孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

柳条湖事件から82年 日中・日韓の険悪な国民感情の改善にむけて

2013-09-18 23:12:28 | 東アジア

(“flickr”より By james-pua http://www.flickr.com/photos/42830040@N05/3957400163/in/photolist-72GHci-7536x5-7hNv6o-7rAjUw-7u68g2-9sssPd-9spvVM-9spseX-9sstzW-9spuFa-9sstcY-9ssssU-9ssukf-9ssrJG-9sss89-9ssuGU-bbbpfH-bbFuk2-cKFLp3-c4aBq7-c4azQu-c4aCVE-c4axn9-c4axVh-c4ayqS-c4azif-c4awXS-c4aAm1-c4awx9-c4aBV5-c4aCqm-c4avYQ-c4aASS-8expBJ-dTBQyi-dT7po6-9HG4Uo-a3WbKh-a3Wc6u-8iqcgr-8JPaBT-ewLXSv-firT7Z-bPisz8-8sjmBA-8sjmp3-8sghED-8sggMn-8sghSx-8sjmaN-fEwEgd)

習近平政権は今年、一転して反日デモを抑え込む
1931年9月18日、奉天郊外の柳条湖付近で南満州鉄道(満鉄)の線路上で爆発が起きました。いわゆる「柳条湖事件」です。(昔は「柳条溝事件」と呼んでいました。そのあたりの話はいろいろあるようですが、今回の本旨ではないのでパス)

昨年の9月18日は反日デモの嵐が吹き荒れたことから懸念されていましたが、今年はそうした反日の動きはなかったようです。

****柳条湖の日」デモなし…中国政府、抑え込み*****
満州事変の発端となった柳条湖事件(1931年)の発生日にあたる18日、中国各地では早朝から記念行事が行われた。

昨年はこの日に合わせ、日本政府の沖縄県・尖閣諸島の国有化に抗議する反日デモが100都市以上に広がったが、今年はデモの情報は確認されていない。

柳条湖事件が起きた中国遼寧省・瀋陽の「9・18歴史博物館」での式典では、市民代表らが午前9時18分、終戦までの年数に合わせて14回、鐘をつくなどした。会場周辺一帯は封鎖され、混乱はなかった。

昨年は大規模なデモ行進が行われた北京の日本大使館周辺は18日午前、いつもより多めの警察車両や軍車両が出動して警戒にあたり、正門付近の側道を駐車禁止とする措置が取られた。同大使館によると「具体的な危険情報はない」(広報担当)という。

中国政府は昨年はデモを容認したが、今年は抑え込む姿勢に転じた。デモが社会に不満を持つ層を刺激し、政権批判に向かうことを警戒したとみられる。【9月18日 読売】
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読売の続報では、
“ 習近平政権は今年、一転してデモを抑え込んだ。デモ容認は社会の不安定化を招き、習政権の権力基盤や減速する経済に悪影響を与えかねないとの判断があるとみられる。
18日朝、北京の日本大使館前では普段通り、正門近くに国旗が掲揚された。昨年はデモ参加者が「日の丸」に生卵やペットボトルを投げつけたが、今年は警官が通行人に立ち止まらないよう求め、大きな混乱はなかった。
広東省広州の総領事館前では、中国人男性が尖閣諸島に対する中国の「領有権」を主張するチラシを配ろうとしたが、警戒中の警官に阻止、連行された。”
とのことです。

【日中両国の9割以上がそれぞれ相手国に良くない印象を持っている】
反日デモも政権・党のさじ加減次第・・・というところのようですが、日中両国の国民感情が非常に険悪な状態になっており、一向に改善されていないことも事実です。

