孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー対応でASEAN内部に不和も 国軍支配から1年、2月1日に「沈黙の抵抗」の呼びかけ

2022-01-27 23:37:38 | ミャンマー
(26日、カンボジアの首都プノンペン郊外のタクマウで、オンライン会談に臨むフン・セン首相(左)とミャンマー国軍のミンアウンフライン総司令官=カンボジア政府提供(AFP)【1月27日 時事】)


【国軍支配のもとで続く武装勢力との戦闘、民主派への弾圧】
ミャンマー情勢については、1月11日ブログ“ミャンマー  国軍との交渉でこれまでのところ大きな成果を出せていないASEAN・日本外交”で、カンボジアのフン・セン首相がミャンマーを訪問し、ミャンマー国軍のミンアウンフライン総司令官と会談したあたりのところまで取り上げました。

その後もミャンマー情勢は好転していません。

****ミャンマー東部で戦闘激化 僧侶も避難****
ミャンマー東部で、国軍と武装勢力の戦闘が激化しており、多数の避難民が出ている。目撃者によると、16日には主要2都市から僧侶数百人も退避した。

国軍は昨年2月、アウンサンスーチー氏率いる政権をクーデターで追放し、実権を掌握した。大規模な反クーデターデモが繰り広げられたが、国軍はこれを弾圧、これまでに1400人以上が死亡した。
 
東部カヤ州ロイコーでは先週、激しい戦闘が起き、国連は約9万人が避難したと推計している。地元NGOは、避難民は17万人に上るとしている。
 
約5000人は東部シャン州に逃れた。避難に加わった一人の僧侶はAFPに対し、30前後の寺院から僧侶が退避したと語った。ミャンマーでは僧侶は尊敬の対象で、寺院は安全な避難場所とされており、僧侶が退避するのは異例だ。
 
この僧侶によると、ロイコー近くの街デモソにある12の寺院からも僧侶が避難した。
シャン州タウンジーの地元指導者は、少なくとも30人の僧侶が先週、避難してきたと述べた。
 
匿名で取材に応じた警官は、ロイコーでは武力勢力が教会や民家を乗っ取ったり、刑務所を襲撃したりしており、「街はまるで墓場のようになった」と語った。毎日約600台の車がロイコーから避難してきているという。
 
国連によれば、ロイコーとデモソは武力勢力の拠点となっており、昨年12月以降戦闘が激化している。 【1月17日 AFP】
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暴力が武装勢力によるものか、国軍によるものか、双方によるものか・・・そのあたりはわかりません。

****スーチー氏にまた汚職容疑 ミャンマー当局、5件訴追****
国軍がクーデターで全権を握ったミャンマーの当局は14日、ヘリコプター購入などを巡り汚職を働いたとして、軟禁下にあるアウンサンスーチー氏を新たに5件の汚職容疑で訴追した。関係者が明らかにした。別の汚職や国家機密漏えいなどでも訴追されており、これで計17件となった。
 
一部で既に有罪判決が出ており、計6年の禁錮刑が言い渡されている。これまでの訴追容疑が全て有罪になると計100年超の禁錮刑が科される可能性があり、国軍はスーチー氏を徹底排除する姿勢を崩していない。
 
大統領だったウィンミン氏も14日、同様にヘリ購入を巡る汚職容疑で訴追された。【1月14日 共同】
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****スーチー氏政党の元議員、テロ罪で死刑 ミャンマー****
ミャンマーの軍事裁判所は21日、国家顧問だったアウンサンスーチー氏率いる政党「国民民主連盟」のピョーゼヤトー元議員に対し、テロ関連の罪で死刑判決を言い渡した。(中略)
 
