孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  新国会召集で「民政移管」スタート  経済制裁解除は?

2011-01-31 21:22:13 | 国際情勢

(首都ネピドーに建立された新パゴダ「Uppatasanti Pagoda」 ヤンゴンのシュエダゴン・パゴダを模して造られており、シュエダゴンより数十センチ低いとか。軍政も多少の自制はあるようです。 新パゴダの外装には金箔が張られ、数千人の国民が寄進したダイヤモンド、ルビー、ヒスイ、真珠などの宝石で飾られています。最上部にダイヤモンドをちりばめた球状の装飾が。まあ、ミャンマーはルビー・ヒスイなどの宝石の産地ですから・・・・。 “flickr”より By mgk.phyo http://www.flickr.com/photos/mgkphyo/4504355633/

新大統領は?】
ミャンマーでは今日新国会が召集され、「」付きの「民政移管」に向けた第1歩を踏み出しました。
この「民政移管」が実質的な軍事政権の維持に他ならないとの指摘は衆目の一致するところですが、とりあえずは大統領に軍政の最高権力者であるタンシュエ国家平和発展評議会議長が横滑りするのかどうか注目されます。
高齢(77歳)のタンシュエ議長は引退も噂されていましたが、もし、タンシュエ議長の大統領就任ということであれば、いよいよもって軍政の実質的継続というイメージが拭えません。

権力の座というものはそんなにも執着したくなるものか・・・という思いが凡人にはありますが、“「タンシュエ氏は最高権力者の座を降りれば自身の安全が保てないと判断している」(在ヤンゴン外交筋)とされる。氏は大統領に就任しなくても、軍を統括する国防治安評議会議長などに就任して事実上の院政を敷く可能性が強い。”【1月28日 毎日】とのことです。
権力の座を降りたとたんに、過去の罪をあばかれ投獄・・・というのは確かに珍しくない話です。それを防ぐには最後まで権力の座にい続けなければならない・・・ということでしょうか。権力者も苦労が絶えないようです。

****ミャンマー:民政移管へ国会招集 軍事支配は継続******
ミャンマーの首都ネピドーで31日午前(日本時間同)、ほぼ半世紀ぶりに国会が招集された。2月中旬から下旬には上下院合同の連邦議会が大統領を選出して新政権が発足。ミャンマーは歴史的な「民政移管」を実現するが、大統領には軍高官が選出され、民政移管後も事実上の軍事支配が継続するのは確実な情勢だ。

ミャンマーで選挙結果に基づき複数の政党が参加する国会が開かれるのは、ネウィン将軍によるクーデターで憲法と国会が廃止された1962年以来。開会する国会は上院(民族院)と下院(人民院)で、昨年11月に20年ぶりに実施された総選挙で当選した議員とともに、両院とも憲法で定めた定数の25%に当たる軍推薦枠議員が出席した。
総選挙では軍事政権翼賛政党が圧勝し、軍推薦枠を含めれば両院とも8割以上を軍に近い議員が占める。国会初日の31日は両院が議長を選出するが、軍部の意向に沿った議員が選ばれるのは確実だ。
国会は2月中旬までに上下院合同の連邦議会を開き3人の副大統領を選出。この中から大統領が選ばれる。大統領には軍事政権ナンバー3のシュエマン前軍総参謀長(63)が有力視されてきたが、最近になって、これまで独裁的権限を振るってきた現政権トップのタンシュエ国家平和発展評議会議長(77)が就任に意欲を示しているとの見方が浮上している。

◇情報統制、取材を認めず
ミャンマーの首都ネピドーで、新たに建設された国会議事堂周辺は厳戒体制が敷かれている。
軍事政権は05年、最大都市ヤンゴンから約300キロ北のネピドーへ首都を移転し、原野に議事堂や政府施設を建設した。30日、ネピドー入りした毎日新聞の通信員によると、議事堂に通じる道路はすべて当局によって閉鎖され、離れた場所からの議事堂の写真撮影も制止された。
反軍政系誌「イラワディ」(電子版)によると、野党議員は当局から詳しい議事日程についても知らされていないという。民主化勢力「国民民主勢力」(NDF)は「国会で政治犯釈放や経済自由化を求める」としているが、政権は国営メディア以外の記者の議事堂内での取材を認めず、議員にも録音機や携帯電話の持ち込みを禁じるなど、厳しい情報統制を敷いた。【1月31日 毎日】
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上記記事にもあるように、国会が開かれている首都ネピドーでは、主要道路で検問が実施され、厳戒態勢が敷かれており、国会内に立ち入ることができるのは議員と限られた関係者だけ。議場内の様子はメディアに公開されず、テレビ中継もされなかったとのことです。
なぜそんなに秘密にしたがるのか?という素朴な疑問もあります。

民主化指導者アウン・サン・スー・チーさん率いる国民民主連盟(NLD)は、軍政管理下の選挙を「不公正」とボイコットしました。
ただ、“事実上の軍事支配が継続”とは言いつつも、民主化勢力としては、NLDから分派した国民民主勢力(NDF)が上下両院で計12議席を得ており、また、国内各地の少数民族勢力も議会に参加しています。
全体に占める割合は微々たるものですが、民意を国政に伝えるルートとしては今のところはこれしか存在しないという現実の中で、一歩でも二歩でも民主化に向けた動きにつながってくれれば・・・という期待もあります。
そのためには、議会外での影響力が大きいスー・チーさんとの協力態勢が是非とも必要です。

制裁解除 「国民が解除を望み、国民のためになるならば考えたい」】
現在、ミャンマーは国際社会から経済制裁を受けています。
一応の「民政移管」がスタートする今、制裁の解除に向けた議論も高まっています。

