孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

欧州新型コロナ対応  過去最多を更新する感染拡大 追加ワクチン接種加速で乗り切る構え

2022-01-08 23:31:15 | 欧州情勢
(パリのシャンゼリゼ通りで先月31日夜、年越しを祝おうと集まった人々。中央奥は凱旋門=ロイター【1月2日 朝日】)

【アメリカ 1日100万人】
感染力の強いオミクロン変異株の影響もあって日本でも感染が爆発的に拡大している新型コロナ、欧米では一足先に急拡大が進んでいます。

アメリカの新型コロナ新規感染者数は1月3日には100万人を超え、その後も70万人~90万人の高水準が続いています。(1月7日は約90万人、直近7日間平均では67万人) そのほとんどはオミクロン株になっています。

****米の1日当たりコロナ新規感染100万人 世界最多 オミクロン95%強****
ロイターの集計によると、米国の3日時点の新型コロナウイルス新規感染者が約100万人に達した。週末分の数字も一部含まれるものの、感染力の強いオミクロン変異株の流行が広がる中、わずか1週間前に記録した世界最多の50万5100人強からほぼ倍増した。

新型コロナ感染症による入院者も先週約50%増加し、現時点で10万人を突破した。10万人超えは1年前の冬以来初めて。

1日当たりの死者は2021年12月から1月初めにかけ平均約1300人。感染者数ほど大幅には増加していない。

米疾病対策センター(CDC)の試算によると、現時点でオミクロン株が米国内の感染全体の95.4%を占める。21年12月25日までの週時点では77%程度だった。

世界保健機関(WHO)幹部は4日、新型コロナウイルスのオミクロン変異株感染による症状が他の変異株に比べ軽度であることを示す一段の証拠が出てきているという認識を示した。

ただ、保健当局はオミクロン感染の拡大で医療機関がひっ迫する恐れがあると警戒している。ワクチンを接種していない感染者などの対応に追われている医療機関も既にある。

ホワイトハウスは4日、5億回分の無償ウイルス検査実施に向け、最終契約段階にあると説明した。国内では検査キットが不足したり検査所の対応が追い付いていないという事態が発生しており、検査体制を拡充してこうした問題を解決する。

米疾病対策センター(CDC)は4日、ファイザー・ビオンテック,製の新型コロナワクチン追加接種(ブースター接種)について、2回目の接種完了からの接種間隔を6カ月から5カ月に短縮するよう奨励した。

食品医薬品局(FDA)も前日、2回目の接種から追加接種するまでの期間を従来の6カ月から5カ月に短縮すると決定した。【1月5日 ロイター】
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アメリカの人口は約3.3億人ですから、「1日100万人」を日本の人口約1.26億人に換算すると、1日約38万人。

アメリカで100万人の感染者が出ているということ自体より、1日100万人もの感染が出ているのに、それほど特別な感じもなく社会が機能していることの方が「すごい!」って感じです。日本で1にと38万人になったら、大パニック状態になるのかも。

【アメリカと同等、それ以上の欧州 厳しい行動規制は行わず、ワクチンの追加接種加速で乗り切る構え】
人口比で見るなら、「100万人」のアメリカ以上に多いのが欧州。各国が軒並み「過去最多」を更新しています。

****欧米での感染急拡大に歯止めかからず、英仏伊で過去最多…「100万人」の米より高い水準****
フランス、英国、イタリアで4日、新型コロナウイルスの新規感染者が過去最多を更新した。(中略)
 
4日の発表によると、1日当たりの新規感染者は、フランスで27万1686人、英国では21万8724人、イタリアで17万844人だった。新規感染者が人口に占める割合で比べると、仏英伊は米国と同程度か、より高い水準で、深刻な事態となっている。
 
フランスでは4日発表の病院での死者が293人に上った。4日時点の入院患者は約2万人となっており、うち約3700人が集中治療を受けている。感染者の大半はオミクロン株によるとみられているが、デルタ株の流行も続いている模様だ。仏政府は今後、医療体制が逼迫ひっぱくする恐れもあるとみている。
 
仏英伊は経済的な影響が大きいロックダウン(都市封鎖)は行わず、ワクチンの追加接種で乗り切る構えだ。仏政府は接種を事実上義務化する法案を国会に提出している。(後略)【1月5日 読売】
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英仏伊だけでなく、他の欧州各国も同様です。(陸続きで人の往来がありますので、当たり前ですが)
“欧州でコロナ拡大止まらず、伊・オランダ・北欧の感染者過去最多”【1月6日 ロイター】