軍事政権の発表によると、11月に逮捕されたピョーゼヤトー氏は、「ジミー」の通称で知られる著名民主活動家チョーミンユ氏とともに、反テロ法に基づき死刑を言い渡れた。

同政権はこれまで多数の反クーデター活動家に死刑を宣告しているが、ミャンマーではここ数十年間、死刑が執行されたことはない。 【1月22日 AFP】
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【フン・セン首相の“スタンドプレー”との批判も ASEAN内部でのミャンマー対応に溝】
“ミャンマー情勢を巡りASEANでは、クーデターを批判するマレーシアやインドネシアに対し、カンボジアやタイは「国内問題」と不干渉を決め込んできた。”【1月15日 読売】と温度差があるASEANですが、国際社会の批判が高まる中で、昨年10月に関連首脳会議へのミャンマー国軍関係者の出席拒否で一致しました。

そうした状況にあってのASEAN議長国であるカンボジアのフン・セン首相のミャンマー訪問・国軍司令官との会談は、ASEANの総意に基づくものではなく、フン・セン首相の“スタンドプレー”との批判もASEAN内部あり、カンボジアで18日から開催予定だった対面での外相会議は(コロナ対応を理由に)延期される事態となっています。

****ASEAN、ミャンマー巡り相違解消せず 会議延期で不和露わに****
東南アジア諸国連合(ASEAN)が今週予定していた外相会議が延期される中、外交筋や政府筋はミャンマーの軍事政権への対応に関する意見の相違が解消せず、加盟国間の不和をもたらしていると明らかにした。

ミャンマーでの軍事クーデターやデモ隊への弾圧行為を受けて、ASEANは昨年、同国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官を首脳会議から排除する異例の措置を決定。ASEAN内ではミャンマー問題が懸案となっている。

インドネシア外務省アジア・太平洋・アフリカ総局長のアブドゥル・カディール・ジャイラニ氏は、ミャンマーがASEANのイベントに参加するという厄介な問題はまだ解決されていないと説明。記者団に対し、「意見を統一するにはまだ時間が必要であることを認めざるを得ない」と述べた。

一方、新型コロナウイルスのオミクロン変異株が依然として脅威であることから、カンボジアが議長国になって初の会議となるはずだった今週の外相会議を延期したことは理解できると付け加えた。

ASEAN議長国のカンボジア政府は12日、同国で18─19日に予定していた外相会議を延期したと明らかにした。一部の外相から出席が「困難」との通知があったためとしている。

2人の外交筋がロイターに語ったところによると、カンボジアはミャンマーの軍事政権に関与する意向を示しており、会議に同国の「外相」で退役大佐のワナ・マウン・ルウィン氏を招待していた。

ここ数日、マレーシアのサイフディン外相とシンガポールのリー・シェンロン首相は、ミャンマー危機の解決に向けて合意された5項目のASEAN「コンセンサス」に何の進展もなかったことから、軍事政権を招くことに反対している。

リー首相は14日、カンボジアのフン・セン首相に対し、ミャンマー政策の変更は「新しい事実に基づかなければならない」と述べた。

こうした意見の相違は、ASEANにとって今年が困難な年であることを示しており、国際的に支持されているミャンマー和平への取り組みが頓挫する中、ASEAN内部の亀裂がさらに露呈し、ASEANの信頼性が損なわれる恐れがある。

<「外相」招待が問題に>
外交筋によると、カンボジアがミャンマー軍事政権のトップ外交官であるワナ・マウン・ルウィン氏を招待したことが問題となっており、複数の加盟国が最近の動きに反対しているという。

同筋は「インドネシアとマレーシアは、フン・セン氏のミャンマー訪問の結果、特にミャンマーに関するASEANの5項目のコンセンサスと軍事政権の5項目のロードマップが結び付くことに満足していなかった」と述べた。

軍事政権がクーデター以来宣伝しているロードマップはASEANの合意とは大きく異なっている。

フィリピンのロクシン外相は、ASEANのコンセンサスは「いかなるロードマップにも縛られてはならない」と強調している。

また、別の外交筋は、会議延期にはオミクロン変異株のリスクと、ミャンマー、特にワナ・マウン・ルウィン氏の招待に関する意見の相違が影響していると説明。「この問題に関しては一部が態度を硬化」していたと語り、カンボジアは予定されていたイベントの一部をオンラインで開催することを提案していたと語った。【1月18日 ロイター】
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フン・セン首相はミャンマー情勢の事態打開に独自の判断で臨む姿勢を崩しておらず、ミャンマー国軍のミンアウンフライン総司令官との再度の会談をオンライン形式で行っています。

