孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

「ロシア疑惑」から抜け出せないトランプ大統 “トランプ以外のアメリカ”の対ロシア強硬姿勢が進む

2018-08-18 22:23:32 | アメリカ
いつ、どのように終わるのかわからない「ロシア疑惑」】
****トランプ氏とプーチン氏の関係 理解に必要な情報一覧****

(7月16日、フィンランド・ヘルシンキで行われたトランプ氏とプーチン氏の初の首脳会談)

(中略)トランプ氏が勝利した大統領選にどのようにロシアが関わっていたのか、そこにトランプ陣営が関わっていたのか、さまざまな捜査・調査が行われている。最も大掛かりなものは、ロバート・ムラー特別検察官による捜査だ。(中略)

これまでにこの疑惑をめぐってムラー特別検察官に起訴されたロシア人は25人。うち13人が選挙結果を操作しようとした疑いを、残る12人が民主党陣営の電子メールのハッキング疑惑をかけられている。(中略)

トランプ大統領は繰り返し、大統領選に勝つために自陣営とロシアが協力した事実はないと述べている。

これまで、ムラー特別検察官事務所がこれに関する証拠を公表したことはない。

トランプ氏の側近だったマイケル・フリン元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が問われた罪は連邦捜査局(FBI)への虚偽の供述だし、ポール・マナフォート元選対本部長の場合は詐欺やマネー・ロンダリング、違法なロビー活動だ。(中略)

(トランプ氏とプーチン氏の初の首脳)会談は、ムラー特別検察官がロシアの情報当局者12人を民主党陣営の電子メールのハッキング疑惑で起訴した3日後に行われた。

共同記者会見でトランプ大統領は、プーチン大統領が米大統領選への関与を否定していることを疑問視する「どんな理由も」見当たらないと述べた。

この発言には共和党の主要議員も批判の声を上げており、バラク・オバマ前大統領の下で中央情報局(CIA)長官だったジョン・ブレナン氏は、トランプ氏は「国家反逆罪に値する」と非難した。(後略)【7月18日 BBC】
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トランプ大統領がロシアと共謀したのでは・・・という「ロシア疑惑」、疑惑そのものに関するもの、捜査の進め方に関する大統領と関係者の対立など、連日のように関連するニュースが報じられています。

ここ二日だけでも、以下のようなものが。

米大統領元側近の評決判断 ロシア疑惑捜査、初の陪審審理【8月17日 共同】
判事「脅迫されている」 米地裁、陪審員も身の安全懸念 有罪ならトランプ氏に打撃【8月18日 産経】
トランプ氏の共謀否定は「でたらめ」 ロシア疑惑でCIA元長官【8月17日 FNN PRIME】
機密情報に触れる権限の剥奪 歴代CIA長官が抗議声明【8月18日 NHK】
米大統領がロシア疑惑捜査けん制 機密遮断、標的拡大へ【8月18日 共同】

大統領側も、従来は「一切関与していない」と主張していましたが、(その主張は無理だと観念したようで)最近では「接触はあった。でも何ら法的には問題ない」という方向に戦術転換しているようです。

(トランプ氏がかつてクリントン氏のメール問題を攻撃して、「刑務所に・・・」と言っていたことを考えると、共謀の有無にかかわらず「ロシア疑惑」の方がはるかに安全保障を揺るがす問題でしょう。トランプ氏は司法・議会・メディアの対応にいたくご不満なようですが、メール問題をあげつらって当選したことからすれば、自業自得でしょう)

いろんな動きがあるようですが、個人的にはトランプ大統領を疎ましく思っているため、「いつまでグズグズやっているんだよ!早くクビを取れよ!」って感じで、正直なところ個々の案件についてはあまり関心を払っていません。

アメリカの敵は中国よりロシア
この「ロシア疑惑」が延々と続いている背景でもあり、同時にその結果でもあるのでしょうが、アメリカにおけるロシアに対する国民感情は急速に悪化しているようです。