基本的には各国は、オミクロン株の重症化リスクが比較的小さいということもあって、市民生活を極度に制約するロックダウンのようなハードな対策は行わず、ワクチンの追加接種加速で乗り切る構えです。

そうした中で、未接種が存在する状況への苛立ちをストレートに表現したのがフランス(5日は33万人と記録更新)のマクロン大統領。

****マクロン氏「未接種者を規制でうんざりさせてやる」 下品表現に批判***
フランスのマクロン大統領が5日付の地元紙のインタビューで、新型コロナウイルスのワクチン未接種者を「うんざりさせてやる」と発言した。高圧的で下品な表現に対し、野党や市民の間では反発の声が上がっている。
 
マクロン氏はパリジャン紙で、未接種者が病床を圧迫し、がん患者らの手術が先送りされているとの看護師女性の訴えに答える形で、「未接種者を減らす。そのために規制をかけまくってうんざりさせてやる」「ワクチン反対派は倫理に欠ける。もはや市民ではない」と発言した。
 
この発言を野党議員らは「国民を分断している」などと問題視し、マクロン政権が提出したワクチン接種者だけに飲食店や映画館などの利用を認める法案の国会審議が一時ストップした。マクロン氏はワクチン接種を新型コロナ対策の柱に位置付けており、政権の閣僚らは発言を擁護した。
 
マクロン氏の「うんざりさせる」という言葉使いがフランス語で「くそ」という意味の俗語に由来する下品な表現だったことで、市民の反感も招いている。仏放送局BFMの世論調査では、大統領の今回の発言に53%が「ショックを受けた」と答えた。
 
フランスでは、12歳以上の91%が少なくとも1回は接種を受けた。一方、未接種者は約510万人いる。仏紙ルモンドによると、12月中旬に病院で集中治療を受けた新型コロナの患者数は、未接種者が接種完了者の17倍に上った。(後略)【1月6日 毎日】
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野党や国民から「大統領が使う言葉ではない」「国民を分断するな」などと批判されていますが、(鼻っ柱が強い)マクロン大統領は発言撤回を拒否し「私は全責任を負う」と語っています。
また、ワクチン接種者が記録的に増加したと大統領発言の“効果”を指摘する向きも。

****仏大統領、反ワクチン派「敵視」発言 接種者増の効果も****
フランスのマクロン大統領が新型コロナウイルスのワクチン接種を促すため、5日付パリジャン紙で「接種拒否者をウンザリさせてやりたい」と述べた。国民の一部を敵視するような発言に衝撃が広がる中、政府はワクチン接種者が記録的に増加したとして、大統領発言の効果を強調している。

マクロン氏はワクチン接種拒否者について、「一部の少数派が逆らっている。彼らを減らすには、もっとウンザリさせることだ」と主張。政府が成立を目指すワクチン法案には、社会生活を難しくすることで接種に追い込む狙いがあると説明した。法案は、飲食店や長距離列車で接種証明の提示を義務付けている。

下院では「大統領が国民を分断してよいのか」と野党から批判が上がり、法案審議が紛糾。世論調査では、53%がマクロン氏の発言に「ショックを受けた」と答えた。

一方、ベラン保健相は5日夜に下院で、「最初のワクチン接種を決めた人が、今日だけで6万6000人にのぼった。この調子で70〜75日間続けば、国民全員を重症化から守れる」と訴えた。
フランスで、2度の接種を完了した人は国民の77%で、頭打ちになっていた。

仏紙ルモンドは、政府の接種拡大の努力を評価する一方、大統領の手法には「攻撃的な態度で、ポピュリズム(大衆迎合主義)に飛びついた」と疑問視した。仏政府の6日の発表によると、1日当たりの新規感染者は26万人で、高水準が続いている。【1月7日 産経】
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苛立っているのはマクロン仏大統領だけでなく、ジョンソン英首相も同じ。
「ソーシャルメディアで『マンボジャンボ(無意味で訳の分からない言葉)』を広げている」
「医師や看護師が大変な思いをしているのに、ワクチン接種に関して全くナンセンスなことを吹き込んでいる連中がいるのは悲劇だ」
「絶対的に間違っている。完全に非生産的だ」と反ワクチン派を痛烈に批判しています。【1月7日 時事より】

