孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウクライナ ロシアへの対抗姿勢を強めるアメリカ ロシアは「欧米はヒステリー状態 責任は欧米に」

2022-01-25 23:50:58 | 欧州情勢
(18日、ロシアが実効支配するウクライナ南部クリミア半島を移動するロシア軍の装甲車両の列【1月23日 東京】)

【アメリカの大使館職員家族退避命令に慌てるウクライナ外務省 ロシア「欧米はヒステリー状態」】
緊張が高まるウクライナ情勢に関するここ数日の“山ほどある”報道のなかで、一番興味深かったのが、アメリカの大使館職員家族への出国命令に対するウクライナ側の「いや、いや。ちょっと待って」といった反応。

****米大使館の退避措置は「時期尚早」=ウクライナ外務省****
ウクライナ外務省は、ロシアが軍事行動を取る恐れがあるとして、米政府が在ウクライナ大使館職員の家族に出国を命じたことについて「時期尚早で過剰な警戒」との見解を示した。

ウクライナ外務省は声明で「実際のところ、安全保障面で最近の状況に根本的な変化はない。ロシアの新たな侵攻の脅威は2014年から常にある。国境付近へのロシア軍増派は昨年4月に始まった」と述べた。

欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は24日、ウクライナに駐在する外交官の家族に退避命令を出すことは現時点で計画していないと述べた。【1月24日 ロイター】
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ウクライナ国境に10万人規模の軍を集結させ、いつでも侵攻が可能な状況を作り出しているのはロシアですが、そのロシアは当然ながら侵攻の意思はないことを主張し、危機をつくり出しているのは欧米の方だとしています。

****ウクライナ緊迫化は米欧に責任=「ヒステリー」とロシア****
ロシアのペスコフ大統領報道官は24日、ウクライナ情勢の緊迫化は「米国や北大西洋条約機構(NATO)の情報活動や具体的行動」を通じて引き起こされていると述べ、「情報のヒステリー」が起きていると批判した。インタファクス通信が報じた。
 
ペスコフ氏は、大量の偽情報やうそによって「ヒステリー」状態となっていると指摘。NATOが東欧の防衛力増強を発表したことも緊張を高めていると非難し、「ロシアの行動が原因ではない」と述べた。【1月24日 時事】 
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一方で、ウクライナ・欧米はロシアの侵攻の可能性を声高に主張してきました。

****ロシア、ウクライナ東部ハリコフ占領の恐れ=ゼレンスキー大統領****
ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、ロシアがウクライナを侵攻すれば東部の都市ハリコフを占領する可能性があり、これをきっかけに「大規模な戦争」が勃発する恐れがあるとの考えを示した。

ゼレンスキー大統領は米紙ワシントン・ポストに対し「ロシアが一段のエスカレーションに動けば、伝統的にロシアとのつながりのある人々が暮らしている地域に対する行動を起こす」との見方を示し、「ハリコフはウクライナ政府の統治下にあるが、ロシアはロシア語を話す住民の保護を口実に占領する可能性がある」と述べた。

その上で、2014年のロシアによるクリミア併合を踏まえると、こうしたシナリオは現実味があるとし、「単なる占領ではなく、大規模な戦争のきっかけになる」との懸念を示した。

ハリコフはロシアとの国境から42キロの地点にあるウクライナ第2の都市。ソ連時代の1919年から1933年までウクライナの首都だった。人口は約140万人で、戦車やトラクター、電子機器などの製造業が集積している。【1月22日 ロイター】
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ウクライナはことあるごとにロシアの脅威を煽ることで、自国ウクライナの存在を欧米にアピールしてきた・・・という評価もありますが、それはともかく、上記ゼレンスキー大統領の発言と2.3日後のウクライナ外務省の「実際のところ、安全保障面で最近の状況に根本的な変化はない。ロシアの新たな侵攻の脅威は2014年から常にある。国境付近へのロシア軍増派は昨年4月に始まった」という声明にはギャップがありすぎる感も。

これまでは本当に戦争になるとは思っていなかったけど、過度に緊張が高まり、このままでは本当に戦争に突き進んでいってしまうような恐怖を感じて・・・・というところでしょうか?