****米国民の4割「ロシアは敵」=過去最高、北朝鮮敵視も6割―CNN調査****
米CNNテレビが17日発表した世論調査によると、ロシアを「敵」と考える米国民が41%に上り、1999年の調査開始以来過去最高となった。北朝鮮を敵と考える人も59%と最高を記録。

トランプ大統領がロシア、北朝鮮首脳との融和に傾く中、国民が両国への警戒を強めている実態が浮かんだ。
 
ロシアを敵とする答えは、昨年調査(25%)から大きく増えた。「非友好的」と答えた33%を合わせると7割以上が否定的な見方を示した形だ。北朝鮮を敵視する回答は前回の4年前(55%)と比べ微増。
 
また、ロシアへのトランプ氏の外交姿勢が「友好的過ぎる」と答えた割合は57%で、「おおむね良い」(35%)、「厳し過ぎる」(4%)を上回った。北朝鮮には友好的過ぎるが43%、おおむね良い、厳し過ぎるはそれぞれ42%、8%だった。
 
一方、貿易紛争が激化する中国を「敵」と考える国民は17%。トランプ氏の対中姿勢は厳し過ぎる(24%)が友好的過ぎる(21%)をやや上回り、おおむね良いは48%となった。
 
ロシアを敵とみなす回答は、民主党支持層で56%で、共和党支持層の31%を大きく上回った。トランプ氏の融和的な外交姿勢への評価が相手国への態度にも影響しているとみられる。
 
調査は9日から12日にかけ、成人1002人を対象に電話で行われた。【8月18日 時事】
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世界経済・政治における中国の急速な台頭、米中貿易摩擦が国際的に注目されているところですが、アメリカ国民のイメージとしては、その中国よりロシアが圧倒的に敵視されているようです。

英神経剤事件で対ロシア制裁“第1弾” “第2弾”は・・・ 強硬姿勢を強める“トランプ以外のアメリカ”】
そうした国民世論もあって、アメリカのロシアの対応は厳しさを増しています。

アメリカ国務省は8月8日、イギリス南部で今年3月、元ロシア情報機関員らが神経剤「ノビチョク」で襲撃された事件にロシア政府が関与したと断定、国際法に違反して化学兵器を使用したとして新たな対ロ制裁を科すと発表しています。

****米、ロシアに新たな制裁 英神経剤事件を非難****
米国務省は8日、英国で今年3月に起きたロシア人元二重スパイ暗殺未遂事件でロシアが「致死性」の神経剤を使用したとして、同国に新たな制裁を科すと発表した。
 
ロシア人元二重スパイのセルゲイ・スクリパリ氏とその娘のユリア・スクリパリさんは今年3月、英イングランドのソールズベリーで、ソビエト連邦が冷戦時代に開発した軍用級神経剤「ノビチョク」にさらされ、意識不明の状態で発見された。
 
制裁について、米国務省のヘザー・ナウアート報道官は声明で、「英国市民のセルゲイ・スクリパリ氏と娘のユリア・スクリパリさん暗殺未遂における神経剤『ノビチョク』の使用」に対するものだと説明。ロシアが「国際法に反し、化学あるいは生物兵器を使用した」と言明した。

制裁は15日の米議会通知期間を経た後に発動されるというが、その詳細は明らかになっていない。【8月9日 AFP】
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プーチン大統領に対しては個人的に好意を抱いているトランプ大統領としても、「ロシア疑惑」の渦中にあっては、ロシアに宥和的な対応を示すことは政治的に大きな負担となるため、厳しい対応を取らざるを得ないのでしょう。

当然ながら、ロシア側は反発しています。

****英暗殺未遂事件  ロシア側が反発 米の新制裁発動発表に****
米政府は8日、英国で3月発生した神経剤ノビチョクを用いた元ロシアスパイ暗殺未遂事件について、ロシアが関与したと断定し、新たな制裁を科すと発表した。

ペスコフ露大統領報道官は「これらの出来事を結びつけるのは受け入れられない」と反発。米露両国は7月の首脳会談で関係改善を目指すことを確認したが、道のりは険しそうだ。
 
