孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  上昇しない出生率に産児制限撤廃へ “あの手この手”の出産奨励策

2018-08-11 21:31:00 | 中国

(【8月7日 CNN】)

日本でも対策にもかかわらず出生率は2年連続で低下 出産・育児と仕事を両立しにくい環境
日本が少子高齢化の大問題を抱えており、人口動態に関する基本構造に変化がないことは今更の話です。

****出生数 最少の94万6000人 出生率1.43、2年連続低下****
厚生労働省が1日発表した人口動態統計によると、2017年に生まれた子どもの数(出生数)は前年よりも3万人余り少ない94万6060人となり、過去最少を更新した。

一人の女性が生涯に産む子どもの数にあたる合計特殊出生率は1.43と2年連続で低下した。全国で最も出生率が低い東京都はさらに下げており、仕事と育児の両立環境に課題を抱えていることが浮き彫りになった。
 
出生数は2年連続の100万人割れ。3万人超も減るのは12年ぶりで、今年に入っても減少が続いている。これまでで最も出生数が多かった1949年は269万人が生まれたが、17年はこの3割強にとどまった。
 
出生率は前年に比べて0.01ポイント下がった。05年に最低の1.26を記録してから緩やかに回復してきたが、ここ数年は1.4台前半で頭打ちの状態が続く。
 
出生率がほぼ横ばい圏だったのに出生数が大きく減ったのは、女性の人口そのものが減っているためだ。出産適齢期とされる15~49歳の女性は約2498万人となり、前年に比べ1.3%減った。このうち子どもの8割を産んでいる25~39歳は2.5%減った。
 
第2次ベビーブームの1971~74年に生まれた「団塊ジュニア」と呼ばれる人口が多い世代が40歳代半ばになり、出産がピークアウトしてきたことも響いている。
 
晩婚・晩産化の影響も大きい。第1子を産む女性の平均年齢は30.7歳と過去最高の水準で高止まりしている。第1子の出産年齢が上がると第2子以降の出産は減る傾向にある。(中略)
 
子どもを欲しいと考える夫婦らの希望がすべてかなった場合の出生率(希望出生率)は1.8になると政府は推計している。実際の出生率がこの水準を大きく下回るのは、出産・育児と仕事を両立しにくい環境が影響しているとみられる。
 
17年の出生率を都道府県別にみると大都市ほど低下幅が大きい。全国で最も低い東京都は1.21と、前年の1.24からさらに大きく下がった。大阪府も0.02ポイント低い1.35だった。神奈川、千葉や京都も1.3台前半にとどまる。

大都市ほど核家族で夫婦共働きの世帯が多い。保育所に子どもを預けられないなど仕事と育児を両立しにくい。
 
希望出生率の1.8を実現するには、出生数が30歳代の6割弱にとどまっている20歳代向けの対策が課題になる。
 
出生数から死亡数を差し引いた人口の自然減は39万4373人で、過去最大の減少幅だった。出生率が改善したとしても人口減は当面続く。公的医療や年金などの社会保障制度などは、人口減を前提にした制度への見直しが避けられない。【6月1日 日経】
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中国 「一人っ子政策」廃止でも上向かない出生率
“希望出生率”・・・そんなもの、どうやって推計するのでしょうか?

それはともかく、この少子高齢化の問題、低出生率の問題は、日本だけでなく、韓国、台湾、シンガポール、タイなど、一定の経済水準に達した東アジア各国に共通する現象で、数値的には日本より厳しい国もあります。

なぜ東アジアでは出生率が非常に低下するのか・・・という問題は、依然も少し触れたことがありますが、今回はパスします。

世界一の人口大国・中国も、その低出生率の問題を抱える国のひとつです。

中国の場合、「一人っ子政策」で出産を厳しく制限してきた経緯がありますが、出生率の低下、いびつな人口構造、将来的な労働人国の減少といった問題に直面して「一人っ子政策」を廃止したものの、出生数は増えない・・・という状況にあります。

****国民に出産の奨励、一人っ子政策で人口問題顕在化 中国****
一人っ子政策が撤廃された中国で、今度は国民に対し、子どもの数を増やすよう呼びかける声が強まっている。

中国共産党機関紙の人民日報はこのほど、「出産は家族の問題であると同時に国家の問題でもある」との論説を掲載し、「出生率の低さが経済や社会に及ぼす影響が表れ始めている」と警告した。

中国政府が先に発表した新しい郵便切手は、子どもの数に関して残る規制が撤廃される可能性をうかがわせる。

来年の亥(い)年を前に政府が発行した切手には、両親と子ども3匹の姿が描かれている。2016年の申(さる)年の記念切手には2匹の子ザルが登場し、一人っ子政策撤廃の証しとみなされた。

一人っ子政策がもたらした人口構造問題は鮮明化し始めている。労働人口は縮小し、高齢者向けの支援制度が整わない中で、若い世代の多くが夫婦それぞれの両親と祖父母を支えている。

