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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ネパール  首相人事・毛派兵士の国軍編入など決まらないなかで国連ネパール支援団撤退

2011-01-28 21:53:09 | 国際情勢

(これまで国連ネパール支援団(UNMIN)の監視下おかれていた毛派の武器 ただ、武器庫のカギは毛派兵士が持っているとも・・・。
“flickr”より By UKinNepal  http://www.flickr.com/photos/40945935@N05/4045230515/ )

【「彼はネパール国民3000万人を代表した」】
ネパールでは、野党・ネパール共産党毛沢東主義派(毛派)の圧力で昨年6月、非毛派連立内閣のマダブ・ネパール首相が辞任表明へ追い込まれたものの、その後、16回にわたる首相指名投票でも毛派と非毛派の対立から新首相が決まらず、半年を経過した今現在も暫定状態の現政府が存続する異常事態が続いています。
そんなネパールの国民感情を代弁するような男性のニュースが報じられています。

****政党トップをビンタ、一躍ネパールの英雄に*****
ネパールで、政治家をひっぱたいた男性が一躍、インターネット上のヒーローとなっている。
この男性(55)は、今月20日に行われた統一共産党(UML)の集会で、同党トップのジャラ・ナート・カナル書記長に平手打ちを食らわせた。男性が後に報道陣の取材に語ったところによると、「突然怒りが湧いてきた」ためという。男性は、公共の秩序を乱したとして逮捕された後、保釈された。

男性は、ネパールの政治家らについて「国を滅ぼしつつある」と非難しており、これに、多くのネットユーザーらが賛同の声を次々と上げている。
「あのビンタは書記長だけに対するビンタではない。(ネパールの)全政党の指導者たち全員に対するビンタだ」
「彼はネパール国民3000万人を代表した」

 政党同士の小競り合いが続いているネパールでは、半年以上政府が機能しない状態が続いている。議会では16回もの首相選挙が行われたものの、選出に至っておらず、ただでさえ貧しい同国の発展を妨げる結果となっている。【1月27日 AFP】
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首相人事については、昨年11月に、主要3政党の間で首相をローテーションで務めることで話し合いが進んでいる・・・との情報もありました。最初にネパール会議派が、次に毛派、最後に、つまり憲法制定後最初の総選挙のときには統一共産党が首相を務めるとのことでしたが【10年11月9日 ASIAPRESS NETWOKより】、まだこの案も具体化していないようです。

【「撤退のタイミングは最適とはいえない」】
毛派と非毛派・国軍の対立が解消していないなか、07年から駐留してきた国連ネパール支援団(UNMIN)が撤退を余儀なくされ、今後への不安が募っています。

****国連のネパール監視団撤退 国軍と毛派、対立のまま****
ネパールの紛争防止と民主化支援のため、2007年から駐留してきた国連ネパール支援団(UNMIN)は15日、任期の最終日となった。野党・ネパール共産党毛沢東主義派(毛派)と政府・国軍の意見対立が解消されないまま監視役が撤退することで、和平の先行きに不透明感が広がっている。

ネパールでは、政府・国軍と毛派の間で約10年間続いた内戦の後、06年に和平協定が成立した。これを受け国連安保理がUNMINの創設を決め、日本の自衛官6人を含む18カ国約70人の非武装要員が、国内7カ所の毛派宿営地と国軍駐屯地の双方で、回収した武器と部隊の動きを監視してきた。
駐留はネパール側の要請で7度延長されたが、国軍や与党内から、国軍が監視対象とされていることへの不満が噴出。政府は今回、毛派の反対を押し切って延長要請を見送った。

政府と毛派は国連当局者の仲介で14日、和平協定の存続と、与野党の代表者からなる委員会が監視業務を引き継ぐことで合意した。ただ、政府側には「国軍は国防省が管理すればいい。監視対象から外すべきだ」(与党ネパール会議派、ポウデル議員団長)との声がくすぶっている。国連監視下で止められていた新兵の募集や武器の輸入に国軍が踏み切った場合、毛派との関係が緊迫する可能性がある。
非毛派連立与党と、議会で最大議席を持つ毛派との対立は深刻で、和平合意で定めた新憲法の制定作業や、約1万9千人の毛派軍部隊の国軍への統合は、実現の見通しすら立っていない。(後略)【1月15日 朝日】
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UNMINには、自衛隊員が07年3月から延べ24人任務に就いています。
UNMINのランドグレン事務総長特別代表は今月10日の記者会見で「撤退のタイミングは最適とはいえない」と今後の情勢を憂慮してます。【1月16日 毎日より】

