孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中断したパレスチナ和平交渉  アラブ諸国が国連安保理にイスラエル非難決議提出

2011-01-20 18:10:10 | 国際情勢

(イスラエルの大規模入植地グッシュ・エジオン(Gush Etzion)近郊の“壁”と“監視塔” “flickr”より By battyward http://www.flickr.com/photos/battyward/2733089936/

ガザ地区:「普通の人々に懲罰が科せられているのと同じだ」】
パレスチナ和平交渉については、アメリカ・オバマ政権の後押しによるイスラエルとパレスチナの直接交渉がイスラエル占領地への入植問題で失敗して以来、ミッチェル米中東特使を軸にアメリカによるイスラエル、パレスチナとの間接交渉が継続されていますが、殆んど進展がみられていません。

ガザ地区についても、08年末のイスラエルの軍事侵攻から2年以上が経過しましたが、イスラエル軍がガザ地区への民間の建設資材搬入を禁じていることもあって、破壊された住宅の再建は進んでいません。
****イスラエル:ガザ軍事侵攻から2年 住宅再建進まず*****
◇不足住宅は10万戸
・・・・侵攻によってガザ全体で完全に破壊された住宅5000戸以上のうち再建されたのは、「100戸に満たない」(ガザ再建調整委員会のラドワン委員長)。08年以前からの紛争による破壊と人口増加を考えると、不足住宅は10万戸になる。
そのため、最近3年でアパートの家賃は2~3倍に高騰。しかも、空き部屋があっても、失業率が45%に上る同地では大半が負担できない。多くが再利用のがれきまたは粘土ブロックで築いた仮設住宅や、倉庫、車庫に住んでいるのが現状だ。
イスラエル軍はガザ地区への民間の建設資材搬入を禁じる政策は当面は変更しないことを示唆しているが、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)ガザ事務所のノルダール次長は「普通の人々に懲罰が科せられているのと同じだ。封鎖さえ解除すれば解決する問題だ」と指摘する。【12月24日 毎日】
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一方、ガザ地区からのイスラエルへの攻撃は激減しているようです。
****ガザからの攻撃が激減 2010年、イスラエル発表*****
イスラエルの国内治安機関シャバクが3日発表した2010年の「テロのデータと傾向」(12月25日現在)によると、パレスチナ自治区ガザから10年に発射されたロケット弾と迫撃弾は計365発で、09年の858発から激減した。イスラエル国内での自爆テロは2年連続で0件だった。【1月4日 共同】
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復興が進まないなか、イスラエル軍の報復を招くロケット弾等の攻撃は、ガザ地区住民の不満を高める結果になるとの、ガザ地区を実効支配するハマスの判断でしょうか。

イスラエル側からは、昨年末、パレスチナとの「暫定的な和平合意」も選択肢の一つとの認識が示されましたが、パレスチナ側は、中核的な問題の交渉を後回しにした暫定的な和平合意には応じない姿勢です。
****イスラエル首相「暫定和平合意」も選択肢=パレスチナは拒否*****
イスラエルのネタニヤフ首相は27日、同国の民放テレビ局チャンネル10のインタビューで、中東和平交渉が停滞する中、エルサレムの帰属などで解決策が見いだせない場合、パレスチナとの「暫定的な和平合意」も選択肢の一つとの認識を示した。
同首相は暫定合意の中身には触れなかったが、エルサレムの帰属やパレスチナ難民の帰還権など中核的な問題の一部を棚上げし、パレスチナとの和平合意を結ぶものとみられる。
ただ、パレスチナ側はこれまで、暫定的な和平合意には応じない姿勢を明確にしており、実現は困難だ。1993年のパレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)で、中核的な問題の交渉が後回しにされた結果、現在まで最終的な合意に至っていない経緯がある。【12月28日 時事】
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入植活動:「国際法に違反し、和平の大きな障壁だ」】
こうした状況下で、アラブ諸国など計123カ国は、イスラエルが占領するパレスチナ領(ヨルダン川西岸、ガザ、東エルサレム)へのユダヤ人入植活動について、「国際法に違反し、和平の大きな障壁だ」と非難する国連安保理決議案を提出しました。
これは、昨年12月15日、アラブ連盟の緊急閣僚級会合で決められた“仲介役のアメリカが和平実現の「真剣な提案」を行うまで交渉再開を支持しない。また、イスラエル占領地での入植活動の違法性を確認する決議を国連安全保障理事会に求める”という方針に沿ったものです。

