孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  言論・思想面での引き締め強化策「七つの禁句」  「労働教養制度」の実態

2013-05-11 21:58:47 | 中国

(2011年4月 上海 抗議者を連行する警官 【1月8日 ヒューマン・ライツ・ウォッチ】より http://www.hrw.org/ja/news/2013/01/08)

【「現在の中国の問題点を党が具体的に認めた」】
中国社会が大きな問題・矛盾を数多く抱えていることは言うまでもないところで、日中関係が悪化していることもあってか、毎日のようにその類の情報は目にします。
いちいちそれらをあげつらっていたらきりがありませんし、特に中国を目の敵にしたようなブログにするつもりもありません。

また、一人で中国を旅行する機会もときどきあり、トラブルで困ったときに、日本では経験したこのないような親切を中国の方から受けることも多々ありますので、“中国という国は・・・”“中国人は・・・”といったものの言い方が妥当がどうかも疑問もあります。

そうは言いつつも、“やはり、これはちょっと・・・”と思わざるを得ないようなこともあります。
下記記事などもそのひとつでしょう。

****7禁句」、大学に伝達=言論・思想統制を強化―中国*****
11日付の香港各紙によると、中国当局はこのほど、北京、上海などの大学に対し、自由・人権などを意味する「普遍的価値」をはじめとする「七つの禁句」を授業で使わないよう指示した。関係者の間では、習近平国家主席率いる新指導部が言論・思想統制を強化し始めたと受け止められている。

この指示は多くの中国の大学関係者が各紙に明らかにした。「普遍的価値」のほかに、「報道の自由」「公民社会」「公民の権利」「(共産)党の歴史的誤り」「権貴資本主義」「司法の独立」が禁句とされた。

「権貴資本主義」は権力と資本が癒着した資本主義のことで、一党独裁下の市場経済化で不正・腐敗がまん延する中国の現状を批判的に解説する際に使われている。「公民社会」と「公民の権利」は政治的に自由な市民の社会・権利を指すとして警戒されているようだ。【5月11日 時事】 
********************

“教員側からは「そんなことも話題にできないのでは、大学にいる価値はない」との批判の声が上がっている。”【5月11日 読売】との批判もあるようです。

また、党中央委員会から機密扱いの文書で通達があったと報じられていますが、“中国版ツイッター微博では、「現在の中国の問題点を党が具体的に認めた」と皮肉る声も出ているが、関連の書き込みも相次いで削除されている。”【同上】とのことです。
まさに、「七つの禁句」は中国の政治・社会の重大な問題点であり、これに蓋をして覆い隠そうとする共産党の頑迷な姿勢には失望を禁じえません。

【「中国は司法の独立が存在しない独裁だ」】
「七つの禁句」のひとつ「司法の独立」について、下記のような話もあるようです。

****中国の問題、ホワイトハウスに「陳情」=19年前の女子大生中毒事件*****
1994年に中国・北京の名門大学・清華大学の女子学生、朱令さんが猛毒タリウムを何者かに摂取させられ、重い障害が残った事件の調査を求め、朱さんの支援者が3日、米ホワイトハウスが国民の声を聞くために開設しているウェブサイトに請願書を送った。

11日時点で同サイト上の署名は14万4000件に達し、司法の公正が欠如する中国で進展しない事件の新たな解決ルートとしてホワイトハウスが登場したことに注目が集まっている。

中毒事件では当時、公安当局が捜査を進め、容疑者として朱さんの女性ルームメートが浮上。しかし結局は起訴されず、女性の祖父や父親ら一家が共産党などの幹部だったため追及を免れたとの見方があった。事件発生から19年後のホワイトハウスへの「陳情」では、姓を変えて米国に住むこの女性を調査し、国外追放するよう要求している。

「陳情」が明らかになった後、中国メディアは朱さんの事件を大きく取り上げ、北京市公安局は8日、「(当時捜査を尽くしたが)最終的に検挙できなかった」と発表した。インターネットではあまりに素早い中国当局の反応に失望と批判が広がったため、党機関紙・人民日報は9日、公安局の発表を正当化する論評を掲載した。

中国では、地方幹部の腐敗や横暴ぶり、土地の強制収用などの問題を訴え、地方から北京の中央機関に陳情に訪れる農民らが後を絶たない。陳情者は公正な司法が保証されない中国では解決しないとして欧米の大使館や国連機関、外国メディアに駆け込むケースも多くなっている。

自身の冤罪(えんざい)を晴らそうと北京に来ている湖南省の陳情者は「中国は司法の独立が存在しない独裁だ。こんな国を離れて米国や日本など民主国家に行き、自由な空気を吸いたいものだ」と漏らした。【5月11日 時事】 
**********************

一党独裁のもとで腐敗し濫用される権力、その権力に癒着した司法を象徴する話ですが、自国の司法ではなく、欧米の大使館や国連機関、外国メディアに頼らざるを得ない状況は中国国民にとっての大きな不幸です。
“メンツを潰された”中国当局の今後の対応には怖いもの感じます。

【「法の正義」か、「安定維持」か
そもそも、中国では司法の判断なしに、警察当局の判断のみで人々を拘束することができる“労働教養所”の制度があります。司法そのものが機能していない領域です。
さすがに党内部でも制度廃止を求める議論があります。

