孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

欧州信用不安  EU包括案取りまとめに難航 高まるストレスで、各国首脳間でも不協和音

2011-10-26 22:00:12 | 欧州情勢

(左から、サルコジ仏大統領、キャメロン英首相、メルケル独首相 当然ながら、にこやかな表舞台での表情とは異なり、舞台裏では相当に厳しいやり取りもあるようです。 写真は3月11の会議の模様 “”より By European Council  http://www.flickr.com/photos/europeancouncil_meetings/5517632561/ )

26日の首脳会議は「多くの分野で固まった数字は出てこない方向だ」】
世界経済の今後を左右する「欧州信用不安」ですが、当面の問題としては、きょう26日に開催されるEUとユーロ圏の首脳会議で「包括策」が打ち出されうるかどうかが注目されています。
今のところはまだ、欧州金融安定化基金(EFSF)の再拡充策や、銀行の資本増強
について、各国の意見がまとまっていない状況のようです。

****EU包括案、延期の可能性 ギリシャ債務80%削減案も****
欧州の政府債務(借金)問題の解決に向けて26日に開かれる予定の欧州連合(EU)ユーロ圏首脳会議(サミット)で、解決への「包括策」の具体的な内容が決められない可能性が出てきた。ギリシャの政府債務の損失をどこまで金融機関にかぶらせるかといった交渉が難航しているためとみられる。

ロイター通信は25日、EU関係者の話として、26日の首脳会議について「多くの分野で固まった数字は出てこない方向だ」と伝えた。欧州金融安定化基金(EFSF)の再拡充策や、銀行の資本増強について、それぞれ具体的な額や規模が決まらない可能性が高いという。
当初は首脳会議の前にEU財務相理事会を開き、具体策を詰めるものとみられていた。しかし、EU議長国のポーランドのEU代表部は25日夕、理事会は開かないと発表した。

最大の難問は、民間企業が持つギリシャの政府債務をどこまで削減してもらうかだ。英フィナンシャル・タイムズ紙は25日、EU政策当局者が国債の額面で60%の削減を金融機関側に求めていると報じた。現在価値に直すと75~80%にあたるとされる。当初予定していた21%削減から大幅な変更で、金融機関は簡単には受け入れられないとみられる。

交渉の窓口になっている国際金融協会(IIF)の広報担当者は25日、朝日新聞の取材に「大幅な削減をすれば、(約束通り返済できない)債務不履行(デフォルト)は免れないと考えている。まだ交渉は続いている。いつ最終的な声明が発表できるかわからない」と述べた。【10月26日 朝日】
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「大幅な削減をすれば、(約束通り返済できない)債務不履行(デフォルト)は免れないと考えている」という発言の意味がよく理解できません。
“削減”とは、ギリシャ国債を保有する金融機関に求める元本削減率について、60%程度をより小さい削減率に軽減するという意味合いでしょうか?

いずれにしても、7月に決まった支援策で、民間金融機関が“自発的”に保有ギリシャ債権の21%を減らすことになっています。債務不履行(デフォルト)の定義を「期日通りに元利払いがなされない」と考えれば、ギリシャはすでに7月時点でデフォルトに陥っていると言えます。

ただ、唐突に返済停止を宣言して大きな混乱を招く「無秩序なデフォル」と違い、支援策を伴ったギリシャの状況は「秩序だったデフォルト」・・・ということにもなりますが、それも、元本削減率が60%(現在価値の80%程度)となれば、借金踏み倒し以外の何物でもなく、“自発的”とか“秩序だった”云々もないようにも門外漢には思われます。

ギリシャ支援の財政負担の一段の拡大には、各国とも国民の反発が強く、民間金融機関に負担増を求める方向となっていますが、当然ながら、民間金融機関の反発は必至と思われます。

EFSFの再拡充策「二つの案があり、組み合わせることも含めて検討している」】
また、こうした信用不安はギリシャだけにとどまるものではなく、もし、経済規模の大きいスペインやイタリアに波及した場合を想定して、欧州金融安定化基金(EFSF)の融資能力を拡大する再拡充策が検討されています。

しかし、問題国の財政規律を強く求め、これ以上の救済負担を避けたいドイツと、金融機関への公的資金注入で財政赤字が膨らめば、国債格付けがトリプルAから転落しかねない、ひいてはサルコジ大統領の再選がいよいよ厳しくなるフランスの間で意見がまとまらないようです。

フランスは、EFSFに銀行免許を与えてECBから資金を借りる案を主張していましたが、ドイツはECBの負担増を嫌って反対。サルコジ大統領が19日急遽ドイツを訪問し、メルケル首相と会談しましたが、まとまりませんでした。結局、フランスは主張を取り下げたようです。

****欧州危機:「基金再拡充、2案軸に検討」 EU大統領****
ユーロ圏17カ国は23日、ブリュッセルで首脳会議を開き、欧州債務危機の包括的対策を協議した。焦点となっている欧州金融安定化基金(EFSF)の再拡充策を巡っては、終了後に会見した欧州連合(EU)のファンロンパウ大統領が「二つの案があり、組み合わせることも含めて検討している」と述べた。欧州諸国はさらに調整を進め、26日のEUとユーロ圏の首脳会議での最終合意を目指す。

