孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

カンボジア・タイ:国境を超える資本と労働力  日本:漢字に馴染みやすい中国人看護師が増加

2013-05-22 22:34:16 | 難民・移民

(先輩の指導を受けながら、看護記録をつける中国人看護師 【5月21日 朝日】http://digital.asahi.com/articles/OSK201305200192.html?ref=comkiji_redirect)

カンボジアの労働コストはタイの3分の1
経済のグローバル化にともない、世界中の多くの企業同様、日本の企業も安い労働力・消費市場を求めて中国やタイなどに以前から進出していますが、最近では中国やタイは労働コストが上昇しており、また、チャイナリスクもあって、さらにミャンマー、カンボジア、ベトナムなどに進出先を求めていることは、よく耳にするところです。
下記記事もそうした事例のひとつです。

****超国家企業と雇用:5 「タイ、もう割に合わない*****
遠ざかる製造現場 カンボジアに工場進出
カンボジアの首都プノンペンから西へ車で6時間。延々と続く山道をタイ国境近くまで走ると、森林の中に突然、広大な平地が広がる。高床式の住居が点在する寒村に、7年前にできた工業団地だ。

「経済特別区」と書かれた門をくぐり、トラックが次々と団地から出ていく。荷台いっぱいに乗っているのは、自動車部品の大手メーカー、矢崎総業の工場で働く女性たち。自宅がある周辺の農村に帰る。

矢崎総業がここに工場を立ち上げたのは昨年末のことだった。約700人を雇い、ワイヤハーネスとよばれる自動車用の電線をつくる。大半は18~25歳の女性で、工場勤めが初めての人も多い。リエム・チャンパンさん(20)は「同級生もたくさん就職し、村の生活は格段に良くなった。ずっとここで働きたい」という。工場でリーダー役を務め、両親と兄弟の家族5人の生活を支える。

日本企業のグローバル化の最前線に立つ矢崎総業は世界に約440の拠点をもち、従業員約23万人の9割強が外国人だ。その中でもカンボジアは最新の大規模工場で、従業員の賃金はアジアで最低水準だという。
隣国のタイで40年以上も操業を続けてきたが、その一部をここに移した。タイの月平均の賃金は日本円で3万~4万円で、この10年間で倍増した。カンボジアでは、その3分の1程度ですむ。
「タイではもう割に合わなくなった」。カンボジア工場を仕切るゼネラルマネジャーの植松賢二氏はいう。人件費と光熱費を合わせた経費をタイ工場の6割以下に抑える。

工場でつくった部品は、タイに工場をもつトヨタ自動車や三菱自動車に運ぶ。トラックに積んで国境を抜け、バンコク郊外の拠点に届ける。わずか3~4時間ほどの距離だが、国境を越えるだけで従業員の賃金がぐんと下がる。

トヨタなどの大工場に先駆けてカンボジアに出てきた。いまは割高な電力をタイから買わなければならないが、いずれインフラが整えば、ほかの日本企業も追いかけてくるはずだ。輸入関税の減免などカンボジア政府の優遇策も手厚い。
「カンボジアは、日本企業が最も参入しやすいアジアのフロンティア(開拓地)だ」。現地への進出を支援するジェトロプノンペンの林憲忠氏は話す。(後略)【5月20日 朝日】
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止まらないカンボジア人労働者のタイへの流出
グローバル社会にあっては、移動するのは企業・資本だけではなく、労働力もまた、よりよい雇用機会を求めて移動します。
安い労働コストを求めて企業がタイからカンボジアに移動する一方で、高い賃金を求めてカンボジア人労働者がタイへ移動しています。

*****カンボジア、建設労働者が不足 賃金高いタイなどへ流出*****
建築ブームにわくカンボジアで、建設労働者が不足している。好景気で不動産セクターが回復、建築物件が増えていると同時に、より賃金の高い隣国タイなどへ労働力が流出していることが理由とされる。

カンボジア政府によると、国内の建設セクターは2012年に21億ドル(約2078億円)規模となり、前年比で72%の伸びを示した。また、国内で登録されている建設・デザイン関係の会社数も年々増加し、12年には1200社を超えた。