1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す出生率は2017年の統計で1.6人と、人口を維持するために必要と推定される2.1人を大きく下回った。

人民日報の論説では、「特に都市部では、子どもを持つことのコストは上昇の一途にある。出産から学校に至るまで、経済的コストや時間的コストが増大している」「都市に住む若者の多くは子どもを持ちたがらない」と指摘。子どもを増やすためには政府が教育や医療を提供するなどの奨励策を打ち出す必要があると訴えた。

この論説は中国の大手SNS、新浪微博(ウェイボー)でも注目を集めた。論説の内容を支持し、子どもを増やしたい夫婦のための支援策を政府に求める投稿が目立っている。【8月9日 CNN】
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切手に描かれたサルの子供の数が国家の政策方針を示している・・・というのは、いかにも中国らしくて笑える話です。

“子どもを持つことのコスト”の中でも最大の要因となっているのが、中国では結婚するのに男性はマイホームが必要という価値観です。

****日本よりも出生率が低い中国・・・「20年後が心配すぎる!」=中国メディア****
(中略)中国人が、一人っ子政策が廃止さても子どもを産みたがらないのは、主に経済上の問題があるようだ。中国では学校、病気、結婚、出産などどれも非常に費用がかかり、マイホームの無い男性は結婚できない傾向にあるため、親が購入を援助するケースが多いが、「男の子が2人いたらどうしたら良いのか」という現実的な問題もあるという。

また記事は、専門家たちは8億人と言われる農村の人たちが子どもを多く産めば大丈夫だと考えていたようだが、いまでは農村部でも子どもを産みたがらない人が多いと紹介。20年後に高齢者の世話を誰がするのかと問題点を指摘した。

中国では、収入に対して異常に高い不動産価格と、必ずマイホームを購入しなければならないと思い込んでいる価値観、子どもの教育にかかる負担の大きさなどが、少子化に拍車をかけている。

また、子どもを老後の保険とみなしているところも日本とは違うところだ。国の保障を当てにできず、高齢者が働く習慣も環境も整っていない。

こう考えると、早くから少子高齢化対策を始めてきた日本より、中国の少子高齢化問題はより深刻であると言えるのではないだろうか。【8月10日 サーチナ】
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“日本よりも出生率が低い”という部分については、事実誤認があるようにも思えます。(合計特殊出生率で、日本の1.43に対し、中国は1.6)

人権の観点を別にしても弊害が明らかな「一人っ子政策」からの転換が遅れた背景には、政策を推進してきた役所・公務員が巨大な利権化している現実もあります。

“この政策(一人っ子政策)で起こった弊害の1つが、利権化です。一人っ子政策を推進する役所が次々と生まれ、公的制度も整えられた。「一人っ子政策」にかかわる公務員だけで10万人以上いて、「一人っ子政策利権」という言葉も日常的に使われています。”【7月21日 近藤 大介氏 PRESIDENT Online】

違反者から徴収する罰金が、地方政府にとって大きな財源になってきたという話もよく聞きます。

【「二人を認める」から「二人を奨励する」へ さらには産児制限撤廃へ
ここにきて、単に“一人っ子”の制限を外しただけでは容易には出産は増加しないなかで、中国当局も事態の深刻さを認識して、「二人を認める」(二人っ子政策)という姿勢から「二人を奨励する」という流れに変わっており、じきにすべての産児制限を撤廃するとも推測されています。

****人口減少の遼寧省が二人っ子奨励政策を発表、他の地域も追随か―中国****
遼寧省がこのほど発表した「遼寧省人口発展計画(2016−2030年)」が広く注目を集めている。

今後十数年の発展目標を定めた同計画によると、2015年に0.9だった合計特殊出生率(TFR)を2030年までに1.8に引き揚げ、子育て家庭の税収・教育・社会保障・住宅関連政策を逐次改善し、2人の子供を育てる家庭を対象とした奨励政策を増やす模索を続ける方針。香港商報(電子版)の報道を引用して参考消息網が伝えた。

出生率や自然成長率がここ数年、国内で最も低い省となっている遼寧省が、出産・育児を奨励する政策を率先して打ち出したことは、もっともなことだといえる。

関連データによると、同省は常住人口が3年連続で減少しており、人口の自然増加率もこの7年間で6回マイナス成長という苦境に陥っている。

その原因について、計画では、「出産・育児適齢期にある女性の数が減少し、出産年齢が後ろ倒しになり、高齢化も激化するにつれて、『全面二孩(すべての夫婦に第二子出産を認める)』政策(二人っ子政策)が実施された後、TFRが一時的にやや上昇することはあっても、世代交代がバランス良く行われるレベルにまで出生率を上げることは極めて難しい」と指摘している。