それとも、欧米大使館職員・家族の退避が進んで、これまで以上にロシアが侵攻しやすくなる状況を恐れてでしょうか?

あるいは、(アフガニスタンのように)欧米から見捨てられるような恐怖でしょうか?

そのあたりはよくわかりませんが、ウクライナがロシアとの戦争を恐れるのは当然のことです。アメリカ・欧州はことあるごとにウクライナを支援するとは言ってくれますが、NATO加盟国でもないウクライナに直接軍を投入してロシアと戦火を交えてはくれません。ロシア軍と対峙するのはあくまでもウクライナです。

【“侵攻ありき”でロシアへの警戒態勢を強化するアメリカ・NATO】
欧米、特にアメリカ・バイデン大統領はロシア侵攻を既定事実とするかのようにヒートアップしています。

****バイデン氏「露はウクライナ侵攻するだろう」 就任1年で記者会見****
バイデン米大統領は19日、就任から20日で1年となるのを前にホワイトハウスで記者会見し、緊迫化するウクライナ情勢について、プーチン露大統領がウクライナ侵攻に踏み切るだろうとの見方を示した。

また、プーチン氏は同国での「全面戦争は望んでいない」とし、首脳会談の可能性を含めた外交的協議による危機回避を図る考えを強調した。

バイデン氏は、ウクライナ防衛をめぐり、プーチン氏が「米国と北大西洋条約機構(NATO)を試そうとしている」と指摘し、「私の推測ではプーチン氏は侵攻すると思う」と語った。また同氏はその場合、「深刻な代償を払って後悔することになるだろう」として、軍事侵攻に対しては強力な制裁を発動すると警告した。

一方でバイデン氏は、ウクライナ国境付近に集結している10万人規模のロシア軍の動きは「プーチン氏1人の決定次第だ」とし、侵攻の最終決断は「下されていないだろう」とも述べた。【1月20日 産経】
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このバイデン発言には、「小規模な侵攻」であれば、代償も小規模にとどまる可能性を示唆した部分があり、ウクライナが「侵攻に小規模も大規模もない。すべて侵攻だ。」と反発、バイデン米大統領は20日、「いかなるロシア軍部隊でもウクライナに越境すれば侵攻だ」と修正することにも。

その後、冒頭のウクライナ外務省声明にもなった米大使館員家族に退避命令。
これについては欧州側は認識の違いを見せています。

****EU、駐ウクライナ外交官家族の退避計画せず****
欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は、ウクライナに駐在する外交官の家族に退避命令を出すことは現時点で計画していないと述べた。

これに先立ち、米国務省は23日、ロシアが軍事行動を取る恐れがあるとして、在ウクライナ大使館職員の家族に出国を命じたと発表した。

ボレル氏は記者団に「具体的な理由がわからないため、同じ措置は講じない。ブリンケン(米国務)長官から説明があるだろう」と述べた。この日開催されるEU外相理事会にはブリンケン長官もオンラインで参加する見通し。

ボレル氏は「交渉は続く」とし「ブリンケン長官が(国外退避を)正当化する情報を提供しない限り」退避命令を出す理由はないと述べた。【1月24日 ロイター】
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日本政府は、“ウクライナ全土の危険情報をレベル3の渡航中止勧告に引き上げました。これまでは大半の地域を十分な注意を求めるレベル1としていました。アメリカやイギリスは、すでに渡航中止にしています。”【1月25日 テレ朝NEWS】

更に、今日各メディアが取り上げている、米軍派遣準備。
北大西洋条約機構(NATO)の即応部隊の出動が決まった際に同部隊に加わる米軍の準備です。

****米欧首脳、ロシア対応で「結束」=米軍8500人の派遣準備****
バイデン米大統領は24日、ウクライナ情勢の緊迫化を受けて欧州の首脳らとオンライン会合を開き、ロシアが侵攻した際の対応策や東欧の防衛力増強などで「結束」を確認した。米国防総省は8500人規模の地上部隊に警戒態勢を強化するよう命令。北大西洋条約機構(NATO)と連動し、欧州に米軍を増派する方針を示した。
 