****国連:イスラエル非難の安保理決議案提出****
イスラエルが占領するパレスチナ領(ヨルダン川西岸、ガザ、東エルサレム)へのユダヤ人入植活動について、アラブ諸国など計123カ国は19日までに、「国際法に違反し、和平の大きな障壁だ」と非難する国連安保理決議案を提出した。
中東和平交渉を有利な立場で再開したいパレスチナ自治政府の意向を受けたもので、入植活動が凍結されなかったことが、交渉中断の原因だと国際社会に印象付け、イスラエルやその同盟国・米国への圧力を高めるのが狙いだ。

イスラエル政府報道官は「(パレスチナが)交渉を拒否し、和平プロセスを否定している」と反発している。
パレスチナ解放機構(PLO)のエラカト交渉局長によると、安保理理事国15カ国のうち、米国を除く14カ国は決議案に賛成している。ただ、決議案は、米国とロシア、欧州連合(EU)、国連の中東和平4者協議がかつて出した声明文と同じ内容で、米国は拒否権を発動しづらく、難しい対応を迫られた格好だ。【1月20日 毎日】
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アメリカの選択
また、ロシアのメドベージェフ大統領は18日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸を初めて公式訪問し、東エルサレムを首都とするパレスチナ独立国家建設を支持すると表明しています。
****ロシア:大統領がヨルダン川西岸を訪問 独立国家建設支持****
イスラエルとパレスチナの中東和平交渉が暗礁に乗り上げた中、ロシアのメドベージェフ大統領が18日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸を初めて公式訪問し、東エルサレムを首都とするパレスチナ独立国家建設を支持すると表明した。ソ連時代(88年)に表明した同種の立場の継承を確認した。ロシアは米国、欧州連合(EU)、国連を加えた中東和平4者協議で仲介役の一端を担っており、発言はイスラエルや米国に対し、交渉再開に向けた一定の圧力となる。

大統領は西岸エリコでアッバス議長と会談した。大統領は会見で、独立国家建設について「イスラエルを含めた全当事者のためになる」として、ソ連時代から続く「支持」姿勢を明確にした。
これは88年、パレスチナ解放機構(PLO)のアラファト議長(当時)が独立宣言した際、ソ連を含む約100カ国が支持した経緯を指す。しかし米ソ冷戦の枠組みでソ連が“自動的”にアラブ寄りの姿勢をとっていた時代で、実質的な影響はなかった。
イスラエルと米国は、パレスチナの一方的な独立やそれに先立つ「承認」に強く反発している。これに対し、パレスチナ側は各国の「承認」を求めてきた。中南米諸国で承認が相次ぐほか、イスラエル紙ハーレツは、スペインが西側諸国で最初にパレスチナ国家を承認する見通しと報じた。パレスチナ側には、国際的な後ろ盾を受け交渉を有利に再開する狙いがある。

AFP通信によると大統領の発言は、イスラエルの占領地への入植活動を巡り交渉が中断したことに焦点を当てる狙いがある。パレスチナ側は入植活動への国連安保理の非難決議を求める構えだ。PLOのエラカト交渉局長によると、ロシアなど理事国15カ国のうち、決議に反対なのは米国だけだ。(後略)【1月19日 毎日】
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イスラエルによる入植活動によって和平交渉が中断しているなかで、アメリカの姿勢を示すものとして、アメリカが今回のイスラエル入植活動非難決議に拒否権を行使するのかどうかが注目されます。

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