孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パキスタン  「パキスタンのタリバン運動(TTP)」による選挙妨害テロが続発

2013-05-04 21:49:57 | アフガン・パキスタン

(TTPによる襲撃後イギリスで治療し、奇跡的な回復をみせているマララ・ユスフザイさん(15)と父親。マララさんの父親は、祖国パキスタンで自由で公正な選挙が行われることを訴えていますが、TTPによる妨害テロによって厳しい状況となっています。)

与党内からは「公平な選挙は望めない」としてボイコットする案も
パキスタンでは5月11日に行われる下院選を前に、イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」による選挙妨害を目的としたテロが熾烈を極め、正常な選挙実施が危ぶまれる状況となっています。

選挙妨害といえば政権側による野党弾圧が常識的ですが、ここパキスタンで標的とされているのは、比較的世俗主義的な傾向が強い、ザルダリ大統領が率いる人民党、南部カラチを地盤とする統一民族運動(MQM)、北西部中心のアワミ民族党(ANP)の連立与党3党です。

「パキスタンのタリバン運動(TTP)」は、“ベイトラ・メスード氏を指導者に2007年ごろ、結成されたイスラム原理主義組織。推定3万5千人の武装勢力を持つ。イスラム教による国家支配を掲げてテロ事件を頻発させ、07年12月のブット元首相暗殺も首謀したとされる。昨年10月には、女子教育を否定するTTPを批判したマララ・ユスフザイさん(15)を銃撃し、国際社会から非難を浴びた。”【4月25日 産経】と、“テロ地獄”パキスタンの元凶ともなっている組織です。

****与党狙いテロ相次ぐ パキスタン、総選挙妨害か*****
パキスタンで今月11日の総選挙を前に、連立与党3党に対する爆弾テロや攻撃が少なくとも19件起き、計46人が犠牲になった。反政府武装勢力パキスタン・タリバーン運動(TTP)の犯行とみられており、選挙への影響は避けられない状況だ。

TTPが3月に名指しして攻撃を予告したのは、ザルダリ大統領が率いる人民党と、南部カラチを地盤とする統一民族運動(MQM)、北西部中心のアワミ民族党(ANP)の連立与党3党。4月16日には、北西部ペシャワルでANPの演説会を狙った自爆テロが起き、16人が死亡。TTPが犯行を認めた。

イスラム国家のパキスタンの中で3党は比較的宗教色が薄いとみられている。それぞれ主導権を握る地方政府が、タリバーンの圧力に抗して、女子学校や映画館を再開するなど、穏健路線を進めていた。
過去5年の連立政権下では、米国の無人機による武装勢力への越境攻撃も激化。連立政権が米国の作戦を黙認したと、TTPは疑っている。

3党が攻撃を恐れ、目立った選挙運動をできずにいる一方、TTPとの対話路線を掲げる野党各党は、テロに沈黙し、大規模集会を開くなど選挙運動を有利に進めている。ANP幹部のザヒド・カーン上院議員は「テロに沈黙する政党は、テロに加勢しているのと同じだ」と批判。
与党内からは「公平な選挙は望めない」としてボイコットする案もささやかれ始めた。【5月2日 朝日】
*******************

TTPによる激しい妨害テロによって、上記の世俗主義的な与党3党は事務所の閉鎖や選挙運動の中止を余儀なくされています。

****パキスタン 総選挙前、相次ぐテロ タリバン運動 事務所で自爆も****
パキスタンで5月11日に行われる下院の任期満了に伴う総選挙を前に、イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」による政党関係者らへの攻撃が激しさを増している。

標的にされているのはタリバン運動を強く批判する世俗主義3政党で、自爆テロ攻撃などを受け、事務所の閉鎖や選挙運動の中止を余儀なくされている。

少数民族パシュトゥン人中心の世俗主義政党、アワミ民族党(ANP)の事務局長で、南部カラチで立候補しているバシル・ジャン氏のもとに23日、タリバン運動から新たな脅迫状が届いた。「民主主義とイスラム教は両立しない。選挙に参加した者には深刻な結果がもたらされる」との内容だ。その後、脅迫状に書かれた携帯電話の番号から脅迫電話もかかってきた。

イスラム過激派への軍事作戦を支持しているアワミ民族党は、テロの最大の標的にされている。16日には北西部ペシャワルで選挙運動中に自爆テロがあり、市民や警官16人が死亡した。ジャン氏も昨年8月に手投げ弾などで襲撃された。過去にテロで犠牲になった党関係者は700人以上で、今回の選挙では、活動拠点のペシャワルやカラチで50以上の事務所が閉鎖に追い込まれた。

ジャン氏は「私は暗殺リストのトップ10に入っており、選挙区では過激派メンバーがうろついている」と話す。アワミ民族党には街頭での運動ができなくなり、代わりに主張を記録したDVDを配る候補者もいる。

タリバン運動に狙われているのはこのほか、選挙運動の一部中止などを決めた最大与党パキスタン人民党(PPP)とカラチを拠点とする統一民族運動(MQM)だ。
パキスタン紙ドーンによれば、カラチの統一民族運動の事務所では23日夜、爆弾が爆発し、職員ら5人が死亡、15人が負傷した。統一民族運動の最近の死者は、候補者1人を含む25人に上り、カラチの全事務所が閉鎖された。

統一民族運動幹部のファイサル・サブズワリ氏は爆発前、産経新聞に、「過激派には屈しない」と怒りをあらわにし、敵対してきたアワミ民族党と過激派対策で連携する意向を示した。

一方、タリバン運動は、選挙でこれまで優位に戦いを進めているパキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派(PML-N)を率いるシャリフ元首相を和平調停者の1人としている。シャリフ派はこれまでタリバン運動に活動を妨害されることはほとんどないようだ。

