孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

キルギス  ロシアとの関係強化へ 「ウラジーミル・プーチン峰」

2011-01-06 20:47:25 | 国際情勢

(昨年10月の議会選挙の際のポスター 左はメドベージェフ・ロシア大統領のようです。ということは親ロ派野党のアル・ナムス(「尊厳」)のポスターでしょうか。得票率7・74%で議会内に一定の勢力を築いた親ロ派「尊厳」は今回の連立政権には参加していません。
“flickr”より By yeva m  http://www.flickr.com/photos/54602850@N08/5064308954/ )

【「ウラジーミル・プーチン峰」】
中央アジアのキルギスでは昨年12月17日、オトゥンバエワ暫定大統領の与党、社会民主党のアタムバエフ党首を首相とする連立政権が発足し、強権支配国家が多い中央アジアで初となる議会制民主主義体制が成立しました。
もともとキルギスは、他の中央アジア国家に比べると一定に政治的自由が許されており、そうした自由があったからこそ政権批判や集会が可能で、昨年のバキエフ前大統領追放の政変も実現したとも言われています。

そんなキルギスですが、いささか笑えると言うか・・・首をかしげると言うか・・・そんなニュースが。
****キルギスに「プーチン峰」誕生へ 親ロ姿勢を強調*****
中央アジアのキルギスに「プーチン峰」が誕生しそうだ。イタル・タス通信などによると、アタムバエフ新首相がロシアのプーチン首相にちなみ、北部チュイ州の天山山脈にある4500メートル級の無名峰を「ウラジーミル・プーチン峰」と命名する法案に署名、議会に提出した。
昨年4月の政変を経て新体制に移ったキルギスでは、昨年12月に就任したアタムバエフ首相が最初の外遊でロシアを訪問。会談したプーチン首相から閣僚全員を一人ずつ紹介されるなど手厚く迎えられ、「ロシアとキルギスは切り離せない関係にある」と戦略的パートナー関係を強調した。法案への署名は、12月末の訪ロ直前の同24日に済ませていた。親ロの姿勢を打ち出す狙いがあると見られる。
キルギスには中央パミールに「レーニン峰」(7134メートル)があるほか、2002年には天山山脈の5千メートル級の未踏峰がロシア初代大統領にちなんで「エリツィン峰」と名付けられている。【1月6日 朝日】
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“こわもてで岩のように固い筋肉で知られるロシアのプーチン首相”【1月6日 AFP】ですが、今回「ウラジーミル・プーチン峰」と命名される標高4446mの峰もそんな感じなのでしょうか。
それにしても「そこまでやるかな・・・」という感もあります。

かつて、プーチン首相に絶対的忠誠を示しつつ、域内では中央政府を権限をもしのぐ独自の強権的支配体制を固めるロシア南部チェチェン共和国のカドイロフ大統領(共和国の“大統領”という名称は廃止されるそうですが、それもカドイロフ氏が「大統領を名乗るのは恐れ多い」と言い出したとか)が、首都グロズヌイ中心部の通りの名称をプーチン首相にあやかった「プーチン大通り」に改名したことがありました。

チェチェンの場合はまだロシア国内ですが、キルギスは旧ソ連とは言え独立国家です。
それが、「ウラジーミル・プーチン峰」というのは・・・。
ロシアの政治体制の表向き頂点にある「メドベージェフ峰」ではなく「プーチン峰」というのも、やはりロシアの実際の権力者はプーチン首相であることを示しているようにも思えます。
ただ、「レーニン峰」はともかく、「エリツィン峰」より標高が低いことで、プーチン首相のご機嫌を損じないでしょうか。

【「ロシアは主要な戦略的パートナーだ」】
話を本筋に戻すと、“新首相は最初の外遊先として「戦略的パートナー」であるロシアを訪問する考えを示す一方、アフガニスタンへの物資輸送拠点となっている北部マナスの米空軍基地使用をさらに4年間継続させると言明し、米国とロシアに対するバランス外交を展開する姿勢を見せた。”【12月18日 毎日】とのことですが、今回の「プーチン峰」といい、かなりロシアへの傾斜を強めているようにも見えます。

昨年6月の政変に伴う南部オシでの民族衝突の際には、オトゥンバエワ暫定大統領はロシアに治安維持部隊の派遣を要請しましたが、ロシアは平和維持部隊派遣を拒否し、カント空軍基地に輸送機3機を派遣したものの人道支援にとどめる慎重姿勢を見せていました。

昨年7月には、オトゥンバエワ暫定大統領は、キルギス国内にカント空軍基地に次ぐ2番目のロシア軍基地を受け入れる可能性があると述べています。

年末には、ロシアが主導する関税同盟への参加の意向を表明しています。
****キルギス:旧ソ連3カ国の関税同盟に参加表明 新首相が*****
中央アジアで初めて議会中心の政治体制に移行したキルギスのアタムバエフ首相は27日、モスクワでロシアのプーチン首相と会談し、ロシア、ベラルーシ、カザフスタンの旧ソ連3カ国でつくる関税同盟にキルギスも参加する意向を表明した。
17日の就任後、最初の外遊先としてロシアを訪れたアタムバエフ首相は「ロシアは主要な戦略的パートナーだ」と述べ、両国間でかつて協議されていた天然ガスや水力発電の共同プロジェクトを再開させたい考えを示した。プーチン首相はアタムバエフ氏の首相就任を祝し、新政権が経済難や政治的不安定を解決することに期待を表明した。
ロシアが主導する関税同盟は、税関手続きの簡素化などで域内の経済統合を強めるのが目的で、12年には自由貿易圏の創設を目指している。【12月28日 毎日】
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ロシア悲願のWTO加盟が現実的になってきている現在、ロシアが主導する関税同盟が今後どのように機能するのかはよくわかりませんが、とにかくキルギスとしては経済的にロシアとの関係強化を柱としていく方向のようです。
ロシアとしては、キルギスとの関係強化は、ウクライナの親ロ政権やポーランドとの関係改善などと並んで周辺国との関係強化、ロシアの影響力強化を示すもので歓迎すべきものでしょう。

コメント
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