UNMINの後を引き継いで毛派兵士約1万9000人を監視する特別委員会が22日設置されました。
****ネパール、毛派兵士1万9千人監視する特別委****
ネパール政府は22日、2006年まで10年以上続いた内戦で国軍と戦ったネパール共産党毛沢東主義派の兵士約1万9000人を監視する特別委員会を設置した。
特別委員会は、現在の主要3党である毛派とネパール会議派、統一共産党の代表者らで構成される。15日に撤収した国連ネパール政治支援団(UNMIN)を引き継いで毛派兵士の監視活動に当たるもので、主要3党などが14日に設置に合意していた。
特別委設置により、国連撤収で懸念されていた停戦維持の枠組みが始動した形だ。しかし、06年の包括和平協定に基づく和平プロセスで中核とされる毛派兵士の国軍への編入について、主要3党は依然として対立したままだ。【1月23日 読売】
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この特別委員会の監視対象に国軍が含まれるのかどうか、よくわかりません。
上記記事の書き方からすると、毛派兵士のみを対象とするように読めます。

内戦再発か国民統合か、岐路に立つネパール
最大の懸案事項である毛派兵士の国軍への編入については、正規軍ではないゲリラ兵士への抵抗感、国軍が毛派に乗っ取られる形になることへの懸念から、国軍・政府が拒絶しています。
ただ、この問題をクリアしない限り、ネパールの本当の意味での内戦終結はありえません。

毛派兵士の状況については、08年当時のものですが、下記の記事があります。
****ネパール:毛派ゲリラ不安 「兵士以外の生きる道知らぬ*****
「私たちはどうなるのか」。ネパール南西部の山奥で軍事訓練を続ける旧反政府武装組織「共産党毛沢東主義派」(毛派)の兵士たちが不安を漏らした。28日、王制から共和制に移行し、毛派主導で連立政権が発足するネパール。だが連立相手の政党勢力は、毛派が部隊を維持していることに警戒感が強く、毛派が求める部隊の国軍との統合にも否定的だ。その処遇をめぐって、新政権の安定を揺るがす火種にもなりかねない、毛派部隊の宿営地を訪ねた。【ダシュラトプール(ネパール南西部)で栗田慎一】

宿営地は、標高1000メートルの険しい山々と深い峡谷に囲まれていた。07年1月から始まった国連監視下での武装解除で、宿営地内に国連の監視員が常駐。武器は鍵のかかった倉庫に保管されている。ただ、護身用に小型の拳銃などを持ち歩くことは認められている。
プラティック司令官(34)によると、兵士は約5000人。多くが貧困家庭出身で10代で毛派に「参加」、うち2割が女性だ。
平均年齢25歳前後の若い兵士たちは、「統合の準備」を名目に訓練を続けている。訓練所は宿営地から徒歩約2時間の山腹にあり、現地語で勝利を意味する「ギート」と名付けられていた。
「遅れるな」「乱れるな」。兵士たちは監督官が叫ぶ中、山道でランニングをこなしていた。午後になると、木製の「模造銃」を構え、一斉攻撃時の配置確認などを続けた。「きついけど充実している」。21歳の男性兵士は、息を切らしながらも笑顔で語った。

新政権で首相就任が確実な毛派最高幹部のプラチャンダ書記長は、「06年の政府との和平合意の際、国軍統合が約束されていた」と主張し続ける。しかし、国軍は「ゲリラと正規軍では戦い方も思想も違う」と拒否。政党勢力も「別の治安組織を新設する方が現実的」と否定的だ。
4年前に国軍との戦闘で夫が死んだというビンドゥ旅団副司令官(26)は、「我々は兵士以外の生きる道を知らない。国軍統合がかなうことを願うしかない」と訴えた。【08年5月30日 毎日】
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また内戦状態へ逆戻りするのか、国民統合に向かって進むのか・・・決断が求められています。
“平手打ち”で目を覚まして取り組んでもらいたいものです。

コメント
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