しかし、政治・軍事アナリストのタラト・マスード氏は「タリバン運動は政府と和平を結ぶつもりは毛頭ない。シャリフ派を区別するのは、主要政党間に亀裂を入れようとする戦略だ」と指摘している。【4月25日 産経】
*********************

その後、4月26日には、上記記事でTTPからの脅迫状を受け取ったとされるアワミ民族党・バシル・ジャン氏の選挙事務所が実際に爆破され、子供を含む15人が死亡しています。

****脅迫状受けたパキスタン世俗主義政党に爆弾テロ 60人死傷****
パキスタンの下院選を前にイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」から脅迫状を送られていたアワミ民族党(ANP)の南部カラチの選挙事務所で26日夜、爆弾が爆発し、同党によると子供を含む15人が死亡、45人が負傷した。5月11日の投票を控え、治安の悪化に拍車がかかっている。

爆発があったのは、テロを予告する脅迫状が送付されたアワミ民族党事務局長のバシル・ジャン氏の選挙事務所付近。タリバン運動が地元メディアに犯行を認めた。当時、集会の準備が行われていたが、警官は2人しかいなかった。

被害を免れたジャン氏は「選挙管理委員会と選挙管理内閣に治安確保を要請しているが無視されている」として、選管とシンド州政府首相らを職務怠慢で訴えていると明らかにした。(後略)【4月27日 毎日】
********************

軍が治安改善に乗り出すも、状況は改善せず
こうした異常な状況に、5月2日、軍は選挙期間中の治安を維持するため7万人の兵士動員を開始しましたが、状況は改善しておらず、3日には立候補者本人が射殺される事件が起きています。

*****パキスタン選挙の候補者が射殺される、3歳の息子も巻き添え*****
歴史的な総選挙を来週に控えたパキスタンで3日、カラチ(Karachi)市内のモスク(イスラム礼拝所)で礼拝を終えた立候補者の男性が銃撃を受け、一緒にいた3歳の息子とともに死亡した。警察当局が発表した。

選挙運動中の国会議員候補が殺害されたのはパキスタン史上初めて。選挙運動はイスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」の脅迫や攻撃で妨害されており、AFPの集計によると4月11日以降、63人が殺害された。

5月11日に予定されている国会・州議会選挙は、同国で初めて文民政府が任期を満了し、選挙で政権を引き渡す機会となる。パキスタンはその歴史の半分を軍部に支配されてきた。

警察関係者がAFPに語ったところによると、殺害された立候補者は、息子と一緒に金曜日の礼拝を終えてモスクから帰る途中、オートバイに乗った武装集団から銃撃を受けた。

TTPの報道官はAFPの電話取材に対し、犯行を認め、同立候補者が所属していた非宗教政党「アワミ民族党(ANP)」と、同党と与党連合を組んでいた「パキスタン人民党(PPP)」、「ムータヒダ民族運動(MQM)」に対して今後も攻撃を行うと述べた。

今回の事件により、選挙が候補者殺害のために延期される選挙区は計3区となった。【5月4日 AFP】
**********************

また、3日には、TTPが首謀したとも言われているブット元暗殺を担当する検事が射殺される事件も起きています。

****パキスタン:検事、銃撃受け死亡 ブット元首相暗殺を担当*****
パキスタンのブット元首相暗殺事件(2007年12月)の捜査で、首席検察官を務めるチョードリー・ズルフィカル検事が3日、首都イスラマバード中心部の自宅近くの路上で、オートバイに乗った2人組の男に銃撃を受け、死亡した。

2人は逃走中。犯行声明は出ていないが、国内武装勢力による暗殺との観測が強い。ズルフィカル検事は、国際的事件であるブット氏暗殺を担当する著名な検事なだけに国民は衝撃を受けている。

ブット氏暗殺事件では、実行犯として逮捕された武装勢力メンバーら5人が殺人罪などで起訴され、首都近郊のラワルピンディの「反テロリズム法廷」で公判中。

また、今年3月に政治亡命先の中東ドバイから帰国したムシャラフ前大統領(前陸軍参謀長)が、「ブット氏に十分な警備体制を提供しなかった」として4月末に自宅軟禁下に置かれ、同じ法廷で予備審理が続いている。

現地からの報道によると、ズルフィカル検事は最近、武装勢力とみられる何者かに殺害予告を受けていたという。
パキスタンでは、5月11日の総選挙へ向け「パキスタン・タリバン運動」など国内武装勢力が各地で自爆などの攻撃を激化させている。選挙期間中の治安を維持するため、軍が2日、7万人の兵士動員を開始したばかりだった。【5月4日 毎日】
*******************

【「テロに沈黙する政党は、テロに加勢しているのと同じだ」】
アメリカはボストンマラソンの爆弾事件で大騒ぎとなっていますが、そのアメリカがTTP指導者を対象にした無人機攻撃を展開し、TTPが自爆テロなどで応酬しているパキスタンでは、上記のように挙げればきりがないようなテロ事件が日常茶飯事と化しています。

とても正常な選挙が行えるような状況ではないように思えますが、「選挙の中断はTTPの思うつぼだ」という議論のほかに、各政党が11日に向けてすでに走りだしていますので、おそらくこのまま選挙は実施されるのでしょう。

選挙戦を優位に戦っているといわれているパキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派(PML-N)を率いるシャリフ元首相ですが、現在のテロの横行に沈黙し、TTPから援護射撃を受けるような状況で選挙に勝利して、TTPなどイスラム過激派武装組織と政権獲得後にどのような関係をつくるのか・・・懸念されるところです。
コメント