孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

世界各地でイスラム過激派武装勢力によるテロ  ナイジェリア、ケニア、パキスタン・・・

2013-09-23 21:52:16 | 国際情勢

(ナイジェリアのベニシェイクで、イスラム過激派ボコ・ハラムの襲撃を受けた車 【9月21日 毎日】)

ナイジェリアの「ボコ・ハラム」】
西アフリカのナイジェリアは豊富な石油資源をもとに著しい経済成長を実現し、その市場に海外資本も注目していますが、一方で、成長のから取り残されている多くの貧困層が存在し、南部キリスト教地域と北部イスラム教地域の間では激しい民族対立が続いています。 特に、イスラム過激派武装勢力「ボコ・ハラム」(地元言語で「西洋教育は罪」)は、主にキリスト教徒を狙った残忍なテロを繰り返し行っています。

****ナイジェリア:幹線道路で攻撃相次ぐ 市民159人死亡****
西アフリカ・ナイジェリア北東部で、幹線道路上で武装グループによる通行者への攻撃が相次ぎ、少なくとも159人が死亡した。ロイター通信が報じた。テロ攻撃を強めるイスラム過激派ボコ・ハラムの犯行と見られている。

ボコ・ハラムの拠点マイドゥグリに通じる幹線道路で17日に、ボコ・ハラム戦闘員と見られる男らが通行車両に乗っていた市民143人を殺害。さらに19日にも同様の事件が別の場所で起こり、少なくとも16人が死亡したという。

ナイジェリアでは、ボコ・ハラムがキリスト教会や政府機関などへの攻撃を強め、政府軍の取り締まりも苛烈になっている。今年4月には政府軍とボコ・ハラムの交戦に市民が巻き込まれ、180人以上が死亡する事件も発生した。

ボコ・ハラムは2002年にマイドゥグリで結成されたイスラム過激派組織。全土でシャリア(イスラム法)の導入を目指すなど原理主義的思想で知られ、「ナイジェリアのタリバン」とも呼ばれる。【9月21日 毎日】
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武装集団はボルノ州民だけを標的にし、他の地域の人々は検問所を通過させているとのことで、軍による「ボコ・ハラム」掃討作戦に協力する形で自警団を組織したボルノ州の住民への報復攻撃ではないかとも報じられています。

イスラム過激派武装勢力によるテロは後述のように世界各地で頻発していますが、ナイジェリアの「ボコ・ハラム」の場合、住民が巻き込まれるのを厭わないというより、キリスト系住民や意に沿わない地域の住民など、住民殺害そのものを目的としている点や、7月7日ブログでも取り上げたように、学校を襲撃して、生きたまま焼かれた生徒もいる・・・といったことなど、他のイスラム過激派武装勢力によるテロに比べても残忍なイメージがあります。

ケニアではソマリアの「アルシャバブ」】
東アフリカ・ケニアでは、隣国ソマリアのイスラム過激派武装勢力「アルシャバブ」が首都ナイロビのショッピングモールを襲撃して大勢の死者が出ています。

****ケニア:首都乱射、死者59人…ソマリア過激派が犯行声明****
21日にケニアの首都ナイロビの商業施設で起きた銃乱射事件で、隣国ソマリアのイスラム過激派アルシャバブが同日夜、犯行声明を出し、さらなるケニア国内でのテロ攻撃も示唆した。

ケニア政府によると死者数は59人、負傷者数は175人。国際テロ組織アルカイダの犯行とされる在ナイロビ米大使館爆破事件(1998年8月)以降、最悪のテロ事件となった。
負傷者は300人以上との情報もある。

21日正午ごろ、10〜15人とみられる男らがナイロビ中心部にある商業施設「ウエストゲート・モール」に侵入。銃を乱射し手投げ弾を爆発させた。22日午前現在、襲撃グループは人質を取りモール内に立てこもっている。人質の人数は不明。

女性目撃者の一人は毎日新聞の取材に「襲撃者は、標的は非イスラム教徒と話していた」と語った。襲撃者についてソマリ人がいたと報じられるが、2階で店を営むアブドル・アジズさんは毎日新聞の取材に、襲撃者の一人が「アラブ人に見えた」と語った。その男は黒い布で顔を覆っていたが、その後、布を取って避難する人々の中に紛れ込んだという。

モールは在住外国人や地元富裕層に人気のある高級商業施設。ロイター通信によると、フランス人2人、外交官1人を含むカナダ人2人が犠牲となった。在ナイロビの日本大使館によると、日本人の被害情報はない。

アルシャバブはアルカイダとの統合を宣言した過激派。ソマリア中・南部を制圧したが、2011年10月のケニアの軍事介入などで都市部から放逐され、弱体化が指摘される一方、ソマリア国境に近いケニア北東部などではアルシャバブの犯行とみられるテロ事件が頻発している。【9月22日 毎日】
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上記記事にあるように、事実上の無政府状態にあったソマリアの大部分を実効支配した「アルシャバブ」に対して、その勢力が弱まり始めた時期にケニアは軍事介入(その後にエチオピアも侵攻)し、「アルシャバブ」を都市部から追放する状況になっていますが、そのことへの報復テロとみられています。

なお、“襲撃犯にはソマリア人2人とケニア人1人の他に、米国人3人、カナダ人、フィンランド人、英国人各1人が加わっている。”【9月23日 時事】との報道もあります。

パキスタンの「パキスタンのタリバン運動(TTP)」】
「テロ地獄」とも呼ばれるようにテロが頻発しているパキスタンでも、アメリカの無人機攻撃への報復を主張する「パキスタンのタリバン運動(TTP)」による大規模なテロが起きています。

