孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イギリス  高まる反移民・反EU世論を受けて、今後の火種となりそうなEU離脱論議

2013-05-14 21:58:47 | 欧州情勢

(5月3日 統一地方選挙で大躍進した英独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ党首の高笑い “flickr”より By Mundo33  http://www.flickr.com/photos/87718284@N06/8705112827/)

【「英政界の転換点」】
イギリスで2日に行われた35地方自治体の行政運営に携わる評議員約2300人を選ぶ統一地方選挙において、EUからの離脱・反移民を掲げる英独立党(UKIP)が前回の8から一気に139議席増やして147議席を獲得して注目を集めています。出馬した自治体では平均25%の票を獲得したそうです。
(連立与党の保守党は337議席減の1116、自民党は125議席減の353、野党の労働党は290議席増の541でした。)

英独立党(UKIP)は反EUを掲げていることから、04年および09年欧州議会議員選挙ではイギリス国内の17%程の票を獲得して一定の議席も有していますが、国内選挙においてはこれまで大きな議席を得るには至っていませんでした。

****地方選、独立党躍進 英「政界の転換点」に 反移民・反EU 既存政党は危機感****
英国の地方選挙で、欧州連合(EU)からの脱退と反移民を掲げる右派の小規模政党、英国独立党(UKIP)が躍進し、英政界に衝撃が走っている。
UKIPが支持率で第3党にのし上がったことで、総選挙を2年後に控えるキャメロン政権が各種政策の修正を余儀なくされる可能性もある。
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2日実施の地方選は35地方自治体の行政運営に携わる評議員約2300人を選ぶもので、国政に直接、影響はない。しかし、BBC放送は総選挙を占う前哨戦と位置づけられた今回の選挙が「英政界の転換点」になったと指摘した。

UKIPの主張は非現実的だとみていた与党保守党は惨敗に見舞われた形で、キャメロン首相は3日、「多くの国民が選んだ政党(UKIP)を誹謗(ひぼう)中傷することはよくない」と述べて対応策の検討を約束、危機感をあらわにした。

地方選でUKIPは約18倍増となる147人が当選、出馬した自治体で平均25%の票を獲得した。支持率でも、伸び悩む最大野党の労働党(29%)、保守党(25%)に次ぐ23%に急上昇し、保守党と連立与党を組む自由民主党(14%)を大きく上回った。

UKIPのファラージュ党首は3日、「英国の政治が本当に大きく転換した結果だ」と満面の笑顔で語った。2015年に予定される総選挙での初議席獲得に向け、大きな足掛かりを得た格好だ。

英国では長引く経済の停滞への不満を背景に、「移民に仕事を奪われた」「無料の医療や生活保護など社会保障のただ乗りは許されない」などと、反移民の声が高まっていた。UKIPは反移民の保守層に加え、「裕福なエリート集団」という印象がある現政権に対する低所得者層の反発を背景に躍進を果たした。

キャメロン首相は、最も大きな移民の流入元であるEUへの残留の可否を問う国民投票を17年末までに行う方針を表明している。

今後は反EUの議論を牽引(けんいん)するUKIPの懐柔などの動きを加速させざるを得ず、左派の自民党と連立を組んでいる中道寄りの現在の路線や移民政策、対EU関係などをめぐり、政策の議論が活発化しそうだ。【5月5日 産経】
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勢いを増す外への反感や憎悪を煽る主張
EU離脱の議論はイギリスでは以前から存在します。
「不戦の誓い」から共同体を目指す独仏と異なり、イギリスは単に経済的利益をEUに求めているだけで、国家主権を制約するような最近の共同体深化の方向には強い反発があります。
また、経済面でも国際金融の中心シティーを抱えるイギリスと、経済をかく乱する投資マネーの流れをコントロールしたいEUとでは思惑の違いもあります。
更に、EU加盟国からの移民流入の増大により雇用が奪われいるという反移民の流れからも、EU離脱を求める声が大きくなっています。

しかし、これまでは“実際にはそんな無茶な選択はできない・・・”というのが一般的認識であり、保守党内部でも高まるこうした離脱要求に対し、個人的には残留を支持しているキャメロン首相は、最終的にはEU残留が国民的に支持されるであろうという前提で、2014年に実施される総選挙で保守党が政権を維持した場合という条件付きで、EU残留を問う国民投票を実施すると確約して議論に決着をつけようとしてきました。

これは一種の政治的賭けであり、当初から“危ない賭け”だとの指摘もありましたが、今回の英独立党(UKIP)大躍進を見ると、いよいよこの賭けはリスクを伴うものになりつつあります。

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そもそもは、大男の靴の中の小さな石のようなものだった。それ自体は取るに足らぬ存在だが、そのうち小石が気になって、大男の歩き方がおかしくなる…

▼靴の中の小石は、英国の独立党。下院に一議席も持たぬ新興政党だ。数年前には党大会を開いても、主要メディアはまともに取り上げなかった。片や、大男は与党の保守党。キャメロン首相はかつて、英独立党を「奇人変人、隠れ人種差別主義者たち」と切り捨てた