ASEAN内部の国軍支配に対する厳しい見方が存在する現状、“ミャンマー政策の変更は「新しい事実に基づかなければならない」”といった声も踏まえて、ミャンマー側に何らかの譲歩を求めたのでは・・・との観測も。

****カンボジア首相、ミャンマー軍トップと会談 情勢打開へ譲歩求めたか****
カンボジアのフン・セン首相は26日、ミャンマー国軍のミンアウンフライン最高司令官と会談した。

カンボジアは東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国として、今月中旬の外相会議にミャンマー国軍の外相を招く意向だったが、一部の加盟国が反発。会議の延期を余儀なくされた。情勢を打開するため、フン・セン氏はミャンマー国軍側に譲歩を求めたとみられる。
 
両者の会談は7日にミャンマーの首都ネピドーで対面で実施されて以来、今月2回目。この日はオンライン方式で実施された。
 
会談の詳細は明らかになっていないが、フン・セン氏はミャンマー側に対して、ASEANとミャンマー国軍が昨年4月に交わした「暴力の即時停止」など5項目の合意事項の履行を求めたとみられる。
 
フン・セン氏は当初、今年のASEAN議長国の首脳として、関連会議へのミャンマーの復帰に積極的だった。しかし、フン・セン氏のミャンマー訪問後も、拘束中のアウンサンスーチー氏に有罪判決が出るなど状況は改善していない。
 
インドネシアやマレーシア、シンガポールは合意の履行に大きな進展がない限り、ASEANがミャンマー側に譲歩すべきではないとの立場で、国軍寄りのフン・セン氏の姿勢は加盟国の反発を招いた。

18、19日にカンボジアで予定されていた年初のASEAN外相会議は直前になって延期が決まり、新たな日程が決められないままになっている。【1月26日 朝日】
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上記の“譲歩”に関連するものかどうかはわかりませんが下記のような動きも。

*****スーチー氏の政党は解党せず****
ミャンマー国軍のゾーミントゥン報道官は26日、共同通信の取材に応じ、軟禁中のアウンサンスーチー氏が率いた国民民主連盟(NLD)について、国軍に解党する意図はないと明らかにした。【1月26日 共同】
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解党はしなくても、反国軍的言動は一切許さず、当然スー・チー氏ら幹部は拘束したままで、国際批判を避けるために形だけ残しておく・・・といった類でしょう。

【2月1日 「沈黙の抵抗」の呼び掛け】
2月1日で国軍クーデターから1年が経過するということで、2月1日は出勤や外出を一切控え、商店も店を閉じて自宅に留まり、静かに抵抗の姿勢を一斉に示そうという「沈黙の抵抗」の呼び掛けも行われているようです。

****ミャンマー、間もなくクーデターから1年 民主派リーダー「2月1日、沈黙の抵抗を」****
<突然の政変が起きた国は今も軍政と民主派の対立が続いたまま、もうすぐ1年に>

ミャンマーで反軍政の立場をとる民主派のリーダーが軍による2021年のクーデター発生から1年となる2月1日に、軍政への抵抗を示すために自宅に留まる「沈黙の抵抗」を国民に呼びかけている。

ミャンマーの反軍政の立場をとる独立系メディア「ミッズィマ」などによると、この呼びかけは2月1日は出勤や外出を一切控え、商店も店を閉じて午前10時から午後4時までの間自宅に留まり、静かに抵抗の姿勢を一斉に示そうというもので、「沈黙の抵抗」と名付けられている。

