(アフガニスタン東部ジャララバードの郊外で、携行式ロケット弾を抱えてカメラの方を見る旧支配勢力タリバンの戦闘員を取り囲み、アフガニスタン治安部隊とタリバンの停戦を喜ぶ住民たち(2018年6月16日撮影)【7月27日 AFP】)
【アメリカ 方針を転換し、タリバンとの交渉へ】
アフガニスタンでは6月、政府側が一度の延長を含めて18日間停戦を続け、うち3日間は、タリバンがイスラム教の断食月「ラマダン」明けの祭り「イード・アル・フィトル」に合わせて実施した一方的停戦と重なりました。
アフガニスタン政府とタリバンの17年近い衝突において3日間戦闘が行われなかったのは今回が初めてでした。
****アフガン政府がタリバン攻撃再開 大統領は再停戦の「用意」も表明****
(中略)停戦の実現を受け、国内各地で人々が喜びに沸く光景が見られた。この間、タリバン戦闘員と治安部隊員が共にイードを祝い、抱き合ったり、一緒にセルフィー(自撮り写真)を撮ったりする姿もあった。
ガニ大統領は、今回の停戦により、タリバンの大半が平和を望んでいることが明らかになったとし、「今度はタリバンが前向きな反応を示す番だ」と表明。さらに「タリバン側の用意ができた時点で、いつでも停戦を延長する用意がある」と述べた。
政府側はタリバンにイード後の停戦延長を要請していたが、タリバン側はこれを拒否。先月下旬から戦闘地域に戻り、各地で攻撃を再開した。一連の攻撃により、多数の死傷者が出ている。【7月1日 AFP】
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戦闘に明け暮れているタリバン戦闘員も“平和の喜び”を実感すれば今後に向けて・・・・とも期待したのですが、現実には戦闘が再開しています。
ただ、タリバンも平和を望んでいる面もないではないことがうかがえたこと、および、3日間にせよタリバン側が停戦に応じたことで、今後への若干の期待も・・・。
アメリカはアフガニスタンの問題に関しては、タリバンとの交渉はアフガニスタン政府が行うというのが基本姿勢で、タリバンとの直接交渉には否定的でした。
しかし、先月末にアメリカがタリバンと交渉を行ったことが報じられています。
****米政府代表団がタリバンと接触、和平交渉に向けドーハで協議 米紙報道****
米政府の代表団が今週、カタールでアフガニスタンの旧支配勢力タリバンと和平交渉に向けた協議を行っていたことが分かった。米紙ウォールストリート・ジャーナルが26日、報じた。
同紙は情報筋の話として、アリス・ウェルズ国務副次官補(南・中央アジア担当)が今週、17年にわたるアフガニスタン紛争の終結に向け、タリバンと接触したと伝えた。
タリバン指導部の一人はAFPに、カタールの首都ドーハで23日にクエッタ軍事評議会のメンバーらが米政府高官と会ったと認めた。
ウェルズ氏の名前は出さなかったが、米代表団に「1人の女性」が含まれていたことを確認した。さらに、今回の協議は両者の信頼醸成を目的としたもので、早ければ今月31日に開かれる次回の協議はより重要なものになるとの見方を示した。
米国務省は同紙の報道内容を直接認めていないが、ウェルズ氏が今週ドーハを訪問し、カタール政府高官と「アフガンの、アフガン主導による和平プロセスに向けた最近の進展について協議した」と述べた。
6月にマイク・ポンペオ米国務長官がアフガン政府とタリバンの和平交渉について「支援、促進し、参加する」用意があり、外国のアフガン駐留部隊の役割も俎上(そじょう)に載せられるだろうと発言して米政府の政策転換をほのめかしていたが、米当局者は先週まで、「米政府はタリバンと直接交渉する用意がある」との報道を否定していた。
また6月にはアフガン治安部隊とタリバンの双方が初めて同時に3日間停戦し、アフガン和平への希望が高まった。しかし戦闘は再開し、カブールにいる欧米やアフガニスタンの専門家は和平の機運を保つには米国がタリバンと直接交渉する必要があると指摘していた。
タリバンは以前から米政府との直接協議を求めてきたが、米政府はアフガン政府主導で交渉すべきだとして繰り返し拒否してきた。
それに対しタリバン側は、アフガン政府には正統性がないとして拒否してきた。
ウォールストリート・ジャーナルは複数の米当局者の話として、今回のドーハでの協議にはアフガン政府も参加したと伝えている。タリバンがカタールに置いている対外連絡事務所は事実上の大使館となっている。【7月27日 AFP】
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トランプ大統領は、シリアでも、朝鮮半島でも、カネのかかる海外での面倒ごとから手を引きたがっていますので、今回の“方針変更”も、そうしたトランプ大統領の意向を受けてのものでしょう。
“トランプ氏は大統領選中から米軍撤退を主張してきたが、側近らに説得されて昨年8月、アフガン新戦略を承認。オバマ前政権の方針を転換し、撤退時期を明確にせず関与継続を打ち出したが、戦況膠着に、いら立っているという。”【7月11日 共同】