▼独立党の看板政策は英国の欧州連合(EU)離脱。英国でいくら反EU感情が根強いとはいえ、荒唐無稽な政策と思われてきた。取るに足らぬ小石だった。だが、首相は先週、こう言わざるをえなくなった。「あの党を支持した人たちに敬意を払わなくてはならない」

▼独立党が地方選で、大躍進したのだ。得票率で労働党と保守党に次ぐ三位で、連立与党の自民党を上回った。「二大政党制から四党体制への変化の始まり」との指摘すらある

▼もともと保守党内には、強硬な主張で支持を集める独立党が保守層を侵食することへの恐れがあって、そのEU政策を歪(ゆが)めさせてきた。それがついには、「EU離脱を問う国民投票を早く実施してしまえ」という動きにまで高じてきている

▼内に閉塞(へいそく)感が漂うほど、外への反感や憎悪を煽(あお)る主張が勢いを増す。西でも東でも、そんな流れが強まるばかりだ。【5月11日 東京】
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加速する流れ
“強硬な主張で支持を集める独立党が保守層を侵食することへの恐れ強硬な主張で支持を集める独立党が保守層を侵食することへの恐れ”から、今後は保守党強硬派はEU離脱・反移民をUKIPと争うように主導することが予想されます。

ポピュリズム的な強硬論の台頭に既成政党が引きずられて強硬姿勢を強めていくという点では、草の根保守派“ティーパーティー”の強硬論に共和党全体が引きずられて極端な保守路線の方向に走ったアメリカにも似ています。

****英与党議員、EU脱退問う国民投票に向けた法案公表へ*****
英国の与党保守党議員らは14日、キャメロン首相が約束している欧州連合(EU)脱退の賛否を問う国民投票の実施に法的拘束力を持たせる法案を公表する。
2017年末までの国民投票実施に向け手続きが進むことになる。

ただ、保守党議員らは2政党からなる連立政権の一角を占めるにすぎず、議会の過半を握っていないため、法案が通過するかは未知数だ。

13日に英米首脳会談が行われたのを受け、保守党幹部がワシントンで記者団に対し、「保守党は、2017年末までに行う(EUから)脱退か残留かの賛否を問う国民投票に法的拘束力を持たせる法案を公表する」と述べた。

多くの保守党議員らは、EU市場の一角を占めることを望んでいるものの、EUとの関係で主権が脅かされているとの懸念を抱いている。【5月14日 ロイター】
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アメリカも懸念
こうした流れを懸念するアメリカ・オバマ大統領はキャメロン首相との首脳会談で、慎重な対応を求めています。

****米大統領:「EU離脱、慎重に」 英の国民投票準備に****
オバマ米大統領は13日、英キャメロン首相との首脳会談で、首相が欧州連合(EU)からの離脱を問う国民投票を準備していることを巡り、英国民がEUの改革の行方を見定めてから離脱の是非を決めるよう、慎重な対応を求めた。

首相は改革の一つとして、米EU間の包括的自由貿易協定(FTA)をあげ、来月までの交渉開始は可能と強調した。
大統領は今年1月、首相に英国のEU残留を望む米国の立場を直接伝えたが、公の場での発言は初めて。

キャメロン首相はホワイトハウスでの大統領との記者会見でEUの改革に取り組んだ上で2017年に国民投票を行う従来の方針を説明。国民投票をすぐ実施するよう求める与党・英保守党内の要求をけん制した。
米EUのFTAを例に、EUを「開かれて柔軟」にする改革が必要と強調。FTA交渉が来月17日から英国で開く主要8カ国(G8)首脳会議までに開始される「チャンスがある」と述べた。

これを受け、オバマ大統領は、英国のEU加盟を「英国の世界への影響力の表れ」と積極的に評価。あくまで英国民の決定としながらも「最終的な判断を下す前に、EUの改革が行われるかどうかに関心がある」と話し、性急に離脱を決めないよう求めた。大統領も、米EUのFTA交渉が来月に開始されることに期待を示した。【5月14日 毎日】
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アメリカとイギリスは特別な関係と言われる同盟国ですが、アメリカにとってはイギリスがEU内にあって欧州への影響力を発揮してこそ利用価値がある関係であり、EUを離脱して欧州から孤立したイギリスにはあまり価値がありません。

ただ、イギリスが特別な条件・特殊な地位をEUに求めても、独仏がそうしたイギリスの要求を認める余地はあまり大きくありません。「出ていくなら、どうぞ」ということにもなりかねません。

もっとも、加盟国救済への抵抗、増大する移民への不満からの内向きのベクトルはドイツにおいても見られるところです。

経済危機で相互信頼関係も揺らいでいるEUですが、イギリスの離脱論議は厄介な火種になりそうです。イギリスにとっては、それ以上の死活問題にもなります。
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