****日中共同世論調査 主な質問と回答****
「言論NPO」と中国日報社が実施した日中共同世論調査の主な質問と回答は次の通り。

●相手国に対してどのような印象を持っているか
 日本 良い(「どちらかといえば良い」を含む)…9・6%
    良くない(「どちらかといえば良くない」を含む)…90・1%
 中国 良い(同)…5・2%
    良くない(同)…92・8%
●相手国に良くない印象をもっている理由は何か(複数回答可。以下は主な回答)
 日本 尖閣諸島を巡り対立が続いているから…53・2%
    歴史問題などで日本を批判するから…48・9%
    資源の確保で自己中心的に見えるから…48・1%
 中国 領土紛争を引き起こし、強硬な態度をとっているから…77・6%
    侵略の歴史についてきちんと謝罪し反省していないから…63・8%
    他国と連携して中国を包囲しようとしているから…43・4%
●現在の相手国の社会や政治のあり方として、当てはまるものは何か(三つまで回答可。以下は主な回答)
 日本 社会主義・共産主義…66・9%
    全体主義(一党独裁)…37・4%
    軍国主義…33・9%
 中国 覇権主義…48・9%
    資本主義…42・1%
    軍国主義…41・9%
●現在の日中関係についてどう思うか
 日本 良い(「どちらかといえば良い」を含む)…2・4%
    悪い(「どちらかといえば悪い」を含む)…79・7%
 中国 良い(同)…5・9%
    悪い(同)…90・3%
●日中関係の発展を阻害する主な問題とは何か(三つまで回答可。以下は主な回答)
 日本 領土問題(尖閣諸島問題)…72・1%
    中国の反日教育…40・2%
    日中両国民の間に信頼関係ができていないこと…30・9%
 中国 領土問題(尖閣諸島問題)…77・5%
    日本の歴史認識や歴史教育…36・6%
    海洋資源などをめぐる紛争(東シナ海ガス田開発問題)…31・9%
●これまでに相手国に行ったことがあるか
 日本 ある…14・7%
    ない…85・3%
 中国 ある…2・7%
    ない…97・2%
●今後、もし機会があれば相手国に行きたいか
 日本 行きたい…30・0%
    行きたくない…69・5%
 中国 行きたい…24・8%
    行きたくない74・0%
●日本の首相が靖国神社へ参拝することについてどう思うか
 日本 参拝しても構わない…46・0%
    私人としての立場なら、参拝しても構わない…27・5%
    公私ともに参拝すべきではない…9・9%
 中国 参拝しても構わない…9・0%
    私人としての立場なら、参拝しても構わない…20・4%
    公私ともに参拝すべきではない…62・7%
●(尖閣諸島をめぐり日中関係の悪化して以降行われていない)日中両国の首脳会談は必要か
 日本 必要…64・9%
    必要でない…7・6%
 中国 必要…57・1%
    必要でない…37・3%
●日中間に領土問題は存在しているか
 日本 存在している…62・7%
    存在していない…17・6%
 中国 存在している…82・2%
    存在していない…13・9%
●領土問題をどう解決するか(複数回答可、以下は主な回答)
 日本 両国間ですみやかに交渉し、平和的解決を目指すべき…49・1%
    国際司法裁判所に提訴し、国際法にのっとり解決すべき…42・4%
    領土を守るため、日本の実効支配をより強化するべき…26・2%
 中国 領土を守るため、中国側の実質的なコントロールを強化すべき…58・1%
    日本の主張は条理に反しており、外交交渉を通じて日本に領土問題の存在を認めさせるべき…54・8%
    両国間で前向きな交渉をし、平和的解決を目指すべき…43・6%【8月6日 朝日】
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日中だけでなく、日韓関係についても同様です。

こうした国民感情が冷え込んだ事態にあって、それぞれの政府の事情・思惑から政府間の交渉も殆ど途絶え、首脳間での“立ち話”ができたことが大きな話題になるような状況です。

****信頼の獲得が安保強化の道」 韓国高官、日本に****
韓国国防省の白承周(ペクスンジュ)次官は17日、安倍政権下で集団的自衛権の行使容認に向けた環境整備が進んでいることについて、「周辺国から政治・軍事的な信頼を得ることが、憲法改正や集団的自衛権よりも日本の安全保障を強化する近道だ」と述べ、日本の動きにくぎを刺した。

ソウルの外国人記者クラブで会見した。白氏は、日本が憲法9条を守ってきたことが、日本の安保を困難にしているわけではないと指摘した。【9月18日 朝日】
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白承周次官なる人物については全く知りませんし、憲法改正や集団的自衛権についてはいろんな主張がある問題ですが、「周辺国から政治・軍事的な信頼を得ることが、憲法改正や集団的自衛権よりも日本の安全保障を強化する近道だ」ということに限って言えば、そのとおりだと思います。

有事への備え以上に、有事が起きないような環境を作る努力が大切です。安全保障だけでなく、国民生活の基盤となる経済的にも東アジアの安定は日本の将来にとって必要不可欠です。

従って、“自民党の二階俊博総務会長代行は11日、名古屋市で講演し、中韓両国との関係について「五輪招致のために努力した情熱の半分でもいいから、中国、韓国に対していろいろやるべきだ」と述べ、改善に向けた一層の努力を政府に促した。”【9月11日 時事】というのも、そのとおりだと思います。

ただ長期的・根本的には、政府間の交渉・つきあいではなく、現在の険悪な国民感情の改善が重要でしょう。
もちろん誰しも“国民感情の改善が重要”とは言いますが、どれだけ本気でこの問題に取り組んでいるのか?と言えばかなり疑問があります。
日本の将来がそこにかかっているという覚悟で、万難を排して取り組むべき問題でしょう。

