(“FLOWER TO SOLDIER” 写真のような関係が今後も続くといいのですが “flickr”より By seifracing
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【ガンヌーシ首相:「可能な限り早期」の辞任・引退を表明】
今月14日、ベンアリ前大統領の国外(サウジアラビア)脱出により23年間に及ぶ強権支配体制が崩壊したチュニジアでは、20日に暫定内閣初閣議が開催され、非合法とされてきたイスラム系政党など全ての政治組織の合法化を決めるとともに、政変をめぐる暴動などで死亡した78人を悼み21日から3日間の服喪を宣言しました。
しかし、一部野党勢力を取り込んだものの、ガンヌーシ首相を含めて主要閣僚の多くがこれまで圧政を行ってきた前政権の閣僚が留任する形の新内閣と、前政権関係者排除を求める市民の声には隔たりあり、野党側の新閣僚5人が辞任したほか、市民のデモが続いています。
市民の抗議に押される形で、18日には、メバザア暫定大統領とガンヌーシ首相が与党・立憲民主連合(RCD)からの離党を表明、また、RCDはベンアリ前大統領と側近らを除名しました。
20日には、前政権から留任したRCDの閣僚も、RCDを離党したことを発表しています。
更に21日、ガンヌーシ首相は、6カ月以内に実施する意向の大統領選挙と議会選挙の終了後、「可能な限り早期」に辞任し政界を引退する意向を明らかにしています。
****チュニジア:首相「選挙後に引退」表明****
チュニジアのガンヌーシ首相は21日、地元テレビのインタビューで、6カ月以内に実施する意向の大統領選挙と議会選挙の終了後、「可能な限り早期」に辞任し政界を引退すると述べた。国民からのベンアリ前政権関係者の排除要求をかわす狙いがあると見られる。
ガンヌーシ首相は自らの役割について、選挙実施までの暫定的なものであり、その後は政界を引退すると明言した。しかし、全国労働組織「UGTT」は同日、国民の要求を反映した「救国内閣」の形成を運営委員会で議決し、ガンヌーシ首相が17日に組織したばかりの新政権との対決姿勢を強めており、引退宣言での事態収拾は困難な情勢だ。(後略)【1月22日 毎日】
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【最大労組:「独裁や腐敗の象徴を徹底的に排除することが必要」】
ベンアリ前政権関係者の排除を求めてデモを行っているチュニジア最大の労組、チュニジア労働総同盟(UGTT)は、新党結成も視野に入れた1~2年後の民主的な大統領選挙や議会選の実施を求める意向を表明しています。
****新党結成も視野=要求貫徹へストも―チュニジア最大労組****
チュニジアのベンアリ独裁政権の崩壊で主導的な役割を果たした同国最大の労組、チュニジア労働総同盟(UGTT)のシミ・モハメド副事務局長は22日、新党結成を視野に、新政権に対して1~2年後の民主的な大統領選挙や議会選の実施を求める意向を明らかにした。時事通信との会見で語った。
同副事務局長は選挙について「半年では準備が間に合わない」と指摘。23年続いた独裁政権下で本格的な野党が育たなかったとして、新党の立ち上げも含め、最低でも1年の準備期間が必要だと述べた。
モハメド副事務局長はベンアリ前政権からの刷新を求め、要求貫徹に向け、加盟労組の組合員約50万人を動員したストも辞さないと語った。
新政権に関しては、「新政権にはベンアリ前政権の閣僚が数多く残留しており、独裁や腐敗の象徴を徹底的に排除することが必要だ」と強調。UGTTトップがメバザア暫定大統領と会談するなど、デモと並行して新政権に要求を突き付けているという。【11月23日 時事】
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ベンアリ前政権による強権支配を脱した興奮もわかりますし、旧態依然の新内閣への抗議もわかります。
ただ、あまりにことを急いでは、手にしかけたものを失いかねない危うさも感じます。
現実問題として、十分な野党勢力が育っていない同国で、与党・立憲民主連合(RCD)メンバー意外に政権担当能力のある人材を探すのは困難な側面もあるのでは?