今回の制裁は化学・生物兵器に関する米国内法に基づき、ロシアがエンジンや電子回路部品など国家安全保障に関わる物品を米国から調達することを制限する。議会への通知期間を経て、今月22日にも発動する。

3月の暗殺未遂事件を受け、米国は60人の駐米ロシア外交官を追放しているが、この案件での経済制裁発動は初めて。
 
米国務省は声明で「ロシア政府が生物もしくは化学兵器を使用したと結論付けた」と説明。ロシアにも通告したという。
 
今回の事件では英当局が国内の監視・傍受網をフル活用し、複数のロシア人の関与を断定したとされる。これらの情報公開が難しい点を踏まえ、ロシアは「証拠が提示されていない」と反論。在米ロシア大使館が8日に出した声明も「我々は事実関係も証拠も示されない状況にさらされている」と皮肉った。
 
米政府は今月3日に北朝鮮と取引したロシアの銀行への制裁を発表するなど、ロシアへの厳しい姿勢を崩していない。

ロシア国内では「対露関係の改善を目指すトランプ大統領の発言と、米政府の厳しい政策は別物だ」(高等経済学院のカシン研究員)などと、関係改善に悲観的な見方が多い。【8月9日 毎日】
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このアメリカの制裁を受けて、ロシア通貨ルーブルは9日、1年9か月ぶりの安値となっています。

周知のようにロシア国内では、政府が6月に発表した年金支給開始年齢を引き上げる改革案への不満が広がり、プーチン大統領の支持率が急落しています。

アメリカの制裁措置によって経済の足が引っ張られることになれば、プーチン大統領としては困った事態です。

しかも、今回制裁は“第1弾”で、改善が図られない場合は“第2弾”が用意されており、その中身は相当に厳しいものだとか。

****アメリカがロシアに無茶な要求、「第2弾制裁」の恐るべき内容****
「国際法違反」を理由にロシアに対して制裁を科すことを決定したアメリカですが、「第2弾」の予定があることも判明しました。

国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、既に準備されている次なる制裁の「驚愕の内容」を詳しく紹介しています。

アメリカが、プーチンに【プチ・ハルノート】!
「中国は『漁夫の利』。米国による露への追加制裁で笑う習近平」では、「アメリカは、3月に起きたスクリパリ暗殺未遂事件を理由に、ロシアに追加制裁を科す」という話をしました。

<英暗殺未遂事件>ロシア側が反発 米の新制裁発動発表に【毎日新聞 8/9(木)20:54配信】
(内容は、上記引用記事のとおり)

これだけ見ると、「あんまり厳しい制裁ではなさそうだな」と思うのですが…。

しかし、制裁発表後、ロシアルーブルもロシア株も、暴落しました。もう少し詳しく調べてみると、この制裁には「第2弾」が準備されており、そっちの方が、大変みたいなのです。

アメリカの、無茶な要求
制裁の理由についてアメリカ国務省は8日、「ロシアが、国際法に違反して、化学兵器あるいは生物兵器を、自国民(スクリパリ親子)に使用したこと」としています。

同じ理由でアメリカが制裁を科したのは、過去2回。2013年、シリアのアサド軍が、自国民に化学兵器を使った。2017年、北朝鮮が、金正恩の兄、金正男をマレーシアで殺害した(化学兵器VXガスが使われたとされる)。

そして、8月22日に発動されるのは、「第1弾」制裁です(中身は、上の新聞に書かれているとおり)。

ロシアが変わらなれば、【第2弾】の制裁が待っている。第2弾の制裁を止めるために、ロシアがしなければならないことは?

1.ロシアは、今後化学兵器、生物兵器を使用しないことを【証明】しなければならない
う〜む。「約束」ではなく、「証明」です。そんなもん、どうやって証明するのでしょうか?????