「労働教養制度」とは、“1957年、毛沢東が主導した反右派闘争で弾圧された知識人らを大量に収容するためにつくられた。79年に収容期限は4年までと定められたが、反政府的、反社会的な市民を隔離する手段として制度は温存された。中国司法省によると、2012年末現在、全国351の労働教養施設に約5万人が収容されている。”【5月8日 朝日】というものですが、同記事で伝えられる実態は想像を超えるものがあります。

****暴行・電気ショック…中国の「労働教養所*****
しわの寄ったA4大の絹の布地に、ボールペンで書き込まれた細かい文字がびっしりと並ぶ。
張文娟 57歳 5月4日 こっそりお湯を飲んだのが見つかり、隊長ら十数人から殴る蹴るの暴行。電気ショックの仕置き受ける――。

昨年10月まで、中国遼寧省瀋陽市郊外にある女子労働教養所に収容されていた劉華さん(49)が、所内で見聞きしたことを記した「労教日記」の一部だ。

「ここで行われていることを社会に伝えなければ」。その一心で、矯正工場で余った布きれに書きつけた。数百枚の日記は、満期で出所していく仲間の女性たちが、数枚ずつ体内に隠して持ち出した。権力乱用の温床と指摘されてきた労働教養制度の闇が、白日のもとにさらされた。

ベッドに2カ月拘束、つま先立ち7時間 中国労働教養所の実態
(中略)労働教養は、警察が裁判などの司法手続きを経ずに実質的な懲役刑を科す中国独特の制度だ。麻薬常習犯や売春の容疑者らのほか、政府に批判的な言動をする市民を隔離するため乱用されてきた。

劉さんは、高速道路の拡張工事のために農地を取り上げられ、地元政府への直訴を繰り返した末、北京に訴えに出たところを瀋陽の警察に捕まった。

教養所には当時、約470人が収容されていた。午前6時半から始まる労働は、1時間の昼休みをはさみ、午後5時半まで続いた。劉さんが配置された縫製工場には55台のミシンが並び、武装警察が着るコートを毎日220着ずつ作るのがノルマだった。

係官は作業の遅い入所者を容赦なく殴りつけた。電気が通った警棒を押しつけられ、気絶する入所者もいた。罪を認めようとしない入所者には、さらに過酷な暴力が行われた。

08年4月から約1年半、入所した蓋鳳珍さん(55)が証言する。抗議の絶食をした蓋さんは、手術台のようなベッドに2カ月近く縛りつけられた。医療器具で口をこじ開けられ、ペースト状にしたトウモロコシの粉と塩水を流し込まれた。柱に両手を広げる形で縛り、7時間つま先立ちさせられたこともあった。

この実態を明らかにしなければ――。劉さんは、模範入所者からボールペンの芯だけをもらい、係官の目を盗んで、工場で余った布地に記し続けた。その布地は暖房のスチームが通る管に隠しておき、満期で出所する仲間に頼んで持ち出してもらった。

だが、出所の際には、厳しい身体検査がある。作業用ゴム手袋の指の部分を切って作った小さな袋に布地を小さく丸めて入れた。そして、仲間たちは自らの性器に隠して検査の目を逃れた。

存廃巡り、党内せめぎ合い
こうして持ち出された劉さんの「労教日記」を、独自報道で知られる中国紙「財経」グループの雑誌「視覚」が4月に報じた。
遼寧省は調査チームを立ち上げ、係官116人、入所者55人から聞き取りをしたと公表。「やむを得ず強制的に食事を取らせるために医療用ベッドを使った」、場内の秩序を乱した入所者に「正常な拘束措置をとった」などと認めたが、「規則違反はなかった」として、報道を「真実と異なる」と結論づけた。

ただ、ネット上には調査の客観性を疑う声が相次いでいる。「視覚」関係者は「記事を書いた記者や編集者は今、大きな圧力の下にある」と語る。当局の調査を受け、同誌の5月号は発売が延期された。
それでも、中国メディアが労働教養所の実態に迫ったこと自体、司法界や知識人に驚きを与えた。

報道の背景には、労働教養制度の存廃をめぐる共産党内のせめぎ合いがあるとみられる。
党関係者によると、習近平(シーチンピン)総書記は昨年末、全国の警察・司法組織を束ねる党中央政法委員会の幹部が集まる内部会議で、労働教養制度を「廃止せよ」と指示。これを受け、1月7日、党中央政法委の孟建柱書記が会議で「年内に制度を停止する」と宣言した。

制度に詳しい浦志強弁護士は「法の正義がないから社会に安心感が生まれず、政権への信頼を損ねていることに党は気づいている」と話す。
しかし、共産党政権は「安定維持」の道具として労働教養を長年、利用してきた。歴史的に抱えるうみを出し切り、改革を徹底するには、党内の強い抵抗も予想される。【5月8日 朝日】
*******************

「法の正義がないから社会に安心感が生まれず、政権への信頼を損ねていることに党は気づいている」・・・そうであればすみやかな制度廃止しかないところですが、なかなかそうした自明の改革が進まないところが、批判勢力を許さない一党独裁体制の問題であり、社会・国民のための議論が、権力闘争の問題に矮小化されてしまうのが中国の現状です。
コメント (1)