孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ベトナム  外交樹立40周年を記念する「日越友好列車」 新幹線計画は“準高速”へ変更

2013-05-09 22:40:58 | 東南アジア

(「日越友好列車」のセレモニー 女性は多分現地の方でしょう。2010年の旅行中に出会った「日越文化交流ホイアン祭」でも、多くの現地女性が嬉々として浴衣をまとっていました。【5月9日 MSN産経】より http://photo.sankei.jp.msn.com/highlight/data/2013/05/09/05hanoi/

南北鉄道は日越友好のシンボル的存在
ベトナム北部の首都ハノイと南部の最大都市ホーチミンを結ぶ南北鉄道を、日本・ベトナム交樹立40周年を記念するデザイン列車が走るそうです。

*****日越友好列車が発進=外交40周年を記念―ハノイ*****
今年の日本・ベトナム外交樹立40周年(日越友好年)を記念するデザイン列車「日越友好列車」が8日、北部のハノイ駅を発進した。南部のホーチミン駅まで約1600キロを片道30時間かけ、9月23日まで約30往復する。ベトナムのデザイン列車運行は初めて。

二大都市を結ぶ南北鉄道は、南北ベトナム統一の象徴とされ、日本の政府開発援助(ODA)でメンテナンスなどを行ってきたことから、日越友好のシンボル的存在でもある。列車は中央の3両に、日越友好年のロゴマークや両国を代表する桜とハスの花をあしらったデザインが施されている。期間中は列車のフォトコンテストも実施する。 【5月8日 時事】
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“南北鉄道は1936年開通。全長1726キロを約29~38時間で結ぶ。ベトナム戦争で多くの橋が壊されたが復元し、南と北の人々を結びつけてきた。日本政府は94年から老朽化した橋の改修を支援しており、両国の友好の象徴にもなっている”【5月9日 朝日】とのことです。

大きな“箱もの”を建設する中国の海外援助に比べ、日本のODAは目立たないとの指摘もありますので、そのあたりを意識して日本の援助をベトナムの一般国民にもアピールする日本側の狙いがあっての企画でしょうか。

2010年8月に中部ホイアンを旅行した際には、偶然「日越文化交流ホイアン祭」なる企画に遭遇しました。
文化交流や南北鉄道支援で両国関係が深まること自体は非常に喜ばしいことです。

より現実的な“準高速”方式へ
ただ、日本の政界・経済界のベトナム・南北鉄道への関心は、過去40年の友好の歴史よりは、日本の新幹線方式による将来的な高速鉄道の建設に向いていると思われますが、そちらの方は厳しくなってきています。

****ベトナム高速鉄道、時速200キロ以下に 新幹線計画から転換 日本、戦略練り直し****
日本の新幹線方式が採用されるかが注目されていたベトナムのハノイ―ホーチミン(全長約1570キロ)を結ぶ南北高速鉄道について、ベトナム政府は当面、時速300キロ台ではなく、160~200キロの「準高速」で整備する意向であることが同政府関係者らへの取材でわかった。新幹線方式の受注を目指してきた日本は戦略の転換を迫られる。

同政府は、5兆円超とされる事業費を約2割縮減し、旅客と貨物の併用とする方針。新幹線方式であれば実績のある日本は受注で有利だが、準高速だと日本の特急と新幹線の中間的な規格となり、韓国や中国などとの競争が予想される。

ベトナム政府から事業化の調査を依頼されている国際協力機構(JICA)は新幹線を前提として調査してきたが、政府の意向を踏まえて再考中で、今月中にも最終報告書をまとめる。

ハノイ―ホーチミン間には現在、非電化・単線の在来線(全長1726キロ)があり、片道約29~38時間かかる。高速鉄道計画は新線を敷設し、両都市間の移動時間を大幅に短縮するもの。2010年3月の閣議で最短5時間半で結ぶ新幹線方式での計画が承認されたが、その後の国会で当時の国家予算(約3兆8千億円)を上回る5兆円超の事業費が高すぎるとされ、継続審議となっていた。

JICAは事業費を抑えるため、一度に全線開通を目指さず、需要の高いハノイ―ビン間(約300キロ)とホーチミン―ニャチャン間(約360キロ)の2区間を優先的に建設する案などを作成。規格は新幹線を前提としていた。だが、政府の「準高速」の意向を受け、内容を調整している。

事業規模は縮減されるが、JICA関係者は「鉄道利用の需要は高く、早期に着手することが重要」という。北部と南部の両区間のうちそれぞれ約45キロ、約36キロを試験区間として着工させる案などを検討している。

JICA関係者は、新幹線方式でなくても貨物列車にも対応できる頑丈な高架の建設や、運行や料金徴収システムといった関連分野で日本が参画できる余地は大きいとする。軌道を直線的に敷設すれば高速車両を走らせることも可能で、将来新幹線に発展させる可能性は残されているという。

ベトナム政府はJICAと協力して取り組んできた在来線の機能向上も進める。一部の複線化や、現在は速度を10~20キロ程度に落として運転しなければならない橋の補強などにより、ハノイ―ホーチミン間で約5時間の短縮が見込めるという。【5月9日 朝日】
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ベトナムのような社会主義国にあっては非常に珍しく、国会が「南北高速鉄道」計画を推進するとした政府案を反対多数で否決したという話題は、2010年6月21日ブログ「ベトナム「南北高速鉄道」 国会が政府計画を否決」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20100621)で取り上げました。