【ワクチン接種義務化も】
欧州各国ではワクチン接種義務化の流れも進んでいます。

****イタリア、50歳以上にワクチン接種を義務化 新型コロナ拡大で****
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、イタリア政府は5日、50歳以上の一般の人にワクチン接種を義務づけることを決めた。同国の新規感染者数はこの日過去最多の18万9109人を記録。これまで医療従事者や学校の教員ら特定の職業を対象に接種義務を課していたが、接種者を増やして感染の抑え込みをめざす。

感染拡大が続く欧州では、各国がワクチン接種を義務化する方針を掲げる。ギリシャは60歳以上に義務化し、今月半ば以降も未接種なら100ユーロ(約1万3100円)の罰金を科す。また、オーストリアやドイツは2月以降一般の人に義務化していく予定だ。
 
イタリアでは必要な回数のワクチンを打った人の割合は約86%と高いが、頭打ちが続く。政府は2月から、接種済みの人や、感染から回復した人向けの証明書の有効期限を9カ月から6カ月に短縮し、追加接種を促す方針だ。【1月6日 朝日】
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【感染者数増加には冷静なイギリス】
ただ、イギリスなど各国は前述のように厳しい行動規制強化は避けています。
そうした判断への医療現場などからの批判もあります。

****「規制強化せず」めぐり英で賛否 医療現場は緊急事態、兵士動員も―新型コロナ****
新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」がまん延する英国で、厳しい規制を敷かず「ウイルスとの共存」を目指す政府方針の是非をめぐり、議論が起きている。

経済重視派が賛同する一方、感染者急増が続けば医療崩壊につながりかねず、「(感染阻止へ)さらなる行動」を求める声も強い。

ジョンソン英首相、反ワクチン派を痛烈批判 接種停滞にいら立ち
英国では先月末以降、1日当たりの新規感染者が15万~20万人前後の高水準で推移。一方、死者や重症者は1年前のピーク時に比べ抑えられている。ジョンソン首相は4日、「(現行の態勢で)オミクロンの波を乗り切れる」として、人口の大半を占めるイングランドで当面、新たな行動規制を導入しない方針を表明した。
 
規制はマスク着用など限定的なものにとどまり、年明けのロックダウン(都市封鎖)や学校閉鎖を心配していた国民は、ひとまず胸をなで下ろした。(中略)
 
一方、医療現場では感染拡大に伴う医師やスタッフの不足が深刻化しており、6日までに少なくとも24医療機関が「緊急事態」に陥ったと宣言した。

人員不足が顕著なロンドンの病院は、対応のため医療部隊を含む兵士200人が派遣される事態に。英紙によると、国営医療制度「国民保健サービス(NHS)」幹部は「(現場は)これまでになく追い込まれている」と危機感を表明。元閣僚の一人も「(規制強化されないまま)NHSが崩壊すれば、首相は重大な困難に直面する」と警告した。【1月8日 時事】
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昨年ロックダウンを経験した欧州では、再び市民生活を厳しく規制すると不満が爆発して政府批判に向かいかねない・・・という政治的思惑もあってのことでしょう。

特にイギリス・ジョンソン首相は、一昨年末の市民に規制を強いている最中に首相周辺はクリスマスパーティーを開いていたとの“クリパ疑惑”で、首相としての資質を問われてもいますので、市民に再び規制を求めるのは難しいところでしょう。

そうした政府側の事情もありますが、市民も感染者増加を冷静に受け止めているようです。

****「日本の報道を見ると感染者数に重きを置いている印象だ」 感染者数連日20万人超のイギリス、停滞する経済活動への対策に重点****
新型コロナウイルスの新規感染者が連日20万人前後に上るイギリスでは、隔離による職員の欠勤が相次ぎ鉄道や飲食業界への影響が広がっている。

イギリスでは連日20万人前後の新規感染が確認されている影響で、約100万人が自主隔離を余儀なくされている。このため労働者不足が深刻化し、鉄道の減便などが相次いでいる。
 
これを受け、政府は自宅でも受けられる簡易検査で陽性だった場合、PCR検査を受けずに隔離に入る方針に変更した。隔離までの期間を短くすることで経済活動への影響を抑える狙いがある。
 
そんなイギリスの現状について、ANNロンドン支局の山上暢記者が伝える。
Q.イギリスの現在の対策は?
感染を防ぐ対策というよりも、感染による経済活動の停滞をどうするかという対策に舵を切っている。(中略)