特に首都プノンペンで建築ラッシュが続いている。目抜き通り沿いや町の中心部に、大型商業ビルが建設され、家具などが備え付けられてホテル機能も持ち合わせたサービスアパートなどの集合住宅も相次いで建っている。
世界銀行のデータによると、12年にカンボジア全土で認可された建築プロジェクトの総額は前年比で36%の伸びとなったが、プノンペンだけでみると前年の3倍に膨らんだ。

一方、現場で働く建設労働者は不足が目立ち、建設計画に影響を及ぼすほどになっている。
「200人の労働者を確保しようと思ったら、2カ月はかかる。以前はすぐに見つかったのに」。カンボジアの大手建築会社の担当者は、地元紙にそう語った。また、別の建設会社の担当者は「現在50人の労働者を雇っているが、本当に必要なのはその倍以上の人数だ」と話す。

労働者不足の原因として指摘されるのが、タイなど外国への「出稼ぎ」だ。
タイは今年1月、労働者の最低賃金を一律1日300バーツ(約1000円)に引き上げた。それまでもバンコクなど都市部ではすでに300バーツに引き上げられていたが、全国一律となったことでさらにカンボジア人労働者の流出が加速したもようだ。

カンボジアの最低賃金は、3月下旬、他セクターの基準となる縫製・製靴業で月80ドルに引き上げられたが、それまでは月61ドルだった。月20日余り働いたとして、1日の賃金は3ドル前後。タイの3分の1程度だ。

地元労働者を確保するため、カンボジア国内の建設会社は賃金引き上げを迫られている。現在、建設労働者の1日の賃金は4ドル50セント程度といわれ、この1年で1.5倍に跳ね上がった。さらに現場に寝泊まりできる簡易宿舎を用意するなど、労働者争奪戦は激しさを増しているという。

それでも、「1日で10ドル稼げる」とされるタイへの流出は止まらない。タイ国内には現在、合法と違法を含め、約30万人のカンボジア人が移民労働者として暮らしているとされる。建設労働者に限らず、工場労働者やメイドとして外国で働くことを選ぶカンボジア人は増えており、国内の労働市場は軒並み労働者不足にあえいでいる。たとえば縫製業界では約70万人が働いているが、「さらに5万人の労働者が必要」(カンボジア縫製業協会)という。

フン・セン首相も、労働力流出が経済発展を妨げることを懸念し、国内経済界に対して賃金引き上げなど労働環境の向上に努めるよう、たびたび訴えている。【5月8日 フジサンケイビジネスアイ】
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カンボジアで労働力不足が進んでいるというのは意外でしたが、国境という障害を越えて資本・労働力が移動する社会にあっては、ある意味当然の現象ともいえます。
こうした移動の結果、長期的には各国の賃金・所得は平準化される方向に進む・・・というのは、あまりにも単純化した言い様ではありますが、基本的方向としてそういう流れがあるとは言えるでしょう。

中国人らの国家試験の合格率は70~90%と、日本人に迫る
日本国内については、人の流れについては高い制度的障壁が存在しており、これまでのところは極端な労働力の流入といった現象は生じていません。

しかし、少子高齢化社会を迎えて労働力が不足する分野がすでに出てきているのも現実で、そうした問題が著しい医療・介護の分野では経済連携協定(EPA)によって制度的障壁を下げることで、インドネシア・フィリピンから看護師・介護士を呼び込もうとしています。

もっとも、制度的障壁を下げたとは言いても、日本の場合は日本語という非制度的障壁があり、短期間でこれをクリアすることを求める現行制度はあまりうまく機能していない現実があることもしばしば報じられています。

興味深かったのは、この日本語(漢字)という非制度的障壁を比較的超えやすい国があるという話です。
漢字の国、中国です。
もちろん、日本と中国では字体が異なり、発音は全く別物ですが、それでもインドネシアやフィリピンの人に比べれば格段に順応しやすいでしょう。

****中国人看護師が急増 NPOが病院紹介 語学で優位、EPAの倍*****
中国を中心に少なくとも217人の外国人の若者が日本の看護師国家試験に合格し、民間の病院で働いていることが朝日新聞の調査でわかった。
深刻な看護師不足を背景に、国内のNPO法人が中国の大学などと病院側の橋渡し役になり、3年ほど前から急増。経済連携協定(EPA)で来日したインドネシア、フィリピン人看護師(96人)の2倍を超えた。