****制裁解除を」高まる声 スー・チー氏は慎重*****
軍事政櫓下で昨年11月に20年ぶりの総選挙を実施したミャンマー(ビルマ)の初議会が31日に招集される。「軍政による見せかけの民政移管」との批判は強いものの、国際社会が軍政に科してきた経済制裁の解除を求める声も内外から広がり始めた。

だが、民主化勢力にとっては、制裁は軍政との数少ない交渉材料でもある。総選挙後に自宅軟禁から解放されたアウン・サン・スー・チーさんは慎重な立場を保っている。
東南アジア諸国連合(ASEAN)は今月16日、インドネシアで開いた外相会議で、欧米によるミャンマー製品の輸入禁止や投資禁止といった経済制裁の解除を訴えた。
これに呼応するように20日には、スー・チーさん率いる国民民主連盟(NLD)とたもとを分かって選挙に参加した国民民主勢力(NDF)が、制裁解除を求める声明を発表。議会に参加する政党の多くは賛意を示している。
制裁解除派は、公正さで不十分とはいえ、選挙を実施し、スー・チーさんを解放したのは民主化への一歩だったと主張。経済制裁は国民の生活を苦しめるばかりで、効果が薄いと批判している。

一方、反軍政メディアの主張の中でも、イラワジ誌は19日付社説で「選挙は(スー・チーさんの)解放で覆い隠されたペテン」「制裁解除には人権状況の改善が必要」と反論した。
ミャンマー国内では、今も2千人を超える政治囚が収監中と言われる。招集される上下院は、議員の8割超が軍政翼賛の連邦団結発展党(USDP)か、軍から選ばれた議員だ。真の民主化にはほど遠い状況で経済制裁を解除すれば、軍政との交渉材料がなくなるとの懸念は根強い。

スー・チーさんは解放後、各国メディアに「制裁が人々を苦しめるだけならば、再検討する必要がある」と何度も答えている。だが、実際に解除を求めるかどうかについては発言を控え、態度を明らかにしていない。【1月30日 朝日】
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“実際に解除を求めるかどうかについては発言を控え、態度を明らかにしていない。”とのことですが、スー・チーさんは解放後の演説で、欧米によるミャンマーへの経済制裁について、「国民が解除を望み、国民のためになるならば考えたい」と述べています。また、スー・チーさんは以前にもタン・シュエ議長に対し、制裁解除のために軍政に協力する意思をしたためた手紙を出しています。
また、ダボス会議に「私たちにはインフラが必要だが、皆さんは投資する際、法律の順守、環境や社会、労働者の権利、雇用創出、科学技術の普及促進といった点に特に注意を払ってほしい」とのビデオメッセージを送っています。

****スーチーさん:ダボス会議にメッセージ*****
ミャンマーの民主化運動指導者、アウンサンスーチーさんは28日、スイスで開かれている世界経済フォーラム(ダボス会議)に「私たちは地球社会の一員となることを切望している」とのビデオメッセージを寄せた。

スーチーさんは「ミャンマーは東南アジア最貧国の一つなのに、50年以上に及ぶ軍事政権と政争で、人々が教育や健康への多くの機会を失ってきた。国民の和解と政治の安定がなければ、社会と経済の発展は夢物語にとどまる」と強調。
会場の投資家や企業経営者らに「私たちにはインフラが必要だが、皆さんは投資する際、法律の順守、環境や社会、労働者の権利、雇用創出、科学技術の普及促進といった点に特に注意を払ってほしい」と訴えた。【1月29日 毎日】
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このメッセージからは、制裁解除にかなり前向きのように思われます。
「」付きでも「民政移管」を実現し、スー・チーさんも解放している状況を考えれば、国際社会が制裁解除に向けて動くことで、たとえ不十分なものであれ、今後の互いの歩み寄りを期待できるのではないでしょうか。何も行動を起こさないということでは、事態は全く前進しないでしょう。

追加
タンシュエ議長の大統領への横滑りの可能性が高くなったとの報道がありました。
*****ミャンマー:半世紀ぶり国会、議長に前総参謀長 軍政継続*****
ミャンマーの首都ネピドーで31日開会した国会下院は、議長に現政権ナンバー3のシュエマン前軍総参謀長(63)を選出した。シュエマン氏は最高指導者、タンシュエ国家平和発展評議会議長(77)の後継者と目され、2月にも選出される大統領の有力候補の一人だった。シュエマン氏の議長就任で、大統領にはタンシュエ氏が選出される可能性が強まった。

現地からの情報によると、上下院は1日午前、副大統領3人を選出する。このうち1人が大統領に選ばれるが、大統領選出は数日後になる見込み。タンシュエ氏が1日、副大統領に選出されれば大統領就任は確定的になる。
ミャンマー国内では最近になって、タンシュエ氏自身が大統領就任に意欲を示しているとの観測が広がっていたが、本命とみられていたシュエマン氏の下院議長選出は、現地でも驚きをもって迎えられている。現地情報筋は、氏が議長を辞任して改めて副大統領に選ばれることも不可能ではないが現実的ではなく、タンシュエ氏の大統領就任の可能性が強まったとの見方だ。
これまで独裁的権限を振るってきたタンシュエ氏が民政移管後の国家元首である大統領に横滑りすれば、民政移管が見せかけに過ぎないことがより鮮明になり、ミャンマーと米欧など国際社会との関係修復は極めて困難になる。
一方、高齢で健康に不安を抱えるタンシュエ氏が海外での国際会議出席など大統領の職務をこなすのは困難との見方から、氏は軍を統括する国防治安評議会議長に就任して院政を敷くとの観測もある。このほかの大統領候補には現政権ナンバー4のテインセイン首相(65)らの名前が挙がっている。
国会上院は31日、議長にキンアウンミン文化相を選出した。【1月31日 毎日】
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