ホワイトハウスによると、米欧首脳の会合にはジョンソン英首相やフランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相のほか、ストルテンベルグNATO事務総長や欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長らが出席。ロシアによるウクライナ侵攻を抑止するための協力や、侵攻には強力な制裁で対抗する方針などを話し合った。
 
バイデン氏は会合後、ロシアへの対応で「完全に一致した」と記者団に述べ、「非常に良い会合だった」と強調。AFP通信によれば、英首相府も「ロシアの敵対行為がエスカレートする中、国際的結束の重要性で合意した」と表明した。【1月25日 時事】
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なお、カービー米国防総省報道官は、NATO加盟国ではないウクライナに米軍が派遣される可能性については否定しています。直接アメリカがロシアと交戦する事態は避ける構えです。

欧州はこれまでもウクライナ支援を強めています。
“EU、ウクライナへ緊急支援 約1500億円”【1月24日 共同】

****東欧の防衛力増強=ロシア警戒、戦闘機や軍艦派遣―NATO各国****
北大西洋条約機構(NATO)は24日、ロシア軍による侵攻への警戒が高まるウクライナ情勢をめぐって声明を出し、東欧の防衛力増強のために加盟各国が戦闘機や軍艦、部隊の派遣を進めていると表明した。
 
ストルテンベルグ事務総長は、加盟各国の動きを歓迎し「NATOは東方の強化を含め、加盟国を防衛するために必要なあらゆる措置を講じ続ける」と強調した。【1月24日 時事】
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また、アメリカは直接ウクライナへの部隊派遣はしないものの、すでにバルト三国・イギリスに対し、米国製のミサイルなどをウクライナに移動することを許可しています。

****米、バルト三国にウクライナへのミサイル移動を承認****
複数の関係筋によると、米国務省はバルト三国に対し、米国製のミサイルなどをウクライナに移動することを許可した。

バイデン米大統領は19日、ロシアによるウクライナ侵攻を予測した上で、本格的に軍事侵攻すれば大きな代償を払うことになると語った。

米国から購入した武器を第三国に移す場合、輸出管理規制により、米国務省の承認が必要となる。

関係筋によると、今回の承認により、エストニアは対戦車ミサイル「ジャベリン」を、リトアニアは「スティンガー」ミサイルをウクライナに移すことが可能になる。

米国務省報道官も、エストニア、ラトビア、リトアニア、英国に対し、米国製の装備をウクライナに移すことを認めたと明らかにした。(後略)【1月20日 ロイター】
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2014年当時、ロシアがウクライナ東部に攻勢を仕掛け、クリミアを併合した際には、その直前までウクライナは親ロシア政権であり、欧米はロシアの介入を批判するものの基本的にはウクライナとロシアの揉め事という枠組みでした。しかし、クリミア併合で状況は変わりました。

プーチン大統領が武力で国境線を変更したことで、単にウクライナの問題ではなくなり、その後の欧米側のウクライナ支援の強化もあって、「ロシアの脅威に対する欧州」、あるいはプーチン大統領がしきりにNATOの東方拡大を問題にしているように、「アメリカ主導のNATOとロシアの対立」に枠組みは変化しています。

上記はそういう認識を前提にしてのアメリカ・欧州のロシア侵攻に対抗した措置ですが、こういう状況では(アメリカと直接戦火を交えることはないにしても)ロシア・プーチン大統領にとって侵攻のハードルはクリミア併合当時より格段に高くなっています。

****米軍派遣準備に「大きな懸念」=ロシア報道官****
ロシアのペスコフ大統領報道官は25日、ウクライナ情勢の緊迫化を受け、米国防総省が8500人規模の地上部隊に警戒態勢の強化を命令したことを踏まえ、「米国の行動を大きな懸念を持って注視している」と語り、米国が緊張を高めているとの認識を示した。タス通信が報じた。
 
ペスコフ氏は、北大西洋条約機構(NATO)不拡大などのロシアの要求に米欧が今週書面で回答することを「期待している」と語った。プーチン大統領とフランスのマクロン大統領がウクライナ情勢をめぐり、今週に電話会談することも明らかにした。【1月25日 時事】 
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