は、「年齢や体の大きさのように、性別は人間が生まれた時から決まった事実」と述べ、第三の性そのものを否定した。
 
国連の調べによると、性分化疾患者は、世界に0・05〜1・7%の割合で存在し、赤毛人口とほぼ同数だという。
 
ベルギー出身のトップモデル、ハンネ・ギャビー・オディール氏(30歳)は17年、ファッション誌『ボーグ』に対し、自身が性分化疾患者であることを告白した。
 
10歳で精巣を除去し、18歳で女性器手術を受けたオディール氏は「生理の会話や子供を持つこともできないが、かといって男性でもない。でも、インターセックスの自分を誇りに思う」と語っている。
 
世界では、オーストラリアやニュージランドをはじめ、アメリカ(州による)、カナダ、ネパール、パキスタンなどでも、行政文書における第三の性を認めている。今後、さらに認定は進むだろう。
 
しかし難題は、言語学における「ディバース」対象者の扱いのようだ。英語の「He」や「She」のように、男性と女性を明確に使い分ける言語は、性分化疾患者をどう名付けるのか。「Ze」と呼ぶ動きもあるようだが、言葉よりも人間の脳が混乱し、むしろ社会に差別が広がってしまうのではないだろうか。【2月5日 WEDGE】
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先日、体の右半分が真紅(雄の特徴)で、左半分が灰褐色(雌の特徴)という、雌雄キメラのショウジョウコウカンチョウ(猩々紅冠鳥)がアメリカ・ペンシルベニア州見つかったことが話題になりましたが、それにも近い性分化“疾患”という身体的・生物学的問題と、生き方としてのジェンダーフリーとは若干異なるような気もしますが、旧来の枠に押し込まないという点では前進でしょうか。(日本語訳の問題かもしれませんが、“疾患”という表現には抵抗感もありますが)

【警察トップや首相に同性愛者も】
****「多様な職場づくり」に努力 同性愛のロンドン警視庁女性総監****
ロンドン警視庁で初の女性警視総監であるクレシダ・ディック氏は10日、自身が同性愛者だと公にしていることに関連し「さまざまな人種や宗教、性的指向の人々」にとって働きやすい、多様な人たちからなる職場づくりに努力する考えを示した。BBCラジオの番組で語った。
 
ロンドン警視庁で対テロ部門のトップを務めたほか、2012年のロンドン五輪の治安対策にも携わり、17年に約190年の歴史で初の女性警視総監となった。

自身が他人と「ちょっと違う」同性愛者であることで、若者たちにも「自分は人とは違うけどやってみよう」という気持ちにさせていると思うと述べた。【2月11日 共同】
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同性愛者だと公にしている女性が警察組織トップに上り詰めるというのは、日本ではまだ考えられないことですが、世界では警察トップどころか、国家のトップに同性愛者がなることも時折見聞きするようになっています。

2017年5月、トランプ大統領が初参加したNATO首脳会議で撮影された首脳配偶者(いわゆる“ファーストレディー”)の記念集合写真について、米ホワイトハウスが公式フェイスブックで、10名の首脳配偶者のなかで同性婚のルクセンブルク首相のパートナー男性だけ名前を掲載しなかった・・・ということで話題にもなりました。

(なお、“ロサンゼルス・タイムズに対し、ルクセンブルクの20歳の女子学生は「首相のフェイスブックにはしょっちゅう2人の写真がアップされるけど、記事にも見出しにもならない。みんな良い意味で無関心……いまの社会のあらわれなんでしょうね」と話しています。”【2017年05月31日 withnews】とも)

****同性愛公表のセルビア首相、パートナーが男児出産****
セルビア首相府は20日、アナ・ブルナビッチ首相のパートナーの女性が男児を出産したと発表した。ブルナビッチ首相は同性愛者であることを公表しているが、セルビアでは同性婚や同性同士のパートナーシップは法的に認められていない。
 
首相府によると、在任中に同性パートナーが出産した首相は世界で初。母子ともに健康で、地元メディアによると男児は「イゴール」と命名された。
 
ブルナビッチ氏は2017年に首相に指名され、同性愛者であることを公表している数少ない首脳の一人。

しかしセルビアでは同性愛嫌悪の考えが根強く、同氏はLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)をめぐる問題には積極的に発言していない。【2月21日AFP】
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セルビアのような保守的な国で、首相が同性愛者であることを公表できるというのは不思議な話でもあります。

【アジアでは、台湾で同性婚容認の取り組みも】
アジアでは、同性婚に関してはタイ・台湾が先駆的な取り組みを行っています。
ただ、台湾では根強い反対世論があります。

****台湾、同性婚容認の法案 アジアで2例目、根強い反対*****
台湾の行政院(内閣に相当)は21日、同性同士の婚姻を認める特別法案を立法院(国会)に送付した。5月下旬の施行を目指す。

アジアではタイの内閣が昨年12月、同性婚を認めるパートナーシップ法案を議会に送付しており、法案提出は2例目となる。成立時期によっては台湾がアジア初となる可能性がある。
 
台湾の憲法裁判所に相当する司法院大法官会議は2017年5月24日、同性婚を認めない現行の民法は違憲だとの憲法解釈を発表し、2年以内の立法措置を求めた。だが、昨年11月、民法改正による同性婚容認に反対する住民投票が成立し、蔡英文政権は3カ月以内の対応を迫られていた。
 
特別法案では、原則18歳以上の同性2人に「婚姻関係」の戸籍登録を認め、財産についても民法の夫婦間の規定を準用する。ただ、どちらかの実子を除き養子縁組は認めない。

 蘇貞昌(そ・ていしょう)行政院長は法案を決めた行政院会議(閣議)で「この一歩は歴史に記録される」と評価したが、法案の名称から「同性婚」を除くなど、根強い反対派への配慮も伺わせた。
 
台湾では2003年以降、毎年秋に台北でアジア最大の性的少数者(LGBT)パレードが開かれるなどしており、蔡総統も同性婚容認を表明してきた。

ただ、17年の憲法解釈以降、賛成と反対の両派がデモを行うなど対立が深まり、昨年11月の住民投票では民法改正による同性婚容認案が否決された。【2月21日 産経】
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こうして見ると、日本社会・政治はかなり保守的なのかも・・・と思えます。
伝統的な男女の役割分担・家族観といったものに固執しているところに、日本の出生率が上向かない原因のひとつがあるようにも。某副総理は反対でしょうが。


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