また、北朝鮮でも見られたように、交渉することの正当性云々にはこだわらず、とにかく交渉して何らかの結果が出せれば・・・というのが“取引”好きのトランプ大統領の姿勢です。(交渉に向けたいろんな言動は別にして、そうした交渉重視自体はよいことだと思います。)
****<米タリバン直接会談>米、アフガン政策転換か****
◇正式な和平協議開始につながるか注目
内戦が泥沼化するアフガニスタン情勢を巡り、米国務省高官がカタールの首都ドーハで7月下旬、旧支配勢力タリバンとの直接会談に応じた。米紙ニューヨーク・タイムズなど複数のメディアが報じた。
米国は従来、タリバンとの交渉には否定的だったが、事態が一向に好転しないことからトランプ政権が政策転換に踏み切ったとみられ、正式な和平協議開始につながるか注目される。
「会談は友好的な雰囲気だった。すぐに改めて会談することや、対話を通じて内戦を解決することで一致した」。交渉に出席したタリバンのメンバーはロイター通信の取材にこう語った。
一方、このメンバーは「会談は(正式な)和平協議ではない。あくまで協議開始に向けたものだ」とも述べ、予備的な折衝だったと強調した。
複数の米欧メディアによると、会談にはウェルズ米国務次官補代理(南・中央アジア担当)や、ドーハにあるタリバンの政治事務所のメンバーが出席。アフガン政府関係者は出席しなかった。
隣国パキスタンのアフガン専門家、イムティアズ・グル氏によると、米国の政策転換の背景には、アフガン政府とタリバンが6月に実施した3日間の停戦があった。
タリバンを巡ってはこれまで、指導部と現場司令官との間だけでなく、派閥間でも意見の相違があるなど、組織が一枚岩かどうか疑問視する向きもあった。
だがタリバンが停戦を着実に履行したことで、組織全体が指導部の統率下にあることが確認できたという。
グル氏は「トランプ政権はタリバンが一枚岩だと見て、会談する価値があると判断した」と分析。また、アフガンでは10月に下院選を控えていることもあり、「平和裏に選挙を実施するため、タリバンと話し合う意味もあった」と見る。
トランプ政権は昨年8月、タリバン掃討のため数千人の米兵増派を柱とする新戦略を発表し、今年2月からは空爆を強化した。だが治安は悪化する一方で、抜本的な政策転換を迫られていた。
ただ、米国とタリバンによる直接会談が正式な和平協議につながるかは予断を許さない。タリバンは「米国との直接協議」を繰り返し求めてきたが、米国は、和平協議は「アフガン政府とタリバンとの間で行われるべきだ」というのが原則的な立場だ。
米国はタリバンにアフガン政府と和平協議を始めるよう説得しているとみられるが、タリバンはアフガン政府の正統性を認めておらず、協議開始に同意するかは不透明だ。
一方、地元民放トロテレビによると、アフガンのガニ大統領は、8月のイード(イスラム教の祝祭日)に合わせ、タリバンに対して再び停戦を呼びかける可能性がある。和平への機運を高めるとともに、タリバンの和平に向けた本気度を探る意味もあるようだ。【8月1日】
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【交渉を念頭に置いてか、タリバンの攻勢強まる】
“8月のイード(イスラム教の祝祭日)”というのはイード・アル=アドハー(犠牲祭)のことでしょうか。今年は8月21日ですが、現在のところは再度の停戦に向けた動きは報じられていません。
というより、タリバンはむしろ攻勢を強めています。
アフガニスタンのバフラミ国防相は、東部ガズニ州の州都ガズニで9日夜か10日未明から政府軍と反政府勢力タリバンが交戦し、死者が310人超に達したことを明らかにしました。6月に政府軍とタリバンが3日間の停戦を実施して以降、戦闘で300人超の死者が出るのは初めてです。
****タリバン、アフガン都市に大規模攻勢 軍が応戦、米軍も支援****
アフガニスタン南西部で9日、旧支配勢力タリバンがガズニ市の占拠を狙った大規模な攻勢を仕掛けた。同国軍は、米軍のヘリや無人攻撃機の援護を受けて応戦。翌10日には市内に残るタリバン戦闘員の掃討作戦を開始した。
タリバンは和平交渉を迫られる一方、都市部の占拠を狙った攻撃を続けている。
ガズニは首都カブールから車で2時間ほどの距離にある都市で、過去数か月にわたり周辺に集まるタリバン戦闘員の脅威にさらされてきた。住民らは今回の襲撃について、手の込んだ攻撃が前例のない規模で行われたと述べている。(中略)
アフガニスタン国防省のモハマド・ラドマネシ報道官は、「タリバンが市民の家に陣取っている」ため、同国の特殊部隊と陸軍部隊が掃討作戦を実施していると説明。その上で、治安部隊は市を掌握していると述べた。
現地の病院関係者によると、兵士14人と住民2人が死亡。アシュラフ・ガニ大統領の報道官は、戦闘によりタリバン側に多数の死傷者が出たと述べている。【8月11日 AFP】