2.国連と国際機関の査察を認めなければならない
これは、ロシア国内に化学兵器、生物兵器がないか査察させろということですね。化学兵器については、1992年「化学兵器禁止条約」が成立。1997年には、同条約の履行を監視する「化学兵器禁止機関」(OPCW)が設立されました。

ロシアは、2017年に「化学兵器を全廃した」と宣言している。アメリカは、「ウソついてるんちゃうの!?」と疑っているので、「査察させろ!」と。

まあ、「査察させろ」はともかく、「化学兵器、生物兵器を今後使わないことを証明しろ!」って困りますね。

というか、ロシアはそもそも、「スクリパリ暗殺未遂事件と関係ない」という立場。ロシアは、「そもそも化学兵器を使ってない!」と一貫して主張している。

それを、いまさら「今後化学兵器を使いません!」といえば、「いままでスクリパリについて、ウソついてたんかい!」という話になってしまいます。

ここまでで、アメリカはロシアに、【無理難題】を要求していることがわかるでしょう。いってみれば、【プチ・ハルノート】です。

制裁「第2弾」、驚愕の中身とは?
ロシアが要求をのまない場合は、どうなるのでしょうか? 「第2弾制裁」の概要は、以下のとおり。

外交関係レベルを下げる(外交関係断絶もありえる!)
ロシアへの融資を禁止する(!)
アメリカの対ロシア輸出を禁止する(!)
アメリカの、対ロシア輸入を禁止する(!)(食品以外)
ロシア政府が所有する航空会社(アエロフロート)のアメリカへの往来を禁止する

第2弾は、第1弾から90日後に発動される。つまり、11月22日ですね。さて、第2弾は発動されるのでしょうか?

既述のように、「そもそも化学兵器を使ってない」と主張するロシアが、「今後化学兵器を使いません」と【証明】することなどできません。つまり、アメリカは、「最初から制裁第2弾を科すつもりで無茶な要求を出していることになります。

トランプ不在で悪化する米ロ関係
ちなみに、今回は主語が「トランプ」ではなく「アメリカ」になっています。というのは、トランプは、ロシアとの和解、友好を望んでいる。

ところが、全民主党、共和党の反ロシア派、国務省官僚、国防総省、諜報機関、反トランプ、反ロシアメディアなどが、トランプの意向を無視して、どんどん米ロ関係を悪化させていく。

ホントにユニークなケースです。【8月17日 MAG2 NEWS】
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本当に、上記のような融資や輸出入禁止を含んだ制裁がロシアに課されれば、米ロ関係は決定的に破綻します。
米ロ関係だけでなく、ロシアが影響力を有するシリア情勢など、他の地域の国際情勢にもア影響します。

また、ロシアを警戒もしながら、同時に経済的つながりもある欧州がどのように対応するのか・・・という問題もあります。

日本もロシアとの関係を清算することをアメリカに迫られることにもなります。

何よりも、二大核保有国である米ロがそこまで決定的に対立するということになれば、非常に憂慮すべき事態となります。

いくらなんでもそこまでは・・・とも思いますが、どうなるのか。

トランプ大統領が「ロシア疑惑」に関して右顧左眄して自己保身を図っているうちに、“トランプ以外のアメリカ”はどんどん対ロシア強硬姿勢を強めていく・・・“ユニークなケース”となっています。

それにしてもアメリカは、中国に経済戦争を仕掛け、ロシアとは事を構える姿勢を強め、EUとはNATO関連で溝が広がり、イランとの合意を破棄し、トルコとは対立が深まり、パレスチナではイスラエル寄り姿勢を明確にし・・・と、世界各地でもめ事の渦中にあります。

まあ、よくそんな状況を続けていられると感心はします。

そんなアメリカ・トランプ政権を支援してくれるのは、今やイスラエルとサウジアラビア、そして日本でしょうか。
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