国籍別では、中国183人、ベトナム30人、韓国4人。勤務先の病院は、大半が首都圏か関西だ。
NPOは、朝日新聞が確認できただけで首都圏に3、関西に1。この4法人が217人のうち212人を病院側に紹介した。残り5人は病院側が独自に探し、雇用していた。
4法人のうち3法人(東京都、京都府、埼玉県)は2006~09年に設立され、中国からの受け入れを本格化させた。

NPOが中国を主な対象にするのは現地大学からの要請があり、同じ漢字圏で日本語を習得しやすいからだ。NPOは病院からの寄付などで運営されている。
NPOが紹介した中国人らの国家試験の合格率は70~90%と、日本人に迫る。
一方、EPA枠では、08年から今春までにインドネシアとフィリピンから629人が来日したが、合格率は10%前後と低迷している。

NPOの仕組みで共通するのは、手厚い日本語学習支援だ。現地の医科系大学と提携し、大学に日本語講座を設け、優秀な学生の中から来日候補生を選別。来日後は、受け入れ予定の病院が日本語学校に通う費用を援助する。看護助手として雇用するなどし、生活面でも支える。
ただし、EPA枠の候補生より厳しく、国家試験の2年以内の合格が求められており、受験前に「日本語能力試験」(国際交流基金など主催)の最上位の「N1」に合格しなければならない。

一方、EPA枠では、来日前後に1年間の日本語研修(10年度までは来日後、半年)が義務づけられているだけで、日本語能力試験を受験する必要もない。日本語学習の経費など、国の支援態勢も十分とはいえず、日本語力の不足が指摘されている。

厚生労働省看護課は中国人看護師が増えていることについて、「良いとも悪いともいえない。日本の国家試験に合格しているので、日本人看護師と分け隔てることはしない。医療現場でのトラブルも報告されていないので、実態調査は考えていない」としている。

 ◆キーワード
<日本の看護師不足とEPA>
厚生労働省の調査では、看護師や准看護師、助産師ら看護職員は2011年時点で、全国で約149万5600人。一方、全国の医療機関からの聞き取りでは、約154万1千人が必要で、約4万5千人不足している。

しかし国は、EPA枠(インドネシア、フィリピン)以外の外国人看護師確保に力を入れる予定はいまのところないという。この両国は自国での実務経験などをもとに、日本に渡る看護師候補生を選抜。日本語能力は考慮されていない。候補生は病院で働きながら研修を受けるが、日本の国家試験に合格できず帰国する人が相次いでいる。【5月21日 朝日】
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****看護師、海越え独自養成 中国人急増 現地で日本語講座・月給3倍****
中国人の若者らが日本の医療現場で看護師としての第一歩を踏み出している。中国の大学は送り出しに積極的で、日本の看護師不足を背景に、今後ますます増えそうだ。
厚生労働省は実態調査を考えていないが、外国人の手を借りずにやっていけるのかどうか国は検討を始めるべきだ、との指摘もある。

「人見知りするので、(配属先の)病棟に慣れることができるか心配」。京都市伏見区の武田総合病院(500床)で4月上旬にあった中国人看護師の新人研修。今春、国家試験に合格したばかりの江蘇省出身の姚紅偉(ようこうい)さん(25)は、先輩の中国人看護師らに打ち明けた。
「言葉の壁があり、難しいこともあるかもしれない。でも、笑顔を忘れずに頑張って」。看護師2年目の劉菁(りゅうせい)さん(26)が励ました。

同病院には日本人を含め379人の看護師がいる。中国人は10人で、うち新人は姚さんら2人。研修には、系列病院からも4人の中国人の新人が参加した。
姚さんの配属先の内科病棟には、約50人の入院患者がいる。「いち、に、いち、に、って声に出して」「しんどくない?」。脳疾患で1人で歩くのが難しい高齢男性の歩行練習につき添う。男性は「話をよく聞いてくれる。日本人と何ら変わらない」とほめる。(中略)

 ■報酬改定で争奪激化、在留期限撤廃も背景
中国からの看護師候補生の受け入れが急増する背景には、日本の診療報酬制度の改定と外国人医療従事者の在留資格の撤廃がある。

厚労省は2006年、医療の高度化と高齢化対策などのために、入院患者7人に看護師1人とする「7対1」の配置基準を新設。手厚く配置する病院ほど診療報酬が増えるため、それまでの「10対1」から切り替える病院が相次いだ。看護師の引き抜きや取り合いが激しくなり、深刻な看護師不足に陥った。