実際のところ、今年に入り、中国における人口情勢の現状に対する議論は高まり続けている。多くの人口学専門家は、「経済発展レベルが高まり続けるにつれ、中国における高齢化時代への突入は加速しつつある。高い住宅費、育児・教育コストの高騰、そして『年をとってから子供に面倒を見てもらうために子供を産み育てる』、『子だくさんが福をもたらす』といった子供を育てることに対する考え方の変化によって、人々の出産・育児に対する意欲が大幅に低下しつつある」との見方を示している。

これらを裏づける事実として、中国は2016年に二人っ子政策の実施を始めたが、ここ2年の新生児数および出生率はいずれも下落していることが挙げられる。

また、出産・育児適齢期にある女性の数がだんだんと減少するにつれ、「少子化」現象も避けては通れなくなっている。これらのことを踏まえると、出産・育児奨励政策の登場は、当然の成り行きといえるだろう。

計画出産(一人っ子政策)から全面的な二人っ子政策への移行、さらには出産・育児の奨励は、中国の人口政策にひっそりと変化が起こっていることを示している。

出産・育児奨励策が遼寧でまず登場したことは、非常に明らかな「人口を増やそう」というサインであり、国内の他の地域も遼寧に追随すると予想される。【7月22日 レコードチナ】
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****来年にも90%の確率で産児制限が全廃」と中国専門家****
2018年8月9日、華夏時報によると、中国の専門家は「来年にも90%の確率で産児制限が全面的に撤廃される」と予測している。

記事によると、中国の各地方政府が2人目出産奨励のための手当支給などさまざまな政策を実施しているが、なかなか出生率が上がっていない。

この点について、人口と生育問題の専門家である何亜福(ホー・ヤーフー)氏は、「理想的な人口政策とは、自由に出産できるという前提で出産を奨励すべきで、現在の出産奨励政策は3人目が制限されている中で2人目の出産を奨励している。これでは出生率が上がるわけがない」と指摘した。

何氏によると、上半期のデータはまだ出ていないものの、前年比で出生率が減少することは間違いないという。そして「来年には90%の確率で産児制限が全面的に撤廃されるだろう」との見方を示した。

これに対し、中国のネットユーザーから「いずれにしても私は産まないけどね」「2人目の出産奨励に応じるのは愚かだ。老人4人に配偶者、そして子ども2人だと、1人で7人を養わなければならない」「すでに多くの人が死んだ方がマシな状態なのに、次の世代まで死んだ方がマシにさせるのか」など、全面的に開放されても出生率は上がらないとの見方が多く寄せられた。

また、「なんだかずいぶん焦っているようだな」「1人産んだら家を1軒くれるのかな」「妻がいないんだよ。どこで妻をゲットできるんだ?国は妻を用意してくれるのか?」というユーザーもいて、産児制限撤廃以前の問題であると指摘する声が多い。【8月10日 レコードチャイナ】
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あの手この手の出産奨励策ではあるが・・・・
地方政府も、出産奨励のため、あの手この手のようです。

****中国、地方政府が補助金で出産奨励も「マイホームくれたら産む****
中国メディアの澎湃新聞は18日、中国では2人目出産を奨励するため、各地方政府がさまざまな政策を打ち出していると伝えた。

例えば遼寧省では、出産支援のための政策を完備し、子どもが2人いる家庭にさらに報償を与える政策を検討しているという。

新疆ウイグル自治区の石河子市では、2人目を出産する夫婦は、自然分娩の場合には500元(約8400円)、帝王切開ならば1000元(約1万6800円)を入院分娩(ぶんべん)の手当てとして受け取ることができ、2人目の子どもが0歳から3歳の間は、「適切な額」のミルク手当ても受け取れるという。

天津市では、2人っ子政策に符合する家庭の従業員は、出産手当の受給期間が30日間延長され、湖北省仙桃市政府は、全面的に出産無料のサービスを実施し、政策に合致する家庭は2人目を出産すると1200元(約2万円)の手当てを受け取ることができるという。

これに対し、中国のネットユーザーから「マイホームくれたら産むよ」「産んでも育てるお金がないんだよ」「産休を2年ください」「不動産価格が天然で効果的な避妊薬になっている」などのコメントが寄せられた。

また、「(補助は)1人の子どもを育てる費用を考えると焼け石に水だ」「それでも産まないね。老後は政府に養ってもらうんだ」「結婚相手を探すことにも興味がないのに、子どもだなんてねえ」「独身の私は国に対して大変申し訳ない」などのコメントもあり、出産奨励策も、ネットユーザーにとってはあまり魅力的ではないようだ。【7月21日 レコードチャイナ】
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ついこの間まで「一人っ子政策」を維持してきたことを考えると、様変わりの様相ですが、出生率を上げるということが非常に難しいことであることは、日本を含め、各国政府が実感しているところです。

すべての施策の根底になるのは、将来への希望ですが、中国政府がそれを国民に確信させることができるでしょうか?
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