****対立の中、若者で盛況=ソウルで「日韓おまつり****
「祭り」をテーマに日韓両国の相互理解を深めるイベント「日韓交流おまつり」が15日、ソウルで開催された。両国は歴史や領土問題をめぐり対立が続くが、会場には大勢の若者らが集まり、盛況だった。

沖縄のエイサーや高知のよさこい踊りなどの公演では大きな拍手と歓声が湧き上がった。着物や浴衣を着て写真撮影したり、伝統の遊びを体験したりできるコーナーもにぎわっていた。

ソウルの女性会社員、韓世珍さん(23)は「日本文化が好きで、日韓関係が悪くても気にしない。両国は、互いの悪いところを見るのではなく、良い面を受け入れた方がいい」と話していた。
「おまつり」は2005年に開始。21、22日には東京で日本側イベントが開かれる。【9月15日 時事】 
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もちろん、こうした文化交流も相互理解を深めるうえで有効でしょう。
ただ、それぞれの国民が相手に抱いてるネガティブなイメージを払しょくするために一番有効なのは、中国・韓国の人に実際に日本に来てもらって、日本がどういう国か、日本人がどういう人間か、自分の目で見てもらうことではないでしょうか。「百聞は一見に如かず」です。

****日本の評価を間接的に上げていく取り組みが必要****
エズラ・F・ヴォーゲル氏(ハーバード大学アジアセンター ヘンリーフォード二世名誉記念社会科学教授)へのインタビュー)
――中国のこの先を展望したとき、中国の愛国主義はますます強くなり、経済規模もさらに大きく、強くなっていくと思います。また、それを中国共産党も人民も望んでいます。日本はそういう中国に対して、どのように付き合っていけばよいのでしょうか。

 中国に対して、日本やアメリカが「中国はこういう風に変わるべきだ」というような言い方や接し方をすることには、反対です。アメリカ人はよく外国に対して説教をします(笑)。それは逆効果ですね。

 中国の人は日本を訪ねて、実際に日本の社会を見てもらって、それほど悪い人たちじゃないよということを感じてもらう。中国では、公の場で日本を肯定するようなことは言いにくいのでしょうが、日本に対する評価を、間接的に上げていくような取り組みができるといいですね。

 日本はしっかりと歴史の問題などを中国に対して説明をする。日本は「中国はこうするべきだ」とか絶対に言ってはいけないと思います。【9月18日 DIAMOND online】
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話が横道にそれるようですが、私が暮らしている鹿児島からは上海への定期便が飛んでいます。しかし、搭乗率が悪く、存続が難しくなっています。
定期便の存続は地域経済に大きな影響があります。

そこで鹿児島県は、県職員を研修として上海へ送り込むことで搭乗率引上げをはかることを計画しましたが、税金の使用法としていかがなものか・・・ということで物議を醸しました。

結局、県民や県議会の反発を受けて、県は職員ら1000人を7月~来年3月に研修で派遣する当初計画を、民間を含む300人に縮小し、7~9月分の事業費3400万円が県議会で可決されて実施に移されています。

路線を運航する中国東方航空は鹿児島県職員の上海研修などの取り組みを評価し、次期運航ダイヤでも週往復2便の運航を継続するとのことです。
ただ、反対するグループからは知事のリコールに取り組む動きも出ています。

で、思ったのですが、同じ費用を使うなら、県職員を研修名目で上海に派遣するよりは、中国や韓国(鹿児島はソウル便もあります)から、一般の人に無料で日本へ来てもらったらいいのでは・・・。
その方が、ホテル・観光施設など県内に落ちるおカネも発生します。

もちろん主たる目的は、国民の相互理解です。
できれば、日本に行きたいという人、日本が好きだという人ではなく、日本なんか行きたくない、日本人は嫌いだという人に来てもらいものです。

日本国内での制約を殆どつけずに(来日して反日デモをするというのは困りますが)、物見遊山でいいですから気の向くままに日本を経験してもらえば、10人中8人ぐらい(少なくとも6~7人ぐらい)は「日本は思ってた国とは少し違うかも・・・」と感じてもらえるのでないでしょうか。それだけの自信があります。
(中国が嫌いだという日本人を中国に送り込んで、認識が変わるか・・・という点では、いまひとつ請け負いかねるところがあります。私自身は中国旅行で数々の親切も経験していますが・・・)

そうした試みを10年続ければ、鹿児島だけでなく全国で、あるいは国家施策として行えば、新しい国民関係の核となる、“親日”ではなくとも“知日”の人々を増やすこともできるのではないでしょうか。

以上は単なる思い付きの与太話ですが、要は、単にお題目として“国民感情の改善”“相互理解”を唱えるだけでなく、資金も人材も時間も使って、本気で取り組むべきだということです。
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