確かに感染状況は悪化しているように見えるが、重症者や入院患者の数は去年1月のピーク時に比べたらかなり少なく、ジョンソン首相もそういったことを根拠にロックダウンを見送ると話している。感染者数の増加によって停滞してしまっている経済活動をどう動かしていくかに重きが置かれている。

Q.医療現場はひっ迫していないということ?
イギリスの地方で働いている看護師にうかがうと、「去年の1月やパンデミックが始まった2020年3月ごろに比べると、かなり余裕がある状態だ」と話していた。患者の治療という面ではそうだが、医療従事者への感染が広がれば当然欠勤せざるを得ないので、人繰りの面で大変になってきているということだ。

Q.感染者が急拡大する中で人々の危機感は?
街中で人々に話を聞くと、「感染者を減らさなきゃ」といった危機感を持っている人は少ない印象だ。それはやはり、重症化している人が少ないということや、ブースター接種が対象者の6割まで進んでいることが背景にある。

「自分たちはかかってもそこまで重症化しないという安心感があるんだ」「鉄道の減便などの影響は大変だが、そこまで恐れすぎる必要はないのではないか」と話す人もいた。
 
やはり、イギリスの人と日本の人とではかなり感覚が異なると思う。重症化しにくい傾向のなかで、経済も回さないといけないという、そのバランスをどうとっていくか。

日本の報道を見ていると、「感染者数何千人超え」などとそこ(感染者数)に重きを置いていて、重症者や入院患者の数はそこまで気にしていない印象だ。

重症者や入院患者の数、死者がそこまで増えていないというのを、ジョンソン首相はかなり強調していて、日本とイギリスで政府が掲げる方針の違いもあると思う。【1月8日 ABEMA TIMES】
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【ドイツ 追加接種加速の一方で、社会・経済活動が滞らないよう、隔離期間は短縮】
ドイツでも追加ワクチン接種加速を促すべく、飲食店やカフェなどを利用するには、ワクチンを2回接種していても検査で陰性を証明するか、3回目の追加接種を受けていることを条件にしています。

****ドイツの飲食店、2回接種でも陰性証明必要に 追加接種受ければOK****
ドイツのショルツ首相は7日、州首相らとの会議で新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための規制強化策で合意した。飲食店やカフェなどを利用するには、ワクチンを2回接種していても検査で陰性を証明するか、3回目の追加接種を受けていることを条件にした。できるだけ早くワクチン接種者を増やす狙いだ。
 
ドイツでも変異株のオミクロン株への感染者が急増。減少傾向にあった1日あたりの新規感染者数は再び6万人台まで増えている。
 
ただ、追加接種で感染リスクは大幅に減らせるとの見立てから、特に飲食店やカフェ、バーなどを利用する際、2回のワクチン接種だけでは不十分だとする規制に踏み込んだ。
 
会議後に記者会見したショルツ氏は「厳しい規制だ」としつつ、「ワクチン接種を続ければ多くの市民を守ることができるだろう」と語った。
 
生活必需品を除く商店や文化・娯楽施設への入場などは、2回接種者か感染からの回復者のみとする規制を続ける。クラブやディスコの閉鎖、私的な集まりの人数制限も続ける。
 
一方で、社会・経済活動が滞らないよう、隔離期間は短くすることにした。感染者や濃厚接触者の隔離期間は14日から原則10日に。追加接種を受けた人は濃厚接触者になっても、隔離が要らなくなる。
 
ドイツでは7日時点で、2回のワクチン接種を終えたのは人口の71・6%、追加接種を受けたのは同41・6%となっている。【1月8日 朝日】
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【達観して動かない?日本政府 相変わらずの自粛頼み】
翻って日本の状況を見ると、連日「新規感染者が急激に拡大」というニュースばかりで、ワクチン接種を加速するとか、規制を強化するとか、あるいは経済を回すためにはどうするといった、明確な方針があまり見えないようにも。

まん延防止や緊急事態宣言も国民への自粛お願いが中心で、「政府として、どうするのか?」という方向性が不明瞭なようにも。

まあ、前回第5波までの経験からすると、感染が拡大するときは何をやっても拡大するし、収束するときは特に何もしなくても何故か収まる・・・という自律性があるようですから、そのあたりを達観しての、ジタバタしない、従順な国民の自粛で乗り切るという政策対応でしょうか。

せめて、追加接種加速の意思を明確にしてほしいのですが・・・ワクチンを確保できていないので、できないのでしょか。
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