呼び掛けでは同日午後4時には各自が自宅で一斉に拍手をして抵抗運動を終えようと求めている。

インターネットのSNSで「沈黙の抵抗」を呼びかけているのは民主派のコー・タイ・ザー・サン氏で治安当局による捜索を逃れて現在地下に潜伏中といわれている。

SNSで国民に広く呼びかけ
SNSを通じて同氏は「クーデター発生日であり、我々の抵抗運動"春の革命"がスタートした日でもある2月1日に我々は世界に対して抵抗精神は強く、軍政の支配に決して屈することなく、戦いを恐れることがないことを示す」として賛同を求めており、このメッセージは急速に拡散、共感や支持が広がっているという。

この呼びかけには「ミャンマー一般労働者同盟(FGWM)」も呼応して傘下の組合、組合員にも「沈黙の抵抗」への参加を促し、連帯を示すよう求めている。

FGWMの報道官は「2022年は人々による革命が成就する年となることを確信している。我々の強い信念と闘争心で今年は人々による統治の復活を成し遂げよう」と表明。「世界は2月1日にミャンマー国民が軍政に屈することなく何をしようとしているか注目している」と強い決意を示している。

ミャンマーの反軍政市民による「沈黙の抵抗」は2021年12月10日の「国際人権デー」に合わせて行われたときに続き2回目となる。人権デーに合わせた運動ではミャンマー市民の民主政権復活への思いを国際社会に伝えることができたとしている。

市民の抵抗運動、穏健路線から武装へ
ミャンマーの軍政に抵抗する市民運動はクーデター後はしばらくの間、自宅などで鍋窯を叩いて反軍政を表現したり、男性がその下を通ると不幸が起きるといわれる女性用のロンジー(伝統衣装)を街頭に吊り下げたりするなど、穏健な運動を展開していた。

各地で拡大した反軍政のデモや集会では軍政トップのミン・アウン・フライン国軍司令官の写真を踏みつけたり、バツ印をつけて反発を示していたが、治安当局による弾圧が強まった。

反軍政の市民も「不服従運動(CDM)」に共鳴して職場からの離脱、職務放棄で抵抗を示し、公立病院などで多数の医師や医療従事者が現場を離れた。軍政はこうしたCDMに参加した医療関係者に対して法的責任を追及する構えを見せており、今後さらに混迷が深まるものとみられている。

軍政によるデモや集会への対応はその後実弾発砲を含む強権弾圧となり、それが止むことはなく、クーデター後に組織された民主派組織「国民民主連盟(NLD)」と関係が深いとされる武装市民組織「国民防衛隊(PDF)」が組織され、各地で軍や警察など治安部隊と銃撃戦などの武装闘争を続けている。

こうした反軍政の市民による武装抵抗運動に長年軍政と対立してきた国境周辺の少数民族武装勢力も呼応。PDFの市民への軍事訓練、武器供与、共同作戦実施などで戦闘が激化している。

武装市民組織は「テロ組織」と軍政
ミン・アウン・フライン国軍司令官は1月20日に軍政を支える最高意思決定機関「国家統治評議会(SAC)」で武装市民組織であるPDFを「テロ組織」として徹底的に武力で弾圧する方針を改めて表明したと国営紙が伝えた。

これは東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国であるカンボジアのフン・セン首相が1月7、8日にミャンマーを訪問し、ミン・アウン・フライン国軍司令官と会談した席で少数民族武装勢力と停戦する方針を明らかにした一方で、武装市民勢力とは徹底抗戦する方針を再度確認したことになる。

この時の少数民族武装勢力との停戦はあくまで軍政による一方的なもので、その後もチン州のチンランド防衛隊(CDF)、カヤ州の「カレンニー国民防衛隊(KNDF)」、カレン民族同盟(KNU)、ラカイン州のアラカン軍(AA)などと軍との戦闘は続いており、停戦があくまで軍政のポーズに過ぎないことを示している。

フン・セン首相のカンボジア訪問もASEANのコンセンサスを得たものでなく、加盟国内からは厳しい批判がでており、フン・セン首相の「スタンドプレー」への警戒も強まっている。

こうした状況の中で2月1日を迎えるミャンマーで市民は「沈黙の抵抗」で軍政への反発を示そうとしている。【1月26日 大塚智彦氏 Newsweek】
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