大統領は2案の内容に言及しなかったが、(1)財政危機国が新たに発行する国債の価格が将来、下落した場合、EFSFが一定の割合で損失補填(ほてん)を保証し、投資家に国債購入を促す(2)ユーロ圏以外の新興国の政府系ファンドなどから資金を集める--を軸に検討しているとみられる。

ユーロ圏首脳会議に先立って開かれたEU首脳会議では、EFSF再拡充策を巡り、フランスはEFSFに銀行機能を与え、欧州中央銀行(ECB)から資金調達を可能にする案を主張していたが、ドイツなどの反発を受け、取り下げた。(後略)【10月24日 毎日】
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【「ユーロは嫌いだと言っていたくせに、今さら我々の会合に首を突っ込むな」】
救済負担増加を嫌う国民世論に配慮せざるを得ないドイツ・メルケル首相、再選が危うくなっている状況で財政危機・信用不安の表面化を避けたいフランス・サルコジ大統領。
更にイギリスでは、EU加盟を続けることの是非を問う国民投票を求める動議が出され、キャメロン首相の身内保守党から多くの造反者が出ています。
イタリアは、スキャンダルまみれのベルルスコーニ首相の手腕が疑問視されており、市場の次のターゲットとなりかねない状況です。

欧州各国首脳のストレスも高まっており、フランス・サルコジ大統領とイギリス・キャメロン首相の厳しいやり取り・・・というか、サルコジ大統領が“キレてしまった”様子も伝えられています。

****ああ、追い詰められた欧州首脳の泥仕合*****
ユーロ危機を引き金とする世界不況の再来だけは回避しなければならない──。そんなプレッシャーにさらされながら、必死で打開策を練る欧州首脳たちのストレスは最高潮に達しているようだ。
最近の彼らの言動は、まるでシーズン終了間近の9月を3勝11敗で終え、プレイオフ進出が絶望視されるメジャーリーグチームの選手のよう。すべての責任をチームメイトに押し付けて、互いに罵り合っている。

ブリュッセルでユーロ圏首脳会議が開かれた10月23日、ニコラ・サルコジ仏大統領はユーロ加盟国でないのにユーロ問題に「介入」し続けるイギリスのデービッド・キャメロン首相に対し、面と向かって「うんざりだ」と言い放った。

さらにサルコジはアンゲラ・メルケル独首相と徒党を組んで、イタリアのシルビオ・ベルルスコーニ首相にも厳しい警告を発した。口先だけの財政改革構想は聞き飽きたから、債務が膨れ上がってユーロ圏第3位のイタリア経済(意外にも輸出は好調だ)が潰れる前に今すぐ行動を起こせ、と求めたのだ。

ベルルスコーニの受難はそれだけでは終わらなかった。欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長と初代EU大統領(欧州理事会常任議長)のヘルマン・ヴァンロンプイからも激しい叱責の言葉を浴びせられた。

イギリスで盛り上がるEU脱退論
英メディアは、サルコジがキャメロンにキレた事件に飛びついている。ガーディアン紙によれば、ユーロ圏首脳会議の最終セッションでは両首脳の議論が続いて2時間が無駄になったという。サルコジはキャメロンに対し、「あなたは口を閉じる機会を棒に振った」と発言。「我々のやり方を批判し、何をすべきか口を出すことにうんざりしている。ユーロは嫌いだと言っていたくせに、今さら我々の会合に首を突っ込むな」

もっとも、ユーロに加盟していないとはいえ、イギリスはEU経済の重要な一部。仮にユーロが破綻してヨーロッパが長期的な大不況に陥れば、イギリス経済も大打撃を受けるのは間違いない。つまり、キャメロンにも口を挟む権利はあるわけだ。(中略)
 
キャメロンはまさに四面楚歌の気分だろう。24日には英下院で、イギリスがEU加盟を続けることの是非を問う国民投票を実施すべきかをめぐる投票が行われた。キャメロンが党首を務める与党・保守党内にもEUへの憎悪に近いユーロ懐疑論が渦巻いており、政府の方針に反して賛成に回る造反議員が続出した。

もっとも、イギリスがEUから脱退するかどうかは問題ではない。ユーロがコケれば、イギリス経済もコケることには変わりないのだから。(後略)【10月25日 Newsweek】
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メルコジの目配せ・忍び笑いにイタリア怒る
今朝のTVニュースでは、メルケル首相とサルコジ大統領が共同記者会見で、ベルルスコ―ニ・イタリア首相について意見を求められた際、二人が目配せして忍び笑いしたことが、イタリアを侮辱しているとイタリア国内で大きな問題になっている・・・とのことでした。

「あなたがベルルスコーニになんて言ったかしゃべっちゃおうかしら?ウフッ」(メルケル)「冗談はよしてくれよ。あんただって、あのろくでなしにきついこと言っていたじゃないか。エヘヘヘ」(サルコジ)・・・といった雰囲気の二人の“目配せ・忍び笑い”でした。もちろん全くの想像ですが。
(改めてYou Tubeの動画で見ると、メルケル首相の方は、やや困惑して苦笑いといったように見えます。サルコジ大統領はニヤニヤしています。)

どこの国でも、国内で自分たちがぼろくそに言っていることでも、同じことを外国の人間に言われるとよい感じはしません。
おおらかなイタリア人も同様のようです。

コメント
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