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国防相は会見で「(戦闘に参加している)タリバンは周辺州からも集まってきた。アラブ諸国、パキスタンやチェチェンからの戦闘員も含んでいる」と主張。このうち194人を殺害したものの、政府軍や警察からも約100人の死者が出たと述べています。また、市民20〜30人も巻き添えになって死亡したとのこと。【8月13日 時事 より】
北部ファルヤブ州でもタリバンの攻撃があったようです。
****タリバン、アフガン軍基地を制圧 兵士14人死亡****
アフガニスタン北部ファルヤブ州で、政府軍と旧支配勢力タリバンとの戦闘があり、タリバンが政府軍基地を制圧した。少なくとも兵士14人が死亡し、多数が捕虜となったり、逃亡したりしているとみられる。
報道官によると、情勢不安定なファルヤブ州でアフガン政府軍とタリバン武装勢力とが数日前から激しく戦闘を繰り広げ、タリバンが同州ゴルマックの政府軍基地を掌握したという。当時、基地には政府軍兵士が100人ほどいた。
地元議員は、少なくとも兵士14人が死亡したと語っている。【8月14日 AFP】
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こうしたタリバンの攻勢について、アメリカ側に要求を受け入れるよう圧力をかける狙いがあるとも指摘されています。また、タリバン内の強硬派や現場司令官に対する指導部の求心力を保つ狙いもあるとも。
****<アフガン>タリバンが攻勢強化 政府や駐留外国部隊に****
内戦が続くアフガニスタンで、旧支配勢力タリバンが政府や駐留外国部隊への攻勢を強めている。
毎日新聞の取材に応じたタリバン関係者によると、タリバンは7月に行われた米国との直接会談で、国連の制裁リストからのタリバン指導部の除外や、カタールにある政治事務所の承認などを求めた。
攻勢の強化で、米側に要求を受け入れるよう圧力をかける狙いがあるとみられる。
タリバンは、8月に入り、首都カブールから南約150キロのガズニで政府庁舎や警察本部を急襲し、一時は街の一部を掌握。(中略)
5日には東部パルワン州で、パトロール中だった北大西洋条約機構(NATO)の部隊をタリバンが自爆攻撃し、チェコ軍の兵士3人が死亡。南部ウルズガン州でも今月、タリバンは国軍基地を攻撃し、国軍兵士少なくとも40人が死亡した。
タリバンの外交窓口となっているカタール事務所のメンバーは7月23日、首都ドーハでウェルズ米国務次官補代理(南・中央アジア担当)らと会談。アフガンの統治者を自任するタリバンは、アフガン政府を認めておらず、米国との直接会談を一貫して求めてきた。
トランプ米政権はこれまで「アフガン政府の正統性を損なう」として直接会談に応じてこなかったが、一向に治安状況が改善しないことから直接会談に踏み切ったとみられる。
外交筋によると、米政府担当者はこの会談に先立ち、アフガンのカルザイ前大統領やヘクマティアル元首相と面会し、タリバンとの直接会談への理解を求めた。
タリバン関係者によると、会談後、複数のタリバン幹部がアフガンからドーハに派遣され、出席したメンバーから会談の成果について聞き取りを行った。現在は米国との次の会談に進むべきかどうかや、その際の中身に関して指導部で協議しているという。
タリバンはこうした和平に向けた動きを見せる一方、政府や外国駐留部隊への攻勢も強めている。
タリバン関係者は「米国との間にまだいかなる合意も存在しない。我々の要求が満たされるまで戦闘は止めない」と述べた。
米国に妥協していない姿勢を見せることで、タリバン内の強硬派や現場司令官に対する指導部の求心力を保つ狙いもありそうだ。【8月13日 毎日】
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タリバンは隣国ウズベキスタンとも和平について協議したとのこと。
****タリバンが隣国ウズベキスタン訪問 外交活動活発化で存在感誇示へ****
アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは11日、政治部門の代表者が6~10日に隣国ウズベキスタンを訪れ、カミロフ外相らとアフガン和平について協議したと発表した。タリバンは外交活動を活発化させ、存在感を示す狙いとみられる。
ウズベク外務省も12日までにタリバン代表団訪問を公表した。タリバンの発表によると、アフガン駐留外国部隊の撤退や和平を協議。ウズベク政府によるアフガンの鉄道や電力への将来的な投資も議論した。
ウズベクはロシアの後ろ盾も得てアフガンへの影響力拡大を図っているとみられる。(後略)【8月12日 iza】
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タリバンが隣国と鉄道や電力への将来的な投資について議論・・・・どういう思惑でしょうか。
米軍撤退後の政権参加(あるいは政権掌握)を本気で考えているということでしょうか。
和平への展望がなく泥沼の戦闘が続くよりは、和平協議を睨みながらの戦闘が続く今の方が若干の期待はもてる・・・と考えることにしましょう。