その一方で法務省は10年に、出入国管理法の省令を改正し、外国人医療従事者の在留期間を7年以内とする制限を撤廃した。一定期間ごとに更新すれば長期就労が可能になった。

厚労省は看護師不足対策として、子育てなどで職を離れた「潜在看護師」の復職支援や、離職を防ぐための病院内保育所の開設などに、都道府県を通じて補助。当面は約55万~65万人いるとされる潜在看護師の掘り起こしに努め、EPA枠以外の外国人の確保に力を入れる予定はないという。

岐阜県内の公立病院の元看護部長は「電子カルテ化が進み、医療機器も日進月歩で変わっている。現場復帰が難しいのは、体力的な問題以外にも気後れがある」と指摘する。
長崎大大学院の平野裕子教授(保健医療社会学)は「少子化で看護の若い担い手は減るが、高齢化によって看護を必要とする人は逆に増える。外国人看護師の手を借りずにやっていけるのかどうか、国は検討を始めるべきだ」と話す。

中国からの看護師候補生の来日はますます増える可能性が高い。漢字の素養があるうえ、EPA枠のインドネシア、フィリピン人に比べて日本語学習への支援が手厚いからだ。NPO法人「国際医療福祉人材育成機構」は中国の23大学と提携。06年から現地で日本語講座を開き、受講する学生は当初の数十人から300人ほどに増えた。13年には、76人が来日するという。

中国・大連市の大連医科大学は日本語講座を受講する学生を現在の40人から160人に増やす計画だ。国際交流責任者の韓記紅さん(45)は「中国でも高齢化が加速度的に進む。日本の先進看護を学び、中国に戻ってきて欲しい」と語る。【5月21日 朝日】
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ジリ貧の閉鎖社会
「中国でも高齢化が加速度的に進む」とあるように、今後は中国国内において医療スタッフがこれまで以上に求められることになるでしょう。
そうした社会の変化を考えると、長期的に人材が供給される保障はありませんが、漢字になじみやすく、外見的にも日本人と差異がほとんどなく違和感もない中国の人を日本に呼び込むのは現実的対応のひとつと思われます。
中国を毛嫌いする一部の人々は「とんでもない!」と激怒することでしょうが。

もっと言えば、漢字という点から見れば、日本人は中国語を学びやすい条件を有しているとも言えます。
現在のような日中の緊張状態が緩和されれば、中国語を学んだ日本人がもっと中国へ進出してもいいのではないでしょうか。
そうした相互の人的移動によって、両国の関係が長期的に強められれば、両国にとって素晴らしいことです。

もちろん、外国人労働者の流入が経済的・社会的・文化的摩擦をもたらすことは間違いないところで、ドイツやイギリスでも移民の増加にともなって反移民的な政治活動も表面化しています。
日本でも今ですらヘイトスピーチが街で聞かれるような状況ですから、外国人、特に中国・韓国の人が増加すれば更に社会的問題を惹起します。

しかし、問題点をあげつらって人の移動を制約し、狭い世界に閉じこもってしまうよりは、問題点への対応に苦慮しながらも、それをなんとかクリアして関係強化を図っていく方向のほうが、より将来的展望があるように思えます。

なお、中国の看護師・介護士の現状については、“中国では正規の専門学校を卒業したにもかかわらず、就職口が見つからない介護士が、山東省だけでも6万人近くいるという。王主任は「中国では医者を重視する一方で、看護師や介護士は冷遇されており、その役割の重要性が正しく認識されていない。看護師は高い収益性を見込めないと、雇用に積極的な病院も少ない。そのため、就職できない看護師たちは海外への派遣を選ぶより他にないのだ」と指摘した。”【1月20日 Record China】ということす。

この人材に着目した医療スタッフが不足しているドイツは“ドイツ労働局と中国商務部が管轄する各関連機関は2012年末、中国の看護師をドイツの高齢者介護施設に派遣することに関する協議書に署名した。看護師派遣の第一陣は既に山東省の海外派遣看護師訓練施設でドイツ語の学習を始めているという。”【同上】とのことです。
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