****キリスト教会で自爆攻撃、78人死亡 パキスタン****
パキスタン北西部ペシャワルで22日、日曜の礼拝中だった教会で自爆攻撃が2回立て続けに発生し、少なくとも78人が死亡した。同国のキリスト教信者を狙ったものとしては過去最多の犠牲者を出した攻撃とみられる。

ペシャワルのあるカイバル・パクトゥンクワ州では近年、イスラム過激派による攻撃が相次いでいる。チョードリー・ニサル・アリ・カーン内相によると、この攻撃で少なくとも78人が死亡し、100人以上が負傷。うち11人が重体となっている。

イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」が犯行声明を出し、タリバンと国際テロ組織アルカイダに対する米国の無人機攻撃への報復として外国人を殺害するため、「Junood ul-Hifsa」という新たな分派が設立されたとも述べた。
タリバン運動のスポークスマンは「無人機攻撃が中止されるまで、外国人と非イスラム教徒に対する攻撃を続ける」とAFPに電話で語った。

規模が小さく、その多くは貧しいパキスタンのキリスト教信者コミュニティーは、イスラム教徒が圧倒的多数を占める同国で差別を受けているが、爆弾攻撃の標的になることは極めてまれ。【9月23日 AFP】
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イラク、シリアでも
このほか、宗派間対立が再燃しつつあるイラクでも、アルカイダ系のスンニ派武装勢力が関与したのではないかと思われるシーア派住民を狙ったテロで多くの犠牲者が出ています。

****爆弾攻撃で75人死亡=テロ激化のイラク****
イラク各地で21日、自動車爆弾などを使ったテロ攻撃が相次ぎ、現地からの報道によると、22日までに75人以上の犠牲者が確認された。

イラクでは最近テロが激化し、5月や7月の死者は1000人を超えた。AFP通信の集計では、今月の犠牲者も既に540人に達している。

首都バグダッドのイスラム教シーア派居住区サドルシティーでは21日、葬儀会場を狙った車爆弾などを使った自爆攻撃があり、少なくとも65人が死亡した。

バグダッド北方のバイジや北部のニネベ州などでは主に、治安当局者を標的とした事件が発生し、10人以上が命を落とした。【9月22日 時事】
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内戦が続くシリアでは、反体制派に加担するアルカイダ系組織が独自の動きを強めており、反体制派内の対立が表面化しています。

****シリア:国民連合がアルカイダ非難 反体制派内で対立激化****
シリア反体制派の主要組織「シリア国民連合」は20日、反体制派に加わっているイラク拠点の国際テロ組織アルカイダ系組織「イラク・レバント・イスラム国(ISIL)」が反政権闘争を妨げていると非難する声明を発表した。

ISILは18日以降、トルコとの国境付近で、国民連合傘下の自由シリア軍を攻撃していた。両者は国家観を巡る意見の相違を背景に対立が激化している。

国民連合は声明で「ISILはアサド政権と戦わず、体制派の支配地域で、独自の統治を始めようとしている」と指摘。「外国の勢力と協力して、シリアの主権を脅かしている。市民を抑圧する姿勢は(アサド政権与党の)バース党の歴史と重なる」と厳しく批判した。

在英組織「シリア人権観測所」によると、ISILは18日以降、トルコ国境近くの自由シリア軍の拠点アザーズを攻撃。AP通信によると、トルコは近くの国境検問所を一時封鎖した。両者は20日までに戦闘で捕虜にした兵士の交換などを条件に停戦が成立したが、対立は各地でくすぶっている。

シリア内戦では、イスラム過激派も反体制派として参戦しており、ISILは最強硬派として知られる。ISILはイスラム教に基づく新国家建設を志向しており、革命を目指す国民連合とは思想が異なっている。【9月21日 毎日】
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フィリピン南部ミンダナオ島のサンボアンガでは、イスラム武装勢力「モロ民族解放戦線(MNLF)」のメンバー約180人と政府軍との戦闘が、住民を人質に取る形で9日から続いています。現在は、政府軍が状況をコントロールするところとはなっていますが、完全には集結していない模様です。

フィリピンのこの事件はイスラム武装勢力によるものですが、同じイスラム武装勢力「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」の進める政府との和平交渉の枠組みから締め出された感があるMNLFが企てた主導権争い的な性格があり、他の地域のイスラム過激派武装勢力によるテロとは異質なものがあります。

イスラム世界の不満
現代の紛争・混乱の主たる要因がイスラム過激派の引き起こすテロによるものであることは、特に「9.11」以降顕著になっていますが、ここ数日の状況を概観すると、上述のように世界各地でイスラム過激派による事件が同時多発しており、あらためてイスラム世界にどのように向き合っていくべきかという問題に直面します。

当然がら大多数のイスラム教徒はテロとは無縁で、むしろ過激派武装勢力の引き起こすテロの被害者ともなっている訳ですが、これだけイスラム過激派武装勢力の活動がイスラム世界に広がる背景には、欧米主導で欧米的価値基準に基づいて作られた現在の世界の枠組みに対して、経済的・政治的に劣後した状況に追いやられているイスラム世界の人々の不満が強く存在していることがあるように思われます。

更に、イスラムの教義の中にジハード(聖戦)に走りやすい面があるのか、イスラム世界で人命に対する考え方で欧米と差があるのか・・・そのあたりはよく知りません。イスラムと欧米社会の衝突に関しては万巻の書が出されていますが・・・。

イスラムにどう向き合うべきか云々も手に余る問題でなんとも言いようがありませんが、イスラム過激派武装勢力によるテロに惹起されてイスラム排斥的動きを強めることは、おそらくイスラム世界全体に存在している不満に火をつける形で、より多くの人々を過激派の方へ追いやる結果となるのでは・・・という感があります。
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