その国会の意向を受けて見直した結果の“準高速”への変更ですが、もともと“北部のハノイ~ビン(約280キロ)、南部のホーチミン~ニャチャン(約380キロ)の2区間を20年までに優先して開通させ、全区間を35年までに完成させるという”という当初の政府計画は資金的に無理がある(GDPの6割、国家予算の1.3倍)と日本側も懸念していた計画です。

改革の必要性が増すベトナム政治・経済
ベトナム経済自体が、ひところの勢いを失っていることは、2012年11月17日ブログ「ベトナム  経済失政で、議員が首相に退任を促す 20歳女子大生の政府批判ビラまき事件」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20121117)でも取り上げたところです。

****膨大な不良債権・国営企業改革・汚職…混迷するベトナム****
数年前まで新興市場国として最も注目されたベトナムは今、未改革の社会主義経済体制の構造的な問題から、金融機関の膨大な不良債権の処理、国営企業と公務員の改革、汚職などの課題に直面している。
政府は反政府活動家への締め付けを強めてもおり、国民の間には不満と怒りが広がっているようだ。

今年に入りグエン・タン・ズン首相は、景気減速や公務員の汚職など6つの課題に直面しているとし、とりわけ銀行の不良債権処理、行政と国営企業の改革、汚職防止対策が焦眉の急だと位置づけている。

国内銀行の総貸出残高は2700兆ドン(約12兆1832億円)。その8・9%に当たる約240兆ドン(約1兆816億円)が、不良債権だとされる。2011年に3・3%だった不良債権比率は急激に膨れあがり、国営金融機関が全体の44・26%を占めている。

その要因は主に、銀行の貸出残高の6割を占め、その半数が不良債権となっている非効率的な国営企業に対する融資にある。
ズン首相は金融機関の再編、貸し倒れ引当金の計上、国営資産管理会社による処理などを念頭に、不良債権比率を15年末までに、3~4%にまで引き下げるとしている。あるエコノミストは「真剣に不良債権を処理しなければ、経済成長が鈍化する」と警鐘を鳴らす。

国民の間には「国営企業は党幹部の利益のために存在している」(ホーチミン市民の一人)という不満と怒りが根強い。「多くが高い損失を出しながら、企業の幹部は依然、高額の報酬を得ている」(社会問題委員会のドー・マイン・フン副委員長)という批判も出されている。

このため、政府は国営企業の再編計画の工程表(ロードマップ)を、6月に発表する予定だ。チュオン・チー・チュン財務次官は、15年までに、重要分野の主要企業以外は売却する方針を明らかにしている。

公務員の体質と汚職も大きな問題であり「公務員の採用試験で不正が横行し、多くの地区で1億ドン(約45万円)を払った者だけを合格させている」(ハノイ市共産党委員会検査委員会のチャン・チョン・ズク委員長)という、内部批判も聞かれる。
国営紙によると、昨年の汚職は376件で18・7%増加し、関与した者も908人と22・03%増えた。だが、こうした数字は氷山の一角だとみられる。

今月4日には、汚職撲滅に向けた中央内政委員会が活動を開始した。共産党中央委員会に対する諮問機関となる。こうした一連の措置を「党と政府がどこまで真剣なのか疑問で、国民の不満をガス抜きするもの」(前出の市民)と、揶揄(やゆ)する向きもある。【2月7日 産経】
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こうした経済・政治状況を考えると、新幹線技術の輸出がとん挫するのは残念ですが、身の丈にあった“準高速”への変更は妥当な判断でしょう。

ベトナムは国名変更案の話題も報じられています。

****社会主義」やめます? ベトナムで国名変更案****
憲法改正作業が進められているベトナムで、国名を「ベトナム社会主義共和国」から「ベトナム民主共和国」に変える案が浮上した。地元紙VNエクスプレス電子版などが13日、報じた。

現在の憲法は1992年に制定された。市場経済の導入で急成長を遂げた社会実態にあわせるため、今年秋の国会での改正を目指している。現在、改正草案を国民に提示し、意見集約が進められており、報道によると、その中で国名変更案が示された。

「民主共和国」の名は1945年9月2日、進駐日本軍が撤退してホー・チ・ミン主席が独立宣言をして国家を樹立した際に使われた。76年に南ベトナムを統一し、ベトナム社会主義共和国に改められた。

憲法改正草案では、共産党の一党支配など基本的な政治体制は変わらないが、国営企業の役割が縮小されるなど社会主義的な色彩は薄まっている。「社会主義」の名が時代に合わないと感じている国民のほか、英雄のホー主席への親しみから、変更を支持する声が出るとみられている。(ハノイ=佐々木学) 【4月14日 朝日】
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言うまでもなく、重要なのは国名ではなく、その中身です。
共産党一党独裁体制の変革というのは現実問題としては無理でしょうから、せめて政治・社会の汚職体質の一掃に取り組んでもらいたいところですが、中国同様、そうした汚職・腐敗体質は一党独裁体制という政治システムと深く関連したものでしょうから、なかなか体質改善は難しいのかも。
コメント
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