とりあえず、今回は治安維持や選挙管理に関するポストからRCDの影響を排除する形で妥協して、その後のことは次期選挙における国民の判断に委ねる・・・というではどうでしょうか。
旧宗主国のフランスや国連などは、仲介に入っているのでしょうか。
【警察官:「今こそ市民と連帯したい」】
こうした新政権と前政権の残滓排除を求める勢力の緊張関係が続くなかで、注目された二つのニュース。
ひとつは、治安維持にあたる警察官が市民との連帯を示すデモをしたとの記事です。
****警官1千人もデモ「市民と連帯したい」 チュニジア*****
チュニジア政変を受けて22日、これまでは市民のデモを鎮圧する側にいた警察官らが、市民との連帯を示すデモをした。チュニス中心部では1千人近い警官らが腕に赤い布を巻き、旧体制の打破や待遇改善を求めて行進した。
政変後、ベンアリ前大統領を見限って市民側に回った軍に支持が集まる一方、前大統領を支えた内務省と警察への不信感は根強い。警官デモは、こうしたイメージを改善する狙いもありそうだ。
参加したムニールさん(31)は「僕らは安月給のうえ、命令に従わなければクビ。命じられてデモ鎮圧に行ったら、デモ隊に隣人や親族がいて、心が痛んだ。今こそ市民と連帯したい」と話した。 【1月22日 朝日】
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今後の情勢いかんでは、軍と並んで、方向決定のカギを握る存在ともなる警察の動向として注目されます。
もうひとつのニュースは、政変で非合法化処分が解除されたイスラム組織の動向に関するものです。
周辺アラブ諸国が民主化の“飛び火”を心配する一方で、欧米には、今回政変による民主化の混乱のなかで、チュニジアでイスラム過激主義が台頭するのでは・・・という懸念があります。
【イスラム組織:「世俗主義と宗教的価値観を両立させる」】
****「神権政治は目指さない」 チュニジアのイスラム組織*****
チュニジアの政変でベンアリ前政権による非合法処分が解かれることになり、有力政党になる可能性があるとみられている同国のイスラム組織「ナハダ」の幹部、サミール・ディロウ氏(44)が21日、チュニス市内で朝日新聞の取材に応じた。
ディロウ氏は「我々は『神権政治』は目指さない」と語り、トルコを模範に議会政治の枠内でイスラムに沿った穏健な改革を目指す考えを示した。一方、「社会には我々に対する偏見がある」として次期大統領選で候補者を擁立しない考えを明らかにした。
「ナハダ」は1981年に結成されたチュニジア最大のイスラム組織。都市部の知識層を中心に勢力を伸ばしたが、隣国アルジェリアでイスラム政党が躍進したことから、飛び火を警戒したベンアリ政権から厳しい弾圧を受けるようになった。
ディロウ氏は「腐敗の廃絶や弱者への思いやりなどイスラムの道徳観に沿った政治を目指すが、個人に宗教を押しつけるつもりはなく、『イスラムこそが解決策だ』という言い方はしない。トルコの与党・公正発展党のように、世俗主義と宗教的価値観を両立させることは可能だ」と述べた。
また「政権側の長年のプロパガンダで、我々を『テロリストだ』と無用に恐れている市民が多い」と語り、近く行われる大統領選には候補者を擁立しない考えを示した。「まず議会に参加し、民主主義勢力として各党と協調していけることを証明し、次の段階に進みたい」と話した。
英国に滞在する指導者、ラシド・ガンヌーシ氏ら弾圧を逃れて亡命したメンバーを早期に帰国させ、組織を再構築する方針という。【1月23日 朝日】
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上記記事における発言に関する限りは、非常に穏当で建設的なものです。
こうした姿勢が今後も継続することを期待します。